東京都が税収の一部を手放して、地方交付金の交付団体に一つになることは地方自治の公平性から望ましいことではないだろうか。

<政府・与党が検討している東京都と46道府県の「税収格差」の是正(偏在是正)について、小池百合子都知事は12日の定例記者会見で、「東京一極集中」の先入観に基づく議論が展開されているとして、「不合理な見直し、改悪に断固反対する」と批判した。反論は会見冒頭だけで7分間に及んだ。

 小池氏は「人や企業が東京に集中する流れが続いている」との指摘を念頭に、国の「住民基本台帳人口移動報告」(2024年)に基づき、札幌、仙台、名古屋、大阪、福岡市にも各地域の人口が流入・集中している状況をデータで示した。
 「是正」の標的の一つとされる地方法人2税(法人事業税、法人住民税)の税収の伸び率(23~24年度決算)も、46道府県平均の12%に対し、都は7%で全国34位にとどまると説明した。
 その上で、「東京だけ人が集中しているわけでも、東京だけ税収が伸びているわけでもない。(国側が)都合のいい数字だけ持ち出すのは、現実を見極める力を失わせる」と続け、「是正」論に反論した。 さらに、税収が増えると地方交付税の配分が減り、自治体の努力が報われない現行制度が地方の成長を阻害しているとも指摘。「東京を狙い撃ちにし、限られたパイを奪い合って(地方に)ばらまくことが、本当の意味での『成長戦略』につながるのか。(国は)制度の綻びの矛先を東京に仕向けるのではなく、交付税制度を含め、地方税財政全体を充実できるよう見直すことが重要だ」と語った>(以上「読売新聞」より引用)





小池百合子都知事、7分にわたり政府・与党が検討の「税収格差是正」論を批判…「不合理な見直しに断固反対」」との見出しが目に付いた。日本の税制は国家統制の観点から国に主要な徴税権を付与し、地方自治体は最初から税収不足に陥るような仕組みになっている。その税収不足を補うために国は地方自治体に「交付金」を配分し、同時に「交付金の使途」に国の政策実現の足枷をして国家による全国統治を果たしている。
 地方自治体の中で、ただ一ヶ所だけ例外がある。それが東京だ。地方税収だけで東京都が必要とする予算を補って余りあるほどの税収に恵まれている。だから国からの交付金はゼロだ。いわば東京都は日本の中の独立国に近い存在だ。

 しかし国から見れば不都合極まりない。国家の通達に従わないで交付金を削減される、という罰が効かない。これでは国家の全国一律の行政に齟齬が生じることになる。
 だから高市政権が「税収格差是正」と称して東京都の「入り過ぎる税収」の一部を取り上げようとしている。それをほかの地方自治体に配分することによって、東京都も交付金支給団体にして、国の支配体制の中に組み込もうとしている。だが、本来はそうあるべきなのだ。

 東京都の税収が多いのは特に地方税の中でも事業税だ。それは日本国中の主な企業の本社や本店が東京都に集中しているからだ。それが事業税の収入が地方自治体の中でダントツで東京都が多い原因だ。
 小池氏は「東京を狙い撃ちにし、限られたパイを奪い合って(地方に)ばらまくことが、本当の意味での『成長戦略』につながるのか。(国は)制度の綻びの矛先を東京に仕向けるのではなく、交付税制度を含め、地方税財政全体を充実できるよう見直すことが重要だ」と怒り心頭の面持ちで激白したようだが、国家の全国統治機構の一環としての「交付金」という機能を考えるなら、東京都だけが「地方交付金ゼロ」を誇っていて良いわけではない。かつて女性で初の総理大臣を目指していた小池氏にしては度量の狭い発言だ。国家の支配体制を考慮するなら、小池氏が総理大臣に成っていたら同様の発言をしたはずだ。

 潤沢な税収を背景に、東京都が不要不急の支出にうつつを抜かしている現状を、小池氏は真摯に反省すべきだ。48億円という法外な予算を使って、都庁舎のプロジェクションマッピング 事業を都議会で追及されているようだが、それこそ潤沢な税収を泡の様に濫費するのは戴けない。国の予算査定というハードルなき都予算は極めて危険だ。都知事の独善に陥る可能性が極めて高いといわざるを得ない。
 都の予算執行として、いずれかの「査定機関」が存在することが望ましい。それも現行のお座なりの内部監査のようなものではなく、キッチリと第三者の利害が相反する機関によるチェックがあるべきだ。そうした意味で、東京都が税収の一部を手放して、地方交付金の交付団体に一つになることは地方自治の公平性から望ましいことではないだろうか。

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