中国企業までも中国から逃げ出す中国の惨状。

<中国で中小零細企業、個人経営者らに対する社会保険料の取り立てが9月1日から徹底されることになった。中国では五険一金(養老保険、医療保険 労災保険、失業保険、出産養育保険、住宅積立金)などの社会保障制度が導入されており、このうち2021年の段階で養老保険の加入率は90%以上とほぼ全民保険加入の成功を謳っていた。
 だが、実のところ、最近の中国経済の低迷や地方政府の社会保障基金の横領問題の発覚で、保険料の支払いを拒否する労働者が若い世代を中心に増えている。
 この点を改善すべく、人民最高法院(最高裁)は8月1日の記者会見で、社会保障制度をめぐる労働争議に関する新たな法律解釈を発表。それによれば、たとえ雇用側と労働者側が社会保険料の納付義務と給付を受ける権利を放棄することに合意していても、それは無効で、労働者は離職時に社会保険金を請求できることになった。
 つまり労働者が社会保険料を支払っていなくても、企業・雇用者はその分も含めて社会保険料を納付せねばならず、労働者が保険金を請求する訴訟を起こせば、勝訴する、という。だから、政府当局も企業側から徹底的に社会保険料を徴収するという方針を打ち出したのだ。
 労働者の社会保障を強化する政策ということになるが、これが中国の一般庶民、つまり労働者側からも大きな反発を受けている。なぜなら、これは事実上の民営中小零細企業に対する増税であり、結果的には民営企業の倒産が加速し、失業率が上がり、中国経済にトドメをさすことになる可能性が濃厚だからだ。

 中国の社会保険料は、雇用主と労働者(被保険者)がそれぞれ決められた割合を支払う形になっている。たとえば養老保険については、賃金の16%に当たる保険料を企業・雇用側が支払い、労働者が8%を支払う。それぞれ公的な社会保障基金と社会保障専門銀行の個人口座に積み立てされ、運用され、15年以上継続して納めると、定年退職後に平均賃金の6割を目安に年金(養老金)が支払われることなる。
 医療保険は賃金の7.5%前後を企業・雇用側が納め、労働者が賃金の2%を納める。失業保険は企業・雇用主側が賃金の0.7%前後、労働者側が0.3%。そんなふうに五険一金を全部納めると、企業・雇主側の負担は賃金の30~42%に上る。労働者側は給与から、10%あまりの社会保険料を納付する。
 たとえば上海市で額面給与1万元の場合、企業はこれに加えて3130元の社会保険料を支払い給与と合わせると1万3130元の人件費がかかることになる。労働者側は額面給与1万元から基礎控除、社会保険料を差し引いた後の課税所得を基準に所得税を納め、だいたい手取りは8300元。つまり企業が人件費1万3130元を支払うと、政府が得られる社会保障費、税金は約5000元で、労働者の手取りは8300元ということになる。
 社会保険料の算定基準には下限があり、上海の場合は月給7384元で、それより低い給与でも、企業は7384元を基準に社会保険料2200元を支払わねばならない、ということになる。
 これは企業にとっても労働者にとっても、かなり重い負担となる。

広がる社会保険料の横領、制度は破綻寸前?
 それで企業と労働者は非公式の労使契約を結び、賃金を低く抑え、現金で別の名目の手当て、例えば携帯電話代や交通費などとして現金で支払う工夫をする。また、労働者と企業が給与増額の代わりに社会保障を放棄するという約束を水面下で行う。こうしたやり方は社会保障制度のグレーゾーンとして見逃されており、それによって何とか生き残っている中小零細企業も多かった。
 だが、9月1日以降は、こうしたグレーゾーンを見逃さない、ということだ。たとえ、企業と労働者が社会保険を放棄することに合意していたとしても、当局は企業から強制的に全額保険料を徴収する、というわけだ。これは労働者にとってありがたい判断ではないか。
 この発表に一番反発したのは、一般庶民であった。
 ネットのSNS上の投稿をみると、「全民社会保障が正しいかどうかって? もちろん正しいさ、どんな社会も全面的で広範にカバーする社会保障システムを必要としている。だけど、全民強制社会保障を“今”導入するのが正しいかと問われれば、私は答えることができない。なぜなら、集めたお金が広く、普遍的に、公平に、国民の基本的な社会保障に使われるかどうかを確かめる方法がないからだ」といった指摘があった。
 今年6月に国家審計署(会計監査署)が出した報告書によれば、地方政府が社会保険用にプールされている基金を、負債や財政補填に流用しているケースがいくつも発覚している。審計署が25省の企業・従業員、体制内事業機関職員、農村居民のための養老保険基金4.14兆元の資金について重点的に審査したところ、横領、不当支出、詐取などの問題が601.1億元分発覚したという。この600億元あまりの問題資金のうち、最も深刻なのは地方政府の横領で、少なくとも13省で、養老保険基金から406.26億元を横領し、民生予算や公務員の賃金、国有企業債務の償還、政府プロジェクトの借金返済などに充てていたという。
 また、一部の仲介業者と結託した養老金の詐取もいくつか明らかになっており、16省の90社の養老金仲介業者が、2009年から2024年の間に労働契約書や労働争議仲裁証明書を偽造し、条件に合わない2万人以上を保険に加入させ、保険金を詐取していたという。その中には戸籍上、1歳で就職し22歳で定年退職し、69万元の養老金を受け取ったという全くでたらめな詐取例もあった。
 仲介業者と地元役人が結託し、偽造書類で基金から好き勝手に資金を着服していたわけだ。こうした状況から、社会保障基金の多くがすでに破綻寸前だという噂もある。中国社会科学院の2019年のリポートでは中国の養老保険基金は2035年には底をつくという試算があった。

中小零細が倒産し雇用が失われる?
 こうした共産党体制下での社会保障基金に対する管理、運用への不信感が募っており、若い世代の中国人、民営零細企業の多くが社会保険料の支払いに消極的となっている。中国の人材派遣プラットフォーム企業、衆合雲科集団が6000企業に対して行った調査によれば、規定通り社会保険を納付している企業は28%だった。
 今回、中国が社会保障制度への加入を厳格化したのは、このままでは社会保障基金が破綻すると考えたからだろう。中国の社会保障資金運用の赤字は拡大し続けており、その赤字を中央政府が補填して何とか維持しているという。
 だがネット世論の多くは、社会保障システムがうまく運営されないのは、メディアを通じた世論監督もできず、第三者機関による構成で徹底した監査もできない体制のせいだと考えている。つまり民主的な選挙や三権分立や報道・言論の自由のないところで、公正で透明性のある社会保障基金の運営など絶対に無理だ、という。共産党体制であれば必ず社会保障基金は腐敗の温床となると、わかっているのだ。
 あるネットユーザーはこう主張する。
「(全民強制社会保障制度は)人民の福祉のためなのか、(使い込んだ社会保障基金の)穴埋めのためなのか。この新制度だけを見れば、これは新しい税金と同じだ。今回の全民強制社会保障の実施により、多くの企業が減給となり、羊(人民)は丸裸にされる。それでも多くの中小企業は生き残ることができず、失業した出稼ぎ者はいったいどうなるのか? 生き残った企業の雇用を守るために、労働者はさらに必死になって残業に励むだろう。(減給の上に残業増で)泣きっ面に蜂だ。もし大衆の福利のための社会保障制度を考えるなら、(こうした問題をカバーする)仕組みが必要なのだ」
 もう一つの問題の本質は、中国共産党体制において、民営企業、とくに中小零細企業、あるいは個人経営企業があまりにも軽視されている、ということにあるかもしれない。特に習近平体制になってから、国進民退とよばれる国有企業重視と民営企業圧縮の姿勢がはっきりしてきた。
 実は中国では中小民営企業こそが最も多くの雇用を生み出してきた。中国の労働人口は7.7億人。北京大学国家発展研究院の調査によると、中小・零細企業が支える雇用は約2.9億人。そのほとんどが自転車操業型の余裕のない経営だという。調査サンプルの48~49%が、零細企業で四半期ごとの売り上げは2.5万元程度という。4割の零細企業は利益がなく、2割の零細企業は完全に赤字、2割が何とか収益をあげている状況という。
 こうしたギリギリの中小零細企業は、ちょっとした環境の変化で倒産に追い込まれる。9月1日から全民強制社会保障制度が徹底されれば、中小零細企業の倒産ラッシュがさらに加速されるのは必然だろう。

民営経済の圧縮が狙いか
 そうなれば、失業率はさらに上昇するだろうし、たとえ企業側が倒産しなくとも、労働者に支払う賃金を下げざるを得ない状況に追い込まれるだろう。結局、民衆が得られる可処分所得は下がり、消費の回復はさらに遠のき、中国経済はますます低迷すると懸念されているのだ。
「中国共産党が今回の政策を打ち出した目的は、体制の維持であり、社会保障体制を破綻させないことだ。だが、そのために、生活ぎりぎりの人民から社会保保険料を奪おうとすることは、卵を産む前の鶏を殺して卵をとるようなもので、この様子は王朝末期の様相だ」
「保険料率の引き下げや保険料基盤の改革を行わずに保険料面の拡大をし、企業や労働者の利益を犠牲にして年金の支給を保障するというのは矛盾している」
 こんな声があがっている。
 そういった大衆の批判に対し、中国当局は公式メディアを通じて「(全民強制社会保障制度の通達を)誤読しないように」「新しい制度ではなく、もとからあったルールを徹底させるだけ」と説明しているが、反発の声はおさまっていない。
 習近平体制における民営経済圧縮方針は以前からはっきりしているので、今回の全民強制社会保障の方針も、実のところ民営経済圧縮自体が目的ではないか、と疑う声もある。習近平が望んでいるのが、経済市場の共産党による完全なコントロールであるとするなら、コントロールしきれない制度のグレーゾーンにいる有象無象の民営中小零細企業は邪魔な存在であり、そうした企業を淘汰する狙いもあるのではないか。
 そのような意図がないとしても、おそらくこの方針が徹底されたのち、中国の民営経済の息の根は止まっているかもしれない。
 今、上海株価は10年ぶりに高騰して、投資家たちの期待も高まっているようだが、中国経済の行方には明るい材料はない>(以上「JB press」より引用)




中国経済の息の根が止まる?社会保険料の強制取り立てで中小零細は倒産ラッシュか
破綻寸前の社会保障制度の強化か、民営経済圧縮が狙いか
」と題して崩壊する中国経済の現状を福島 香織(ジャーナリスト)氏が報告している。
 中国には五険一金(養老保険、医療保険 労災保険、失業保険、出産養育保険、住宅積立金)などの社会保障制度があるという。そのためには労働者と企業は税金以外に相当の保険掛金を支払わなければならないそうだ。しかし、おかしくないだろうか。

 中国は社会主義の国だ。社会主義の基本理念から云えば、国民すべて平等労働・平等賃金のはずだ。そして郎党の対価として受け取った賃金から税金を徴されることはなく、もちろん社会保障掛金を徴収されることもない。中共政権が誕生した当時はそうだったはずだ。露天商などの小規模な民間売買取引はあったかも知れないが、経済取引はすべて「国営」が原則だったはずだ。
 しかし現在の中国は自由主義経済国家と殆ど何も変わらない。不動産はすべて国家所有のはずだが「地上権」と称する不動産取引が行われ、住宅積立金制度まであるという。このような得体の知れない高負担に耐えかねて、中国の民間企業が陸続と外国へ移転しているという。あるいは厳し過ぎる監視と、政府の過度な干渉に堪えかねて外国へ移転する中国企業まで現れた。

 その代表的な例がLenovoだ。中共政府からLenovoが蓄積した知的財産やデータをすべて中国に帰属させよという理不尽な要求に対して、Lenovoは外国へ移転する決断をした。それでなくてもLenovoはPCにバックドアを埋め込んでいると嫌疑を掛けられ、米国をはじめ欧州諸国から排除されている。中国市場を失う損失よりも、国際市場を失う方がLenovoにとって損失が大きいと判断して、Lenovoは日本への移転を決断した。今後は日本のIT企業と協業体制を作り、大阪と東京にデータセンターなどの拠点を置くという。日本政府はLenovoの企業信頼性を常に確認しながら、協力するようだ。
 他にも中国の民間企業が東南アジアへ生産拠点を移している。その大きな切っ掛けは対中トランプ関税45%発動が大きな動機になっている。

 外国へ移転する経済力もない民間中小企業は政府からの過重な負担により破産するしかないようだ。むしろ、政府は民間資本を一掃する方針ではないかと思えるほど、民営企業に厳しい制度を次々と強制している。しかし民営企業潰しから始まった習近平体制が中国経済を崩壊させたことは明らかだ。「改革開放」を排すれば、中国は1970年代の飢餓に苦しむ中国に逆戻りするしかない。それでも習近平氏の政治を否定できない中共政府に未来はない。

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