日本の軍事費増を主張する米国の世界戦略と、日本の防衛戦略とは異なる。
<米ホワイトハウスは5日までに、第2次トランプ政権で初となる包括的な安全保障政策「国家安全保障戦略(NSS)」を公表し、日本や韓国を含む同盟国に防衛費を国内総生産(GDP)比で大幅に増額するよう要求した。中国を念頭に置き、台湾を巡る紛争抑止は「重要事項」と強調。台湾海峡での一方的な現状変更は支持しないとの政策を堅持すると表明した。
防衛費を巡り、トランプ大統領が特に求めているとして「日本と韓国に増額を促す必要がある」と名指しした。敵対勢力を抑止し、南西諸島と台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」の防衛能力の整備に焦点を当てるとした。
防衛費を巡り、トランプ大統領が特に求めているとして「日本と韓国に増額を促す必要がある」と名指しした。敵対勢力を抑止し、南西諸島と台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」の防衛能力の整備に焦点を当てるとした。
歴代米政権が法に基づく国際秩序に中国を組み込もうとしてきたが「実現しなかった」と批判。トランプ氏が、30年以上にわたる米国の誤った対中認識を「単独で転換した」と主張した。インド太平洋地域を「主要な経済的・地政学的戦場」と位置付け、重視する姿勢も示した。 世界で最も強く、信頼性のある核抑止力を用いて「米国民や同盟国を守る」と明記した。>(以上「共同通信」より引用)
トランプ氏が防衛費増を要求しているのは日韓だけではない。NATO諸国にも防衛費増を呼び掛けている。「米、日韓に防衛費大幅増を要求 対中念頭、台湾紛争抑止」とあるが、米国が描く世界戦略と、日本が描く防衛戦略には乖離がある。
トランプ氏が防衛費増を要求しているのは日韓だけではない。NATO諸国にも防衛費増を呼び掛けている。「米、日韓に防衛費大幅増を要求 対中念頭、台湾紛争抑止」とあるが、米国が描く世界戦略と、日本が描く防衛戦略には乖離がある。
なぜなら基本的に日本は「存立危機事態」にならなければ憲法の規定から自衛隊を派遣することが出来ないからだ。それに対して、韓国は北朝鮮軍が38度線を越えれば自動的に応戦せざるを得ない。38度線からソウルまで60kmしかないため、存立危機事態うんぬんを検討する暇すらない。即応体制でも間に合わないくらいの緊急対処が必要だ。
それに対して、日本は四方を海に囲まれている。想定されるのはミサイルの飽和攻撃だが、それに対処すべく防衛兵器を日本は着実に開発している。もちろん一二式地対艦誘導弾能力向上型を配備して、敵艦攻撃能力を向上させているが、今後は地対地や空対地ミサイルを開発して、敵からの攻撃を受ければ敵基地を破壊する能力を持たなければならない。
そうした日本の防衛に不可欠な兵器を配備するための防衛費は必要だが、いたずらに戦争できる国に軍備を増強するのには賛同できない。ことに日本の防衛ラインを越えて、戦争目的で外国へ派兵することなどあり得ない。だから米国基準の軍備で日本の軍備を語るべきでない。
先の大戦で米国は中国と手を結び「遠交近攻策」を実行した。鼠を袋に追い詰めるようにして、日本の平和への道をすべて途絶した。米国はプラグマティズムの国だ。役にたつ者に対しては寛大だが、役に立たない者は弊衣のように捨てる。
オバマ大統領は中国が南シナ海の岩礁を埋め立てて軍事基地を建設しているのを黙認した。それは一ヶ所ではなく複数個所の建設を知って素知らぬ顔をした。そして完成してから「航行の自由作戦」と称して米国軍艦を派遣して航行させた。その当時の米国政府の行動は不可解極まりない。そして2013年6月の米中首脳会談(カリフォルニア州サニーランズ)の際、習近平氏からオバマ氏に「太平洋を二分して、東半分を米国が支配し、西半分を中国が支配する体制にしたらどうか」「太平洋には米中両大国を受け入れる十分な広さがある」と持ち掛けられて激怒したという。
引用記事でトランプ氏が「敵対勢力を抑止し、南西諸島と台湾、フィリピンを結ぶ「第1列島線」の防衛能力の整備に焦点を当てる」ために「日本と韓国に増額を促す必要がある」と名指ししたとある。その防衛能力とは米国を「敵対勢力」から守るための防衛能力だ。その敵とは中国だ。
しかし中国に対してつい最近まで莫大な投資をして、間接的に中国の軍拡に最も寄与したのはウォールストリートの投機家たちだったではないか。もちろん米国証券取引所に会計情報非公開という特別基準を設けて、中国企業を上場させたのもウォールストリートの住人たちだ。彼らが米国証券取引所から調達した莫大な資金も間接的に中国の軍拡に使用された。日本にとって迷惑千万でしかなかった。
トランプ氏が「歴代米政権が法に基づく国際秩序に中国を組み込もうとしてきたが「実現しなかった」と批判」との認識を抱くなら、その意思をロシアに対しても表明すべきだ。独裁者との取引を断じてすべきではない。民主主義国家と国民にとって、世界の独裁者たちはいかなる意匠を纏おうとも、敵であることに変わりない。いや、すべての人類にとって、独裁者たちは敵でしかない。その認識を共有する国際機関の創設に、米国は動くべきだ。それこそが米国の真の世界戦略であるべきではないか。