関税による国家間の摩擦はWTOによって解決されたはずではなかったか。
<日本やアメリカなど主要5か国がドル高の是正で一致した「プラザ合意」から40年がたちました。日本企業は直後から急激な円高に見舞われ対応を余儀なくされましたが、その後は生産拠点の海外移転が進み、当時は3%程度だった海外での生産比率は直近では30%近くにのぼっています。
1985年9月22日の「プラザ合意」では、日本やアメリカなど当時のG5=主要5か国が、ニューヨークのプラザホテルで行われた会合でドル高の是正で一致し、外国為替市場への協調介入を実施しました。
これによってドル高は是正されましたが、想定を超える急激な円高をもたらし、合意前に1ドル=240円だった円相場は、わずか1年で150円台まで円高が進みました。
為替変動の影響を受けにくくしようと、日本企業の間で進んだのが生産拠点の「海外移転」です。
経済産業省の調査によりますと、国内の製造業の売り上げのうち海外法人での売り上げが占める割合を示す「海外生産比率」はプラザ合意当時の1985年度はおよそ3%でしたが1996年度には10%を超えました。さらに円相場が史上最高値をつけた次の年の2012年度には20%を超え最新の統計である2023年度は27.2%まで上昇しています。
福井県の繊維メーカー、セーレンも生産拠点の海外移転を進めた企業の一つです。1ドルが戦後初めて100円を突破した1994年にタイに進出して海外展開を本格化させ、今では海外9か国に拠点をもち、売り上げに占める海外の比率は75%にのぼっています。
市場の変化に対応するため海外移転とともに「多角化」も進め、繊維事業の技術を生かしながら、今では健康医療関連の資材や半導体のシリコンウエハー加工、小型の人工衛星などに事業を拡大しています。
セーレンの川田達男CEOは「為替の影響を受けにくくするために海外で現地生産、販売を思い切って進めてきたし、これからも進めていきたい。世の中のニーズにしっかり対応できる、お客様に評価される商品を提供できれば、為替とか環境が変わっても、そんなに影響を受けることはない」と話しています>(以上「NHK」より引用)
「プラザ合意から40年 日本企業の海外生産比率 直近で30%近くに」との見出しに危機感を覚えるのは私だけだろうか。それほど日本企業にグローバル化が浸透している割に、外国企業の日本国内移転が少ないのが危機感の源泉だ。
1985年9月22日の「プラザ合意」では、日本やアメリカなど当時のG5=主要5か国が、ニューヨークのプラザホテルで行われた会合でドル高の是正で一致し、外国為替市場への協調介入を実施しました。
これによってドル高は是正されましたが、想定を超える急激な円高をもたらし、合意前に1ドル=240円だった円相場は、わずか1年で150円台まで円高が進みました。
為替変動の影響を受けにくくしようと、日本企業の間で進んだのが生産拠点の「海外移転」です。
経済産業省の調査によりますと、国内の製造業の売り上げのうち海外法人での売り上げが占める割合を示す「海外生産比率」はプラザ合意当時の1985年度はおよそ3%でしたが1996年度には10%を超えました。さらに円相場が史上最高値をつけた次の年の2012年度には20%を超え最新の統計である2023年度は27.2%まで上昇しています。
福井県の繊維メーカー、セーレンも生産拠点の海外移転を進めた企業の一つです。1ドルが戦後初めて100円を突破した1994年にタイに進出して海外展開を本格化させ、今では海外9か国に拠点をもち、売り上げに占める海外の比率は75%にのぼっています。
市場の変化に対応するため海外移転とともに「多角化」も進め、繊維事業の技術を生かしながら、今では健康医療関連の資材や半導体のシリコンウエハー加工、小型の人工衛星などに事業を拡大しています。
セーレンの川田達男CEOは「為替の影響を受けにくくするために海外で現地生産、販売を思い切って進めてきたし、これからも進めていきたい。世の中のニーズにしっかり対応できる、お客様に評価される商品を提供できれば、為替とか環境が変わっても、そんなに影響を受けることはない」と話しています>(以上「NHK」より引用)
「プラザ合意から40年 日本企業の海外生産比率 直近で30%近くに」との見出しに危機感を覚えるのは私だけだろうか。それほど日本企業にグローバル化が浸透している割に、外国企業の日本国内移転が少ないのが危機感の源泉だ。
それは米国のミニチュアサイズを見ているようだからだ。かつて経済学者は経済の進化と共にその国の産業は高次産業へと移行すると教えていた。つまり一次農業国はやがて第二次産業の製造業が盛んになり、やがて第三次の金融やサービスや観光業が産業の主力になっていく、という「通説」だ。米国はそのモデルようになったが、相対的に衰退した製造業の復活をトランプ氏が叫んでいるのは何とも皮肉だ。
引用した記事も、日本は国内製造を海外移転して三次産業が主体になる、とでも言いたそうな論理展開をしている。しかし国内の製造業が外国へ移転するのは「国内産業の空洞化」を招くことでしかない。現在1,000万人以上を雇用している製造業は依然として産業の主役であり続けるし、あり続けなければならない。
現在は円安で国内産業は為替で有利な立場にあるはずだが、トランプ関税により円安の為替利益をすべて吐き出さされている格好になっている。しかしトランプ関税による円安プレゼンスを奪われたとしても、本来の通貨別購買力比較をすれば日本円の対ドル為替は100~120円辺りが妥当な線だ。現在の円安は投機家たちが「円を売ってドルを買う」日米金利差による投資取引が為替市場に大きく影響している。
現在、トランプ関税の嵐が吹き荒れているが、決して正常な状態とはいえない。それは一時的な国際取引の混乱であって、必ず消息へと向かう。いかに長引いたとしてもトランプ氏の任期が終わる三年余りの嵐でしかない。早ければ来年11月の中間選挙までに収まるだろう。だからトランプ関税を気にし過ぎる必要はない。
日本全体で見れば貿易取引がGDPに占める割合は14%ほどでしかなく、対米取引は貿易全体の16%ほどだ。つまり日本のGDPに対する影響度は2.24%の取引に影響する関税でしかない。それなら政府が対米輸出企業に対してトランプ関税に相当する別名目での補助金を出してやれば、トランプ関税協議の合意を全面破棄しても構わないではないか。未来に仮眠を残すような80兆円ものバカバカしい対米投資など決してすべきではない。日本は米国の属国ではないし、むしろ米国によって経済成長の頭を押さえつけられてきた歴史しかない。いい加減、米国のバカげた政策に対しては「トランプ関税は馬鹿げている」と正直に指摘して拒否すべきだ。
外国へ企業移転することは必ずしも利点ばかりではない。中国や韓国へ企業移転された企業がどのような仕打ちを受けているか、見れば明らかではないか。世界各国が日本と同様な整備された社会インフラを有し、高度に教育された労働者が存在し、信義を重んじる政府が法令順守するとは限らない。知的財産を奪い、経営手法を盗み、挙句の果てに日本人経営者を進出企業から叩き出すことなど朝飯前の国だってある。
なぜ外国へ進出するのか。単に貿易取引で有利だからと云うのなら、政府が輸出産業に関しては便宜を図る政策を打ち出せば良いだけではないか。そうすれば国内雇用は守られ、国内産業の知的財産も守られる。これから後進国の産業の近代化とともに、国際競争は益々熾烈になるだろう。そうした時にこそ、日本企業の製造技術の剽窃防止体制を国家として政府は準備すべきだ。もちろんスパイ防止法の範疇に産業スパイも明記しておくべきだ。
30%近くにまでなっている産業の海外生産比率は減少させていくべきだ。海外生産で企業が利益を上げても、国内労働者に還元されることは殆どない。それは進出国が利益の本国移転を阻む法整備をしているからだ。彼らは彼らで自分の国で儲けた利益を国外へ持ち出されてはならない、との国家経営の面から強く考えている。
そうした企業を介した国家間の軋轢や摩擦を減らすためにも、企業の外国移転は慎重であるべきだ。また政府もバカな機関を創設して、企業の海外進出を手助けする真似は一日も早くやめるべきだ。そうした機関に国家予算を割くくらいなら、不当な関税政策によって不利益を被っている企業に対して損失補填に相当する補助金を支給すべきだ。それは国内企業を守り雇用を守るために政府として取るべき当然の役目ではないだろうか。