縮められたバネは、元に戻るために、いつかは跳ね返る。

<新疆ウイグル自治区の独立を掲げる過激派組織「東トルキスタン・イスラム党(Turkistan Islamic Party; TIP)」が、シリア内戦の混乱を利用して影響力を急拡大している>
 TIPは、新疆ウイグル自治区の中国からの独立を掲げ、国際的なテロ組織として国連安保理の制裁対象に指定されている。しかし、シリア内戦やアサド政権の崩壊など背景に、TIPは新たな戦略を展開し、地域および国際社会に影響を及ぼしている。

TIPの概要
 TIPは、新疆ウイグル自治区の独立を目標とするウイグル人を中心とした武装組織である。アルカイダとの関連が深く、国連安全保障理事会の決議1267(1999)に基づく制裁リストに指定されている。2011年のシリア内戦開始以降、シリア北部を中心に活動を展開し、反政府勢力として戦闘に参加してきた。
 2024年12月のアサド政権崩壊後、ハヤト・タハリール・シャーム(HTS)が主導する暫定政府の連合に参加し、影響力を拡大している。
 TIPの主な目的は、新疆での「ジハード(聖戦)」を通じて独立を実現することである。シリアの混乱した状況を活用し、戦闘員の訓練、資金調達、国際的なネットワーク構築を進めている。今日、TIPはダマスカス、ハマ、タルツースにメンバーを配置し、HTSの支援を受けて活動を継続している。

最近の活動状況 軍事訓練の実施
 2025年2月、TIPはシリアのラタキアにおいて海上戦闘技術の訓練を実施した。この訓練には、スピードボートを用いた攻撃、海上救助、武装した水泳および潜水技術が含まれており、複雑な戦場環境での生存能力向上を目指している。
 これらの高度な訓練は、HTSの後援がなければ実現が困難であり、TIPが暫定政府と密接に協力していることを示している。海上戦闘能力の強化は、陸上戦闘に加え、多様な戦場環境への対応力を高める戦略の一環である。

シリア暫定政府への統合
 アサド政権の崩壊後、TIPはHTSが主導する暫定政府の軍事構造に組み込まれつつある。一部のメンバーはシリア国防省の職員として雇用され、ダマスカス、ハマ、タルツースに配置されている。これにより、TIPはシリア社会に一定程度溶け込み、活動基盤を強化している。
 しかし、メンバーの中にはアルカイダに近い過激なイデオロギーを保持しており、暫定政府の統制が及ばない場合、さらなる不安定化を招く可能性がある。

宗派間暴力への関与
 2025年3月以降、シリア沿海部のラタキアやタルツースで宗派間対立に起因する暴力事件が頻発した。TIPは、HTS傘下の他の武装勢力(レッドバンド、シャヒーン旅団、スルタン・スレイマン・シャー師団など)やアルカイダ系のフッラース・アルディン(HAD)と共同で、アラウィー派を標的とした攻撃や民間人の大量逮捕に関与した。
 これらの事件により、1000人以上の死傷者が出る惨事となったが、TIPの関与は宗派対立を利用して地域での影響力を拡大しようとする戦略を示している。

新疆ウイグルへの「ジハード」戦略と組織の再編
 2025年3月、TIPは新たな戦略計画および規約を発表し、組織名を「東トルキスタン・イスラム党(ETIM)」に改称した。この改称は、新疆でのジハードを強化し、「武力による独立」を目指す明確な意図を反映している。指導者のアブドゥル・ハクは、海外のウイグル人コミュニティに対し、新疆ウイグルでの行動を扇動するメッセージを発信している。
 この戦略は、シリアのHTSの成功やアフガニスタンのタリバンの事例に触発されたものであり、新疆ウイグルにおける活動再活性化を企図している。

国際的な連携と戦闘員の移動
 2024年12月、TIPの代表を含む3人の代表団がダマスカスからアフガニスタンのカブールへ移動し、タリバン暫定政権と外国人戦闘員の東方への移動について協議した。この動きは、TIPがシリアからアフガニスタンへの戦闘員移転を計画していることを示唆し、中央アジアや新疆ウイグルでの活動拡大を視野に入れている。
 アフガニスタンでは、TIPはタリバンと協力関係を構築し、特に北部で治安維持や軍事活動に参加している。

組織の規模と構成
 シリアにおけるTIPの戦闘員数は不明だが、アフガニスタンでは軍事的活動は活発ではなく、タリバンの制約を受けているとの見方もあるが、最大750人に達し勢力を拡大しているとの見解も聞かれる。
 シリアでは、ダマスカスやハマ、タルツースにメンバーが分散配置され、HTSの軍事作戦に参加している。戦闘員は主にウイグル人だが、アフガニスタンでは中央アジア出身者も含まれており、構成が多様化している。

資金調達と武器供給
 TIPの資金調達に関する詳細は限定的だが、中東の一部の国家が「東トルキスタン独立」を支持し、武器の調達や秘密裏の移転を支援しているとの指摘もある。これらの資金や武器は、シリアでの活動を支える重要な要素である。
 また、TIPはアルカイダやHTSとの連携を通じて、武器や訓練の共有を受けている可能性がある。特に、ラタキアでの海上戦闘訓練は、外部支援がなければ実現困難なプログラムである。

TIPの行方
 TIPは、シリア暫定政府の不安定な統治構造や宗派間対立を利用し、活動範囲を拡大している。HTSの統治に不満を持つ戦闘員や外国戦闘員を吸収する可能性があり、内部の分裂がさらなる暴力の引き金となるリスクがある。宗派間暴力への関与は、シリアの社会的安定を損なう要因であり、暫定政府の統治能力に対する試練となっている。
 また、国際的には、TIPの新疆ウイグルでのジハード戦略は、中国に対する直接的な脅威である。仮に、今後シリア国内で中国の影響力が高まれば、パキスタンで起こっているような反一帯一路的な暴力が発生することも考えられる。
 アフガニスタンや中央アジアへの戦闘員の移動は、地域の安全保障に対する新たなリスクを孕む。タリバンや他のテロ組織との連携が深まれば、TIPの活動範囲が拡大し、国際的なテロネットワークに組み込まれる可能性が考えられる。
 TIPは国連安保理の制裁対象であるが、シリア暫定政府への支援が意図せず、TIPに利益をもたらすリスクが考えられる。軍事訓練や給与支払いの一部がTIPの戦闘員に流れ込む可能性があり、制裁の効果的な実施が課題である。
 今日、TIPはシリアのHTS主導の暫定政府の枠組み内で活動を継続し、新疆ウイグルでのジハードを掲げる新たな戦略を展開している。海上戦闘訓練、宗派間暴力への関与、アフガニスタンとの連携強化など、組織の戦術的・戦略的進化が見られる。
 しかし、戦闘員数の評価のばらつきやシリアの不安定な情勢が、活動に不確実性を与えている。国際社会は、TIPの動向を注視し、シリア暫定政府への支援がテロ組織に流れないよう、制裁措置の厳格な運用を強化する必要がある。
 TIPがシリアやアフガニスタンを拠点に中央アジアや新疆での活動を活発化させる可能性があり、地域および国際的な安全保障に対する脅威として警戒が求められる。
■シリアのウイグル人戦闘員の次の標的は中国>(以上「Newsweek」より引用)




 中国経済が崩壊している最中に、中国から遥かに遠い地でウィグル独立派の動きが俄かに活性化している。その動きを逃さず和田 大樹(国際政治学者)氏が「シリアで勢力拡大する反中テロ──ウイグル独立派武装組織の危険な進化」と題する論評を出した。
 TIPを構成するウィグル人の正確な総数についての確実な統計はないが、一般的には約1,000万人と推定されている。この数字は主に中国の新疆ウイグル自治区(2020年時点での民族構成比率から推測)とカザフスタン、ウズベキスタン、キルギスなどの中央アジア諸国に居住するウィグル族を合計した数で、新疆ウイグル自治区の人口は2020年の総人口は約2,585万人で、ウィグル族がそのうち44.96%を占めている。

 新疆ウイグル(東トルキスタン)と西トルキスタンは、歴史的・民族的・地理的に関連があるが、現在は政治的に分断されています。両地域はテュルク民族の土地という意味で「トルキスタン」と呼ばれ、パミール高原を境に東と西に分かれている。西トルキスタンに位置する中央アジア5カ国はソ連崩壊後に独立したが、東トルキスタンに位置する新疆ウイグル自治区は現在も中華人民共和国の支配下にある。そのため東西トルキスタンを統合して一つの国家にする動きがある。
 TIPの戦闘員が数千人を超えて、アルカイーダなどの支援を受けて東進すれば、中国にとって大きな脅威になる。また、TIPは中央アジア諸国と同様にイスラム教を信仰していて、中央アジア諸国から支援を受けやすい環境にもある。本来、新疆ウィグル自治区は東トルキスタンと呼ばれていた国であり、トルキスタン(Turkestan / Turkistan)とは今日テュルク系民族が居住する中央アジアの地域を指す歴史的な名称だ。それは 「テュルク人の (Turki) 土地 (-stan)」を意味するペルシアから由来している。

 そもそも新疆とは「新しい領土」の意味で、清の乾隆帝が1884年にジュンガルとウイグル人を征服し、中国の西部に領土を広げて設置し藩部に統括した歴史を持つ。1949年に中共政府が成立した後、1955年に「自治区」が設立された。
 新疆ウィグル自治区は、石油、天然ガス、石炭、金、玉石などの豊富な地下資源に恵まれている。これらの資源は同自治区の経済発展の基盤となっており、特に石油化学、鉄鋼、綿・毛紡織などの産業が発展している。しかしその工業化の陰で中国はウイグル人は奴隷同然に使役され、人民解放軍の兵団が管理する強制収容所に隣接する工場でウイグル人は強制労働をさせられている、として国際問題になっている。

 それのみならず多くのウイグル人が、生まれ育った故郷から、中国内地の工場などに「余剰労働力」として移され、言語や文化を奪われ民族のジェノサイドが公然と行われている。
 故郷から遠く離れた沿岸部に異動させられたウィグル人は厳しい監視下で中国の工場に生産委託をしている世界の有名メーカーの製品製造の強制労働に使役されている。いまや世界のサプライチェーンが「汚染」されている。一般の消費者は、その製品を買うことで、知らず知らずのうちに、ウイグルでのと強制労働に加担し、そのお金は中国共産党、解放軍、およびその傘下の企業に流れる仕組みになっている。

 引用論評を和田氏は「TIPがシリアやアフガニスタンを拠点に中央アジアや新疆での活動を活発化させる可能性があり、地域および国際的な安全保障に対する脅威として警戒が求められる」との文言で結んでいるが、果たしてTIPの活動を単なるテロで片付けて良いのだろうか。
 清国によって征服され、中共政府によって地下資源を奪われ地域住民の文化や言語まで奪う蛮行を国際社会はなぜジェノサイド認定した上で放置しているのだろうか。民族自決の原則からすれば新疆ウィグル自治区は東トルキスタンとして独立すべきだ。その胎動が中央アジアから遠く離れた中東で起きている。縮めたバネは元に戻ろうとしていて、いつかは跳ね返る。それは人民解放軍に侵攻されたチベットも内モンゴルも同様だ。中共は国内経済問題だけでなく、軍事力で侵略し平定した地域の反発が起きるのに震えなければならなくなった。

このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。