欧州諸国の危惧はトランプが現代のチェンバレンになることだ。
<仏大統領「プーチンが和平を望んでいるとは思えない」
ドナルド・トランプ米大統領はウラジーミル・プーチン露大統領との首脳会談を受け8月18日、米ホワイトハウスでウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と欧州首脳と会談した。
米紙ニューヨーク・タイムズ(同日付)は主なポイントを次のように整理している。
(1)米欧首脳は「表向きの結束」を強調。フリードリヒ・メルツ独首相は「さらなる交渉の前に停戦を先行させるべきだ」と主張したが、トランプ氏はやんわり拒否。エマニュエル・マクロン仏大統領は「プーチンが和平を望んでいるとは思えない」と懐疑的な見方を示す。
(2)安全保障の保証は「曖昧」。トランプ氏は「強力な保護と安全保障を与える」と述べたが具体策はなし。欧州側は北大西洋条約機構(NATO)5条(集団防衛)型の安全保障を求める。米軍派兵の可能性を問われたトランプ氏は「支援はする」と明言を避ける。
(3)トランプ氏は「プーチン大統領にゼレンスキー氏との会談の調整を開始したと伝えた。その後、三者会談を目指す」とSNSに投稿。しかしプーチンがゼレンスキー氏を「正統な交渉相手」と見ていないため実現可能性は不透明。
戦略的に重要なドネツク州の非占領地域
(4)ロシアの執拗なミサイル攻撃に苦しむゼレンスキー氏は欧州を通じてパトリオット防空システムの追加導入など900億ドル規模の米国製兵器の調達を表明。米国がウクライナ製ドローンを購入する計画もあるが、正式合意には至っていない。
プーチンは停戦合意の一環としてウクライナが東部ドネツク州の非占領地域を明け渡せば、その他地域の前線を凍結すると主張していると報じられたが、その虚実はわからない。プーチンが「ドネツク州の非占領地を丸ごと寄越せ」と強硬なのは戦略的に極めて重要だからだ。
米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は8月12日付レポートで「ドネツク州の要塞地帯を放棄するとロシア軍の攻撃再開を防ぐ手立てがなくなる。プーチンの提案は、ロシア軍が迅速に包囲・突破する手段を持たない要塞地帯について、何の見返りも与えないままウクライナに明け渡しを求めるのと同じ」と解説する。
ウクライナ軍は、2014年に親露派に攻撃されたドネツク州のスロビャンスク、クラマトルスク、ドルジュキーウカ、コスチャンチニウカを奪還した後、要塞地帯を構築。22年にロシア軍はスロビャンスクを占領できず、その後も要塞地帯はロシア軍の進撃を阻んでいる。
コロコロ変わるウィトコフ特使の説明
ISWは「いまロシアは要塞地帯を包囲・突破する能力に乏しく、占領するには数年を要する。みすみす明け渡せば、ロシア軍は大きな犠牲と損害を伴う正面攻撃なしにドネツク防衛の背骨を取り除ける。ロシア軍はハルキウ・ドニプロ方面への攻勢拠点を得ることができる」という。
ロシア軍がドネツク州境沿いに兵力を進めることができればウクライナ軍はハルキウ、ドニプロペトロフスク両州境に大規模な防衛拠点を構築する必要が生じる。新たな防衛線は平野で川など自然障害物もなく、ウクライナ軍の防衛拠点としては適していない。
プーチンは2024年6月、いかなる和平合意も「根本原因」除去のためウクライナの非軍事化、非核化、非ナチ化、恒久中立(NATO非加盟)を規定しなければならないと演説。前提条件としてドネツク、ルハンスク、ヘルソン、ザポリージャ4州の譲渡を一貫して求めてきた。
その立場が何も変わっていないことは米露首脳会談を前にした8月1日のプーチン発言で改めて確認された。これに対してトランプ氏の右腕で、ロシアと交渉する不動産投資家スティーブン・ウィトコフ中東担当特使の説明はコロコロ変わる。
「プーチンの真の目的はウクライナの屈服」
ドネツク州は飲料・工業用水の大半をウクライナ側が管理するシヴェルスキー・ドネツ・ドンバス運河に依存。取水源に近いスロビャンスクを支配すれば、占領地の断水危機を緩和でき、占領統治の不満を抑えられるという計算がプーチンには働く。
ドネツク、ルハンスク両州は石炭・冶金・重機械の集積地。ロシアが完全制圧するとウクライナの産業基盤をさらに削ぎ、ロシアはコークス用炭、金属・機械加工の供給地を取り込みやすくなる。実際に再稼働するには多大な投資が要るものの、プーチンは「戦果」を強調できる。
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマーク・ガレオッティ上級研究員は英誌スペクテイターへの寄稿「プーチンがドネツクを欲する理由」(8月18日付)で「プーチンの真の目的は領土征服ではなく、むしろウクライナの屈服にあった」と強調している。
「この地域は数千人のウクライナ兵の血に染まり、象徴的な重要性も帯びている。停戦合意の条件が何であれ、キーウはロシアによる新たな侵略を恐れるだろう。キーウにとって新たな境界の自陣側に防衛線を確保することはますます重要になる」という。
戦争を続けて人命を犠牲にするか、不人気な譲歩を受け入れるか
ガレオッティ氏はプーチンの狙いについて、ドネツク州を譲歩させることで、ゼレンスキー氏に「さらに戦争を続けて人命を犠牲にするか、不人気な譲歩を受け入れるか」という厳しい二者択一を突きつけていると分析する。
プーチンは論点を「ドネツク州の非占領地を差し出すか否か」という形にしたことで、西側に「すでに占領された地域は失われた」と受け入れさせることに成功している。西側にはウクライナに武器弾薬を供給しても自国兵を危険にさらす覚悟までない。
プーチンはウクライナを「無防備で分断された状態」に残そうとする一方、西側は「どこまで現実的な安全保障を保証できるか」が問われている。プーチンのドネツク州の非占領地要求はウクライナと西側に「屈服か消耗か」の心理的圧力をかける戦略だとガレオッティ氏はみる。
勝利まで戦い続けることへのウクライナ国民の支持率は過去最低を記録。7月初旬に実施された米調査会社ギャラップの世論調査では69%(22年は22%)が交渉による早期終結を支持すると回答し、勝利まで戦い続けることを支持すると回答した人は24%(同73%)だった。
集団防衛には共通の脅威認識と政治意思が不可欠
英紙タイムズの社説(8月18日付)は「ロシアは外交によってドネツク、ルハンスク両州全域を手に入れる好機を得たと考えている。もし実現すればウクライナの東部防衛線が崩壊し、中心部が無防備になり、ゼレンスキー氏の政治的生存も危機に陥る」と指摘する。
「NATO型の安全保障は実際には機能する可能性が低い。集団防衛には共通の脅威認識と政治意思が不可欠であり、西側にそれがそろっているかは疑わしい。プーチンはサイバー攻撃や海底ケーブル破壊、傭兵利用などハイブリッド攻撃で西側を揺さぶっている」(タイムズ紙)
ウクライナを完全に占領できなくても長期的に不安定化させて経済的に魅力を失わせることもできる。これはジョージアやモルドバの飛び地と同じ「凍結された紛争」戦略だ。プーチンは「善意のジェスチャー」を弱さとみなし、トランプ氏の外交的懐柔策は通用しない。
「米国と欧州は団結し、長期的な戦いに備える必要がある。ロシアの石油・天然ガス収入を断ち、凍結資産をウクライナ復興に充てるべきだ。西側の政治的意志と団結こそが勝敗を決める」と安易な妥協はしないようタイムズ紙は釘を刺す。>(以上「JB press」より引用)
トランプ氏が進めているウクライナ停戦に関して木村正人(在ロンドン国際ジャーナリスト)氏は大胆にも「「プーチンが割譲を熱望」とされるドネツク州の「要塞地帯」、渡せば最後、ロシアは必ずウクライナ侵攻を再開する」と予測している。私もまったく同感だ。
国際連合は次の原則に従って行動する。国連はすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。
◎すべての加盟国は憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。
◎加盟国は、国際紛争を平和的手段によって国際の平和および安全ならびに正義を危うくしないように解決しなければならない。
◎加盟国はいかなる国に対しても武力による威嚇もしくは武力の行使を慎まなければならない。
◎加盟国は、国連がこの憲章に従ってとるいかなる行動についてもあらゆる援助を与えなければならない。
◎憲章のいかなる規定も本質的に国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国連に与えるものではない。」
ドナルド・トランプ米大統領はウラジーミル・プーチン露大統領との首脳会談を受け8月18日、米ホワイトハウスでウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と欧州首脳と会談した。
米紙ニューヨーク・タイムズ(同日付)は主なポイントを次のように整理している。
(1)米欧首脳は「表向きの結束」を強調。フリードリヒ・メルツ独首相は「さらなる交渉の前に停戦を先行させるべきだ」と主張したが、トランプ氏はやんわり拒否。エマニュエル・マクロン仏大統領は「プーチンが和平を望んでいるとは思えない」と懐疑的な見方を示す。
(2)安全保障の保証は「曖昧」。トランプ氏は「強力な保護と安全保障を与える」と述べたが具体策はなし。欧州側は北大西洋条約機構(NATO)5条(集団防衛)型の安全保障を求める。米軍派兵の可能性を問われたトランプ氏は「支援はする」と明言を避ける。
(3)トランプ氏は「プーチン大統領にゼレンスキー氏との会談の調整を開始したと伝えた。その後、三者会談を目指す」とSNSに投稿。しかしプーチンがゼレンスキー氏を「正統な交渉相手」と見ていないため実現可能性は不透明。
戦略的に重要なドネツク州の非占領地域
(4)ロシアの執拗なミサイル攻撃に苦しむゼレンスキー氏は欧州を通じてパトリオット防空システムの追加導入など900億ドル規模の米国製兵器の調達を表明。米国がウクライナ製ドローンを購入する計画もあるが、正式合意には至っていない。
プーチンは停戦合意の一環としてウクライナが東部ドネツク州の非占領地域を明け渡せば、その他地域の前線を凍結すると主張していると報じられたが、その虚実はわからない。プーチンが「ドネツク州の非占領地を丸ごと寄越せ」と強硬なのは戦略的に極めて重要だからだ。
米シンクタンク、戦争研究所(ISW)は8月12日付レポートで「ドネツク州の要塞地帯を放棄するとロシア軍の攻撃再開を防ぐ手立てがなくなる。プーチンの提案は、ロシア軍が迅速に包囲・突破する手段を持たない要塞地帯について、何の見返りも与えないままウクライナに明け渡しを求めるのと同じ」と解説する。
ウクライナ軍は、2014年に親露派に攻撃されたドネツク州のスロビャンスク、クラマトルスク、ドルジュキーウカ、コスチャンチニウカを奪還した後、要塞地帯を構築。22年にロシア軍はスロビャンスクを占領できず、その後も要塞地帯はロシア軍の進撃を阻んでいる。
コロコロ変わるウィトコフ特使の説明
ISWは「いまロシアは要塞地帯を包囲・突破する能力に乏しく、占領するには数年を要する。みすみす明け渡せば、ロシア軍は大きな犠牲と損害を伴う正面攻撃なしにドネツク防衛の背骨を取り除ける。ロシア軍はハルキウ・ドニプロ方面への攻勢拠点を得ることができる」という。
ロシア軍がドネツク州境沿いに兵力を進めることができればウクライナ軍はハルキウ、ドニプロペトロフスク両州境に大規模な防衛拠点を構築する必要が生じる。新たな防衛線は平野で川など自然障害物もなく、ウクライナ軍の防衛拠点としては適していない。
プーチンは2024年6月、いかなる和平合意も「根本原因」除去のためウクライナの非軍事化、非核化、非ナチ化、恒久中立(NATO非加盟)を規定しなければならないと演説。前提条件としてドネツク、ルハンスク、ヘルソン、ザポリージャ4州の譲渡を一貫して求めてきた。
その立場が何も変わっていないことは米露首脳会談を前にした8月1日のプーチン発言で改めて確認された。これに対してトランプ氏の右腕で、ロシアと交渉する不動産投資家スティーブン・ウィトコフ中東担当特使の説明はコロコロ変わる。
「プーチンの真の目的はウクライナの屈服」
ドネツク州は飲料・工業用水の大半をウクライナ側が管理するシヴェルスキー・ドネツ・ドンバス運河に依存。取水源に近いスロビャンスクを支配すれば、占領地の断水危機を緩和でき、占領統治の不満を抑えられるという計算がプーチンには働く。
ドネツク、ルハンスク両州は石炭・冶金・重機械の集積地。ロシアが完全制圧するとウクライナの産業基盤をさらに削ぎ、ロシアはコークス用炭、金属・機械加工の供給地を取り込みやすくなる。実際に再稼働するには多大な投資が要るものの、プーチンは「戦果」を強調できる。
英王立防衛安全保障研究所(RUSI)のマーク・ガレオッティ上級研究員は英誌スペクテイターへの寄稿「プーチンがドネツクを欲する理由」(8月18日付)で「プーチンの真の目的は領土征服ではなく、むしろウクライナの屈服にあった」と強調している。
「この地域は数千人のウクライナ兵の血に染まり、象徴的な重要性も帯びている。停戦合意の条件が何であれ、キーウはロシアによる新たな侵略を恐れるだろう。キーウにとって新たな境界の自陣側に防衛線を確保することはますます重要になる」という。
戦争を続けて人命を犠牲にするか、不人気な譲歩を受け入れるか
ガレオッティ氏はプーチンの狙いについて、ドネツク州を譲歩させることで、ゼレンスキー氏に「さらに戦争を続けて人命を犠牲にするか、不人気な譲歩を受け入れるか」という厳しい二者択一を突きつけていると分析する。
プーチンは論点を「ドネツク州の非占領地を差し出すか否か」という形にしたことで、西側に「すでに占領された地域は失われた」と受け入れさせることに成功している。西側にはウクライナに武器弾薬を供給しても自国兵を危険にさらす覚悟までない。
プーチンはウクライナを「無防備で分断された状態」に残そうとする一方、西側は「どこまで現実的な安全保障を保証できるか」が問われている。プーチンのドネツク州の非占領地要求はウクライナと西側に「屈服か消耗か」の心理的圧力をかける戦略だとガレオッティ氏はみる。
勝利まで戦い続けることへのウクライナ国民の支持率は過去最低を記録。7月初旬に実施された米調査会社ギャラップの世論調査では69%(22年は22%)が交渉による早期終結を支持すると回答し、勝利まで戦い続けることを支持すると回答した人は24%(同73%)だった。
集団防衛には共通の脅威認識と政治意思が不可欠
英紙タイムズの社説(8月18日付)は「ロシアは外交によってドネツク、ルハンスク両州全域を手に入れる好機を得たと考えている。もし実現すればウクライナの東部防衛線が崩壊し、中心部が無防備になり、ゼレンスキー氏の政治的生存も危機に陥る」と指摘する。
「NATO型の安全保障は実際には機能する可能性が低い。集団防衛には共通の脅威認識と政治意思が不可欠であり、西側にそれがそろっているかは疑わしい。プーチンはサイバー攻撃や海底ケーブル破壊、傭兵利用などハイブリッド攻撃で西側を揺さぶっている」(タイムズ紙)
ウクライナを完全に占領できなくても長期的に不安定化させて経済的に魅力を失わせることもできる。これはジョージアやモルドバの飛び地と同じ「凍結された紛争」戦略だ。プーチンは「善意のジェスチャー」を弱さとみなし、トランプ氏の外交的懐柔策は通用しない。
「米国と欧州は団結し、長期的な戦いに備える必要がある。ロシアの石油・天然ガス収入を断ち、凍結資産をウクライナ復興に充てるべきだ。西側の政治的意志と団結こそが勝敗を決める」と安易な妥協はしないようタイムズ紙は釘を刺す。>(以上「JB press」より引用)
トランプ氏が進めているウクライナ停戦に関して木村正人(在ロンドン国際ジャーナリスト)氏は大胆にも「「プーチンが割譲を熱望」とされるドネツク州の「要塞地帯」、渡せば最後、ロシアは必ずウクライナ侵攻を再開する」と予測している。私もまったく同感だ。
ただし、プーチンの野望はウクライナ全土の占領で尽きるは思えない。彼の究極の目標は現在の「ロシア帝国の皇帝」の地位を終身続けることだ。だから、ウクライナが手には行ければ次はベネルックス三ヶ国からフィンランド、さらにはベラルーシからポーランドへと際限なく拡大するだろう。
だからウクライナ戦争の停戦協議で安易な妥協や譲歩をしてはならない。あくまでも国際関係の原理原則を繰り返しロシアに要求することだ。それは国連憲章に明記してある通りのことをロシアに求めることだ。なにしろ国連を創設した主要メンバーにロシア( 当時は「ソ連」)は堂々と名を連ねているからだ。
ーー国連憲章 前文ーー
「われら連合国の人民は、われらの一生のうち二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念を改めて確認し、正義と条約その他の国際法の源泉から生ずる義務の尊重とを維持することができる条件を確立し、一層大きな自由の中で社会的進歩と生活水準の向上とを促進すること、並びに、このために、寛容を実行し、且つ、善良な隣人として互に平和に生活し、国際の平和および安全を維持するためにわれらの力を合わせ、共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保し、すべての人民の経済的及び社会的発達を促進するために国際機構を用いることを決意して、これらの目的を達成するために、われらの努力を結集することに決定した。 よって、われらの各自の政府は、サンフランシスコ市に会合し、全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた代表者を通じて、この国際連合憲章に同意したので、ここに国際連合という国際機構を設ける。」
ーー目的と原則ーー
国連憲章が定める国連の目的は、次の通りである。◎国際の平和と安全を維持すること。
◎人民の同権および自決の原則の尊重に基礎をおいて諸国間の友好関係を発展させること。
◎経済的、社会的、文化的または人道的性質を有する国際問題を解決し、かつ人権および基本的自由の尊重を促進することについて協力すること。
◎これらの共通の目的を達成するにあたって諸国の行動を調和するための中心となること。
◎経済的、社会的、文化的または人道的性質を有する国際問題を解決し、かつ人権および基本的自由の尊重を促進することについて協力すること。
◎これらの共通の目的を達成するにあたって諸国の行動を調和するための中心となること。
国際連合は次の原則に従って行動する。国連はすべての加盟国の主権平等の原則に基礎をおいている。
◎すべての加盟国は憲章に従って負っている義務を誠実に履行しなければならない。
◎加盟国は、国際紛争を平和的手段によって国際の平和および安全ならびに正義を危うくしないように解決しなければならない。
◎加盟国はいかなる国に対しても武力による威嚇もしくは武力の行使を慎まなければならない。
◎加盟国は、国連がこの憲章に従ってとるいかなる行動についてもあらゆる援助を与えなければならない。
◎憲章のいかなる規定も本質的に国の国内管轄権内にある事項に干渉する権限を国連に与えるものではない。」
まさに欧州で二度に渡る世界大戦は起きた。その二度の世界大戦の犠牲を繰り返さないために先に国際連盟が設立され、そして現在の国連が設立された。しかし国連を設立した「戦勝国クラブ」が先勝の美酒の味を忘られず、再び世界を大戦へと導いている。ことに中国と米国と、そしてロシアはDNAに戦闘民族の記憶が深く刻まれているかのようだ。
戦争のない世界が人類の望みなら、戦争を主導している一握りの政治権力者を排除すれば良い。その仕組みを先の大戦に懲りた「戦勝国クラブ」は国連に託したはずだが、自らが国連を形骸化させ再び政争の動乱に欧州を巻き込んでいる。
平和を望むなら国連を創設した当時の初心に立ち返るしか方法はない。ウクライナ戦争はプーチンの野望で始まった戦争だ。それは数世紀にわたるロシアのDNAに刻まれた膨張主義の誘惑にかられたものだ。ウクライナから簒奪する目論見で数世紀にわたってウクライナの東部地域やクリミア半島にロシア人を入植させてきた「熟柿作戦」が完成時期にあったことも、プーチンに軍事侵攻を踏み切らせた。
だからウクライナに永遠の平和を取り戻すには、ウクライナの地からロシア人を排除し、タタール人だけの地域に戻す必要がある。ロシア人との共存共栄など戯言でしかないことは明らかだ。そしてロシア政府といかなる条約や約束も意味をなさないことも歴史が証明している。
トランプ氏はプーチンと約束すれば遵守すると思っている。だがプーチンはどんな約束でも結んででもドネツク、ルハンスク両州全域を手に入れれば「勝ち」だと思っている。次はウクライナ全土を占領し、フィンランドから小三ヶ国からポーランドに侵攻すれば良い、と野望を募らせているだろう。
米国こそが「国連憲章」に立ち還り、いかなる国であれ武力による国境線の変更は認められない。そうする国があれば国連軍の立場で米国が主力となって軍事制裁を科す、と断固とした態度で臨む方が平和実現の近道だと云うことに気付くべきだ。ウクライナの東部割譲はプーチンが独裁者として引き続きロシアを拡張主義の戦争へと導くだろう。いよいよトランプ氏は現代のチェンバレンになろうとしている。