李大統領の念願の戦作権返還に踏み切るのか。
<米国との関税交渉が膠着状態に陥り支持率が下落している韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が最近、「外国の軍隊がいなければ自主国防が不可能であると考えるのは屈従的な思考だ」と主張し、波紋を呼び起こしている。
李大統領が関税交渉で口頭合意した3500億ドル投資に対する米国の圧迫が強まっていることに対する不満を迂回的に表明したという分析もなされる中、政権の核心課題である「戦作権(戦時作戦統制権)転換」に向けた国内世論の地ならしではないか、との解釈がなされている。
保守が言う「自主防衛」は米韓同盟の強化、左派の「自主防衛」は在韓米軍撤退の意
李在明大統領は21日、自身のSNSに「常備兵力数で決着がつく戦争は過去…強力な自主国防の道を開く」というタイトルの文を載せ、次のように強調した。
「国力を育て、国防費を増やし、スマート強軍へ再編で防衛産業を育成し、安保外交の強化で多国間安保協力体系を確保することで、二度と侵略されない国、(外国に)依存しない国を作っていかなければならない。ところが重要なのは、このような軍事力、国防力、国力を持っていても、外国軍隊がなければ自主国防が不可能であるかのように考える一部の屈従的思考だ」
「外部の軍事衝突に巻き込まれてもならず、韓国の安保が脅かされてもならない。強力な自律的自主国防が現時期の韓国の最も重要な課題である理由だ」
“自主国防”という概念自体は韓国のどの政権でも強調している事案だ。ただ、保守政権が強調する自主国防が米韓同盟強化を通じた国防力強化を意味しているのに対し、左派政権が主張する自主国防は、言い換えれば「在韓米軍撤退」を意味している。そのため、李大統領のこの発言に国民の力と改革新党などの保守政界からは即刻的な批判が噴出した。
筋金入りの在韓米軍撤退論者
「李大統領が韓米同盟を貶め、在韓米軍の撤退を促す無責任で現実認識に欠ける『安保妄言』をSNSに掲載した」
「韓米同盟を『屈従』と罵倒する瞬間、抑止態勢は揺れ、誤った信号を与えるだけだ。同盟を揺さぶる瞬間、安保は崩れ、国民の生命は危うくなる」
「韓米関税(交渉)が破綻の危機に瀕していることを受け、李大統領と民主党が反米感情を扇動して、この責任を米国に押し付けようとしているようだ」
「韓米同盟に代わる自主国防は朝中露の祝杯になるだろう」
保守派からの尋常でない批判に、与党の共に民主党は「李大統領の意図は『有能で専門化されたスマート精鋭強軍に再編』しようということであり、どこにも韓米同盟を破棄しようなどという言及はない」とし、「内乱を起こし同盟を破った者(=尹錫悦前大統領)を擁護する国民の力は韓米同盟を語る資格がない」と反論した。
しかし、李在明大統領が政治新人の城南(ソンナム)市長時代から在韓米軍の撤退を主張してきた点は、韓国人なら誰でも知っている周知の事実である。
一例として挙げれば、共に民主党の有力政治家として浮上した2016年11月17日、京畿道富川のある市場で開かれた「李在明城南市長との対話」という講演会では次のように主張している。
「韓国で在韓米軍撤退を主張すると、プルプルぶるぶる震える人がいる。防衛に問題が生じると言う。ところが、大韓民国は昨年、防衛費用に40兆ウォンを使った。北朝鮮が防衛費として大体1~2兆ウォンを出すという。20倍の防衛費を支出する国が、外国軍の支援がなければ防御できないなどとどうやったら言えるのか。こんなことが言えますか? (こんなことをいう人は)バカなのかな? いや、自分はバカですという自白かな? (在韓米軍に)我々が莫大な空間を提供しているじゃないか。駐留費はむしろ私たちが受け取らなければならない!」
当時は朴槿恵(パク・クネ)政権時期の「THAADの朝鮮半島配置」をめぐって中国側が強く反発し、韓国経済に大きな打撃が予想された時期で、共に民主党はTHAAD配置に党を挙げて強く反対していた。
李在明当時城南市長は、THAADの朝鮮半島配備を非難し、在韓米軍撤退にまで言及したのだ。巨大党の前道有望な政治家の口から出た言葉とは想像できない浅はかな知識水準の“暴言”だったが、特有の強烈で刺激的な演説は当時、会場に集まった多くの人々の歓呼を受けた。
大統領就任後は「韓米関係強化」を強調してきたが…
2017年1月にはトランプ米政府が在韓米軍駐留費の引き上げを要求すると、韓国国会で開かれた討論会に参加し、次のように発言した。
「(トランプ政権が)要求するからといって、すんなりと聞き入れてはすべて奪われる恐れがある。堂々と韓国の立場を提示しなければならない。独立国家がどうして外国の軍隊に自分の国家防衛を任せて依存できるのか。自分(米国側)の軍事的利益のために撤退できない状態という点を活用して、この機会に在韓米軍撤退を覚悟し、それに備えて自主国防政策を樹立して真の自主国家に生まれ変わらなければならない」
また2021年には、「親日勢力が米占領軍と合作して(韓国初代政権の)支配体制を維持した」「韓国が日本に合併された原因は米国が桂-タフト密約を承認したためだ」などの発言が韓国はもちろん国際的に話題を呼び、米国政界から「反米主義者」というレッテルを押されてしまった。
大統領就任後は一変して、「実用外交」を掲げ、米韓同盟強化、日米韓の協力強化を連日主張してきたが、米韓関税交渉が進む中、「自主国防」をイシュー化することで、在韓米軍の撤退を主張した過去の自分の発言を再び召喚しているのだ。
これについて知人の韓国記者は次のように分析する。
「ひとまず韓米関税交渉の膠着が長期化していることで米国に抱いている不満を表出したのではないか。同時に『戦作権転換』のための国民世論を喚起しようとしているようにも見える。
トランプ政権は在韓米軍駐留費の負担額を100億ドルへ引き上げると発言していることに加え、在韓米軍が(中国・台湾の)両岸問題など地域安保イシューに自動介入することになる同盟の“現代化”を要求しているが、これらについて韓国では否定的な意見が強い。このような韓国内の批判世論をさらに強化させ、李大統領の長年の公約だった『任期内の戦作権転換』を完遂するという狙いがあるのではないか」
李大統領が関税交渉で口頭合意した3500億ドル投資に対する米国の圧迫が強まっていることに対する不満を迂回的に表明したという分析もなされる中、政権の核心課題である「戦作権(戦時作戦統制権)転換」に向けた国内世論の地ならしではないか、との解釈がなされている。
保守が言う「自主防衛」は米韓同盟の強化、左派の「自主防衛」は在韓米軍撤退の意
李在明大統領は21日、自身のSNSに「常備兵力数で決着がつく戦争は過去…強力な自主国防の道を開く」というタイトルの文を載せ、次のように強調した。
「国力を育て、国防費を増やし、スマート強軍へ再編で防衛産業を育成し、安保外交の強化で多国間安保協力体系を確保することで、二度と侵略されない国、(外国に)依存しない国を作っていかなければならない。ところが重要なのは、このような軍事力、国防力、国力を持っていても、外国軍隊がなければ自主国防が不可能であるかのように考える一部の屈従的思考だ」
「外部の軍事衝突に巻き込まれてもならず、韓国の安保が脅かされてもならない。強力な自律的自主国防が現時期の韓国の最も重要な課題である理由だ」
“自主国防”という概念自体は韓国のどの政権でも強調している事案だ。ただ、保守政権が強調する自主国防が米韓同盟強化を通じた国防力強化を意味しているのに対し、左派政権が主張する自主国防は、言い換えれば「在韓米軍撤退」を意味している。そのため、李大統領のこの発言に国民の力と改革新党などの保守政界からは即刻的な批判が噴出した。
筋金入りの在韓米軍撤退論者
「李大統領が韓米同盟を貶め、在韓米軍の撤退を促す無責任で現実認識に欠ける『安保妄言』をSNSに掲載した」
「韓米同盟を『屈従』と罵倒する瞬間、抑止態勢は揺れ、誤った信号を与えるだけだ。同盟を揺さぶる瞬間、安保は崩れ、国民の生命は危うくなる」
「韓米関税(交渉)が破綻の危機に瀕していることを受け、李大統領と民主党が反米感情を扇動して、この責任を米国に押し付けようとしているようだ」
「韓米同盟に代わる自主国防は朝中露の祝杯になるだろう」
保守派からの尋常でない批判に、与党の共に民主党は「李大統領の意図は『有能で専門化されたスマート精鋭強軍に再編』しようということであり、どこにも韓米同盟を破棄しようなどという言及はない」とし、「内乱を起こし同盟を破った者(=尹錫悦前大統領)を擁護する国民の力は韓米同盟を語る資格がない」と反論した。
しかし、李在明大統領が政治新人の城南(ソンナム)市長時代から在韓米軍の撤退を主張してきた点は、韓国人なら誰でも知っている周知の事実である。
一例として挙げれば、共に民主党の有力政治家として浮上した2016年11月17日、京畿道富川のある市場で開かれた「李在明城南市長との対話」という講演会では次のように主張している。
「韓国で在韓米軍撤退を主張すると、プルプルぶるぶる震える人がいる。防衛に問題が生じると言う。ところが、大韓民国は昨年、防衛費用に40兆ウォンを使った。北朝鮮が防衛費として大体1~2兆ウォンを出すという。20倍の防衛費を支出する国が、外国軍の支援がなければ防御できないなどとどうやったら言えるのか。こんなことが言えますか? (こんなことをいう人は)バカなのかな? いや、自分はバカですという自白かな? (在韓米軍に)我々が莫大な空間を提供しているじゃないか。駐留費はむしろ私たちが受け取らなければならない!」
当時は朴槿恵(パク・クネ)政権時期の「THAADの朝鮮半島配置」をめぐって中国側が強く反発し、韓国経済に大きな打撃が予想された時期で、共に民主党はTHAAD配置に党を挙げて強く反対していた。
李在明当時城南市長は、THAADの朝鮮半島配備を非難し、在韓米軍撤退にまで言及したのだ。巨大党の前道有望な政治家の口から出た言葉とは想像できない浅はかな知識水準の“暴言”だったが、特有の強烈で刺激的な演説は当時、会場に集まった多くの人々の歓呼を受けた。
大統領就任後は「韓米関係強化」を強調してきたが…
2017年1月にはトランプ米政府が在韓米軍駐留費の引き上げを要求すると、韓国国会で開かれた討論会に参加し、次のように発言した。
「(トランプ政権が)要求するからといって、すんなりと聞き入れてはすべて奪われる恐れがある。堂々と韓国の立場を提示しなければならない。独立国家がどうして外国の軍隊に自分の国家防衛を任せて依存できるのか。自分(米国側)の軍事的利益のために撤退できない状態という点を活用して、この機会に在韓米軍撤退を覚悟し、それに備えて自主国防政策を樹立して真の自主国家に生まれ変わらなければならない」
また2021年には、「親日勢力が米占領軍と合作して(韓国初代政権の)支配体制を維持した」「韓国が日本に合併された原因は米国が桂-タフト密約を承認したためだ」などの発言が韓国はもちろん国際的に話題を呼び、米国政界から「反米主義者」というレッテルを押されてしまった。
大統領就任後は一変して、「実用外交」を掲げ、米韓同盟強化、日米韓の協力強化を連日主張してきたが、米韓関税交渉が進む中、「自主国防」をイシュー化することで、在韓米軍の撤退を主張した過去の自分の発言を再び召喚しているのだ。
これについて知人の韓国記者は次のように分析する。
「ひとまず韓米関税交渉の膠着が長期化していることで米国に抱いている不満を表出したのではないか。同時に『戦作権転換』のための国民世論を喚起しようとしているようにも見える。
トランプ政権は在韓米軍駐留費の負担額を100億ドルへ引き上げると発言していることに加え、在韓米軍が(中国・台湾の)両岸問題など地域安保イシューに自動介入することになる同盟の“現代化”を要求しているが、これらについて韓国では否定的な意見が強い。このような韓国内の批判世論をさらに強化させ、李大統領の長年の公約だった『任期内の戦作権転換』を完遂するという狙いがあるのではないか」
東アジアの安全保障体制にも大きな影響
「戦時作戦権の転換」とは、現在米韓連合軍司令官の権限である「戦時作戦統制権」を韓国軍へ移すということで、進歩政権の宿願だった。
しかし、安保危機を招くという韓国社会の反対世論にぶつかり、何度も失敗した。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代から始まった戦作権返還交渉によると、韓国軍が戦作権を手にするためには①米韓連合防衛主導のために必要な軍事的能力、②北朝鮮の核・ミサイル脅威への対応能力、③安定的な戦作権返還に符合する朝鮮半島および域内安保環境、という3つの条件をクリアしなければならない。そして、たとえこの3つの条件を満たすとしても、戦作権返還はすなわち「在韓米軍の撤退」を意味しかねないことから、韓国では反対世論のほうが圧倒的だった。
だが、トランプ政権が関税を武器に同盟国を脅迫する状況が続き、「安保を米国だけに依存することはできない」という進歩陣営の主張に同調する国民が増えだしている。このような韓国社会の世論の変化を李在明政権は逃さず機会として活用しているのだろう。
李在明“反米”政権の下で、東アジア地域の安全保障体制は大変化の時代を迎えるかもしれない>(以上「JB press」より引用)
「韓国が反米化の道をまた一歩、李在明が現実離れした「在韓米軍不要論」を展開、「悲願達成」に向けて打った布石か」と題して李 正宣( ジャーナリスト)氏が李在明政権の外交姿勢を論評している。
「戦時作戦権の転換」とは、現在米韓連合軍司令官の権限である「戦時作戦統制権」を韓国軍へ移すということで、進歩政権の宿願だった。
しかし、安保危機を招くという韓国社会の反対世論にぶつかり、何度も失敗した。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代から始まった戦作権返還交渉によると、韓国軍が戦作権を手にするためには①米韓連合防衛主導のために必要な軍事的能力、②北朝鮮の核・ミサイル脅威への対応能力、③安定的な戦作権返還に符合する朝鮮半島および域内安保環境、という3つの条件をクリアしなければならない。そして、たとえこの3つの条件を満たすとしても、戦作権返還はすなわち「在韓米軍の撤退」を意味しかねないことから、韓国では反対世論のほうが圧倒的だった。
だが、トランプ政権が関税を武器に同盟国を脅迫する状況が続き、「安保を米国だけに依存することはできない」という進歩陣営の主張に同調する国民が増えだしている。このような韓国社会の世論の変化を李在明政権は逃さず機会として活用しているのだろう。
李在明“反米”政権の下で、東アジア地域の安全保障体制は大変化の時代を迎えるかもしれない>(以上「JB press」より引用)
「韓国が反米化の道をまた一歩、李在明が現実離れした「在韓米軍不要論」を展開、「悲願達成」に向けて打った布石か」と題して李 正宣( ジャーナリスト)氏が李在明政権の外交姿勢を論評している。
題にある通り李在明氏は米国離れを主張してきたが、いざ政権を取ると従来の主張通りに在韓米軍の撤退を米国に突き付けることが出来るだろうか。実際に韓国の左派は韓国をどうしようとしているのか判らない。
従来から韓国は蝙蝠外交で中国と米国の間を上手く飛び回っていた。それは傍から見れば極めて危険な外国姿勢だ。確かに米国は太平洋の彼方で、中国は黄海を隔てた隣国だ。中国との取引に魅力を感じるのは理解できるが、実際に体制の異なる北朝鮮と国境を接し、未だに「休戦状態」であることを考慮すれば、韓国の安全保障に在韓米軍が不可欠な存在だと指摘するまでもないだろう。
韓国から米軍が撤退して、韓国軍だけで韓国の防衛が可能だとでも考えているのだろうか。云うまでもなく、北朝鮮の背後には中国が控えている。有事が起きれば中国は北朝鮮を支援することによって、北朝鮮までも呑み込もうとしている。さらに、朝鮮半島全域も中国領土にすべく、全力で韓国軍を壊滅させるだろう。米軍が韓国から撤退すれば、それは限りなく可能になる。
その場合、韓国の戦いは38度線を挟む戦いではない。黄海から雲霞の如く押し寄せる海警船をはじめとする中国海軍の艦艇が韓国の海岸線から上陸して来るだろう。もちろん中国のポンコツ戦闘機も黄海程度の距離なら問題ない。中国が保有するミサイルの数も韓国の比ではなく、米国製ミサイル防衛兵器を米軍が撤退時に持ち帰ったなら、韓国は丸裸で中国のミサイル攻撃に対処しなければならない。
もちろん韓国民の大半は米軍撤退に反対だが、韓国が戦作権を有すべきだとする政権により、戦作権返還交渉が何度か提起された。
それによると「韓国軍が戦作権を手にするためには
①米韓連合防衛主導のために必要な軍事的能力、
②北朝鮮の核・ミサイル脅威への対応能力、
③安定的な戦作権返還に符合する朝鮮半島および域内安保環境、
という3つの条件をクリアしなければならない。」
三条件をクリアする戦作権返還はすなわち「在韓米軍の撤退」を意味する。米軍が韓国軍の指揮下に入って戦うことなどあり得ないからだ。しかも韓国がミサイル防衛に関する兵器の開発・配備を独自技術開発で行う、との姿勢も見えない。
しかし李大統領はかつて「独立国家がどうして外国の軍隊に自分の国家防衛を任せて依存できるのか。自分(米国側)の軍事的利益のために撤退できない状態という点を活用して、この機会に在韓米軍撤退を覚悟し、それに備えて自主国防政策を樹立して真の自主国家に生まれ変わらなければならない」と発言している。つまり戦作権返還こそが韓国の真の独立だと主張していた。在韓米軍の費用負担増を求めるトランプ大統領に反発して、李大統領が大統領として戦作権返還論を展開しないとも限らない。
韓国は経済的に苦境の最中にある。しかしIMFは韓国の支援要請を断っている。日本政府にも内々支援を要請しているが、日本政府は韓国の「歴史」等に関する理不尽な対応に変易している。もちろん日本国民の大半も反日教育を実施している韓国の支援など論外だと考えている。しかも蝙蝠となって頼ろうにも中国も経済崩壊で韓国支援どころではない。むしろ国民の不満の捌け口として韓国を標的にするかも知れない。まさに韓国は危険な綱渡りの第一歩を踏み出そうとしている。李大統領は在韓米軍の撤退を本気で求めるのだろうか。