ついに農政の失敗を農水省幹部が認めたが、謝罪したのは臨時国会後の自民党農水部会でだった。

＜農林水産省の幹部らが自民党の会合で、コメの需給見通しの誤りについて謝罪しました。
　農林水産省　渡辺毅 事務次官 「どうも、すみませんでした」 コメ政策をめぐる自民党の会合で、農林水産省の幹部らは「コメが足りていると、ずっと申し上げてきたが誤りだった」と謝罪しました。 これまで「流通が滞っている」などとして「コメは足りている」と主張してきましたが、こうした判断が備蓄米放出などの対応を遅らせる結果となりました。 小泉農水大臣は「令和のコメ騒動とも言われる状況を作ってしまった一端は、間違いなく我々農水省にある」としています。＞(以上「TBSテレビ」より引用)

「「コメ足りているは誤りだった」農水省幹部らが自民党の会合で謝罪　小泉大臣「“令和のコメ騒動”状況作った一端は間違いなく農水省にある」」と、見出しは長いが、記事は実に短い。しかし、その内容は日本国民にとって重く、日本農業政策の失政は明らかだ。

　それほど重大なニュースにも拘らず、扱いが極めて軽いのは何故だろうか。それは国民の大半が「米価高騰はコメ不足だ」と知っていたからではないだろうか。いかに政府やオールドメディアが米価高騰の原因は転売ヤーによる「買い占め」だ、仲卸が「流通止め」だと指摘しても、国民の大半は「本当か」と疑問符で受け止めていた。

　しかも農水省幹部たちが謝罪したのは参院選後の2025年8月8日(金) の自民党農水部会の会合で、だった。これほど国民をバカにした話があるだろうか。農水省は国民から「米価高騰はコメ不足が原因ではないか」という素朴な疑問に対して、「転売ヤー」が買い溜めしているからとか、卸業者が「流通止め」しているからだと回答した。

　そしてオールドメディアも、それらしい「転売ヤー」の玄関先にコメ袋を積み上げた映像を繰り返し流したりした。しかし当初からコメを備蓄するには低温保冷庫が必要なことなど、コメに特化した施設が必要なことが指摘されていた。確かに、コメの一部は転売ヤーがコメに関する知識もなく買い占めただろうが、その量は知れたものだ。基本的にコメ需要に対する供給量が不足していたことが米価高騰の原因だった。

　さらに小泉農相に代わるや備蓄米の放出を早々と決めたが、税金で購入した備蓄米を5kg2000円で消費税まで取って販売するとは、どこまで国は国民からカネを毟り取ろうとしているのだろうか。それとも国民は税金であれ社会保険料であれ、何であれ搾り取るものだと財務官僚たちは考えているのだろうか。

　そのことを無批判に報道し続けたオールドメディアの無知蒙昧にも怒りを覚える。そしてトドノツマリが引用記事だ。その何処に「農水幹部が国民に謝罪した」とあるだろうか。「農林水産省　渡辺毅 事務次官 「どうも、すみませんでした」 コメ政策をめぐる自民党の会合で、農林水産省の幹部らは「コメが足りていると、ずっと申し上げてきたが誤りだった」と謝罪しました」とあるではないか。すかさずメディアの記者は「国民に謝罪しないのか」と農水省幹部に詰め寄るべきではなかったか。

　さらに「小泉農水大臣は「令和のコメ騒動とも言われる状況を作ってしまった一端は、間違いなく我々農水省にある」としています」と結んでいるが、今年度以降の善後策を農水相に問い詰めないのは何故だろうか。それとも記者たちは政府が増産要請すれば、今年から増産できるとでも考えているのだろうか。

　正式な記者会見を農水省に要請して、国民に報道する義務がオールドメディアにはありはしないだろうか。これまで散々農水省の云うがままに「米価高騰は転売ヤーによる買い占めだ」と報道して来た責任の一端なりとも感じてないのだろうか。また、先月２０日に投開票された時点で「米価高騰はコメ不足だった」と分かってなかったのか、と質問すらしないのは何故だろうか。しかも、自民党農水部会で謝罪したのも8月8日と、臨時国会が閉会した当日ではないか。これで農水省が追及されることもなく、秋の国会が始まる頃には国民も議員諸氏も「コメ不足」のことを忘れているとでも考えたのだろう。そして万が一にも臨時国会を8日までに賛成した国会議員諸氏は農水省の謝罪を知っていたとしたら、由々しき問題だ。盆休みなどしている暇などないはずではないか。立憲党野田氏の責任は重大だと云わざるを得ない。

　コメ不足が自民党の農政30年の結果だとしたら、農政の大転換を行わなければならない。さもなくば国民の食糧安全保障など絵空事でしかない。そうした抜本的な農政改革を国会で議論すべき契機となるべき「農水省の謝罪」を自民党の農水部会内の話で終わらせてはならない。すっかり舐められた国民は心の底から怒るべきだ。