プーチンの「負けない戦争」もそろそろ終焉を迎えそうだ。

<米国のドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は8月15日、アラスカのアンカレッジで会談した。
 会談では、プーチン氏がウクライナ軍のドンバス地域からの撤退と割譲を求め、見返りに再攻撃をしないと書面で約束する提案を行ったという。
 トランプ氏は、即時停戦ではなく和平合意を追求すべきという点で、プーチン氏と一致したと語った。
 8月18日、トランプ氏とウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、英国・フランス・ドイツ・イタリア首脳を交えて会談を行った。
 その後、10日以内に安全保障の詳細決定、2週間以内に米国とロシア、ウクライナの首脳会談が行われるのではないかという希望的な予測が出ている。
 ロシアは、侵攻の経済負担とウクライナからのエネルギー施設などへの無人機攻撃で、混乱し弱体化しつつある。
 だからといって、ロシアが侵攻をやめ停戦へと進むかどうかは未知であり、プーチン氏の意思と決断次第とみられている。
 米欧とウクライナでは、ウクライナの安全保障について検討が進められている。「近い時期に、米露とウクライナの間で停戦の話が決まるのではないか」という希望的観測も出てきている。
 このように、交渉の話が進む中、実際のところロシア軍の地上戦に動きの変化がみられるのだろうか。
 交渉が進んでも、ロシアの地上作戦が止まらなければ、口先だけの交渉事であるということになる。
 そこで、「ロシアの地上作戦の実態はどうか、ロシアが侵攻を停止する予兆はあるのかないのか」を考察する。
 特に、ロシア地上軍の動き(戦闘の回数の変化)、地上作戦を支援する空爆回数、自爆型無人機の攻撃回数の変化をもとに分析する。
1.ロシア地上作戦はドネツクが主攻撃
 ロシアは主に、東北部のルハンスク州からハリキウ州、ドネツク州で攻撃を行っている。現在の主な攻撃は、ドネツク州の南部であり、中北部ではほとんど進展していない。
 だが、攻撃は続行中であり、昨年6月から約50万人の損失を出しても止まることはなかった。
 毎日多数の損失を出して弱体化しても攻撃し続けている。
 ロシア軍の攻撃とウクライナの防御の戦況推移予測で判断する限り、ドネツク州全域を占拠するには早くて1年、遅くて2~3年はかかるだろう。
 地上戦だけをみても、ロシアは現在、全正面の攻撃を停止する様子は全くない。

図1 ロシアによる各時期の占拠地域および現在の主な攻撃
出典:米国戦争研究所「Critical Threats」の戦況図に筆者が書き加えたもの

2.ロシア地上作戦の攻撃頻度は高止まり
 ロシア軍の地上攻撃(戦闘)回数はどうなのか。
 2025年7月以降の攻撃回数は、次のグラフ1のとおりである。常に150回前後であり、その回数は減少傾向にはない。
 停戦の意志があるならば、戦闘の回数は減少傾向にあるはずだが、そのような兆候は全くない。
 その結果、兵員の損失は侵攻開始以来、100万人を超え、2025年7月に3.3万人、毎日1000人の損失を出している。
グラフ1 ロシア地上軍の戦闘回数の推移(2025年7月1日から)
出典:ウクライナ参謀部日々発表資料を筆者がグラフにしたもの

3.地上作戦を支援する航空攻撃も継続
 局地的地上戦を成功させるには、火砲の支援と前線への航空攻撃(滑空弾攻撃)が必要である。
 これまでに火砲の損失は侵攻開始以降3万門を超えており、航空攻撃への依存が大きくなっている。
 滑空弾攻撃では、戦闘爆撃機が1発あたり100~150キロの爆薬が装填された滑空弾を約70~80キロ離れたところから、ウクライナ軍地上部隊に対して、発射して攻撃する。
 この攻撃で滑空弾が命中すると、陣地や戦車等は破壊され、兵士も吹き飛んでしまう。

図2 ロシア戦闘爆撃機による滑空弾攻撃のイメージ
出典:各種情報に基づき筆者が作成したもの

 このロシアの空爆回数は、米露首脳会談前後で変化しているのか。7月2350回、8月2370回と空爆は続いている。やめる気配は全くない。
グラフ2 ロシア軍の空爆回数の推移
出典:同上
4.地上作戦での歩兵攻撃と輸送支援
 地上戦で、ロシアの戦車・歩兵戦闘車の損失が1万1000両、装甲車が2万3000両を超えた。
 最近では、前線でロシア軍の戦車等の出現が極めて少なくなった。
 その代わりをしているのが、軍用車ではなく四輪駆動の一般車両にドローン除けの鉄の網をつけたものだ。

図3 一般車両による歩兵支援
筆者作成


 軍用車と一般車の損失が2024年7月からほぼ2000両を超え(同年9月を除く)、2025年の4月と5月は約4000両に達している。この8月には約3500両に達している。
 戦車等がなくなっても、一般車両を使い、多くの損失が予想されても、歩兵の攻撃(肉弾戦)を行っているのである。>(以上「現代ビジネス」より引用)




データは正直に語る:ウクライナ攻撃をやめる気が全くないプーチンーー米ロ首脳会談後も地上作戦への戦力投入や航空機支援に変化なし」と西村 金一(国際軍事評論家)氏もプーチンに対して私と同じ観測をしている。
 プーチンは戦争を止める気は全くない。なぜなら前線で死傷するのはプーチンや彼の家族でないからだ。独裁者はクレムリンの奥深い安全な場所から軍司令部に「ウクライナを攻めろ」と命令すれば済む。これほど簡単で権威欲を満たすことは他にないだろう。プーチンにとって戦争こそが彼の人生目的になっている。

 だから地上軍が安全に前進する装甲車などの大多数が破壊され、装甲車などによる進軍できなくなった現在、引用したイラストのように兵士が徒歩かオートバイに乗って前線へ進軍しているという。兵士が防御もなく前進するのは無謀でしかないが、プーチンは少しも気にしてないようだ。だからロシア軍兵士の損耗は一日当たり千数百人と高くなっている。
 どうしてもウクライナ軍が構築した要塞地帯を突破できないため、プーチンは要塞地帯をウクライナが放棄することを条件に停戦協議の席に着くとしていた。しかし訪米したゼレンスキー氏がそれをもあっさりと呑むと、こんどはウクライナ全土の非武装化などを条件に持ち出して停戦協議のハードルを上げた。プーチンは停戦協議の席に着こうとはしない。

 そうすると、帰国したゼレンスキー氏は「領土を1mmたりとも割譲しない」と断言した。それに反発したのか8月20日にロシアは大量のドローンとミサイルでウクライナ領の奥深く西部地域の民間施設を攻撃した。それに激怒したトランプ氏はロシア国内への攻撃を容認する発言をして、直ちにウクライナ軍は翌日にロシアが攻撃したドローン等の倍する数を投入してロシア領内の軍事施設や兵站基地を攻撃した。
 トランプ氏はインドに対してロシア原油の購入を止めるように直接呼びかけ、それに同意しない場合は関税措置を講じてインドを制裁すると恫喝した。もちろんトランプ氏は対ロ経済制裁もレベルを上げて、経済面でロシアの継戦能力を削ぎ落とそうとしている。プーチンは事態の急変に驚いているだろう。トランプ氏はプーチンに寛大な態度で停戦協議を持ち掛けていたが、プーチンの態度に癇癪を起こしたトランプ氏はロシア国内の攻撃に米国製兵器の使用を許可した。

 戦場の地上には蜘蛛の巣が張っているようだという。それはドローンが妨害電波で操縦できなくなるのを防ぐため、ドローンに光ファイバーを付けて飛ばし、数キロ先の塹壕に潜むロシア兵を直接爆死させた痕跡だ。そうした光ファイバーが蜘蛛の巣のように戦場の地上に残っているという。塹壕に潜むロシア兵は満足な食料や水もなく、ドローンに発見される恐怖に怯えているという。
 科学技術力で勝るウクライナは兵士の損耗を出来るだけ避けて、安全な後方陣地から最前線のロシア軍兵士を遠隔操縦のドローンで攻撃している。前線は膠着状態に陥っているが、ロシア軍兵士は日々損耗している。いつまでロシア軍が軍組織を維持できるかは時間の問題になっている。プーチンが強気でいられるのもそれほど長くないだろう。ただ独裁者プーチンの戦争で命を落とすウクライナ国民とロシア国民が哀れだ。

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