観光立国論に多くの日本国民はウンザリしている。
<2025年8月25日、香港証券取引所は中国恒大集団(Evergrande Group)の株式上場を廃止すると発表した。
これは、中国の不動産危機が依然として長いトンネルから抜け出せていないことを鮮明に示した。そしてさらに、日本へ大挙してやって来る中国人観光客への影響も――。
中国の不動産危機がインバウンド政策見直しを迫る?
恒大破綻による資産価値の下落は、中国の富裕層および中間層上位の家計に影響を与える。 この層は日本で高額消費を行う主要な観光客層であるため、訪日客数が増えても消費単価が低下する可能性がある。
これは、中国の不動産危機が依然として長いトンネルから抜け出せていないことを鮮明に示した。そしてさらに、日本へ大挙してやって来る中国人観光客への影響も――。
■中国にとって一企業の経営破綻にとどまらない恒大問題
恒大は2000年代、中国の都市化ブームを背景に急成長した。
地方都市で低価格の土地を取得し、着工前販売による資金回転を最大化しつつ、巨大プロジェクトを次々と立ち上げていった。
2009年には香港市場で巨額の資金を調達し、不動産事業からサッカークラブ、電気自動車まで事業を多角化。
しかし、この成長モデルは「借入による拡大」を前提としており、2020年に中国政府が導入した不動産業者の借入制限策「三条紅線」により資金繰りが急速に悪化した。
2021年には社債返済が不能となり、2024年1月には香港高裁から清算命令を受けた。
最終的な債務総額は3000億ドル(約49兆円)超に達したが、清算による資産売却額はわずか約2億5500万ドルと見込まれ、回収率は1%未満と推定される。
不動産が中国GDP(国内総生産)の約4分の1を占め、家計資産の約7割が住宅という経済構造の中で、資産価格の下落は消費の冷え込みを招く。
恒大の破綻は、一企業の経営失敗にとどまらず、中国が抱える構造的リスクを映し出す象徴的な「事件」となったのである。
中国人観光客一人あたりの旅行消費額は約20万円
ところで、ご存知の通り、日本では訪日中国人観光客が急増中だ。
中国人観光客一人あたりの旅行消費額は約20万円
ところで、ご存知の通り、日本では訪日中国人観光客が急増中だ。
日本政府観光局(JNTO)によると、2025年6月に日本を訪れた中国本土からの旅行者は約80万人で、前年同月比でほぼ2割増となっている。年初からの累計では470万人を超え、韓国からの観光客数を上回る可能性もある。
さらに、中国人観光客は一人あたりの旅行消費額が高く、観光庁の調査では2024年の平均は約20万円に達する。
免税店でのブランド品購入、家電量販店での大量購入、高級料亭での食事など、高単価消費が特徴だ。
この傾向は地方経済にも波及しており、北海道・九州・沖縄などでは宿泊客の3~4割を中国人観光客が占め、ホテル稼働率の上昇が設備投資や雇用増につながっている。
一方で、京都や浅草などの人気観光地では、交通混雑や宿泊費高騰、マナーを巡る摩擦など、オーバーツーリズムの問題も顕在化している。
観光による経済効果と生活環境への影響――観光地にとってはまさに痛しかゆしの状況だ。
中国の不動産危機がインバウンド政策見直しを迫る?
恒大破綻による資産価値の下落は、中国の富裕層および中間層上位の家計に影響を与える。 この層は日本で高額消費を行う主要な観光客層であるため、訪日客数が増えても消費単価が低下する可能性がある。
これまで「爆買い」を行っていた旅行者の行動変化も想定されるし、中国国内で金融引き締めや送金規制が強化されれば、旅行資金そのものが制約を受け、観光消費全体の伸びを抑える要因となり得る。
また、中国経済の不安はアジア域内の株式・社債市場に波及し、日本の資本市場にも影響する可能性が大きい。
さらに、不動産分野では訪日観光客増加を前提とした開発計画の中に中国資本が関与する案件も多く、計画の見直しや中止に追い込まれる恐れもある。
増加する中国人観光客の陰で、香港市場から姿を消した恒大の上場廃止は、日本のインバウンド戦略の前提を揺るがす可能性があるのだ>(以上「J-cast」より引用)
「オーバーツーリズム困るがカネも落とす中国人観光客 自国の不動産危機で訪日減→日本経済には痛手の恐れ」との見出しに驚いた。なぜかというとJNTO(日本政府観光局)の発表によると「2024年1年間、中国本土からの観光客は606万名を超えており前年の179万名の3倍以上増加。 今年に関しても、2024年3月の452,525名から、2025年3月は661,700名と増加しており、夏休みや国慶節の時期に向けてさらに増加が見込まれている」とあるからだ。
確かに中国人のオーバーツーリズムは韓国人観光客と同様に、マナーの悪さから国内観光業者から嫌われている。しかも中国人観光客は「カネを落とすというが中国人が経営する「民泊」に宿泊し、中国人が経営する貸切バス会社のバスで移動し、中国人が経営する土産物店で観光土産を購入するから日本国民には余り還元されていない。ただ大量のゴミと騒がしさとマナー以前の品行で観光地を台無しにするだけとの批判が多い。
民泊では維新が大阪府知事や大阪市の政権を獲得した頃から大阪で激増した。ことに大阪の特区民泊制度は全国の特区民泊の約9割が集中するほど規模が大きく、特に大阪市内に集中している。そして当然ながら2024年度には、特区民泊施設に対する苦情が急増し、生活環境への影響が懸念されている。
過去からの経緯を知るために数字を挙げると、2016年に大阪市が特区民泊を導入して以降、特にコロナ禍からの観光需要回復に伴い施設数が急増し、現在では6000件を超える規模になっている。特に訪日客が集中するミナミの繁華街に近い中央区、浪速区、家賃相場が低く交通の便が良い西成区で増加が目立ち、民泊の増加に伴い周辺住民からの苦情も増加しており、2021年には88件だったものが、2024年には400件と4.5倍に増加している。苦情の内容は、ごみの放置、騒音、マナー違反など、生活環境に関わるものが多く、特に住居地域での大規模施設に対する懸念が高まっている。
特区民泊は、年間営業日数に制限がないため、採算性が高く、ホテルや旅館業法よりも規制が緩いため、事業者にとって魅力的な制度となっているようだ。最近問題になっているのは賃貸マンションのオーナーが入居者の知らない内に中国人に売却され、入居者を追い出すかのように家賃を二倍近くに値上げしたり、点検修理中と称してエレベータを止めたりする嫌がらせが横行している。賃貸で貸しているよりも民泊で稼ぐ方が儲かるからだという。
今年の万博を目当てに海外の資産家が目を付け、4月末までに特区民泊の事業者として届け出たのは中国系とみられる個人や法人が延べ2635件で、全体の42・5%に及んだ。さらに土地建物の所有に目を向ければ、さらに増える可能性があり、政府による早急な規制法の設置を行うべきだ。
今後、中国の経済崩壊に中国人インバウンドが減少すれば、民泊もサービス向上が進み、差別化できない施設は淘汰(とうた)される可能性がある。当然、民泊需要は減少するだろうが、賃貸に戻すのは困難だろ。さらに民泊で室内外が荒れ果てたマンションを外国人投資家がそのまま放置する事態になれば外国人所有者に対して、行政はいかなる解決方法を見出すつもりなのか。民泊を許可した行政がその結末までも責任を持つべきだろう。 外国人による投資問題が表面化しているのは大阪だけではない。羊蹄山を望む北海道ニセコでも中国人投資家が巨大リゾートホテルを建設しようと、倶知安町巽地区で開発許可を得ずに約3.9ヘクタールの森林が違法に伐採された。それに対して地域住民が道に相談し北海道は事業者に対して工事停止と計画の是正を求めた。
当初、無許可開発していた「ラ プルーム ニセコ リゾート特定目的会社」は東京地裁から破産手続き開始決定を受けたが、新たな国内ファンドがこのホテルを取得し、9月上旬にも建設を再開する予定になっているという。このように行政の目の届きにくいところで国立公園内であろうと勝手に樹木を伐採し、地域住民の生活用水でもある河川汚染を引き起こしたりする事案が後を絶たない。儲かりさえすれば良い、という考えを止めて、日本国民のために文化遺産する寺社や地域社会の景観をいかに守り、山紫水明の自然をいかに次世代の日本国民に継承するかを真剣に考えなければならない。外国人は日本がダメになったら国へ帰れば良いが、日本国民にとって郷土は日本だから、インバウンドの一時的なカネに心を奪われるのではなく、長い視点で日本を護りぬかなければならない。