再エネ発電装置は自然環境に優しいのか?
<全国的に、洋上・陸上風力計画からの事業者撤退や、メガソーラーやバイオマス発電事業の停止など、今年に入って再エネをめぐる「逆風」が目に見えて強まっている。ここ数年の国際情勢や円安なども影響して資材や人件費の高騰によって生産コストが嵩み、事業として成り立たなくなっていることが主な要因だ。
地方に暮らす国民の多くは「再エネ発電」が「イカガワシイ発電装置」だと気づいている。決して環境に優しくないしエコでもないと、肌感覚で知っている。しかしオールドメディアの一つとして、再エネのイカガワシサに関して報道しない。政府方針を批判する記事を書くのが憚れることなのか、とオールドメディアの報道姿勢を訝っている。
日本国内ではこれまで、政府の再エネ推進政策を旗印に、再エネ事業者や大手商社らが「親方日の丸」で強引に再エネ開発を進めてきた。住民世論などお構いなしに自然環境を破壊し、住民生活さえも脅かしかねない問題が各地で話題になってきた。そうしたなかで「エコ」や「地球に優しい」という謳い文句の裏側に隠された再エネ巨大事業の不都合な真実が各地で問題になり、反対の世論が広がってきた。再エネの停滞は、世界的な流れにもなっているなかで、日本各地での計画も今後大きく後退するすう勢となっている。
釧路湿原でのメガソーラー事業に波紋
現在、国内では北海道釧路市の釧路湿原南部へのメガソーラー建設計画が大きな話題となっており、中止を求める署名が、現在16万筆をこえている。釧路湿原は日本最大の湿原であり、貴重な動植物が数多く生息している。1980年の日本初のラムサール条約登録や、1987年の国立公園指定などによって生態系保護の努力が続けられてきた。
この釧路湿原へのメガソーラー建設計画が浮上したのは昨年11月。事業者である日本エコロジー(本社・大阪)がおこなった住民説明会で、計画について出力2万1000㌔㍗強、パネル3万6579枚を敷き詰めるとの内容を説明した。同社は2月にも住民説明会をおこなっている。
説明の過程で、日本エコロジーは「希少生物のタンチョウ、オジロワシ、キタサンショウウオの巣はない」と説明していたが、事業地内にオジロワシの巣が複数あることが判明。虚偽報告をくり返す事業者の無責任な姿勢と、自然環境を大きく壊す計画に対して住民の怒りが高まり、反対を求める世論が拡大してきた。こうした問題が全国的にも広く知られ、問題視する声が拡大して署名活動が展開されてきた。
この事業をめぐって北海道は2日、開発面積が本来知事の許可が必要な0・8㌶以上あるにもかかわらず、知事の許可を得ないまま開発が進められていたとして、日本エコロジーに対し工事中止を求める勧告をおこなった。日本エコロジーは今後、開発した土地を元に戻すか、知事に開発許可を申請するかの対応が求められる。
だが、日本エコロジーの松井政憲社長は9日、記者団の取材で北海道からの工事中止勧告を受けたことを問われ「かなり投資しており、立ち止まることはできない。市と協議して進めたい」と述べており、工事を中止しない意向を表明している。
太陽光発電のみならず、再エネ開発をめぐっては「自然に優しい」といいながら、事業者の都合を最優先し、問答無用で自然環境を大規模に破壊する事例が頻発している。なかでもメガソーラー開発では広大な土地を切り開いたあげく、違法な盛り土工事がおこなわれる事例が後を絶たない。近年急増している豪雨災害では、保水力のない造成地での土砂の流出や、ソーラーパネルそのものが河川に流されるなどの被害も拡大している。
リサイクル義務化断念 使用済み太陽光パネル
開発に関わる工事による自然環境破壊も深刻だが、今後さらに大きな問題を抱えているのが、使用済み太陽光パネルの処理だ。
FIT制度初期の買取期間が終わる2030年代前半には、使用済み太陽光パネルの廃棄が急増することが見込まれている。環境省は2030年代後半以降、廃棄量が年間50万~80万㌧になると試算している。また、ある試算では、太陽光パネル1枚をリサイクルする費用は3000~4000円とされ、設置状況によっては1枚あたり1万円前後から数万円とされる。低く見積もっても、パネル200枚をリサイクルすると約600万円かかる。埋め立てによる処分は約400万円だ。ただ、リサイクルできるのはガラスやアルミなどで、その他の多くの資材はゴミになる。
全国各地の太陽光発電立地自治体では、あと数年すれば使用済みパネルの廃棄問題が押し寄せてくる。買取期間が終わった事業者には責任を持って使用済みパネルを撤去させなければならず、国土を守り、自然環境を維持するために政府による法整備は必須だ。
しかし、浅尾環境相は8月29日、政府がこれまで検討を進めてきた「太陽光パネルのリサイクル義務化法案」を断念したと表明した。この法案は、太陽光パネルのリサイクルを義務化し、太陽光パネル製造業者(海外製造分は輸入業者)が、新設分のみならず既設分も製造量に応じた費用を負担するというものだった。しかし、内閣法制局からは、他のリサイクル関連法(自動車や家電等のリサイクルは所有者負担)との齟齬(そご)が生じるとの意見が出たという。
政府は代替案として、リサイクルについての報告義務化や努力義務化を検討しているが、環境団体は共同声明で「リサイクル義務化と比べてどこまで実効性が担保されるかは不明」と指摘している。
太陽光パネルの撤去費用の積み立ては義務化されているとはいえ、今回リサイクル義務化が断念されたことで、今後大量に出てくる使用済み太陽光パネルは埋め立て処分される可能性が高い。だが、そのために新たな処分場を各自治体が用意できるのかという問題がある。
また、すでに使用済み太陽光パネルを放置して逃げる事業者が増えて各地で大問題になっている。放置されたパネルからは鉛やヒ素、セレン、カドミウムなどの有毒物質が流れ出て、下流のコメの作付けができなくなった地域すらある。
このように、太陽光パネルの大量廃棄は、50年後、100年後の子孫にもたらすツケが大きく、「持続可能」「地球に優しい」との謳い文句はもはや看板倒れというほかなく、再エネビジネスを進める大企業の、「後は野となれ山となれ」の姿勢が露呈している。
釧路湿原でのメガソーラー事業に波紋
現在、国内では北海道釧路市の釧路湿原南部へのメガソーラー建設計画が大きな話題となっており、中止を求める署名が、現在16万筆をこえている。釧路湿原は日本最大の湿原であり、貴重な動植物が数多く生息している。1980年の日本初のラムサール条約登録や、1987年の国立公園指定などによって生態系保護の努力が続けられてきた。
この釧路湿原へのメガソーラー建設計画が浮上したのは昨年11月。事業者である日本エコロジー(本社・大阪)がおこなった住民説明会で、計画について出力2万1000㌔㍗強、パネル3万6579枚を敷き詰めるとの内容を説明した。同社は2月にも住民説明会をおこなっている。
説明の過程で、日本エコロジーは「希少生物のタンチョウ、オジロワシ、キタサンショウウオの巣はない」と説明していたが、事業地内にオジロワシの巣が複数あることが判明。虚偽報告をくり返す事業者の無責任な姿勢と、自然環境を大きく壊す計画に対して住民の怒りが高まり、反対を求める世論が拡大してきた。こうした問題が全国的にも広く知られ、問題視する声が拡大して署名活動が展開されてきた。
この事業をめぐって北海道は2日、開発面積が本来知事の許可が必要な0・8㌶以上あるにもかかわらず、知事の許可を得ないまま開発が進められていたとして、日本エコロジーに対し工事中止を求める勧告をおこなった。日本エコロジーは今後、開発した土地を元に戻すか、知事に開発許可を申請するかの対応が求められる。
だが、日本エコロジーの松井政憲社長は9日、記者団の取材で北海道からの工事中止勧告を受けたことを問われ「かなり投資しており、立ち止まることはできない。市と協議して進めたい」と述べており、工事を中止しない意向を表明している。
太陽光発電のみならず、再エネ開発をめぐっては「自然に優しい」といいながら、事業者の都合を最優先し、問答無用で自然環境を大規模に破壊する事例が頻発している。なかでもメガソーラー開発では広大な土地を切り開いたあげく、違法な盛り土工事がおこなわれる事例が後を絶たない。近年急増している豪雨災害では、保水力のない造成地での土砂の流出や、ソーラーパネルそのものが河川に流されるなどの被害も拡大している。
リサイクル義務化断念 使用済み太陽光パネル
開発に関わる工事による自然環境破壊も深刻だが、今後さらに大きな問題を抱えているのが、使用済み太陽光パネルの処理だ。
FIT制度初期の買取期間が終わる2030年代前半には、使用済み太陽光パネルの廃棄が急増することが見込まれている。環境省は2030年代後半以降、廃棄量が年間50万~80万㌧になると試算している。また、ある試算では、太陽光パネル1枚をリサイクルする費用は3000~4000円とされ、設置状況によっては1枚あたり1万円前後から数万円とされる。低く見積もっても、パネル200枚をリサイクルすると約600万円かかる。埋め立てによる処分は約400万円だ。ただ、リサイクルできるのはガラスやアルミなどで、その他の多くの資材はゴミになる。
全国各地の太陽光発電立地自治体では、あと数年すれば使用済みパネルの廃棄問題が押し寄せてくる。買取期間が終わった事業者には責任を持って使用済みパネルを撤去させなければならず、国土を守り、自然環境を維持するために政府による法整備は必須だ。
しかし、浅尾環境相は8月29日、政府がこれまで検討を進めてきた「太陽光パネルのリサイクル義務化法案」を断念したと表明した。この法案は、太陽光パネルのリサイクルを義務化し、太陽光パネル製造業者(海外製造分は輸入業者)が、新設分のみならず既設分も製造量に応じた費用を負担するというものだった。しかし、内閣法制局からは、他のリサイクル関連法(自動車や家電等のリサイクルは所有者負担)との齟齬(そご)が生じるとの意見が出たという。
政府は代替案として、リサイクルについての報告義務化や努力義務化を検討しているが、環境団体は共同声明で「リサイクル義務化と比べてどこまで実効性が担保されるかは不明」と指摘している。
太陽光パネルの撤去費用の積み立ては義務化されているとはいえ、今回リサイクル義務化が断念されたことで、今後大量に出てくる使用済み太陽光パネルは埋め立て処分される可能性が高い。だが、そのために新たな処分場を各自治体が用意できるのかという問題がある。
また、すでに使用済み太陽光パネルを放置して逃げる事業者が増えて各地で大問題になっている。放置されたパネルからは鉛やヒ素、セレン、カドミウムなどの有毒物質が流れ出て、下流のコメの作付けができなくなった地域すらある。
このように、太陽光パネルの大量廃棄は、50年後、100年後の子孫にもたらすツケが大きく、「持続可能」「地球に優しい」との謳い文句はもはや看板倒れというほかなく、再エネビジネスを進める大企業の、「後は野となれ山となれ」の姿勢が露呈している。
大規模風力から三菱が撤退 需要先も見つからず
洋上風力発電事業をめぐる動きとしては8月末、総合商社三菱商事や中部電力などによる企業連合が、秋田県と千葉県の計3海域で進めてきた洋上風力発電所の建設計画からの撤退を決めた。
この事業は、2021年におこなわれた国による公募の「第1ラウンド」において、三菱商事などが総取りしていた事業だ。入札で示した売電価格が他の企業体よりも格段に安く、1㌔㍗時当り11・99~16・49円という、当時としては驚異的な低水準であったことが落札の決め手となった。
だが、インフレや円安によって建設資材や人件費は高騰。さらに金利上昇なども重なって事業環境は大きく変化し、建設費負担は四年前の公募参画当初の2倍へと膨らみ、入札時の売電価格の保証が困難な状況となった。
今回の撤退でとくに深刻な要因となったのが「欧州風車メーカー3社の値上げに対して、サプライチェーン(供給網)を迅速に再構築できなかった」(三菱商事・中西社長)ことだという。風車などの主要部品の調達は、三菱重工や日立製作所などの国内勢が2021年までに全社撤退しており、海外に依存している。デンマークのベスタス社、米国のベルノバ社、ドイツのシーメンス系の欧米3社が圧倒的シェアを誇っており、これらのメーカーは、契約時から出荷までに生じた物価高騰分を、国内の風力事業者に負担させる条項を盛り込んでいることが多い。そのため日本の風力発電は、海外メーカーの「言い値」で建設せざるを得ないのが実情だ。
三菱商事は今年2月時点で、「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」の3海域で進めてきた事業で採算性が見込めなくなったことを理由に事業の再評価をおこなうと発表していた。
この発表を受け、政府は三菱商事の「救済」に乗り出し、元の固定価格買い取り(FIT)制度から、市場連動型のFIP(フィード・イン・プレミアム)制度への転換を可能とする新たな制度を「後出し」で発表した。
FIT制度は、再エネで発電した電力について、大手電力会社が固定価格で20年間買いとることを政府が約束し、政府が補助金のような形で事業をサポートするというものだ。
一方、FIP制度では、発電事業者みずからリスクをとって発電量と需要を調整しながら、日本卸電力取引所(JEPX)や相対取引を活用することによって売電先を選ぶことができる。そのため発電事業者は需要家(企業)との個別の再エネ売電契約をおこなう。
政府公募では、第1ラウンドのみFIP制度だったが、第2・3ラウンドはFIP制度の下で入札が実施され、いずれも補助金を受けとらない「ゼロプレミアム」で落札されている。
だが、こうした政府からの「助け船」もむなしく、三菱商事は3海域での事業から完全撤退を決めた。今月四日には、秋田県の2海域の法定協議会が秋田県庁で開催された。協議会で三菱商事は、撤退理由として以下の3点を示している。
①新型コロナ感染拡大やウクライナ危機に端を発して、サプライチェーンの逼迫、円安、金利上昇のなかでコストが膨らみ、入札当初と比べて建設費用が2倍以上になった。
①FIP(基準価格と市場価格との差に補助金を出す)に移行して入札価格を引き上げることも検討したが、落札時のFIT価格の2倍以上となるFIP価格にしたとしても採算がとれない。
③事業を成り立たせる価格で電気を調達してもらえる大口需要先を見つけることができなかった。
つまり、2倍以上の売電価格が約束されたとしても事業として成り立たず、さらに事業を成り立たせられるほどの売電価格を確保できたとしても、それだけ高い電気料金を払える大口需要先は見つけられなかったということだ。協議会を終えた後、武藤経産相は「年内をめどに公募制度の見直しをおこない、その後、できるだけすみやかに再公募をおこないたい」と発言しているが、実現の可能性は乏しい。
協議会に参加した専門家は、「FIP制度に変えたとしても採算がとれないから三菱商事は撤退した。ということは、公募制度をFITからFIPにかえただけでは、入札に参加する事業者はいないと予想される。ではどうするか。原発や火力と同じように総括原価方式(コストに一定の利潤を上乗せして料金を決める)にすることぐらいしか考えられない。だが、そうすると、電気料金は大きくはねあがることになり、国民が納得するとは思えない」とのべている。
再エネの電力を買いとる原資は、各家庭の電気料金に上乗せされる再エネ賦課金だが、各家庭の負担は年々増加している。FIT制度導入時の2012年には、一般的な世帯の年間負担額は1056円だったが、2025年度にはそれが1万9104円にまで上がった。今後これがさらに数倍に引き上げられれば、消費者は黙っていない。
海外企業も撤退の趨勢 大型化はコスト増大
インフレや円安の影響で風車や建設コストが高騰している事情は、第2ラウンド以降の公募で落札した大手電力会社や他の商社にとっても同じだ。FIP制度の下で相対取引により高値で売ることが可能とはいえ、売電先がすんなりと見つかるかは不透明だ。
そのため、第2ラウンドで落札された事業でも問題が生じている。第2ラウンドで秋田県八峰町・能代市沖の洋上風力開発事業を落札したENEOSリニューアブルエナジー(旧ジャパンリニューアブルエナジー)を中心とする企業連合は、2021年6月時点で「資材高騰や円安進行による事業費の増加により、採算の見通しが困難」としている。
さらに今年6月には、第2ラウンドで新潟県村上市・胎内市沖の洋上風力事業を落札した三井物産も、予定していた大型風車の採用を断念した。調達予定だったGEベルノバ社が大型風車の製造をとりやめたため、他の風車の採用を検討している。この事業は、単機出力の高い大型風車を採用することで他社よりも発電単価を下げることを売りにしていたため、今後予定通りの発電単価を維持できるのかが大きな問題になってくる。
その他、発電大手JERAなどの企業連合が秋田県沖で進めている洋上風力事業で、初期投資額や発電コストが昨年6月の公募時点から約五割増加していることも報じられており、全国各地の風力発電計画でコスト増による採算性悪化が表面化している。
洋上風力だけではなく、陸上風力も悪条件は同じだ。今年8月には、大阪ガスの子会社・Daigasガスアンドパワーソリューションが、北海道勇払郡厚真町で建設を計画していた「(仮称)苫東厚真風力発電事業」の取りやめを発表した。これも資材高騰が撤退の理由だった。
また山口県でも、同県岩国市と周南市、島根県吉賀町にまたがる山間地で計画されていた風力発電事業「西中国ウインドファーム」をめぐり、事業者の電源開発が2022年12月に工事量の増加などが見込まれることから計画の見直しを発表している。それ以降、現在までまったく動きがないままになっており、地元自治体関係者も「実質頓挫。これ以上前に進めるのは無理だろう」と語っている。
海外でも、2023年ごろから欧米の再エネ大手各社による洋上風力事業からの撤退が急激に増えている。世界最大手のオーステッド(デンマーク)は昨年2月、最大で800人の削減を実施するほか、配当も停止し、再生可能エネルギーの開発目標も引き下げ、ノルウェー、スペイン、ポルトガルの洋上風力発電市場からの撤退を発表した。他にも、エクイノール(ノルウェー)、バッテンフォール(スウェーデン)、シェル(イギリス)、BP(イギリス)、イベルドローラ(スペイン)など、名だたる再エネ大手が欧米での洋上・陸上風力からの撤退や事業停止を表明している。
専門家は、風力発電をめぐる情勢について「すでに欧米の事業者は洋上風力から撤退している。それは、もちろん資材高騰や円安の影響があるわけだが、もう一つの問題がある。欧米企業は、洋上風力の設備が大型化すれば、将来的にコストは下がり、利益は増えると考えていた。ところが1万5000㌔㍗などの超大型洋上風車で事故が多発しており、巨大化すればするほど修理やメンテナンスのコストがかさむことが明らかになってきた」と指摘する。
洋上風力発電のコストは、2014年は27・75円/㌔㍗時で、その後は2023年の11・49円/㌔㍗時まで下がったが、今は逆にコストが上昇し、将来的には38円/㌔㍗時まで上がるという試算もある。専門家は「“再エネは地球に優しい”という前提はもはや覆されているが、さらに“再エネは安い”という神話も終わっている」とのべた。
日本政府は、電源構成に占める風力発電の割合を2040年度までに4~8%に引き上げる目標を掲げている。こうした数字を追い求め、その実現のために焦る経産省が「再エネ=安価」というイメージだけを先行させてきた結果、過度な競争入札によって事業が安く落札され、適正な売電価格が設定できずに事業として破綻してしまうケースがあいついでいる。
日本国内では、「再エネ」ならば何でも良いといわんばかりに推進してきた政府の方針に乗っかり、大手再エネ事業者や大手商社が次々に参入して風力発電バブルの様相を呈してきた。だが、ここまできてさまざまな「想定外」が重なるなかで、風力業界は世界的な逆風に晒されている。採算が見込めなくなった大手事業者はそそくさと手を引き、その結果、地方の下請け企業や受け入れ自治体が振り回されている。国内では今後も三菱商事の撤退と同様の事態があいつぐことも懸念されている。
輸入依存のバイオマス 火災時は鎮火が難航
「脱炭素化の救世主」として近年急速に開発が進められてきたバイオマス発電も、昨年から今年にかけ新たな動きが出ている。昨年12月には、国内最大級の木質バイオマス発電所「鈴川エネルギーセンター」が事業停止を発表した。同社は2022年に、石炭火力発電所から木質ペレットとA重油を燃料とした「バイオマス発電所」に転換した。
昨年3月期には約139億円もの売上高を記録していた。だが、その後は輸入木質ペレットを主な燃料としていたことで燃料調達コストが上昇し、約224億円もの巨額赤字を計上して債務超過に陥っていた。
バイオマス発電の普及を促進してきたのは日本政府だ。政府は2012年9月にバイオマス事業化戦略を策定し、2020年までに「約2600万炭素㌧のバイオマス活用」「約5000億円規模の産業創出」などの目標を設定。同年7月に施行された固定価格買取制度(FIT)のなかで、他の再エネとともにバイオマス発電の事業化が推進され、エネルギー基本計画にも導入拡大が明記された。
しかしここ数年、輸入燃料に依存するバイオマス発電をとりまく状況は厳しくなるばかりで、経産省の見立てでは、2040年時点でバイオマスの発電単価は1㌔㍗時当り32・9円と太陽光の3・9倍、洋上風力(着床)の2・4倍となる見込みとなっている。
国内のバイオマス発電所は、発電燃料を東南アジアからの輸入木質ペレットに七割以上依存している。輸入燃料をめぐっては、貯蔵しているサイロなどで自然発火して火災事故に発展する事故があいついでいる。木質ペレットは、湿った空気の流入や結露により局所的な水分の集中が起きた場合、微生物による発酵熱が生じ、これが蓄熱されるとさらに自然酸化により発熱し、発火に至ると考えられている。
近年発生した大きな事故を見てみると、2023年元日に、千葉県の袖ケ浦市にある「袖ケ浦バイオマス発電所」の燃料貯蔵サイロ内で火災が発生。消防が24時間体制で消火活動を続けるもサイロ内の燃料は燻り続け、市が完全な鎮火を確認したのは発火から4カ月後の5月1日だった。
また、2023年9月には、鳥取県米子市大篠津町にある「米子バイオマス発電所」で爆発をともなう火災が発生。燃料の木質ペレットを受け入れる鉄骨建屋の屋根が吹き飛ぶほどの被害が出た。この事故後、地元住民の間で猛烈な反対の声が上がり、同発電所は今年六月に事業廃止を決定している。
また、山口県下関市でも今年8月、下関バイオマス発電所(彦島迫町)の燃料保管倉庫で火災が発生。火は1時間弱で消防によって消し止められたが、燃料に火が燃え移ると大惨事になることから、地元消防団も駆けつけるなどして周囲は騒然となった。同発電所での火災は2023年1月に続いて2度目だ。
海外の森林を大規模に伐採して輸入した燃料を燃やした熱で発電するというバイオマス発電の仕組みそのものが「再エネではない」との指摘は日本国内のみならず、世界的にも強くある。韓国政府も昨年12月、新規バイオマス発電への補助金停止をうち出した。同政府は今年1月から、アジアなどからの輸入燃料によるバイオマス燃料での既存の発電所への補助金も段階的削減対象としている。
こうした動きに合わせ、日本政府も今年2月、2026年度以降の「新規」案件は、FIT(固定価格買取制度)等の支援対象外とする方針を決めた。対象となる施設は発電量が1万㌔㍗以上で輸入木材を使う案件と、パーム油などの液体燃料を使う案件だ。国内の自治体が地元で出た廃材や生ごみなどを活用する案件は引き続き支援対象とする。
だが、日本政府の対応が韓国政府と大きく違う点がある。それは、既存施設に対して日本政府は何も規制していないということだ。
円安進行や物価高騰によって輸入燃料が値上がりして採算悪化が明白となるなか、輸入バイオマス燃料に依存する発電事業の新規参入は、2022年度以降1件もない。つまり日本政府の対応は、何年間も新規参入がなく、建設される予定のない「架空」の事業を支援対象外としただけで、いわば誰も困らない見かけ倒しの規制だといわれている。
日本国内では現在、建設中を含めると1万㌔㍗以上のバイオマス発電所が100件以上存在する。それらは今後も最長20年間、政府の支援を受けながら輸入木質燃料を使って稼働を続けることになる。
本来バイオマス発電とは、林地残材や製材廃材、建築廃材など、利用されずに放置されているものを燃料に発電するはずだった。だがそうした前提を覆し、東南アジアの森林を大量に伐採し、自然環境を破壊して得た木材を日本に持ち込んで燃やして「エコ」だという巨大事業が増えすぎている。そもそも木材を燃やして出る二酸化炭素を回収するには、燃やした木材と同じ量を植林して育てなければ「持続可能」とはいえない。さらに伐採や加工、海外からの長距離輸送のさいに排出されるCO2排出量を考慮すると、とても「カーボン・ニュートラル」などとは呼べず、持続可能でもなければ、脱炭素にもならないという実態がある。
日本政府は、今年2月に発表した第7次エネルギー基本計画のなかで、2040年度の時点で発電量全体に占める再生可能エネルギーの割合について「4割から5割程度」とする目標を示した。前回、4年前の計画では2030年度の時点で再生可能エネルギーの割合は「36%から38%」になるとしていたが、これをさらに引き上げ、初めて最大の電源と位置づけている。
政府が進めてきた数字だけを追い求める「再エネ政策」のもとで全国各地に大規模な再エネ事業が持ち込まれてきた。その結果、大企業が甘い汁を吸い、地元住民や業者、自治体が振り回され、自然環境の破壊が進められてきたことが今になって大きな問題になっている。「再エネ」や「カーボンニュートラル」などといった謳い文句はもはや通用しないほどに再エネ事業の破綻は明確となるなか、これまで以上に目標を引き上げて日本全国をさらなる混乱に引きずり込もうとする国の再エネ政策への批判が拡大している>(以上「長周新聞」より引用)
洋上風力発電事業をめぐる動きとしては8月末、総合商社三菱商事や中部電力などによる企業連合が、秋田県と千葉県の計3海域で進めてきた洋上風力発電所の建設計画からの撤退を決めた。
この事業は、2021年におこなわれた国による公募の「第1ラウンド」において、三菱商事などが総取りしていた事業だ。入札で示した売電価格が他の企業体よりも格段に安く、1㌔㍗時当り11・99~16・49円という、当時としては驚異的な低水準であったことが落札の決め手となった。
だが、インフレや円安によって建設資材や人件費は高騰。さらに金利上昇なども重なって事業環境は大きく変化し、建設費負担は四年前の公募参画当初の2倍へと膨らみ、入札時の売電価格の保証が困難な状況となった。
今回の撤退でとくに深刻な要因となったのが「欧州風車メーカー3社の値上げに対して、サプライチェーン(供給網)を迅速に再構築できなかった」(三菱商事・中西社長)ことだという。風車などの主要部品の調達は、三菱重工や日立製作所などの国内勢が2021年までに全社撤退しており、海外に依存している。デンマークのベスタス社、米国のベルノバ社、ドイツのシーメンス系の欧米3社が圧倒的シェアを誇っており、これらのメーカーは、契約時から出荷までに生じた物価高騰分を、国内の風力事業者に負担させる条項を盛り込んでいることが多い。そのため日本の風力発電は、海外メーカーの「言い値」で建設せざるを得ないのが実情だ。
三菱商事は今年2月時点で、「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」の3海域で進めてきた事業で採算性が見込めなくなったことを理由に事業の再評価をおこなうと発表していた。
この発表を受け、政府は三菱商事の「救済」に乗り出し、元の固定価格買い取り(FIT)制度から、市場連動型のFIP(フィード・イン・プレミアム)制度への転換を可能とする新たな制度を「後出し」で発表した。
FIT制度は、再エネで発電した電力について、大手電力会社が固定価格で20年間買いとることを政府が約束し、政府が補助金のような形で事業をサポートするというものだ。
一方、FIP制度では、発電事業者みずからリスクをとって発電量と需要を調整しながら、日本卸電力取引所(JEPX)や相対取引を活用することによって売電先を選ぶことができる。そのため発電事業者は需要家(企業)との個別の再エネ売電契約をおこなう。
政府公募では、第1ラウンドのみFIP制度だったが、第2・3ラウンドはFIP制度の下で入札が実施され、いずれも補助金を受けとらない「ゼロプレミアム」で落札されている。
だが、こうした政府からの「助け船」もむなしく、三菱商事は3海域での事業から完全撤退を決めた。今月四日には、秋田県の2海域の法定協議会が秋田県庁で開催された。協議会で三菱商事は、撤退理由として以下の3点を示している。
①新型コロナ感染拡大やウクライナ危機に端を発して、サプライチェーンの逼迫、円安、金利上昇のなかでコストが膨らみ、入札当初と比べて建設費用が2倍以上になった。
①FIP(基準価格と市場価格との差に補助金を出す)に移行して入札価格を引き上げることも検討したが、落札時のFIT価格の2倍以上となるFIP価格にしたとしても採算がとれない。
③事業を成り立たせる価格で電気を調達してもらえる大口需要先を見つけることができなかった。
つまり、2倍以上の売電価格が約束されたとしても事業として成り立たず、さらに事業を成り立たせられるほどの売電価格を確保できたとしても、それだけ高い電気料金を払える大口需要先は見つけられなかったということだ。協議会を終えた後、武藤経産相は「年内をめどに公募制度の見直しをおこない、その後、できるだけすみやかに再公募をおこないたい」と発言しているが、実現の可能性は乏しい。
協議会に参加した専門家は、「FIP制度に変えたとしても採算がとれないから三菱商事は撤退した。ということは、公募制度をFITからFIPにかえただけでは、入札に参加する事業者はいないと予想される。ではどうするか。原発や火力と同じように総括原価方式(コストに一定の利潤を上乗せして料金を決める)にすることぐらいしか考えられない。だが、そうすると、電気料金は大きくはねあがることになり、国民が納得するとは思えない」とのべている。
再エネの電力を買いとる原資は、各家庭の電気料金に上乗せされる再エネ賦課金だが、各家庭の負担は年々増加している。FIT制度導入時の2012年には、一般的な世帯の年間負担額は1056円だったが、2025年度にはそれが1万9104円にまで上がった。今後これがさらに数倍に引き上げられれば、消費者は黙っていない。
海外企業も撤退の趨勢 大型化はコスト増大
インフレや円安の影響で風車や建設コストが高騰している事情は、第2ラウンド以降の公募で落札した大手電力会社や他の商社にとっても同じだ。FIP制度の下で相対取引により高値で売ることが可能とはいえ、売電先がすんなりと見つかるかは不透明だ。
そのため、第2ラウンドで落札された事業でも問題が生じている。第2ラウンドで秋田県八峰町・能代市沖の洋上風力開発事業を落札したENEOSリニューアブルエナジー(旧ジャパンリニューアブルエナジー)を中心とする企業連合は、2021年6月時点で「資材高騰や円安進行による事業費の増加により、採算の見通しが困難」としている。
さらに今年6月には、第2ラウンドで新潟県村上市・胎内市沖の洋上風力事業を落札した三井物産も、予定していた大型風車の採用を断念した。調達予定だったGEベルノバ社が大型風車の製造をとりやめたため、他の風車の採用を検討している。この事業は、単機出力の高い大型風車を採用することで他社よりも発電単価を下げることを売りにしていたため、今後予定通りの発電単価を維持できるのかが大きな問題になってくる。
その他、発電大手JERAなどの企業連合が秋田県沖で進めている洋上風力事業で、初期投資額や発電コストが昨年6月の公募時点から約五割増加していることも報じられており、全国各地の風力発電計画でコスト増による採算性悪化が表面化している。
洋上風力だけではなく、陸上風力も悪条件は同じだ。今年8月には、大阪ガスの子会社・Daigasガスアンドパワーソリューションが、北海道勇払郡厚真町で建設を計画していた「(仮称)苫東厚真風力発電事業」の取りやめを発表した。これも資材高騰が撤退の理由だった。
また山口県でも、同県岩国市と周南市、島根県吉賀町にまたがる山間地で計画されていた風力発電事業「西中国ウインドファーム」をめぐり、事業者の電源開発が2022年12月に工事量の増加などが見込まれることから計画の見直しを発表している。それ以降、現在までまったく動きがないままになっており、地元自治体関係者も「実質頓挫。これ以上前に進めるのは無理だろう」と語っている。
海外でも、2023年ごろから欧米の再エネ大手各社による洋上風力事業からの撤退が急激に増えている。世界最大手のオーステッド(デンマーク)は昨年2月、最大で800人の削減を実施するほか、配当も停止し、再生可能エネルギーの開発目標も引き下げ、ノルウェー、スペイン、ポルトガルの洋上風力発電市場からの撤退を発表した。他にも、エクイノール(ノルウェー)、バッテンフォール(スウェーデン)、シェル(イギリス)、BP(イギリス)、イベルドローラ(スペイン)など、名だたる再エネ大手が欧米での洋上・陸上風力からの撤退や事業停止を表明している。
専門家は、風力発電をめぐる情勢について「すでに欧米の事業者は洋上風力から撤退している。それは、もちろん資材高騰や円安の影響があるわけだが、もう一つの問題がある。欧米企業は、洋上風力の設備が大型化すれば、将来的にコストは下がり、利益は増えると考えていた。ところが1万5000㌔㍗などの超大型洋上風車で事故が多発しており、巨大化すればするほど修理やメンテナンスのコストがかさむことが明らかになってきた」と指摘する。
洋上風力発電のコストは、2014年は27・75円/㌔㍗時で、その後は2023年の11・49円/㌔㍗時まで下がったが、今は逆にコストが上昇し、将来的には38円/㌔㍗時まで上がるという試算もある。専門家は「“再エネは地球に優しい”という前提はもはや覆されているが、さらに“再エネは安い”という神話も終わっている」とのべた。
日本政府は、電源構成に占める風力発電の割合を2040年度までに4~8%に引き上げる目標を掲げている。こうした数字を追い求め、その実現のために焦る経産省が「再エネ=安価」というイメージだけを先行させてきた結果、過度な競争入札によって事業が安く落札され、適正な売電価格が設定できずに事業として破綻してしまうケースがあいついでいる。
日本国内では、「再エネ」ならば何でも良いといわんばかりに推進してきた政府の方針に乗っかり、大手再エネ事業者や大手商社が次々に参入して風力発電バブルの様相を呈してきた。だが、ここまできてさまざまな「想定外」が重なるなかで、風力業界は世界的な逆風に晒されている。採算が見込めなくなった大手事業者はそそくさと手を引き、その結果、地方の下請け企業や受け入れ自治体が振り回されている。国内では今後も三菱商事の撤退と同様の事態があいつぐことも懸念されている。
輸入依存のバイオマス 火災時は鎮火が難航
「脱炭素化の救世主」として近年急速に開発が進められてきたバイオマス発電も、昨年から今年にかけ新たな動きが出ている。昨年12月には、国内最大級の木質バイオマス発電所「鈴川エネルギーセンター」が事業停止を発表した。同社は2022年に、石炭火力発電所から木質ペレットとA重油を燃料とした「バイオマス発電所」に転換した。
昨年3月期には約139億円もの売上高を記録していた。だが、その後は輸入木質ペレットを主な燃料としていたことで燃料調達コストが上昇し、約224億円もの巨額赤字を計上して債務超過に陥っていた。
バイオマス発電の普及を促進してきたのは日本政府だ。政府は2012年9月にバイオマス事業化戦略を策定し、2020年までに「約2600万炭素㌧のバイオマス活用」「約5000億円規模の産業創出」などの目標を設定。同年7月に施行された固定価格買取制度(FIT)のなかで、他の再エネとともにバイオマス発電の事業化が推進され、エネルギー基本計画にも導入拡大が明記された。
しかしここ数年、輸入燃料に依存するバイオマス発電をとりまく状況は厳しくなるばかりで、経産省の見立てでは、2040年時点でバイオマスの発電単価は1㌔㍗時当り32・9円と太陽光の3・9倍、洋上風力(着床)の2・4倍となる見込みとなっている。
国内のバイオマス発電所は、発電燃料を東南アジアからの輸入木質ペレットに七割以上依存している。輸入燃料をめぐっては、貯蔵しているサイロなどで自然発火して火災事故に発展する事故があいついでいる。木質ペレットは、湿った空気の流入や結露により局所的な水分の集中が起きた場合、微生物による発酵熱が生じ、これが蓄熱されるとさらに自然酸化により発熱し、発火に至ると考えられている。
近年発生した大きな事故を見てみると、2023年元日に、千葉県の袖ケ浦市にある「袖ケ浦バイオマス発電所」の燃料貯蔵サイロ内で火災が発生。消防が24時間体制で消火活動を続けるもサイロ内の燃料は燻り続け、市が完全な鎮火を確認したのは発火から4カ月後の5月1日だった。
また、2023年9月には、鳥取県米子市大篠津町にある「米子バイオマス発電所」で爆発をともなう火災が発生。燃料の木質ペレットを受け入れる鉄骨建屋の屋根が吹き飛ぶほどの被害が出た。この事故後、地元住民の間で猛烈な反対の声が上がり、同発電所は今年六月に事業廃止を決定している。
また、山口県下関市でも今年8月、下関バイオマス発電所(彦島迫町)の燃料保管倉庫で火災が発生。火は1時間弱で消防によって消し止められたが、燃料に火が燃え移ると大惨事になることから、地元消防団も駆けつけるなどして周囲は騒然となった。同発電所での火災は2023年1月に続いて2度目だ。
海外の森林を大規模に伐採して輸入した燃料を燃やした熱で発電するというバイオマス発電の仕組みそのものが「再エネではない」との指摘は日本国内のみならず、世界的にも強くある。韓国政府も昨年12月、新規バイオマス発電への補助金停止をうち出した。同政府は今年1月から、アジアなどからの輸入燃料によるバイオマス燃料での既存の発電所への補助金も段階的削減対象としている。
こうした動きに合わせ、日本政府も今年2月、2026年度以降の「新規」案件は、FIT(固定価格買取制度)等の支援対象外とする方針を決めた。対象となる施設は発電量が1万㌔㍗以上で輸入木材を使う案件と、パーム油などの液体燃料を使う案件だ。国内の自治体が地元で出た廃材や生ごみなどを活用する案件は引き続き支援対象とする。
だが、日本政府の対応が韓国政府と大きく違う点がある。それは、既存施設に対して日本政府は何も規制していないということだ。
円安進行や物価高騰によって輸入燃料が値上がりして採算悪化が明白となるなか、輸入バイオマス燃料に依存する発電事業の新規参入は、2022年度以降1件もない。つまり日本政府の対応は、何年間も新規参入がなく、建設される予定のない「架空」の事業を支援対象外としただけで、いわば誰も困らない見かけ倒しの規制だといわれている。
日本国内では現在、建設中を含めると1万㌔㍗以上のバイオマス発電所が100件以上存在する。それらは今後も最長20年間、政府の支援を受けながら輸入木質燃料を使って稼働を続けることになる。
本来バイオマス発電とは、林地残材や製材廃材、建築廃材など、利用されずに放置されているものを燃料に発電するはずだった。だがそうした前提を覆し、東南アジアの森林を大量に伐採し、自然環境を破壊して得た木材を日本に持ち込んで燃やして「エコ」だという巨大事業が増えすぎている。そもそも木材を燃やして出る二酸化炭素を回収するには、燃やした木材と同じ量を植林して育てなければ「持続可能」とはいえない。さらに伐採や加工、海外からの長距離輸送のさいに排出されるCO2排出量を考慮すると、とても「カーボン・ニュートラル」などとは呼べず、持続可能でもなければ、脱炭素にもならないという実態がある。
日本政府は、今年2月に発表した第7次エネルギー基本計画のなかで、2040年度の時点で発電量全体に占める再生可能エネルギーの割合について「4割から5割程度」とする目標を示した。前回、4年前の計画では2030年度の時点で再生可能エネルギーの割合は「36%から38%」になるとしていたが、これをさらに引き上げ、初めて最大の電源と位置づけている。
政府が進めてきた数字だけを追い求める「再エネ政策」のもとで全国各地に大規模な再エネ事業が持ち込まれてきた。その結果、大企業が甘い汁を吸い、地元住民や業者、自治体が振り回され、自然環境の破壊が進められてきたことが今になって大きな問題になっている。「再エネ」や「カーボンニュートラル」などといった謳い文句はもはや通用しないほどに再エネ事業の破綻は明確となるなか、これまで以上に目標を引き上げて日本全国をさらなる混乱に引きずり込もうとする国の再エネ政策への批判が拡大している>(以上「長周新聞」より引用)
地方に暮らす国民の多くは「再エネ発電」が「イカガワシイ発電装置」だと気づいている。決して環境に優しくないしエコでもないと、肌感覚で知っている。しかしオールドメディアの一つとして、再エネのイカガワシサに関して報道しない。政府方針を批判する記事を書くのが憚れることなのか、とオールドメディアの報道姿勢を訝っている。
しかし地方紙が雄渾の記事を掲載した。題して「地方を食い荒らす脱炭素ビジネスの破綻 採算取れず大手が続々と撤退 「エコで地球に優しい」は嘘だった」というものだ。記事を掲載した長周新聞氏の勇気に感謝する。私たちの知る権利を担保すべきオールドメディアが悉く政府広報に堕落し、国民に事実すら報道せず最近は連日のように自民党の総裁選候補者を取り上げて国民の関心を自民党に釘付けにする報道に明け暮れている。
再エネ発電装置が電力供給の主力にならないことは最初から分かっていた。あくまでも補助的な発電装置でしかなく、環境負荷が大きいと同時に、廃棄処理が厄介なことはわかっていた。しかし最初から分かり切っていた廃棄処理方法に関するガイドラインすら策定せず、ここに到って再利用を断念する決定を下した。物事には「初め」があれば「終り」があることは誰でも知っている。しかし政治家や官僚たちは全く想像だにしてなかったようだ。
しかも自然環境に優しい発電装置を標榜している再エネ発電は、果たして「自然に優しい発電装置」なのか疑わしくなっている。問題になっている釧路湿原の開発で「日本エコロジーは「希少生物のタンチョウ、オジロワシ、キタサンショウウオの巣はない」と説明していたが、事業地内にオジロワシの巣が複数あることが判明」した。虚偽報告をくり返す事業者の無責任な姿勢と、自然環境を大きく壊す計画に対して住民の怒りが高まり、反対を求める世論が拡大している。
長周新聞氏は他にも様々な再エネ発電事業が自然保護を巡って地域住民と軋轢を引き起こしている事例や、防衛施設周辺の中国資本のメガソーラ開発などに危惧を提起している。
その他にも洋上発電に関して三菱が撤退したことなどから採算性に関しても疑義を呈している。太陽光発電は電力各社が再エネ電力を高価買取することによって推進してきたが、その買取価格を国民の電気料金に上乗せする再エネ賦課金は国民が負担すべき「費用」なのだろうか。国民にとって再エネを推進することによって、いかなる利益がもたらされるというのか。ただ単に再エネを推進することによってCO2地球温暖化が防止できる、と説明した政府の論理は本当に正しいのか。また正しいとしても、再エネを推進する費用を国民が負担すべきなのか。
政府は太陽光パネルのリサイクル処理を諦めたという。それではやがて耐用年数を経過した太陽光パネルが大量廃棄される時に、いかなる対応を再エネ事業者に課すと云うのだろうか。それとも老朽化したパネルや施設を山野に放置したままで良いとでも云うのだろうか。
パネルなどの設備が老朽化して売電できなくなれば再エネ事業者は破産するしかない。その段階になってメガソーラーの解体撤去及び原状復帰を求めることは困難だろう。あるいは再エネ事業者が勝手に夜逃げして解体撤去などの義務を放棄するのではないか。そうさせないように、売電売上金から強制的に「供託」させて、国が再エネ事業者から解体撤去及び原状復帰費用を確保しておく必要があるのではないか。今なら電力各社がメガソーラー事業者に売電代金を支払っているから、それを「供託」口座に積み立てさせれば良いだけだ。それを拒否すれば支払い口座を差し押さえれば良い。再エネ発電の後始末に国民の税など、政府支出を決してしてはならない。再エネ賦課金を支払わされた上に後始末まで負担させられては国民は踏んだり蹴ったりではないか。
もはやオールドメディアは再エネが自然に優しい発電装置だという幻想をばら撒くのを止めるべきだ。そしてオールドメディアの責任として、メガソーラー事業者が廃棄処理費などを「供託」すべきだとキャンペーンを張るべきだ。物事すべてに始まりがあれば、必ず終わりがある。その終わりをキチンと始末することを「有終の美」という。モラトリアムに関心の薄い、儲け第一主義のメガソーラー事業者に「有終の美」の実行を待っていて果たされるとは思えない。