賃上げは企業が決めることで、政府がすべきは賃上げできる経済成長政策を実施することだ。

<高市内閣の経済対策が出てきたが、円安を止めないまま、おこめ券などでごまかす国民愚弄。物価高対策と称し、中身は戦争予算の大拡大。これで誰が喜ぶのか。この政権の正体が見えた。
  ◇  ◇  ◇
 この政権の正体見たりだ。石破前政権が掲げた「2020年代に時給1500円」とする最低賃金引き上げの政府目標が、あっさり消滅した。14日の参院予算委員会で、高市首相が「今の段階で明確に目標を示すのは非常に難しい」「『ここで何円まで』と示す政府として統一したものはない」と明言。目標を事実上、撤回したのだ。立憲民主党の古賀之士議員の質問に答えた。
 石破前首相は就任直後の所信表明演説で「20年代に全国平均1500円という目標に向かって努力を続ける」とブチ上げ、従来「30年代半ばまで」としていた引き上げ時期を前倒しした。今年6月に閣議決定した「骨太の方針」にも、この目標は盛り込まれたが、高市は軽々と投げ捨てたのだ。
 確かに「20年代に時給1500円」は一見すると、高い目標に映る。29年度に達成させるにしても、今年度からの5年間で42.2%の賃上げが必要となる計算だ。年平均7.3%。24年度までの10年間の年平均上昇率3.1%を大幅に上回る。当初からペースが急激すぎると人件費コストの負担が増し、中小企業の経営を圧迫するという専門家らの懸念もあった。
 しかし今年度の最低賃金は、厚労省の審議会から全国加重平均で63円(6%)増の1118円との答申が出た。上げ幅は過去最高を更新し、全ての都道府県で初めて時給1000円を超える見込みだ。
 石破の「掛け声」が奏功し、最低賃金大幅アップを勝ち得たと言えるのだが、問題はこの流れに「待った」をかけた高市が持ち出す理屈である。

ニューヨーク市長の公約は「時給4500円」
 この日の予算委で、高市は「1500円、これが出た時、地方の事業者から相当な不満の声が上がりました。政府は数字だけ出して、丸投げかと。自分たちが賃金を支払うんで、国が支払ってくれるわけじゃない」と答弁。政府が具体的な賃金の目標値を掲げるのは、経営者らに対し「とても無責任」とまで言い切った。
 経営者目線か、労働者目線か。要はどっちを向いた政治かという話で、高市はキッパリと前者を選んだ。なるほど。昨年10月、石破が打ち出した「20年代に1500円」に対し、「達成不可能な目標を掲げれば混乱を招く」と強く非難したのは、経団連の十倉会長(当時)だった。
 分かりやすい構図ではないか。
「米ニューヨーク市長選で当選したマムダニ氏が公約に掲げたのは『時給4500円』ですよ。いくら物価の違いはあれど、日本の最低賃金は世界と比べて安すぎます」とは、労働法制に詳しい法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)だ。こう続けた。
「この国の最低賃金は『パート労働者』を念頭に極めて低く設定されてきました。最低賃金は、そもそも憲法25条の生存権に基づき、本来なら『健康で文化的な最低限度の生活』を保障する金額が求められます。物価上昇に賃上げが追いつかず、実質賃金はマイナス続きの現状を直視し、実際に最低限の生活を維持できる費用を調べ、必要な目標値を掲げるのが政府の仕事です。経営者に文句をつけられたからといって、具体的な政府目標を引っ込めるのは筋が通らない。それこそ高市首相は無責任すぎます」

賃金アップの目標を捨て、防衛費増額は前倒し
 強き経営者を助け、弱き庶民をくじく──。高市内閣の総合経済対策が出てきたが、この視点で眺めれば、ますます正体がクッキリと見えてくる。1ドル=155円まで進んだ円安を止めないまま、おこめ券バラマキでごまかす国民愚弄も、その象徴のひとつ。鈴木憲和農相の肝いり策だ。
 鈴木は、事実上の減反政策からコメ増産に転換させた石破前政権の一大方針を、ちゃぶ台返し。来年度産米は一転して減産の見通しを示し、時計の針を巻き戻した。コメ政策の原則に「需要に応じた生産」を掲げるが、供給を引き締めれば価格は高止まりしやすい。新米価格の高騰に喘ぐ庶民の立場に立ち、コメの値段を下げる気など、さらさらない。石破が掲げた「5キロ=3000円台」の価格目標も捨てた。最低賃金の目標と酷似した構図である。
 おかげで新米価格は高騰の一途だ。14日農水省は9日までの1週間に全国のスーパーで販売されたコメの平均価格を発表。前週より81円上昇し、5キロ=4316円となった。5月中旬に記録した4285円を上回り、半年ぶりに過去最高値を更新してしまった。
 米価高騰の中、おこめ券配布は庶民への“施し”程度に過ぎず、金券バラマキには直接、物価を抑える効果はない。いわばコメの高値維持策で、喜ぶのは自民の大票田である農家やJA農協である。しかも「重点支援地方交付金」を拡充する立てつけで、配布対象の線引きなどは各自治体任せ。高市が嫌いなはずの「丸投げ」そのものだ。
 物議を醸した「シカを蹴る外国人」発言ですら、もともと根拠は伝聞情報だったのに、いつの間にか「英語圏の方だが、行為に及んだ方に注意したことがある」と自身の経験談にスリ替わってしまうような人だ。高市に一貫性を求めるだけムダかもしれないが、唯一あるとすれば「票とカネ」欲しさ。大票田と献金企業への優遇策である。

この政権を語るのに高尚な解説は不要
 改めて高市内閣の総合経済対策を見て欲しい。庶民が喫緊に求める物価高対策は「高市オリジナル」と言える政策はゼロ。「冬季の電気・ガス料金の補助」「ガソリン税の暫定税率廃止までの補助金」など、焼き直しと野党の借り物のオンパレードである。
 物価高対策はソコソコに、経済対策の柱に掲げるのは「防衛力の強化」だ。最低賃金1500円の目標達成時期は撤廃したクセに、防衛費のGDP比2%への増額目標達成は2年も前倒し。軍拡路線を経済の推進役に位置づけ、財源の裏付けとなる補正予算案の中身は“戦争予算”の大拡大となるのは間違いない。
 異次元の大軍拡で誰が喜ぶのかといえば、自民に献金を積む大手スポンサー企業だ。昨年公表された23年分の政治資金収支報告書を確認すると、23年度の防衛省本省の契約上位20社のうち12社が関連企業を含め、自民党の政治資金団体「国民政治協会」に献金を送っていた。その総額は約2億5000万円に上る。
 防衛省との契約額1兆6803億円と断トツの三菱重工は、例年3300万円を自民に献上。他の契約企業の献金額も、安倍政権以降に増え続けた防衛予算に比例して、上昇傾向にある。
 岸田政権が「専守防衛」に反し、敵基地攻撃能力の保有を容認すると、長射程の精密誘導ミサイルの開発など、その整備を一手に担っているのは三菱重工だ。高市政権は非戦闘目的の「5類型」に限る武器輸出ルールを撤廃し、殺傷能力の高い護衛艦などの輸出解禁をもくろんでいるが、その開発を主導するのもまた三菱重工である。
「企業献金温存の利権政治こそが自民党の生命線です。平和憲法の縛りを捨て、軍事産業を大きくすれば献金額も自然と増える。高市政権の軍産複合体に向けた国づくりには、自民の『わが身を肥やす』狙いもあるのでしょう。だからGDP比3.5~5%と際限なく防衛費を増やしてもお構いなしです。その代替財源が社会保障の切り捨てで、『OTC類似薬』の保険適用見直しや高齢者の医療費『3割負担』拡大は手始めに過ぎません」(立正大名誉教授・金子勝氏=憲法)
 高市政権を語るのに、イデオロギーや政治理念といった高尚な解説はいらない。庶民の苦境を弄び、ひたすら「票とカネ」を求める欲望に突き動かされているだけだ。前出の五十嵐仁氏は「この国は外から攻められる前に、内側から崩れかねない」と警鐘を鳴らした。有権者の多くも、この政権の正体にそろそろ気づいた方がいい。>(以上「日刊ゲンダイ」より引用)




 いやはや高市政権批判のために狂ったとしか言いようがない。日刊ゲンダイの「庶民の苦境を弄ぶな 何が物価高対策だ? 高市経済対策の肝は軍拡の戦争補正」との見出しに冷静を欠く狂気に身震いがする。
 庶民の苦境を弄んでいたのは「ザイム真理教」ではなかったか。日本経済を35年も停滞させ、国民所得をむしろマイナスにして来たのは「緊縮・増税」の財務省だ。立憲党は今夏の参院選前までは消費税減税に言及すらしてなかった。そして出て来たのは一年間に限り(のちに2年に限り、と訂正した)食品の消費税をゼロにする、ということだった。

 もちろん暫定税廃止は与野党の合意があったが、高市氏が登場するまで何時から廃止になるのか決定してなかった。そしてガソリン等に関する引き下げ補助金を段階的にゼロにしたではないか。決して高市内閣は庶民の苦境を弄んではいない。
 石破政権が掲げた「2020年代に時給1500円を実現」との目標を高市政権が引き継がなかったことに日刊ゲンダイ氏は大層不満のようだが、賃金は政府が勝手に決めてよいものではない。ましてや賃上げの目標年次を示して、未達成時の責任を政府が取れるのだろうか。

 ちなみに時給1500円の場合、フルタイム(月160時間)なら月額は約24万円(総支給額)、年収は約288万円(総支給額)が一応の目安となる。もちろん働く日数や時間によって変動するが、手取りは社会保険料などが引かれ、一般的には月額約18~19万円、年収約216~228万円程度(扶養範囲内など条件による)になると試算される。
 ただ労働時間により「一律」ではなく、
◎1日8時間、月20日勤務(月160時間)の場合:
     1,500円 × 8時間 × 20日 = 月額 240,000円(総支給額)。
◎1日8時間、月22日勤務(月176時間)の場合:
     1,500円 × 8時間 × 22日 = 月額 264,000円(総支給額)。
◎年収の計算
    月24万円(総支給額)の場合: 240,000円 × 12ヶ月 = 年収 2,880,000円(総支給額)。
 となる。これらの最低賃金支給額を政府が管掌している保育士や介護士の賃金ですら未達にも拘わらず、最低時給1500円を掲げた石破政権こそ無責任極まりないといえるだろう。
(保育士のほとんどは女性で、平均月収は21万円。 また、介護士の月収は福祉施設に常勤している職員の平均が21万円で、訪問介護士の平均は22万円となっている。 これらの数字は全産業の平均月収32万9600円と比較する約10万円も低い)

 日刊ゲンダイ紙はニューヨークの最低時給4,500円を例に挙げて日本の最低時給の低さを批判しているが、他国と比較する場合には物価水準に基づいて比較すべきだ。そして、韓国の例もあるように最低時給を政府が強引に引き上げれば、売上や生産性に関係なく人件費の増加が起きて原価が高騰し、企業経営を破壊する事態になりかねない。そうして韓国では中小零細企業がバタバタと倒産した。
 日本でも政府が最低時給を引き上げるべき、との意見は「構造改革」の議論から何度か出たことがある。アトキンソン氏や竹中平蔵氏などは最低時給の引き上げを阻止しているのは生産性の低い中小零細企業で、その経営者たちの能力が低いからだと持論を展開してきた。しかし彼らの狙いは別のところにあるのではないか、という指摘もある。それは日本の高度な工業技術を支えている中小零細の経営を行き詰まらせて、高度な工業技術と一緒に外資によって買収させようとする企みと一体ではないか、という指摘だ。その一環として地銀の再編に手を付けようとしたことがあるし、実際に地方経済を支えて来た農協金融や信金などの統合合併により地方の零細中小企業へのキメ細やかな融資体制を破壊してきた。

 最後に日刊ゲンダイ紙は軍需産業が防衛予算の急拡大で恩恵を受けるのではないか、と批判している。確かに企業献金は「賄賂」に類似した側面がある。全面禁止すべきだが、企業献金と防衛費の増大を関係づけて批判するのは的外れだ。企業献金は企業献金としてのあり方を考えるべきだし、防衛予算は日本が置かれている極東の軍事バランスを考慮して論じるべきだ。
 日本の防衛力は中国の軍拡と比例して増加させなければ国家と国民の安全は保証できなくなる。周知のように日本の自衛隊単独で中国の侵略と戦うことは不可能だ。駐留米軍の助けばなければ日本の防衛すら困難な状況だ。それで独立国だといえるのだろうか。日本が普通の国であれば近隣諸国の内日本を敵視している三ヶ国すべてが核保有国で、日本の平和を脅かしている現状からすれば核武装していて当然だろう。

 日本のオールドメディアがファンタジーに満ちた「平和論」を説いているうちに、日本の防衛体制は後れを取った。急いで中国の侵略の脅威に立ち向かう必要がある。そのためにはウクライナを例にするまでもなく、防衛戦争で必要とされる兵器は自国での開発が必須だ。そしてある弾薬等も程度の備蓄もしておかなければ、執拗な攻撃に耐えることは出来ない。
 防衛企業と防衛省が協力して最新鋭兵器の開発や配備を急がなければならないのは中国の動きからすれば当然のことではないだろうか。それと企業献金とは別問題として論じるべきだ。つい先日、中共政府は「沖縄は日本の領土ではない」などと荒唐無稽な発言を堂々としてきた。それほど国際常識を欠く隣国が軍事力強化に邁進している現実を日刊ゲンダイ紙は直視すべきだ。

 中共政府はオランダ・ハーグの常設仲裁裁判所(PCA)は、2016年7月12日の判決で、中国が南シナ海のほぼ全域に設定した境界線「九段線」に基づく主権や歴史的権利の主張には、法的根拠がないと判断したが、現在無視している。その一方で福島処理水の海洋放出は海洋汚濁を禁じた国際法に反する、と支離滅裂な論理を展開している。
 国際常識もなければ国際機関の決定も一蹴する国相手に、論理的な交渉など出来ない。そうすれば軍事力で自らを守るしかないのは誰が考えても当然の結論ではないか。
 賃上げを政府が決めろ、というのは経済状況を考慮しない暴論であり、それは中小零細企業を潰して中小零細企業が保有する最先端技術を企業ごと外資に買収させようというタクラミを後押しするものでしかない。政府がなすべきは賃上げできる経済環境を醸成することで、そのための経済成長政策を強力に展開することだ。オールドメディアは高市政権が公言した成長戦略を後押しすることこそが賃上げに直結することになる。単なる高市政権批判は無能のなせる業でしかない。

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