台湾有事は現実的ではないし、中国の内政でもない。
<中国による台湾への武力行使(台湾有事)が行われた際、日本が「存立危機事態」と認定し、集団的自衛権で自衛隊を防衛出動させるかどうかで日中が対立している。
日本の歴代政権は、あえて具体的事例を明確にしない「曖昧戦略」を貫いたが、高市早苗首相がこのタブーに挑んだことで、中国が「内政干渉だ」と猛烈に噛みついている。いわゆる「高市発言」に対する報復として、自国民の日本渡航・留学自粛要請や、日本水産品の輸入停止通告など、日に日に“制裁”のギアを上げている。
事の発端は11月7日の衆議院予算委員会。立憲民主党の岡田克也元外相が「仮の話」と前置きした上で、台湾有事の時に中国軍がバシー海峡(台湾~フィリピン間)を海上封鎖したら、存立危機事態に当たるか否かと、高市氏に迫った。
高市氏は、「最悪の事態を想定するのは非常に重要。(中国が)戦艦を使って武力行使を伴うものなら、どう考えても存立危機事態になり得るケースと考える」と言及した。
余談だが、「戦艦」は第2次大戦で活躍した、巨大な艦砲を擁した最強の軍艦のことで、「軍艦」「戦闘艦」と同意語でない。かつての日本の「大和」「武蔵」や、アメリカの「アイオワ」級が代表格だが、今や時代遅れの兵器。現在実戦配備する国は皆無で、アメリカはもちろん、中国も装備していない。
存立危機事態は2015年に制定された「平和安全法制」で掲げる「事態対処法」の根幹の1つで、適用要件は厳格だ。
日本と密接な他国に武力行使が行われ、日本の存立も脅かされ、国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることが大前提だ。さらにこの事態を排除し、日本の存立を全うし、国民を守るための適当な手段が他にないことが絶対条件となる。
これを踏まえれば、台湾有事で日本が「存立危機事態」として考えられる事態は、日本~中東の石油・LNG(液化天然ガス)海運ルートの要衝であるバシー海峡が封鎖された際の“最終手段”というべきだろうか。
中国が台湾封鎖を実行した場合、アメリカは「台湾関係法」(1979年制定の米国内法で、台湾防衛のため武力行使もあり得ることを定める)に従い、軍事介入する可能性は十分想定される。
だが「専守防衛」を掲げる日本も加勢するとなれば話は別だ。米軍介入でただでさえ難しくなる封鎖作戦がさらに面倒になり、成功の見込みが遠のいてしまう。そのため、中国が過剰反応し、けん制しているとの見方もできる。
なぜ中国の習近平国家主席は、台湾統一にここまで執着するのか。専門家や識者の見立てを総合すると、「中華民族復興を達成した偉大な指導者として歴史に名を残したい」という名声欲が大きいらしい。
毛沢東は中華人民共和国建国の父で、鄧小平は1970年代後半~1990年代後半に改革開放政策を推進し、中国を経済大国へと押し上げた偉人だ。
だが1953年生まれの習氏は革命闘争とは無縁で軍務経験もなく、共産党エリートとして政治の舞台でのし上がり、2013年国家主席に就任した。中国では国家主席の任期は「2期10年」との決まりだったが、権力を掌握した習氏は2018年にこれを撤廃し、2023年に3期目に突入した。事実上の終身制だ。
とはいえ、歴史に名を残すには、中華民族にとっての偉業達成が不可欠で、それには民族の悲願である台湾との分裂状態を解消し、統一を果たすのが最もインパクトがあると考えても不思議ではない。
高市首相の「存立危機事態」発言以来、中国は過剰反応を示して国際社会から顰蹙を買っているが、本当に台湾進攻するのか。その根本的な疑問に深川 孝行(ジャーナリスト)氏が「「高市発言」への過剰反応で見えた中国の焦り、無謀な台湾軍事侵攻の“本気度”と気になる海上封鎖の能力」と題する論評で答えている。
日本の歴代政権は、あえて具体的事例を明確にしない「曖昧戦略」を貫いたが、高市早苗首相がこのタブーに挑んだことで、中国が「内政干渉だ」と猛烈に噛みついている。いわゆる「高市発言」に対する報復として、自国民の日本渡航・留学自粛要請や、日本水産品の輸入停止通告など、日に日に“制裁”のギアを上げている。
事の発端は11月7日の衆議院予算委員会。立憲民主党の岡田克也元外相が「仮の話」と前置きした上で、台湾有事の時に中国軍がバシー海峡(台湾~フィリピン間)を海上封鎖したら、存立危機事態に当たるか否かと、高市氏に迫った。
高市氏は、「最悪の事態を想定するのは非常に重要。(中国が)戦艦を使って武力行使を伴うものなら、どう考えても存立危機事態になり得るケースと考える」と言及した。
余談だが、「戦艦」は第2次大戦で活躍した、巨大な艦砲を擁した最強の軍艦のことで、「軍艦」「戦闘艦」と同意語でない。かつての日本の「大和」「武蔵」や、アメリカの「アイオワ」級が代表格だが、今や時代遅れの兵器。現在実戦配備する国は皆無で、アメリカはもちろん、中国も装備していない。
存立危機事態は2015年に制定された「平和安全法制」で掲げる「事態対処法」の根幹の1つで、適用要件は厳格だ。
日本と密接な他国に武力行使が行われ、日本の存立も脅かされ、国民の生命・自由・幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があることが大前提だ。さらにこの事態を排除し、日本の存立を全うし、国民を守るための適当な手段が他にないことが絶対条件となる。
これを踏まえれば、台湾有事で日本が「存立危機事態」として考えられる事態は、日本~中東の石油・LNG(液化天然ガス)海運ルートの要衝であるバシー海峡が封鎖された際の“最終手段”というべきだろうか。
中国が台湾封鎖を実行した場合、アメリカは「台湾関係法」(1979年制定の米国内法で、台湾防衛のため武力行使もあり得ることを定める)に従い、軍事介入する可能性は十分想定される。
だが「専守防衛」を掲げる日本も加勢するとなれば話は別だ。米軍介入でただでさえ難しくなる封鎖作戦がさらに面倒になり、成功の見込みが遠のいてしまう。そのため、中国が過剰反応し、けん制しているとの見方もできる。
なぜ中国の習近平国家主席は、台湾統一にここまで執着するのか。専門家や識者の見立てを総合すると、「中華民族復興を達成した偉大な指導者として歴史に名を残したい」という名声欲が大きいらしい。
毛沢東は中華人民共和国建国の父で、鄧小平は1970年代後半~1990年代後半に改革開放政策を推進し、中国を経済大国へと押し上げた偉人だ。
だが1953年生まれの習氏は革命闘争とは無縁で軍務経験もなく、共産党エリートとして政治の舞台でのし上がり、2013年国家主席に就任した。中国では国家主席の任期は「2期10年」との決まりだったが、権力を掌握した習氏は2018年にこれを撤廃し、2023年に3期目に突入した。事実上の終身制だ。
とはいえ、歴史に名を残すには、中華民族にとっての偉業達成が不可欠で、それには民族の悲願である台湾との分裂状態を解消し、統一を果たすのが最もインパクトがあると考えても不思議ではない。
衝撃を与えた米シンクタンクの「台湾侵攻シミュレーション」
2023年1月に米シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)が公表した、台湾侵攻シミュレーションの悲惨な結果が、世界中に衝撃を与えた。
全24のシナリオからなり、そのほぼ全てで中国が台湾占領に失敗するとの判定だったが、驚きは推定された米中両軍の損害の大きさだ。
全シナリオを平均すると、アメリカは空母2隻、水上戦闘艦7~20隻以上、潜水艦(原子力潜水艦)4隻、航空機90~774機、死者・行方不明者約1万人と推計。中国は空母、強襲揚陸艦の大半を含む艦船138隻、航空機155~327機、死傷者(海上・地上含む)1万4500人とはじき出した。
台湾は航空機の半数と主要艦船のほぼ全部を喪失、日本は中国から攻撃を受けて参戦すると仮定し、航空機121~161機、艦船26隻を失うと推測している。
1つのシナリオだけが辛うじて中国軍が台湾制圧に成功すると判定されたが、その設定は「日本は不介入で、在日米軍基地も台湾介入の米軍に使わせない」ことだった。
アメリカ政府・軍に近いCSISがまとめた驚愕の内容に、公表当時、世界の政府関係者に衝撃が走った。もっとも中国側も台湾侵攻シミュレーションを頻繁に実行していたはずで、結果は大同小異だったと推測できる。そのため「日本に介入させない手立てを考えるべき」と中国側が思いを巡らせていてもおかしくない。
CSISの報告書が出る前の2021年3月、米インド太平洋軍司令官は「今後6年以内に中国が台湾に侵攻する可能性がある」と“爆弾発言”した。これが「台湾侵攻2027年説」の発端で、その後この説が独り歩きし、中台対立の危機感を必要以上に煽る事態ともなっている。
2023年1月に米シンクタンク「戦略国際問題研究所」(CSIS)が公表した、台湾侵攻シミュレーションの悲惨な結果が、世界中に衝撃を与えた。
全24のシナリオからなり、そのほぼ全てで中国が台湾占領に失敗するとの判定だったが、驚きは推定された米中両軍の損害の大きさだ。
全シナリオを平均すると、アメリカは空母2隻、水上戦闘艦7~20隻以上、潜水艦(原子力潜水艦)4隻、航空機90~774機、死者・行方不明者約1万人と推計。中国は空母、強襲揚陸艦の大半を含む艦船138隻、航空機155~327機、死傷者(海上・地上含む)1万4500人とはじき出した。
台湾は航空機の半数と主要艦船のほぼ全部を喪失、日本は中国から攻撃を受けて参戦すると仮定し、航空機121~161機、艦船26隻を失うと推測している。
1つのシナリオだけが辛うじて中国軍が台湾制圧に成功すると判定されたが、その設定は「日本は不介入で、在日米軍基地も台湾介入の米軍に使わせない」ことだった。
アメリカ政府・軍に近いCSISがまとめた驚愕の内容に、公表当時、世界の政府関係者に衝撃が走った。もっとも中国側も台湾侵攻シミュレーションを頻繁に実行していたはずで、結果は大同小異だったと推測できる。そのため「日本に介入させない手立てを考えるべき」と中国側が思いを巡らせていてもおかしくない。
CSISの報告書が出る前の2021年3月、米インド太平洋軍司令官は「今後6年以内に中国が台湾に侵攻する可能性がある」と“爆弾発言”した。これが「台湾侵攻2027年説」の発端で、その後この説が独り歩きし、中台対立の危機感を必要以上に煽る事態ともなっている。
ウクライナ戦争のロシア苦戦を見て台湾着上陸作戦は棚上げか?
だが2022年に入ると「台湾武力侵攻説」は急速に勢いを失う。
第1の理由は習氏の「終身制」が盤石になった点だ。当初は2018年に国家主席任期制を撤廃したとしても、政権内部からの批判で「3期目を完了する2027年で引退か」との観測もあった。
これを回避するため、習氏は2027年までに何が何でも台湾に侵攻し、統一を果たして実績を作り、その後権力の最高ポストに君臨し続けるシナリオを描いているのでは? との説が有力だった。
だが権力基盤を固めた習氏にとって「2027年」に偉業を果たす意味合いはあまりなくなったと言える。台湾への着上陸作戦を強行し、大損害で敗退となれば失脚は必至だ。あえてそんなリスクを負う必要もなく、中長期戦で構えた方が得策と考えるのが普通だろう。
第2は2022年2月に勃発した、ロシアによるウクライナへの全面侵攻だ。プーチン大統領は開戦当初「数週間で全土を制圧できる」と豪語したが、100万人以上の死傷者と数千台の戦車喪失を出しながらの長期戦となり、開戦から間もなく4年がたとうとしても、いまだに勝利が得られない。
戦費の重圧と経済制裁でロシアの国内経済は低迷し、世界屈指の軍事力を誇ったロシア軍は、今や満身創痍の状態。陸続きで大平原が広がるウクライナの戦場でも、これほどの艱難辛苦(かんなんしんく)を味わっているのが実情だ。
これを考えれば、中国軍侵攻部隊が幅150km前後の台湾海峡を超え、軍事作戦で最も難しい着上陸作戦を果たすのは容易ではない。九州ほどの大きさに2000万人超が暮らし、南北に3000m級の山々が連なる台湾を完全制圧するには、ウクライナ戦争とは比較にならないほどの損失と時間がかかる可能性がある。
このため中国は「三戦」(心理戦、世論戦、法律戦)を強化し、選挙介入やサイバー戦なども交えながら徐々に台湾を「親中」へと変貌させる戦法を取った方が得策と言える。銃弾を1発も撃たずに敵を屈服させる孫氏の兵法「不戦屈敵」の具現化でもある。
また並行して、台湾島をぐるりと海上封鎖し、兵糧攻めで締め上げ、台湾政府や台湾軍、市民を降参させる戦術を取る可能性も考えられる。
今年11月18日、米議会の超党派諮問委員会「米中経済・安全保障調査委員会」(USCC)が2025年版の中国の軍事力・経済に関する年次報告書を公表した。
同報告書は「台湾有事が遠い将来だと考えることはできない」と指摘し、中国は軍事演習を装いながら、台湾への侵攻や海上封鎖に即座に移行できる能力を持つと警告。米国防総省に対し、台湾有事への米軍の対応力の検証をすぐに行うよう提案している。
注目は台湾侵攻の可能性がある時期として「2027年」「2035年」「2049年」を列挙した点だ。
2027年は人民解放軍創設100周年に当たるが、作戦の準備完了時期で可能性は低いと分析。2035年は台湾海峡を渡る高速鉄道構想の完成予定年、2049年は中華人民共和国100周年と節目の年が訪れるため、注意を要すると強調している。
だが2022年に入ると「台湾武力侵攻説」は急速に勢いを失う。
第1の理由は習氏の「終身制」が盤石になった点だ。当初は2018年に国家主席任期制を撤廃したとしても、政権内部からの批判で「3期目を完了する2027年で引退か」との観測もあった。
これを回避するため、習氏は2027年までに何が何でも台湾に侵攻し、統一を果たして実績を作り、その後権力の最高ポストに君臨し続けるシナリオを描いているのでは? との説が有力だった。
だが権力基盤を固めた習氏にとって「2027年」に偉業を果たす意味合いはあまりなくなったと言える。台湾への着上陸作戦を強行し、大損害で敗退となれば失脚は必至だ。あえてそんなリスクを負う必要もなく、中長期戦で構えた方が得策と考えるのが普通だろう。
第2は2022年2月に勃発した、ロシアによるウクライナへの全面侵攻だ。プーチン大統領は開戦当初「数週間で全土を制圧できる」と豪語したが、100万人以上の死傷者と数千台の戦車喪失を出しながらの長期戦となり、開戦から間もなく4年がたとうとしても、いまだに勝利が得られない。
戦費の重圧と経済制裁でロシアの国内経済は低迷し、世界屈指の軍事力を誇ったロシア軍は、今や満身創痍の状態。陸続きで大平原が広がるウクライナの戦場でも、これほどの艱難辛苦(かんなんしんく)を味わっているのが実情だ。
これを考えれば、中国軍侵攻部隊が幅150km前後の台湾海峡を超え、軍事作戦で最も難しい着上陸作戦を果たすのは容易ではない。九州ほどの大きさに2000万人超が暮らし、南北に3000m級の山々が連なる台湾を完全制圧するには、ウクライナ戦争とは比較にならないほどの損失と時間がかかる可能性がある。
このため中国は「三戦」(心理戦、世論戦、法律戦)を強化し、選挙介入やサイバー戦なども交えながら徐々に台湾を「親中」へと変貌させる戦法を取った方が得策と言える。銃弾を1発も撃たずに敵を屈服させる孫氏の兵法「不戦屈敵」の具現化でもある。
また並行して、台湾島をぐるりと海上封鎖し、兵糧攻めで締め上げ、台湾政府や台湾軍、市民を降参させる戦術を取る可能性も考えられる。
今年11月18日、米議会の超党派諮問委員会「米中経済・安全保障調査委員会」(USCC)が2025年版の中国の軍事力・経済に関する年次報告書を公表した。
同報告書は「台湾有事が遠い将来だと考えることはできない」と指摘し、中国は軍事演習を装いながら、台湾への侵攻や海上封鎖に即座に移行できる能力を持つと警告。米国防総省に対し、台湾有事への米軍の対応力の検証をすぐに行うよう提案している。
注目は台湾侵攻の可能性がある時期として「2027年」「2035年」「2049年」を列挙した点だ。
2027年は人民解放軍創設100周年に当たるが、作戦の準備完了時期で可能性は低いと分析。2035年は台湾海峡を渡る高速鉄道構想の完成予定年、2049年は中華人民共和国100周年と節目の年が訪れるため、注意を要すると強調している。
海上封鎖に欠かせない「潜水艦」の戦力は米国側が数段上
果たして、実際問題として中国は台湾を海上封鎖できるのだろうか。
高市氏は“戦艦”の出現を心配するが、肉眼で分かる水上戦闘艦よりも、水面下で隠密行動を取る潜水艦の方が、海上封鎖のカギを握ると見るべきだ。水面下の戦いは誰にも分からないため、もしかしたら、台湾海上封鎖の前哨戦はすでに始まっているかもしれない。
英シンクタンク・国際戦略研究所(IISS)発行の『ミリタリーバランス(2025年版)』によれば、アメリカの潜水艦数は65隻で全て原潜だ。
そのうち核弾道ミサイル(射程1万km以上)搭載の「弾道ミサイル原潜(SSBN)」14隻を除く51隻が「攻撃型原潜(SSN)」と呼ばれ、制海権確保のためのパトロールや、敵艦船の探索・攻撃が主な役目だ。
対する中国潜水艦数は59隻で、うち原潜は12隻、通常型(ディーゼル・エンジン型)潜水艦が47隻ある。
原潜のうちSSBNは6隻、SSNは6隻、通常型は実験艦1隻を除き46隻全部が攻撃型で、台湾封鎖の対象となる隻数はSSN6隻と通常型46隻の計52隻あると見られる。ただしSSNは全艦が“虎の子”のSSBNの護衛に回ると見られ、実際は通常型潜水艦46隻が対象と考えられる。
このうち海上封鎖に投入できるのは最大でも3分の2程度、30隻が限界だと考えられる。 黄海や上海周辺、香港をはじめ珠江デルタなど重要港湾地域や、SSBNが隠れる南シナ海での警戒に回される。
しかも通常型のうち、外洋で長期間活動可能な大型艦は、ロシア製「キロ」級(水中排水量4000トン弱)の10隻だけで、残りは同2000トン級の中型クラスだ。この戦力をローテーションさせて、周囲700km超の台湾島の海上封鎖を中長期間維持するのはかなり大変だろう。
対抗するアメリカは原潜49隻のうち、控えめに2分の1を投入可能と仮定すると25隻が限度と言える。いずれも同7000トン級の巨艦ばかりで、原子力推進のため水中速力も速く、乗員の食料が続くまで何カ月でも潜航が可能だ。
有事となればこの米潜水艦隊に、日本の海上自衛隊の通常型25隻の半分に当たる12隻がひそかに加わることも想定される。海自の潜水艦は全艦が同3500トン以上の大型艦だ。
潜水艦は参戦しているか否かの判断も困難なため、万が一中国側が海自の潜水艦を探知しても、「日本の潜水艦がわが軍の封鎖作戦を妨害している」とは公言できないだろう。潜水艦作戦は全てが「秘中の秘」で、敵発見の事実を明かした瞬間に、自身の潜水艦の技能も推定されてしまう。
現在、台湾も国産の通常型潜水艦(同2500トン)を建造中で、2027年までに2隻が実戦配備予定となっている。
このほか、豪州やカナダ、イギリスが各1~2隻米側に加勢した場合、これらを総合すると、米側は40隻以上の潜水艦戦力となり、中国の30隻を徹底的に追跡し、妨害することができる。
果たして、実際問題として中国は台湾を海上封鎖できるのだろうか。
高市氏は“戦艦”の出現を心配するが、肉眼で分かる水上戦闘艦よりも、水面下で隠密行動を取る潜水艦の方が、海上封鎖のカギを握ると見るべきだ。水面下の戦いは誰にも分からないため、もしかしたら、台湾海上封鎖の前哨戦はすでに始まっているかもしれない。
英シンクタンク・国際戦略研究所(IISS)発行の『ミリタリーバランス(2025年版)』によれば、アメリカの潜水艦数は65隻で全て原潜だ。
そのうち核弾道ミサイル(射程1万km以上)搭載の「弾道ミサイル原潜(SSBN)」14隻を除く51隻が「攻撃型原潜(SSN)」と呼ばれ、制海権確保のためのパトロールや、敵艦船の探索・攻撃が主な役目だ。
対する中国潜水艦数は59隻で、うち原潜は12隻、通常型(ディーゼル・エンジン型)潜水艦が47隻ある。
原潜のうちSSBNは6隻、SSNは6隻、通常型は実験艦1隻を除き46隻全部が攻撃型で、台湾封鎖の対象となる隻数はSSN6隻と通常型46隻の計52隻あると見られる。ただしSSNは全艦が“虎の子”のSSBNの護衛に回ると見られ、実際は通常型潜水艦46隻が対象と考えられる。
このうち海上封鎖に投入できるのは最大でも3分の2程度、30隻が限界だと考えられる。 黄海や上海周辺、香港をはじめ珠江デルタなど重要港湾地域や、SSBNが隠れる南シナ海での警戒に回される。
しかも通常型のうち、外洋で長期間活動可能な大型艦は、ロシア製「キロ」級(水中排水量4000トン弱)の10隻だけで、残りは同2000トン級の中型クラスだ。この戦力をローテーションさせて、周囲700km超の台湾島の海上封鎖を中長期間維持するのはかなり大変だろう。
対抗するアメリカは原潜49隻のうち、控えめに2分の1を投入可能と仮定すると25隻が限度と言える。いずれも同7000トン級の巨艦ばかりで、原子力推進のため水中速力も速く、乗員の食料が続くまで何カ月でも潜航が可能だ。
有事となればこの米潜水艦隊に、日本の海上自衛隊の通常型25隻の半分に当たる12隻がひそかに加わることも想定される。海自の潜水艦は全艦が同3500トン以上の大型艦だ。
潜水艦は参戦しているか否かの判断も困難なため、万が一中国側が海自の潜水艦を探知しても、「日本の潜水艦がわが軍の封鎖作戦を妨害している」とは公言できないだろう。潜水艦作戦は全てが「秘中の秘」で、敵発見の事実を明かした瞬間に、自身の潜水艦の技能も推定されてしまう。
現在、台湾も国産の通常型潜水艦(同2500トン)を建造中で、2027年までに2隻が実戦配備予定となっている。
このほか、豪州やカナダ、イギリスが各1~2隻米側に加勢した場合、これらを総合すると、米側は40隻以上の潜水艦戦力となり、中国の30隻を徹底的に追跡し、妨害することができる。
水上艦艇や水上民兵が出撃すれば「米中全面衝突」の危険性も
さらに、潜水艦の動きを探る哨戒機の機数と技術力も米側が圧倒的に上で、P-8を主軸に約120機を保有する。
台湾はP-3Cを12機、日本もP-3C、国産のP-1の計約70機(アメリカに次ぎ世界2位)を保有するため、仮にそれぞれ半数を投入したとしても100機を超える相当な戦力となる。
ただし日本の哨戒機はあくまでも「通常のパトロール活動」との名目で、台湾東海岸の領海ぎりぎりの海域を飛行し、中国潜水艦の動きを探知したら米側と情報共有するにとどめるかもしれない。
対する中国は国産のY-9を25~50機配備すると見られるが、日米に比べて性能的にも対潜作戦の技量も数段劣ると見られる。また、Y-9の半数はやはり本土の沿岸や南シナ海のパトロールに回され、残る機数も台湾の西海岸、つまり台湾海峡周辺での活動に制限されるだろう。
台湾の東海岸(太平洋側)は、米海軍の空母艦隊(空母打撃群)が複数展開し、艦上戦闘機や早期警戒機で半径1000km規模の空域を警戒する。開戦となれば中国機は真っ先に妨害・撃墜される危険性が高い。
中国は多数の水上艦艇や海上民兵と呼ばれる、漁船などに武装を施した無数の中小船舶を出陣させ、海峡などに集結して民間貨物船の航路を妨害することも考えられる。だが1、2カ月の短期間ならともかく、半年から1年以上の任務となった場合は、ローテーションや人員の疲労、補給の面で苦戦を強いられることは間違いない。
また、水上艦艇や水上民兵が出撃した場合、米艦艇と衝突して米中の全面衝突へと発展する危険性も少なくないため、さすがの中国も躊躇するのではないだろうか。
さらに、潜水艦の動きを探る哨戒機の機数と技術力も米側が圧倒的に上で、P-8を主軸に約120機を保有する。
台湾はP-3Cを12機、日本もP-3C、国産のP-1の計約70機(アメリカに次ぎ世界2位)を保有するため、仮にそれぞれ半数を投入したとしても100機を超える相当な戦力となる。
ただし日本の哨戒機はあくまでも「通常のパトロール活動」との名目で、台湾東海岸の領海ぎりぎりの海域を飛行し、中国潜水艦の動きを探知したら米側と情報共有するにとどめるかもしれない。
対する中国は国産のY-9を25~50機配備すると見られるが、日米に比べて性能的にも対潜作戦の技量も数段劣ると見られる。また、Y-9の半数はやはり本土の沿岸や南シナ海のパトロールに回され、残る機数も台湾の西海岸、つまり台湾海峡周辺での活動に制限されるだろう。
台湾の東海岸(太平洋側)は、米海軍の空母艦隊(空母打撃群)が複数展開し、艦上戦闘機や早期警戒機で半径1000km規模の空域を警戒する。開戦となれば中国機は真っ先に妨害・撃墜される危険性が高い。
中国は多数の水上艦艇や海上民兵と呼ばれる、漁船などに武装を施した無数の中小船舶を出陣させ、海峡などに集結して民間貨物船の航路を妨害することも考えられる。だが1、2カ月の短期間ならともかく、半年から1年以上の任務となった場合は、ローテーションや人員の疲労、補給の面で苦戦を強いられることは間違いない。
また、水上艦艇や水上民兵が出撃した場合、米艦艇と衝突して米中の全面衝突へと発展する危険性も少なくないため、さすがの中国も躊躇するのではないだろうか。
同盟国との絆よりも大国間との「ディール」を優先するトランプ氏
制裁を強める中国に対し、あくまでも冷静な対応に終始する高市政権。「保守」を鮮明にするだけに、中国にとっては逆風で焦りの感も否めない。
だが、日本の後ろ盾になるはずの同盟国・米トランプ政権の信用度も心もとない。現に11月10日、米FOXニュースのインタビューで、日本に対する中国の一連の強硬発言に対して問われたトランプ氏は、「同盟国の多くも友人ではなく、貿易で中国以上に私たちを利用してきた」とコメント。対日貿易赤字への不満をさらけ出した。
トランプ氏は10月30日、米中首脳会談に臨み、対中追加関税の引き下げと引き換えに、中国によるレアアース対米輸出規制の1年延期を“ディール(取引)”したと喧伝。
一方で懸案の台湾問題は一切議題に上らなかった様子で、「台湾を取引カードに使ったのではないか」との観測も飛び出した。もしかしたらトランプ氏と習氏との間で、「中国が台湾に対して軍事的圧力を加えても、アメリカは黙認する」という密約が結ばれたのではないか、との懸念だ。
11月2日の米CBSテレビのインタビューでは、米中首脳会談に関連し、台湾防衛のために米軍が介入するかと問われたトランプ氏は、「その時が来れば分かる。彼(習氏)は答えが分かっている」と曖昧なコメントにとどめた。
グラス駐日大使は11月21日、日本に対する中国の一連の“恫喝”に対し「中国の隣国の多くは、中国の友好的な顔よりも、いじめを行う顔をより多く見てきました。このような必要のない脅しは信頼を損ない、地域の安定を崩します」とコメントし、日本への支持を明らかにした。
だが、同盟国との絆よりも、大国間との「ディール」や金銭的な損得勘定、さらにはノーベル平和賞受賞を重視しているように感じられるトランプ氏が、極東情勢をどれだけ深刻に考えているかは不透明だ。
台湾とは一衣帯水の関係で、万が一中国が台湾に武力侵攻を考えた場合、在日米軍を奇襲し、日本もいや応なく有事に巻き込まれると考えるのが、軍事の常識だ。果たして中国は台湾への無謀な軍事侵攻にどこまで本気なのだろうか>(以上「JB press」より引用)
制裁を強める中国に対し、あくまでも冷静な対応に終始する高市政権。「保守」を鮮明にするだけに、中国にとっては逆風で焦りの感も否めない。
だが、日本の後ろ盾になるはずの同盟国・米トランプ政権の信用度も心もとない。現に11月10日、米FOXニュースのインタビューで、日本に対する中国の一連の強硬発言に対して問われたトランプ氏は、「同盟国の多くも友人ではなく、貿易で中国以上に私たちを利用してきた」とコメント。対日貿易赤字への不満をさらけ出した。
トランプ氏は10月30日、米中首脳会談に臨み、対中追加関税の引き下げと引き換えに、中国によるレアアース対米輸出規制の1年延期を“ディール(取引)”したと喧伝。
一方で懸案の台湾問題は一切議題に上らなかった様子で、「台湾を取引カードに使ったのではないか」との観測も飛び出した。もしかしたらトランプ氏と習氏との間で、「中国が台湾に対して軍事的圧力を加えても、アメリカは黙認する」という密約が結ばれたのではないか、との懸念だ。
11月2日の米CBSテレビのインタビューでは、米中首脳会談に関連し、台湾防衛のために米軍が介入するかと問われたトランプ氏は、「その時が来れば分かる。彼(習氏)は答えが分かっている」と曖昧なコメントにとどめた。
グラス駐日大使は11月21日、日本に対する中国の一連の“恫喝”に対し「中国の隣国の多くは、中国の友好的な顔よりも、いじめを行う顔をより多く見てきました。このような必要のない脅しは信頼を損ない、地域の安定を崩します」とコメントし、日本への支持を明らかにした。
だが、同盟国との絆よりも、大国間との「ディール」や金銭的な損得勘定、さらにはノーベル平和賞受賞を重視しているように感じられるトランプ氏が、極東情勢をどれだけ深刻に考えているかは不透明だ。
台湾とは一衣帯水の関係で、万が一中国が台湾に武力侵攻を考えた場合、在日米軍を奇襲し、日本もいや応なく有事に巻き込まれると考えるのが、軍事の常識だ。果たして中国は台湾への無謀な軍事侵攻にどこまで本気なのだろうか>(以上「JB press」より引用)
高市首相の「存立危機事態」発言以来、中国は過剰反応を示して国際社会から顰蹙を買っているが、本当に台湾進攻するのか。その根本的な疑問に深川 孝行(ジャーナリスト)氏が「「高市発言」への過剰反応で見えた中国の焦り、無謀な台湾軍事侵攻の“本気度”と気になる海上封鎖の能力」と題する論評で答えている。
ぜひ一読して戴きたいが、結果として「終身主席が約束されている習近平氏が危険を犯してまで台湾進攻する可能性は低い」と結論付けている。まったく同感だが、さらに付け加えるなら中国は経済崩壊から台湾進攻どころの騒ぎではない、という喫緊の課題が習近平氏を悩ませている。
ただ米国大統領トランプ氏の対中政策が曖昧だ。駐留米軍が本当に「用心棒」として役に立つのか、との疑問が常に付きまとう。日米安保条約も米軍基地が攻撃受けた場合を除き、日本の有事に際して米軍が参戦するか否かは米国連邦議会の同意を要することになっている。それでは緊急事態に対処できないのは明白だ。つまり在日米軍は「役立たずの用心棒」ということになる。
しかし殆どの自衛隊基地は在日米軍基地と同じ敷地に存在しているため、日本を攻撃する「敵国」のミサイルが自衛隊基地のみを叩くことは不可能だ。不可抗力にせよ、自衛隊基地を攻撃すれば米軍の施設も被弾する。そうすれば米軍は自動的に「敵国」に対して反撃することになる。
だが、こうしたシミュレーションは既存兵器を前提とした話だ。日本は現在保有している兵器だけで未来も防衛していくつもりはない。実用段階に達しているレールガンの射程を現在の200kmから倍の400kmに伸ばす研究開発を続行している。いかに超速滑空ミサイルを開発しようと、レールガンの前には無力だ。
そしてドローン攻撃に対してもレーザー砲開発が実用段階に達している。ドローンの飽和攻撃に対しても、レーザー砲なら防衛可能だ。従って重要施設に配備して、海上からの近距離攻撃に対応することができる。さらに、衛星からの攻撃に対しては電磁粒子砲を開発中だ。すでに国内メーカーで試験段階に達しているという。そうした新型防衛兵器を日本は開発して、非対称型の防衛戦術を構築しつつある。
近い将来、日本が開発した各種防衛兵器を台湾に供与することになれば、中国の台湾進攻はますます困難になるだろう。もちろん令和7年から熊本に配備する「一二式地対艦誘導弾能力向上型」は射程1400kmのため、地対地に改良すれば北京をも攻撃範囲に含めて、日本への攻撃抑止力となるだろう。その「一二式地対艦誘導弾能力向上型」を南西諸島にも配備すれば台湾有事にも強力な抑止力として効果を発揮するだろう。
現在LHC(大型ハドロン衝突型加速器)は周長約27Kmの世界最大かつ最もパワフルな加速器で、陽子を光速の99.999999%まで加速し衝突させることが可能だ。日本の企業が開発している電磁粒子砲の原理はまさに粒子加速器そのもので、粒子を殆ど光速で発射するため、人工衛星であろうとも止まっているハエを叩き落すのと同じだ。もちろん中国も粒子加速器の開発を進めようと周長100kmの粒子加速器の建設を計画していたが、財政難で頓挫したようだ。中国は電磁粒子砲の基礎研究のデータ蓄積段階にすらないようだ。
中国が軍拡と称して大量に保有した兵器は前近代的な戦争の兵器でしかない。それらはウクライナ戦争で新しい非対称戦争においては、それほど効果的な兵器でないことは証明されている。ただ最終的に侵略地を「占領」するには歩兵が占領地を武装解除して、すべてを支配する必要がある。
しかし、それは最終段階のことだ。それに到る前の戦争ではドローンや誘導ミサイルが効果的な兵器であることが証明されている。ただ台湾は中国大陸から130kmもの台湾海峡を隔てているため、やはり中国軍は古典的な上陸用艦を多数用意して、渡海作戦を強行しなければならない。それこそが中国軍にとって最大の問題点だ。いわば、台湾は台湾海峡という天然の巨大な「堀」に守られていることになる。それこそが、中国が台湾進攻を躊躇する最大の関門だ。習近平氏が台湾支配を望もうとも、簡単に事は運ばない。台湾有事は現実的でないし、中国の内政でもない。