世界のファンダメンタルは大きく変化している。

アメリカの時代は終わるのか。「グローバル国家論争」を考える
地球を北から眺めると

 先日の米国トランプ大統領とロシアのプーチン大統領との会談は、ひょっとすると「歴史的な」会談だったのかもしれません。
 日本やヨーロッパの関心は「ウクライナ戦争」でしたので、「大した合意は無かった」という失望の声ばかりが聞こえて来ます。確かに、ロシアの要求は3年前の開戦時からまったく変わっていませんから、目覚ましい成果が無かったのも当然です。それにもかかわらず、終始、和やかな笑顔を絶やさなかった二人の大統領の間で、一体、何が話し合われたのでしょう?ちょっと不気味で気になります。
 レッドカーペットを敷いて出迎え、戦闘機の護衛までつけて見送るのは異例の歓迎ぶりです。あの友好的な雰囲気は、まるで「同盟国」どうしの会議のようでした。
 その謎を解く鍵は、ひょっとすると「地球儀」に隠されているのかもしれません。地球儀を北から眺めると、ロシアとアメリカ・カナダは、北極海を囲んで隣どうしであることが分かります。意外なほど、彼らの距離は近いのです。ですから、これら二つの勢力が手を結び、「北極圏」を中心に協力し合ったらどうなるでしょう?

夢の北極経済圏
 エネルギーや資源、そして海運といった経済領域に限っても、米ロが協力すれば、北極圏が生み出す富の大きさには測り知れないものがあります。
 もちろん、米ロだけでなく、米国傘下の日本もまた利益を得ることになります。たとえば、ウクライナ戦争前から日本が参画していた「サハリン1・2」の天然ガス開発にも、エクソンなど米国資本が帰って来るわけですから、本格的な供給開始に向けてさらに弾(はず)みがつくでしょう。
 さらに、ヨーロッパからのエネルギーや物産の輸入も、日本からの輸出も、「北極圏航路」が開設されれば、随分と運送コストが下げられるはずです。南回りに比べ、輸送時間もはるかに短縮されます。
 これが、ロシアとアメリカ(+カナダ)間の貿易や共同開発となると、さらに規模が大きくなるでしょう。人的な交流も活発化します。近い将来、巨大な「北極経済圏」が出来上がります。
 トランプ大統領を陰で支えている「経済的な勢力」の間で、こうした「構想」が深く静かに練られていたとしたら、就任当初からのトランプ大統領の奇妙な発言にも合点が行くというものです。トランプ氏は突然「グリーンランドを買いたい」と言い出したり、高関税をちらつかせ「カナダは米国の51番目の州になれば良い」などと暴言を繰り返していましたが、実はこれにも理由があったわけです。
 これらは「トランプ氏の気紛れ」なんぞではありませんでした。今になってみれば、世界の経済を動かし政治にも多大な影響力を与えている勢力(ただし、EUやバイデン前大統領を操っていたグループとは別の勢力)と共に大統領が練り上げていた計画に沿った一種の「観測気球」であったことが分かります。

中共独裁体制の「つけ」
 こうした最近の出来事から推測できることは、「米国の時代」あるいは「Pax Americana(アメリカによる平和)」がもうしばらくは続くであろうということです。
 今、世の中では、「アメリカの凋落」を語る識者が多く、「経済的にも軍事的にも、米国の時代は終わりに向かっている」という推測が一般的です。
 しかし、アメリカに代わる「グローバルな覇権国」が他に現れるとは思えません。米国の介入が減ることで「多極化」の傾向は強くなるにしても、グローバルな規模で経済軍事的にリーダーシップを発揮することができるのは米国だけです。
 これまで、中国がまず「BRICS」内で覇権国となり、米中の冷戦を経て、中国の時代がやって来るといった未来予想図を語る評論家や財界人は少なくありませんでした。米国が凋落し、中国の時代がやって来るというわけです。
 しかし、現実には、中国経済はガタガタ、習近平国家主席の命脈は風前の灯です。現状は、軍のトップである張又侠(ちょうゆうきょう)上将が習近平派を抑え込み、長老派と手を結んで非習近平派による「集団指導体制」が敷かれています。問題は、時期政権を担う有能な若手がいないという点です。
 なぜなら、独裁者として君臨していた習近平主席が、将来自分を脅かす危険のある優秀な若手を、悉(ことごと)くパージ(排除)してしまったからです。結果、生き残ったのは老人や使えないイエスマンばかりで、優秀で生きの良い若手は誰も残っていません。中共は独裁体制の「つけ」をここに来て払わざるを得なくなったのです。
 しかも、「金の切れ目は縁の切れ目」、最早、忠誠心を金で買いたくとも、そのお金がありません。中国は混乱と分裂の時代に入ったようです。「グローバルな覇権国」どころの騒ぎではないのです。

EUは「解体」の危機?
 同様の混乱と分裂は「EU」においても始まっています。米国やソ連、中国に対する「対抗勢力」として、グローバリストの国際金融資本家たちが後押しして創り上げた「EU」ですが、これもそろそろ賞味期限が来てしまいました。
 かつて、経済的組織としてのEUと軍事的組織であるNATOは、まるで戦車の両輪のように力を合わせ、旧大陸の「統一覇権体」を目指して、旧東欧諸国を吸収するだけでは飽き足らず、新生ロシアに対しても侵出の触手を伸ばしていたのです。
 こうしたEUやNATOの野望に呼応する形で、ビクトリア・ヌーランドに代表される米国の「ネオコン(Neocon戦闘的な新保守主義者)」勢力は、2014年、ウクライナに傭兵や工作員を送り込み、クーデター(オレンジ革命)を引き起こして親露政権を転覆しました。これが、現在も続いている「ウクライナ戦争」の発端です。
 その後、彼らはウクライナ東部のロシア系住民4万人を殺害し、ロシアを戦争に引きずり込むことには成功したのですが、戦況は当初の予想とは逆になりました。ロシアは欧米の経済制裁を撥ね返し、軍事的にも粘り強さを発揮し、欧米の支援するキエフ傀儡政権を敗戦に追い込もうとしています。
 そして、これはウクライナだけの問題ではなく、EUとNATO、そして米国の「敗戦」でもあります。
 ベトナム以来、「敗戦慣れ」している米国にとって、今回のダメージは想定内です。米国の軍需産業は充分に儲けましたし、前述の通り、既にトランプ大統領はプーチン大統領と「戦後」の儲け話についてソロバンをはじいています。「転んでもただでは起きない」のが覇権国というものです。
 ところがEUは、敗戦前から、既にボロボロです。とても「覇権」どころではありません。下手をすればEUの「解体」が始まりかねないのです。

日本「自立」の時
 現状、中国もEUも、アメリカ合衆国に取って代わる勢力には成り得ません。
 もちろん、アメリカがトランプ大統領に代わってから「自国最優先」に舵を切り、世界への介入の仕方が変わり、軍事的な展開も縮小させつつあることは事実です。しかし、これをもって、アメリカが凋落しつつあると考えるのは早計です。
 評判の悪い「トランプ関税」ですが、これにより、アメリカ国内に生産拠点と投資が戻り、仕事も増えることはまず間違い無いでしょう。それに、トランプ氏をホワイトハウスに送り込んだアメリカ国民の多くは、真面目な伝統的クリスチャンであり、「古き良きアメリカ」の再臨を望む素朴なアメリカ人たちです。金だけを信じ、コスモポリタンを気取り、愛国心のひとかけらも無いウォール街の坊ちゃん嬢ちゃんたち(当然、民主党支持)とは違うのです。
 信仰心が篤く、コミュニティーや国を愛する人々に支えられ、しかも経済的チャンスに恵まれている国家が脆弱なはずはありません。ですから、しばらくはアメリカ合衆国が「グローバルな覇権国家」として「アメリカによる平和」を取り仕切り、世界の各国に強い影響力を持ち続けるであろう、という予測はまず外れることが無いと思うのです。
 ただ、トランプ大統領やその支持者、さらに彼らの背後にいる資本家たちは民主党時代のような「グローバリスト」ではありません。世界を、自分たちのルール(グローバルスタンダード等々)で一色に塗りつぶす全体主義的野望を抱いている人たちではないのです。むしろ、それぞれの国や地域独自の伝統文化や価値観を尊重する人たちです。彼らは、自身がそうであるように各地の信仰や伝統を大切にします。そうすることで、それぞれが地域性豊かな経済発展や社会建設を実現できるように望んでいるのです。
 ですから、彼らは「依存」を好みません。人であれ国であれ、それぞれが「自立」を果たした上で、協力し助け合うことを望んでいるのです。
 戦後80年が経過しました。米国に依存し切っている日本を見るのは彼らも辛いのです。その一方で、依存する相手を米国から中国に乗り換えようとする「日和見(ひよりみ)主義者」のことを、彼らは蛇蝎(だかつ)のように嫌っています。
「グローバル覇権国アメリカ」と良好な関係を築くためにも、そろそろ、日本という国は本当の意味で「自立」すべき時なのかもしれません。
 今回は、私なりの現状認識を語らせていただきました。まあ、不勉強で頭の固い老人の考えることですから、あくまで、何かの参考程度に受け止めてください。とはいえ、世界が大きく変わろうとしていることは事実です>(以上「MAG2」より引用)




「アメリカの凋落、中国の台頭」を語る見当違い。“カネの切れ目が縁の切れ目”を地で行く習近平が握れぬ世界覇権」と題する富田隆(心理学者/駒沢女子大学教授)氏のメルマガを取り上げた。物事には様々な「見方」があって、見る角度によって同じ事柄が異なって見えることがあるからだ。
 富田氏はトランプ-プーチン会談を北極点から眺めろ、と考えるヒントを与えている。そうすると北極点を挟んでロシアと米国が見合っている関係が理解できる、という。まさにそうだが、米国とプーチンのロシアが手を握ることはあり得ない。なぜならトランプ氏は後三年足らずで政権から去ることは確定しているが、プーチンは永遠の独裁者を夢見ているからだ。

 富田氏はウォール街に棲むグローバリストたちは「米国に依存し切っている日本を見るのは彼らも辛いのです。その一方で、依存する相手を米国から中国に乗り換えようとする「日和見(ひよりみ)主義者」のことを、彼らは蛇蝎(だかつ)のように嫌っています。」と日本が米国に頼り切っている、と批判しているが、日本の経済的な独立妨げて来たのは、むしろ米国の方だ。
 航空機産業からして、日本に許してはまた高性能な「ゼロ戦」を造られてはかなわない、とばかりに戦後日本の航空機産業を解体した。また戦後復興期に繊維産業が日本で勃興し米国の繊維産業を脅かすと日本に制裁を課して繊維産業を縮小させた。また造船や半導体から自動車まで、日本の製造業が力を付けて米国の足元を脅かしそうになると忽ち制裁を課して日本のモノ造りを抑制した。米国に頼り国・日本を主導したのは米国ではなかったか。

 しかし現在の日本は米国の勢力圏から抜け出そうとしている。トランプ関税が追い風となって、トランプ関税で手酷い目に遭っているカナダやEUと協調して、サプライチェーンの中央に位置していた米国の存在を無視して、中国から奪ったサプライチェーンのハブを自分たちで形成している。これは戦後80年で初の出来事だ。
 米国はトランプ関税により自ら世界経済の主役の座から降りようとしている。確かに米国経済は巨大だが、世界のGDPに占める割合は24%でしかない。中国は18%だと自称しているが、その1/2~2/3程度ではないかと云われている。つまり中国経済が占める世界GDPに占める割合は10%前後でしかない。この両国を排除したとしても、残る世界のGDPは60%以上も残っている。二つの経済大国に怯える必要など何もない。

 トランプ関税や「一帯一路」等といった面倒臭い注文を付ける国はスルーして、協調できる国々と安定した協力関係を構築する方がリスク回避でも有効だ。米国流のグローバリズムは中国一極投資という現象を招き、過度な依存関係を逆手に取った習近平氏の横暴な「戦狼外交」を招いてしまった。そしてコロナ禍によるサプライチェーンの崩壊で米国流のグローバリズムは終焉した。
 これからは国際的な協調こそが貴ばれる「契約と履行」の世界になるだろう。トランプ氏のような突拍子もない発作的な政策は忌み嫌われる。富田氏の想像以上に世界のファンダメンタルは大きく変化している。

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