12月2日にトランプ大統領が署名して「台湾保証実施法」が成立した。

<トランプ米大統領は2日、米国と台湾の公的な交流に関する指針を定期的に見直し、更新することを義務付ける「台湾保証実施法案」に署名した。法案成立を受け、台湾は謝意を表明。中国は不快感を示した。

 法案は米国務省に対し、台湾との交流に関する指針を少なくとも5年に1度は見直すよう定めている。台湾総統府の報道官は声明で「(この法律は)米国と台湾との交流の価値を再確認し、より緊密な米台関係を支持するものであり、民主主義、自由、人権尊重という共通の価値観を堅持する揺るぎないシンボルだ」と述べた。
 台湾の林佳龍外交部長(外相)は記者団に、指針の見直しが頻繁になれば、台湾当局者が米連邦機関を訪問して会議を行うことなどが可能になるとの見方を示した。ただ、同法ではその点に明確な言及はない。
 一方、中国外務省の報道官は、米国と「中国の台湾地域」の間のいかなる公的な接触にも断固として反対すると表明。「台湾問題は中国の核心的利益の中核であり、米中関係で越えてはならない第1のレッドラインだ」と述べた。
 トランプ氏は来年4月に中国を訪問する見通し。>(以上「REUTERS」より引用)




 連邦議会を通過して、後はトランプ氏の署名を待つばかりになっていた台湾保証実施法が成立した。それを伝えたのが引用した記事だ。「トランプ氏が台湾保証実施法案に署名、台湾が謝意 中国反発」とあるが、中共政府が反発するのは中国の勝手だ。
 そもそも米国は「一つの中国」を承認していない。私のブログにも書いた通り、「1978年に発表され、1979年に発効した「アメリカ合衆国と中華人民共和国との間の外交関係樹立に関するコミュニケ」を精読すれば明快だ。
 ここでも重要なポイントは2つ。 
1,アメリカは「中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」 The United States of America recognizes the Government of the People’s Republic of China as the sole legal Government of China.
2,「中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であるという中国の立場をアクノレッジした」 The Government of the United States of America acknowledges the Chinese position that there is but one China and Taiwan is part of China. 
 1つ目は日本の場合と類似しており、「recognize」は法的な政府承認を意味する。問題は2つ目の 「アクノレッジ(acknowledge)」である。日本語だと慣習的に「認識する」と訳されるが、そのニュアンスは support(支持する)や recognize(承認する)よりも弱く、「中国がそのような主張をしていることは承知している」という距離をとった表現に近い」のだ。

 つまり中共政府が「台湾は中国の一部だ」と執拗に主張しているのは米国政府としては「ワカッタ」。しかし中国の主張は解ったが、台湾が中国の一部と承知したわけではない、ということだ。それは日本の場合もまったく同じだ。
「1972年に日本と中華人民共和国との間で日中共同声明が出される。その中で台湾問題が中国の「内政干渉」か否かを判断するうえで重要なのは次の2項目と3項目だ。
第2項:「日本国政府は、中華人民共和国政府を中国の唯一の合法政府として承認する」
第3項:「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」 
 第2項の「承認する(recognize)」は法的な「政治承認」を意味する。問題は後者である。中国は「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する(reiterate:繰り返し述べて強調する)」とする。それに対して日本は「この中華人民共和国の立場を十分理解し、尊重し(fully understands and respects)、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」としている。ちなみにここでいう「ポツダム宣言第八項」とは「カイロ宣言の条項は履行される」「日本の主権の範囲は、本州、北海道、九州、四国と小さな島々に限定」という部分である。
 ここから客観的に読み取れるのは、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部」というのはあくまで中国側の主張であって、日本はそれを「承認(recognize)」しているわけではないということだ。日本は、中国がそのように表明している事情を「十分理解」し、その意見を「尊重する」と述べることで、相手のメンツには一定の配慮を示しつつも「賛同はしない」、しかし「議論の余地は残す」という外交の妙味を持たせている。
 日本の外務省のサイトにはこの日中共同声明の英語版が補足的に掲載されているが、そこを見てみると日本側のニュアンスがより明確になる。「respect」は日本語だとあっさり「尊重する」と訳され、ポジティブな賛同の意味に誤解されがちだが、実際には agree(合意、賛同)やsupport(支持)より弱い表現であり、「否定はしないが、賛同もしない」、「相手の立場を踏まえているが距離をとる」というニュアンスを含む」ということだ。

 だから米国が「台湾保証実施法」を制定したことで、中国が腹を立てるいわれは何もない。台湾保証実施法には米国から台湾に対して六つの保証が定められている。
1,台湾への武器供与の終了期日を定めない。
2, 台湾への武器売却に関し、中国と事前協議を行わない。
3,中国と台湾の仲介を行わない。
4,台湾関係法の改正に同意しない。
5,台湾の主権に関する立場を変えない。
6,中国との対話を行うよう台湾に圧力をかけない。

 米国のプラグマティズムに裏打ちされた外交姿勢が如実に表れている。役に立つものには寛容だが、役に立たないものはサッサと切り捨てる。中国が経済投資マーケットとして利用できる間は利用したが、力をつけた中国が米国に指図し始めると敵対し、ついに中国が凋落して投資先として不要になると見向きもしない。その代わり世界戦略の要となる半導体生産に関して台湾は絶対的に必要だ。ただ、それだけの話だ。
 日本には米国が中国が台湾進攻すれば台湾を見捨てる、と論じる評論家がいるが、台湾保証実施法の成立を以て、宗旨替えすることをお勧めする。さもなくば暗闇で勝手に妄想を膨らませている愚かな評論家だと謗られるだろう。

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