タワマンの価格高騰はバブルでしかない。
<東京都内のマンション価格の高騰が止まらない。とりわけタワーマンション、いわゆるタワマンの値上がりは凄まじい。
かつてあるタレントは「俺か、俺以外か」と言ったが、東京の住宅市場はいま「タワマンか、タワマン以外か」と言い換えても大げさではないのかもしれないほど、タワマンは特別な存在となった。この現象ははたしてバブルなのか。
2025年7月に東京都千代田区が打ち出した“異例の要請”を起点に、ひとりのタワマン愛好家として、そして投機ではなく「住む」ことを目的に市場と向き合ってきた一生活者として、リスク回避と次の一手を考えたい。
「「タワマンは終わった」との声も…千代田区"マンション転売規制"でバブル崩壊? 元フジアナで不動産投資家の西岡孝洋氏が指摘する「本当のリスク」」と題して西岡 孝洋(元フジテレビアナウンサー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)氏が「タワマンの勧め」を書いている。
かつてあるタレントは「俺か、俺以外か」と言ったが、東京の住宅市場はいま「タワマンか、タワマン以外か」と言い換えても大げさではないのかもしれないほど、タワマンは特別な存在となった。この現象ははたしてバブルなのか。
2025年7月に東京都千代田区が打ち出した“異例の要請”を起点に、ひとりのタワマン愛好家として、そして投機ではなく「住む」ことを目的に市場と向き合ってきた一生活者として、リスク回避と次の一手を考えたい。
フジテレビアナ時代から「タワマン」を愛した
まず自己紹介をしておきたい。筆者は元フジテレビのアナウンサーで、27年間スポーツ実況を担当してきた。
オリンピックやサッカーW杯など、現地から言葉を届ける仕事に没頭する一方で、海外出張の多い生活だったため、当時から投資に興味があったものの、株式のような日々の観察と機動力が求められるものは難しかった。
そこで私が選んだのが、「住みながら投資」だ。よい借金とされる低金利の住宅ローンを活用し、住みたいマンションを買う。値上がりすれば売却して含み益を現実化し、住み替える。
もし値下がりすれば、住み続けて回復を待てばよい。売却価格が購入価格を上回ることで得た譲渡益を利用し、いわばわらしべ長者のように、少しずつ住むマンションをグレードアップさせた。
2025年3月、フジテレビを辞めて新しい挑戦に踏み出す決断ができたのも、住みながら投資のおかげで少しだけ安心して先に進める資産状況にあると思えたからだ。
そして、私はマンションの中でも特にタワマンが好きだ。2008年から17年間、タワマンで暮らしている。各階ゴミ置き場の自由度、空調が安定する内廊下の快適さ、ゲストルームやスタディルームの充実など、価格以上の生活の質の向上を与えてくれる存在に魅了された。
訪ねたモデルルームは30件、検討した物件は50件を超え、実際に6戸を売買してきた。宅地建物取引士や1級ファイナンシャル・プランニング技能士といった資格を取ったのも、きっかけはタワマン売買であった。
資産運用の面だけでなく、タワマンが好き。休みの日には、タワマン紹介動画を肴に酒を飲む。出張先に話題のタワマンがあると知れば、空き時間に現地見学に行く。
妻には「隙あらばタワマンを買おうとしている」と呆れられ、両親には「引っ越しが多すぎる」と心配されても、タワマン検索の指は止まらない。タワマンはまさに私の人生の一部でもある。
まず自己紹介をしておきたい。筆者は元フジテレビのアナウンサーで、27年間スポーツ実況を担当してきた。
オリンピックやサッカーW杯など、現地から言葉を届ける仕事に没頭する一方で、海外出張の多い生活だったため、当時から投資に興味があったものの、株式のような日々の観察と機動力が求められるものは難しかった。
そこで私が選んだのが、「住みながら投資」だ。よい借金とされる低金利の住宅ローンを活用し、住みたいマンションを買う。値上がりすれば売却して含み益を現実化し、住み替える。
もし値下がりすれば、住み続けて回復を待てばよい。売却価格が購入価格を上回ることで得た譲渡益を利用し、いわばわらしべ長者のように、少しずつ住むマンションをグレードアップさせた。
2025年3月、フジテレビを辞めて新しい挑戦に踏み出す決断ができたのも、住みながら投資のおかげで少しだけ安心して先に進める資産状況にあると思えたからだ。
そして、私はマンションの中でも特にタワマンが好きだ。2008年から17年間、タワマンで暮らしている。各階ゴミ置き場の自由度、空調が安定する内廊下の快適さ、ゲストルームやスタディルームの充実など、価格以上の生活の質の向上を与えてくれる存在に魅了された。
訪ねたモデルルームは30件、検討した物件は50件を超え、実際に6戸を売買してきた。宅地建物取引士や1級ファイナンシャル・プランニング技能士といった資格を取ったのも、きっかけはタワマン売買であった。
資産運用の面だけでなく、タワマンが好き。休みの日には、タワマン紹介動画を肴に酒を飲む。出張先に話題のタワマンがあると知れば、空き時間に現地見学に行く。
妻には「隙あらばタワマンを買おうとしている」と呆れられ、両親には「引っ越しが多すぎる」と心配されても、タワマン検索の指は止まらない。タワマンはまさに私の人生の一部でもある。
千代田区が打ち出した「異例の要請」
そのような中、2025年7月、衝撃のニュースが飛び込んできた。
東京都千代田区が、不動産大手で構成される不動産協会に対し、市街地再開発事業などで販売するマンションについて、引き渡しから原則5年間の転売禁止、同一名義での複数戸購入禁止を盛り込むように求める要請を出した、というのだ。
このニュースを目にした複数の知人から私宛にこんな質問が届いた。「これでタワマンバブルは崩壊しますか?」と。
そこでこの機会に、①はたして今はバブルなのか ②マンション購入におけるリスクとは ③リスクを回避する次の一手とは、という問いについて考えてみた。
かつて、「タワマンに住んでいます」と伝えると、「エレベーターは待つ?」「本当にタワマンカーストは存在するの?」といった生活の質問が多かったと記憶している。
しかし、今は違う。「いくらで買ったの?」「どれくらい(価格が)上がった?」「含み益はどうするの?」という資産性の問いばかりに変化したのだ。
暮らしの場から、投資の対象へ。タワマンを買ったというだけで、巨額の含み益を有する者に対する複雑な思いを感じるような場面に遭遇することも増えた。今のタワマンは高騰しすぎであり、これはバブルであると考える人も増えたように思う。
それでは、今は「タワマンバブル」なのだろうか?
タワマン高騰の理由は以下の2点から説明されることが多い。
1点目は、材料費の高騰、人件費の上昇、取得用地の価格が上がり、建築コストが上がったこと。
2点目は、需要と供給のバランスが崩れていること。
問題はこの2点目だ。タワマンはそもそも買うこと自体が圧倒的に難しくなっている。建築コスト上昇で新築マンションの供給は絞られる一方で、資産性が向上していることもあり、需要の購買意欲は旺盛だ。
今起こっているのはタワマン争奪戦の前哨戦、モデルルーム予約の争奪戦であり、これを勝ち抜かなければ新築マンションを買うことすらできない。
「タワマンバブル」は崩壊するか?
この現状を鑑みた中で、千代田区の要請について考える。千代田区が記した要請の目的を見てみると以下の通りだ。
「マンション等の住宅価格の高騰が続いており、同時に国外からの投機を目的としたマンション取引が行われていると考えられます。投機目的のマンション取引が増えることにより、過度な住宅価格の上昇、ひいては賃貸住宅の賃料の高騰などにも影響を及ぼし、区内に居住したい方々が住めないことが想定されます」
まず、今回の要請に法的拘束力はないが、行政と手と手を取り合って開発をしていくデベロッパーに対して一定の影響力はあると考えられる。
とはいえ、過去にも千葉県の海浜幕張のタワマンで同様の転売禁止措置が講じられたがマンション価格には影響がなかった点を考えると、今すぐマンション価格が下落するほどのインパクトはないと思われる。
しかし、おそらくこれは千代田区も想定内だろう。今回の要請で千代田区が問題提起した真の意味は、住宅価格の上昇を「過度」であるとはっきりと表現したことにあると考える。
国外からの投機、つまり、海外投資家の参入で「過度」に価格が上昇し、区内に居住したい人たちが住めない。需要だけが増えていく現状へのいらだちが文面からにじみ出る。そこにあるのは、はたしてこの需要は本当の需要なのか? という問題意識だ。
海外投資家による投機目的のマンション取引がなくなれば、確かにマンション価格は下がるだろう。
そのための方策はいくつか考えられる。
たとえばカナダのように都市部の外国人の不動産購入を制限する法律を作ること。
また、すべての投機的な取引を抑制するため、短期譲渡所得の課税強化のような国策レベルの手当ても考えられる。現行では5年以内の短期譲渡で約40%に過ぎない税率を、たとえば2年以内はさらに重くする、など。いずれにしても自治体レベルでは解決できず、国が考えるべき問題だ。
そして、確かに、ここまですればマンション価格、特にタワマンの価格は下がるだろう。
タワマンを購入するうえでの「本当のリスク」
では、ここから、「本当のリスク」について考えたい。
ここで皆さんに問いたい。去年まで3億円の価値があったタワマンの1戸が、今日1億円に下がったとしよう。あなたはこの部屋を喜んで買いますか?
今日が底値で買い時であり、明日からマンション価格が上がっていくという根拠はない。私だったら、「1億で買えたのはいいが、来年には5000万円になるかも」という恐怖心で、買えないと思う。
私は17年間で6つの住戸を売買した。その中で、安心して今が買い時だ、と思えた瞬間など一度もなかった。
2009年、今や“名作タワマン”と呼ばれ、分譲時の価格から4倍に跳ね上がった港区の物件の購入を検討したことがある。
販売業者は私に、値下げをするので買ってくれませんかと提案した。売れ残っていたのだ。それでも私は、この物件は価格が下がるかもしれないと躊躇し、買い逃した。
2013年、東京五輪開催決定を機に湾岸のマンションを買った。しかし、有名なマンション評論家が「この物件は10年後には半値でしか売れない」と名指しでそのタワマンを酷評。私は不安にさらされた。
2017年に別の物件を買った。当時は2020年東京五輪後に東京の地価は下がるとうわさされていた。「あと3年待てばバブルは弾けるのに、なぜ待たなかったのか?」と友人に言われた。
私が現在保有している2つのタワマンは、2020年から2021年、誰もタワマンに興味を持たなかったコロナ禍に仕込んだものだ。
振り返ってみれば、どの局面でもリスクがあった。つまり「怖くない買い時」は来ないのだ。そして仮に本当に市場価格が崩壊したら、今度は恐怖心が勝って誰も買えない。高くても買えないし、安くても買う勇気は出ない。それが市場心理だろう。
そして、恐怖ばかりに目を向け、買う勇気を持てないこと。それこそが最大のリスクだ。
住宅ローンを現役で返せる時間は限られている。金融機関が融資を判断する際に見るのは、年収と年齢だ。5年待てば物件の価格は下がる可能性はあるかもしれないが、上がることもある。その不確実性と比較して確実なことは、あなたはその分、年を取り、ローン返済に使える時間は短くなるということだ。
そのような中、2025年7月、衝撃のニュースが飛び込んできた。
東京都千代田区が、不動産大手で構成される不動産協会に対し、市街地再開発事業などで販売するマンションについて、引き渡しから原則5年間の転売禁止、同一名義での複数戸購入禁止を盛り込むように求める要請を出した、というのだ。
このニュースを目にした複数の知人から私宛にこんな質問が届いた。「これでタワマンバブルは崩壊しますか?」と。
そこでこの機会に、①はたして今はバブルなのか ②マンション購入におけるリスクとは ③リスクを回避する次の一手とは、という問いについて考えてみた。
かつて、「タワマンに住んでいます」と伝えると、「エレベーターは待つ?」「本当にタワマンカーストは存在するの?」といった生活の質問が多かったと記憶している。
しかし、今は違う。「いくらで買ったの?」「どれくらい(価格が)上がった?」「含み益はどうするの?」という資産性の問いばかりに変化したのだ。
暮らしの場から、投資の対象へ。タワマンを買ったというだけで、巨額の含み益を有する者に対する複雑な思いを感じるような場面に遭遇することも増えた。今のタワマンは高騰しすぎであり、これはバブルであると考える人も増えたように思う。
それでは、今は「タワマンバブル」なのだろうか?
タワマン高騰の理由は以下の2点から説明されることが多い。
1点目は、材料費の高騰、人件費の上昇、取得用地の価格が上がり、建築コストが上がったこと。
2点目は、需要と供給のバランスが崩れていること。
問題はこの2点目だ。タワマンはそもそも買うこと自体が圧倒的に難しくなっている。建築コスト上昇で新築マンションの供給は絞られる一方で、資産性が向上していることもあり、需要の購買意欲は旺盛だ。
今起こっているのはタワマン争奪戦の前哨戦、モデルルーム予約の争奪戦であり、これを勝ち抜かなければ新築マンションを買うことすらできない。
「タワマンバブル」は崩壊するか?
この現状を鑑みた中で、千代田区の要請について考える。千代田区が記した要請の目的を見てみると以下の通りだ。
「マンション等の住宅価格の高騰が続いており、同時に国外からの投機を目的としたマンション取引が行われていると考えられます。投機目的のマンション取引が増えることにより、過度な住宅価格の上昇、ひいては賃貸住宅の賃料の高騰などにも影響を及ぼし、区内に居住したい方々が住めないことが想定されます」
まず、今回の要請に法的拘束力はないが、行政と手と手を取り合って開発をしていくデベロッパーに対して一定の影響力はあると考えられる。
とはいえ、過去にも千葉県の海浜幕張のタワマンで同様の転売禁止措置が講じられたがマンション価格には影響がなかった点を考えると、今すぐマンション価格が下落するほどのインパクトはないと思われる。
しかし、おそらくこれは千代田区も想定内だろう。今回の要請で千代田区が問題提起した真の意味は、住宅価格の上昇を「過度」であるとはっきりと表現したことにあると考える。
国外からの投機、つまり、海外投資家の参入で「過度」に価格が上昇し、区内に居住したい人たちが住めない。需要だけが増えていく現状へのいらだちが文面からにじみ出る。そこにあるのは、はたしてこの需要は本当の需要なのか? という問題意識だ。
海外投資家による投機目的のマンション取引がなくなれば、確かにマンション価格は下がるだろう。
そのための方策はいくつか考えられる。
たとえばカナダのように都市部の外国人の不動産購入を制限する法律を作ること。
また、すべての投機的な取引を抑制するため、短期譲渡所得の課税強化のような国策レベルの手当ても考えられる。現行では5年以内の短期譲渡で約40%に過ぎない税率を、たとえば2年以内はさらに重くする、など。いずれにしても自治体レベルでは解決できず、国が考えるべき問題だ。
そして、確かに、ここまですればマンション価格、特にタワマンの価格は下がるだろう。
タワマンを購入するうえでの「本当のリスク」
では、ここから、「本当のリスク」について考えたい。
ここで皆さんに問いたい。去年まで3億円の価値があったタワマンの1戸が、今日1億円に下がったとしよう。あなたはこの部屋を喜んで買いますか?
今日が底値で買い時であり、明日からマンション価格が上がっていくという根拠はない。私だったら、「1億で買えたのはいいが、来年には5000万円になるかも」という恐怖心で、買えないと思う。
私は17年間で6つの住戸を売買した。その中で、安心して今が買い時だ、と思えた瞬間など一度もなかった。
2009年、今や“名作タワマン”と呼ばれ、分譲時の価格から4倍に跳ね上がった港区の物件の購入を検討したことがある。
販売業者は私に、値下げをするので買ってくれませんかと提案した。売れ残っていたのだ。それでも私は、この物件は価格が下がるかもしれないと躊躇し、買い逃した。
2013年、東京五輪開催決定を機に湾岸のマンションを買った。しかし、有名なマンション評論家が「この物件は10年後には半値でしか売れない」と名指しでそのタワマンを酷評。私は不安にさらされた。
2017年に別の物件を買った。当時は2020年東京五輪後に東京の地価は下がるとうわさされていた。「あと3年待てばバブルは弾けるのに、なぜ待たなかったのか?」と友人に言われた。
私が現在保有している2つのタワマンは、2020年から2021年、誰もタワマンに興味を持たなかったコロナ禍に仕込んだものだ。
振り返ってみれば、どの局面でもリスクがあった。つまり「怖くない買い時」は来ないのだ。そして仮に本当に市場価格が崩壊したら、今度は恐怖心が勝って誰も買えない。高くても買えないし、安くても買う勇気は出ない。それが市場心理だろう。
そして、恐怖ばかりに目を向け、買う勇気を持てないこと。それこそが最大のリスクだ。
住宅ローンを現役で返せる時間は限られている。金融機関が融資を判断する際に見るのは、年収と年齢だ。5年待てば物件の価格は下がる可能性はあるかもしれないが、上がることもある。その不確実性と比較して確実なことは、あなたはその分、年を取り、ローン返済に使える時間は短くなるということだ。
タワマン価格高騰の今「とるべき一手」
それでは、どうするのが次の一手か。今すでにマンションを持っている場合と、まだ持っていない場合に分けて考えてみたい。
都内ですでにマンションを所有している人の多くは、分譲時の価格を上回る売却予想価格、つまり含み益を抱えている。そういう人が次に買うべきは「一生住んでもよい」と思える物件だろう。
今の高騰のおかげで十分な含み益がある以上、それを享受して新しいマンションに移ること自体は大きなリスクではない。ただし、次の物件がまた値上がりする保証はない。だからこそ、残債割れしても心の平穏が保てる、終の棲家のつもりで買える物件を選ぶべきだ。
一方、まだマンションを持っていない人にとってはどうか。
「今は買い時か」と問われれば、私の答えは変わらない。「欲しいのなら、いつもそれは買い時」だ。
安心して買える時期など永遠に来ない。だからこそ自分自身に目を向ける必要がある。まずはポジションを取ること。つまり今の時点でベストだと思える物件を購入し、「住みながら投資」を実践することだ。
その際に重要なのは、残債割れを起こさない物件を選ぶことだ。一生住み続けられる物件である必要はない。価格が大きく下落した局面が来ても、5年から10年程度住み続けることができれば、いずれ市場は変化する。その間に出口戦略を描けばよい。
したがって、これから初めて買う人にとっては、自分が住みたいと思うかに加え、売りやすい、出口の見えやすい物件を選ぶことが合理的だ。
住民も、そうでない人も幸せにする物件
タワマンは、住む人に日常の豊かさを、行政には街の持続可能性を与える存在である。その周辺の住民は再開発による空地率の向上などで災害の危険度が下がるという恩恵を手にする。住民も、そうでない人も幸せにする。
私の愛するタワマンは、そんな存在であってほしいし、決して心ない投機による分断の象徴にはなってほしくない。投機マネーによる価格高騰の副作用を抑えながらも、実需層が安心して参加できる市場環境を整えることが、これから行政と事業者に求められる課題だろう。
正しく選び、住み切る覚悟を持てば、間違いなくタワマンは素晴らしい人生の舞台になる。タワマン愛好家として、そんな未来を期待したい>(以上「東洋経済」より引用)
それでは、どうするのが次の一手か。今すでにマンションを持っている場合と、まだ持っていない場合に分けて考えてみたい。
都内ですでにマンションを所有している人の多くは、分譲時の価格を上回る売却予想価格、つまり含み益を抱えている。そういう人が次に買うべきは「一生住んでもよい」と思える物件だろう。
今の高騰のおかげで十分な含み益がある以上、それを享受して新しいマンションに移ること自体は大きなリスクではない。ただし、次の物件がまた値上がりする保証はない。だからこそ、残債割れしても心の平穏が保てる、終の棲家のつもりで買える物件を選ぶべきだ。
一方、まだマンションを持っていない人にとってはどうか。
「今は買い時か」と問われれば、私の答えは変わらない。「欲しいのなら、いつもそれは買い時」だ。
安心して買える時期など永遠に来ない。だからこそ自分自身に目を向ける必要がある。まずはポジションを取ること。つまり今の時点でベストだと思える物件を購入し、「住みながら投資」を実践することだ。
その際に重要なのは、残債割れを起こさない物件を選ぶことだ。一生住み続けられる物件である必要はない。価格が大きく下落した局面が来ても、5年から10年程度住み続けることができれば、いずれ市場は変化する。その間に出口戦略を描けばよい。
したがって、これから初めて買う人にとっては、自分が住みたいと思うかに加え、売りやすい、出口の見えやすい物件を選ぶことが合理的だ。
住民も、そうでない人も幸せにする物件
タワマンは、住む人に日常の豊かさを、行政には街の持続可能性を与える存在である。その周辺の住民は再開発による空地率の向上などで災害の危険度が下がるという恩恵を手にする。住民も、そうでない人も幸せにする。
私の愛するタワマンは、そんな存在であってほしいし、決して心ない投機による分断の象徴にはなってほしくない。投機マネーによる価格高騰の副作用を抑えながらも、実需層が安心して参加できる市場環境を整えることが、これから行政と事業者に求められる課題だろう。
正しく選び、住み切る覚悟を持てば、間違いなくタワマンは素晴らしい人生の舞台になる。タワマン愛好家として、そんな未来を期待したい>(以上「東洋経済」より引用)
「「タワマンは終わった」との声も…千代田区"マンション転売規制"でバブル崩壊? 元フジアナで不動産投資家の西岡孝洋氏が指摘する「本当のリスク」」と題して西岡 孝洋(元フジテレビアナウンサー、1級ファイナンシャル・プランニング技能士)氏が「タワマンの勧め」を書いている。
一読してみて西岡氏の「タワマンを買い替えて多少儲けた」という成功体験に基づく「タワマン投資の勧め」だ。しかしそれは今後とも、誰にでも当て嵌まるものなのだろうか。
私は基本的に「家」は棲むためのものであって「投資」のためではないと考えている。だから何もタワマンを「投資目的」兼「居住目的」の物件として「有利」だとは思わない。居住目的であれば必要最低限の条件を満たしていれば良いのであって、何も都心でなくても良いし、高層階でなくても良い。
居住目的として必要最低限の条件はその場で「安息」が得られるか、というのが第一条件だ。「安息」とは、その瞬間に誰からも攻撃されない、ということであり、おそらく明日も安定した「安息」が得られる、という安心感ではないだろうか。その基本条件があって、その上に利便性や満足感などが挙げられるだろう。
その点で、タワマンは必ずしも「安息」が得られるとは思えない。基本的に高層階で暮らす不安感が拭えない。緊急時に地上へ逃げ出すには絶望的だ。そして大規模停電などが起きれば高層階は居住場所として不適格だ。それでなくても自然環境と隔絶されたコンクリートの箱でヒトは満足して暮らせるのだろうか。
たとえば、マンションとホテルの相違は何だろうか。滞在期間が一日限りか否かというだけでコンクリートの箱で過ごすのは殆ど変わらない。ただ所有権と賃貸契約の相違があるが、しかしそれも大した違いではない。
西岡氏は「タワマン高騰の理由は以下の2点から説明されることが多い。1点目は、材料費の高騰、人件費の上昇、取得用地の価格が上がり、建築コストが上がったこと。2点目は、需要と供給のバランスが崩れていること」とタワマンの価格高騰理由を二点から示している。
しかしいかに材料費や人件費が高騰したからと云って坪当たり原価は知れたものだ。主な理由は需給バランスが崩れたから、と云うしかないだろう。いかに土地価格の高額な都心であっても建築戸数で割れば、一戸当たり土地価格は知れたものだ。ちなみに一般的な高層マンション(6~19階建て)が平均58~121戸であるのに対し、20階建て以上の平均戸数は324戸で平均専有面積は68.4㎡(約20.69坪)とされている。土地価格が中央区が約583万円/㎡、千代田区が約551万円/㎡、港区が約518万円/㎡だから坪単価1,500万円だとしても、20坪の専有面積のタワマンで共有面積や建蔽率から倍の40坪の土地面積が使われているとして、一フロア5戸で60階建てのタワマンなら、土地価格は1,500万円×200坪で30億円だがフロア数で割れば30億÷60で一フロア当たり価格は5千万円だから一戸当たりの価格は5戸で割れば一戸当たり土地価格原価は1千万円でしかない。それは一戸建ての団地販売価格が1千万の土地だと考えれば、その上にどれほど豪華な床面積20坪の家を建てようと総額で1億円を超えることはない。つまりタワマンという幻想に踊らされて、高額なコンクリートの箱を買わされているのだ。
タワマンはバブルなのか、という問いに対しては「バブルだ」と返答するしかない。バブルとは正常な需給関係で価格が決まるのではなく、水増しされた「仮需要」が供給を大幅に上回って価格が高騰する状態をいう。現在のタワマンは日本人の需要というよりも外国人、ことに中国人の爆発的な需要が価格高騰をもたらしている。それは実需要で、決して仮需要ではないか、今後の政治の在り様で外国人の不動産所有が制限されるとするなら、中国人のタワマン需要は一気に消え去る。それこそバブルでしかない。
そうすると、いかにして高掴みしたタワマンを売り抜けるかが重要になる。云うまでもなく、マンションは一戸買えばもう一戸買って支払うつもりで再建築費を積み立てておかなければならない、と云われている。しかしタワマンを買った多くの人がもう一戸分を積み立てる余力があるとは思えない。つまり行き着く先は破綻しかない。西岡氏が得々として「タワマン投資」を語ることが出来るのも、それほど長くはないだろう。