無知蒙昧の政治家を選び続けている責任は国民にある。

批判に「馬耳東風」な石破首相
 太平洋戦争の日本の敗戦から、15日で80年となる。そこで今日は、思うところを述べたい。
 ひと言で言い表せば、いまの日本が、ひどくだらしなく思えてならない。緩く沈滞しているように思えてならない。根本的には、加速する少子高齢化による「老化現象」なのかもしれないが。
 具体的に、日本の何が朽ち果てているかと言えば、特筆すべきは、政治と日米関係である。
 政治に関しては、もはや末期症状甚だしい石破茂首相が、いまだに総理総裁の座にしがみついていること。及び自民党内も野党も、この「老醜漂う」総理総裁の首に、鈴をつけることができずにいることだ。
 日本政治を何十年も見てきている身からすれば、昨年10月の衆院選で与党過半数割れし、今年6月の都議会選で大敗し、先月3たび参院選で与党過半数割れした。そんな「戦犯総理総裁」が、いまだに日本の最高権力者の座に居座り続けていること自体が信じられない。
 「厚顔総裁」は、先月28日の自民党両院議員懇談会で非難轟轟(ごうごう)となっても、今月8日の両院議員総会で辞任を求められても、馬耳東風だ。
 これは、明らかに民意の軽視である。日本の民主主義の劣化である。

「オレは絶対に辞めない」
 日本では、武士の時代から、何かの大事に失敗すれば、トップが責任を取ってきた。それが日本人の「美学」というものだった。
 それなのに石破首相は、一体何を考えているのだろう? 近い関係者に聞くと、その心境をこう代弁した。
「挑戦すること5回目にして、最後のチャンスとも言える67歳で、やっと掴んだ総理総裁の座だ。まったく辞める気などない。今月後半にはTICAD(アフリカ開発会議)が、来月後半には創建80周年の国連総会が控えており、これらの国際行事には、何としても自分が出ると言っている。戦争についての『80周年談話』も、必ず出すと頑なだ。
 選挙3連敗の責任は、今月中に自民党として参院選総括を行った後、森山裕幹事長と木原誠二選挙対策委員長が辞任することで取ろうと考えている。それでも重鎮の森山氏がいないと石破体制はもたないので、総務会長などに横滑りさせようということのようだが。
 ともあれ、自分は何としても居残ろうと考えている。批判ののろしが上がっている地方を押さえ込むと同時に、総裁の生殺与奪を握ることになった総裁選挙管理委員会(逢沢一郎委員長)の動きを牽制。なるべく議論を長引かせて、総裁選前倒し論を雲散霧消させようという算段だ」
 これまでの自民党は、良くも悪くも日本の象徴のような存在だった。すなわち見苦しい総裁が出たら、「降ろし」が起こって、外堀を埋めて内堀を埋めて、万事休すとしたものだ。そうした「自浄作用」によって、自民党は1955年の結党以来、長期政権を維持してきた。
 ところが今回は、「総裁辞任論」は自民党議員の間でも地方組織でも広がっているのに、全体的な激しい「倒閣運動」になっていない。つまり自民党には、もはや「ダメ総裁」を引きずり下ろすパワーすら残っていないのだ。

国民民主党と参政党の欠点
 それなら野党はどうかと言えば、国民民主党や参政党など、元気のいい新興勢力が伸びてはきている。だが、自民党に代わって政権を任せられるかと言えば、両党ともいま一つだ。
 例えば国民民主党は、昨年10月の衆院選で、「手取りを増やす」「103万円の壁を178万円に引き上げる」「ガソリン税の暫定税率を廃止する」などの公約を掲げて、大躍進を果たした。こうしたスローガンは素晴らしいし、実際、特に若者を中心とした有権者に、しっかり刺さった。
 だが、個別具体的な目先の公約はあっても、戦後80年を経たこの国をどうしていくのか、激動の世界の中で日本がどう生き残っていくのかというグランドデザインは見えてこない。
 その点は「腐っても鯛」で、70年の歴史と実績を持つ自民党の方が、はるかに上だ。だから有権者は、自民党を捨てて国民民主党に「命を預ける」という選択ができないでいる。
 さらに、新興勢力の参政党が掲げる公約「日本ファースト」も素晴らしい。他国の顔色を窺わず、日本人を第一に考え、日本の繁栄を取り戻すという理念には、大いに共感できる。
 だが今月5日、オレンジのネクタイがトレードマークの神谷宗弊代表の初となる国会代表質問を見ていて、私は幻滅してしまった。SDGs(持続可能な開発目標)政策の廃止、パリ協定も含めた脱炭素政策の廃止、パンデミック対策の見直しを含めたWHO(世界保健機関)からの脱退、ウクライナ支援の見直し、DEI(多様性・公平性・包括性)政策の廃止、政府によるSNS規制の撤廃というトランプ大統領の「6つの政策」について、トランプ大統領と足並みを揃えてやっていくべきだという主張を展開したのだ。

トランプに翻弄される日米関係
 いまの日本は、後述するように米トランプ政権が、従来のように足並みを揃えてくれないから苦悩しているのだ。もしも日本まで「トランプ化」したなら、日本はいとも容易に自壊と分裂の道を歩むだろう。アメリカほどのパワーとエネルギーを有していないからだ。
 ともあれ、野党は立憲民主党、維新の会、国民民主党、参政党……と百花繚乱ではあるが、いまだ互いに協力して政権を奪う「知恵」はない。かつ、1993年に8野党をまとめ上げて細川護熙政権を樹立した小沢一郎氏のような「剛腕」もいない。せっかく衆参両院で過半数を握っていながら、本気で政権を奪いに行こうとしない野党など、「烏合の衆」と変わらない。
 次に、日米関係について述べたい。1月にドナルド・トランプ政権が始動して以降の日米関係もまた、大いに迷走している。
 日本時間の8月7日午後1時、米ドナルド・トランプ政権による新たな「相互関税」が発動された。しかし第一に、石破政権が「勝ち取った」としていた「負担軽減の特別措置」が、EU(ヨーロッパ連合)にしか適用されていなかった。
 日本側の発表によれば、「15%を超えるものは従来通り据え置き、15%未満のものは15%」ということだった。ところが、実際に発動されたのは「15%一律上乗せ」だった。
 これによって、26・4%のはずの牛肉は41・4%、15%のはずの織物は22・5%、同じく15%のはずの光ファイバーは21・7%……。
 第二に、自動車関税は、27・5%から15%に軽減されるはずだったが、されていない。すでに「トランプ関税」の影響で、4月~6月の営業利益が、トヨタは1兆1661億円減少、ホンダは1246億円減少、日産は687億円減少である。
 その後、9回目の訪米中の赤澤亮正経済再生担当大臣が、アメリカ側と再交渉し、日本時間の8日午前8時過ぎから会見。相互関税と自動車関税について、アメリカ側がミスを認め、「大統領令を適時修正する措置を取る」との説明を受けたと述べた。

混迷する日本へのトランプ関税
 だが、これで一件落着とは言えない。アメリカ側がいつ修正するのかについて赤澤大臣は、「一般的な理解として、半年や一年ということは当然ない」と煙に巻いたが、不明だからだ。
 その間にも、自動車業界には、1日あたり30億円もの損失が出ている。そもそもこうした損失を1日も早く食い止めるために、「日米間で合意文書を作成しなかった」(赤澤大臣)のではなかったか。
 さらに「そもそも論」で言うなら、従来のアメリカの自動車関税は2.5%だったが、日本はゼロである。こちらが「ノーガード」なのに、トランプに吠えまくられる筋合いなどない。  
 外務省で経済局長を務めた山上信吾前駐豪大使に、今回の日米関税交渉について聞くと、こう答えた。
「少なくとも、15%を関税率の上限とすることと、トランプ政権時に限定した取り決めであることを文書にすべきだった。それをしないと、アメリカが今後、恣意的に変えてくるリスクがある。
 また、一連の交渉で石破首相のリーダーシップが、まったく感じられなかった。2月7日の日米首脳会談の時は関税問題を議題にせず、途中の交渉は赤澤大臣にお任せで、交渉の最終盤でも自らアメリカに赴かなかった。これでは『石破ニゲル』と揶揄(やゆ)されても仕方ない」

「合意文書なしではやられる」
 もう一人、元経済産業省の官僚で、かつて日米交渉に携わっていた人物も、こう語る。
「30年前は、アメリカの貿易赤字の3分の2が日本だったが、いまは6%しかない。額にすると約8兆6000億円だ。
 しかも日本のデジタル赤字が年間約7兆円あり、そのほとんどがアメリカ分なので、差し引きで1兆円余りしかない。さらに言うと、日本の製造業はアメリカに工場を作り、年間約10兆円分を世界に輸出している。
 つまり、日本企業はこの30年間、必死に企業努力をしてきたわけで、中国やEUと一緒にしないでくれという話だ。こうしたことを、どれくらいアメリカに説得できたかがポイントだ。  
 今回の関税交渉を見るに、3つの特徴がある。第一に、完全にトランプの一人相撲だということだ。トランプは、自動車やコメについて騒ぐが、そのバックにアメリカの自動車業界もコメ業界もいない。
 第二に、日米の交渉役の立場の違いが明確だ。赤澤大臣はある程度、石破首相から任されて交渉しているが、ベッセント財務長官らアメリカ側の交渉者は、いわば『トランプの雇われ弁護士』にすぎない。だから最後は、石破首相が、トランプ自身と交渉するしかない。
 第三に、文書を交わさなかった点だ。私の経験から言えば、アメリカは文書を交わしても、平気でそれを無視したりする国だ。そのため文書を交わさなければ、さらに危険なことになる懸念がある」

空文化した日米貿易協定
 念のため、アメリカの関係者にも聞いた。すると、驚愕の答えだった。
「日本はアメリカとだけ交渉しているが、われわれは約60ヵ国もと交渉しているのだ。正直言って『真剣勝負』しているのは、中国、EU(欧州連合)、インドとの交渉だけだ。こちらは夏休みも先延ばしで交渉をやっているわけで、多少のミスが出るのは致し方ないことだ」
 私が納得できないのは、そもそもアメリカ側が、2019年10月7日に締結した「日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定」に違反しているということだ。しかもこの協定は、1期目のトランプ政権時に結ばれたものだ。
 それなのに、石破首相がそのことでトランプ大統領に噛みついた気配すらない。石破首相が言ったのは、7月9日、参院選の遊説中に口走った、次のセリフだけだ。
「国益をかけた戦いだ。なめられてたまるか。たとえ同盟国であっても正々堂々言わなければならない。守るべきものは守る」
 こうしたことは、千葉県船橋市で、たまたま通りがかった有権者に向かって言っても仕方ないのだ。

シンガポール首相の名演説
 日本は、「WTO(世界貿易機関)体制を維持しよう」という自由貿易グループに入っている。それどころか、CPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)を主導しているのだ。それなのに、石破首相はなぜトランプ大統領に面と向かって、「あなたのやっていることはおかしい」と言わないのか。
 世界を見渡すと、中国、インド、EU、カナダ、ブラジル、シンガポールなどの首脳は、勇ましい正論を吐いている。例えば、シンガポールの黄循財(ローレンス・ウォン)首相は、4月8日、議会で名演説を行った。少し長くなるが、その要旨を訳す。
「アメリカによる最近の関税発表は、ルールに基づくグローバリゼーションと自由貿易の時代は終わったという厳しい現実を裏づけている。これは大きな転換点となる。私たちは世界情勢において、より恣意的で保護主義的で危険な新たな段階に入りつつある。
 第二次世界大戦の終結からほぼ80年間、アメリカは世界の自由市場経済のアンカーだった。自由貿易と開かれた市場を擁護し、多国間貿易システムを構築する取り組みを主導してきた。
 このWTO(世界貿易機関)システムは、数十年にわたる世界的な成長と安定をもたらした。それは貿易の繁栄を可能にし、何百万人もの人々を貧困から救った。それは世界に利益をもたらし、アメリカ自身の経済力の向上にも貢献した。
 アメリカの主要な懸念は中国であり、アメリカが中国のWTO加盟を許すことで、あまりにも多くのことを放棄したと感じている。それなのに中国は、自国の企業に多額の補助金を支給し、非関税障壁を設け、アメリカ企業の市場アクセスを制限するなど、不公平な立場で競争しているという主張だ。だがこれらの懸念は、WTOの枠組みの中で対処されるべきものだ。
 しかし、アメリカがいまやっていることは、改革ではない。それは、自分たちが作り上げたまさにそのシステムを拒否しているのだ。
 さらにアメリカは、商品貿易のみに焦点を向けている。実際アメリカは、ソフトウェアサービス、教育、娯楽、金融など、多くのサービス分野で黒字だが、この事実を完全に無視している。
 シンガポールの場合、アメリカとFTAを結んでいて、アメリカからの輸入品の関税はゼロだ。そのためアメリカとの貿易赤字を抱えているというのに、アメリカはシンガポールの輸入品から10%の関税を取るという。
 私たちは、特に両国間の深く長年にわたる友好関係を考慮すると、アメリカの動向に、大変失望している。これは友人に対する行いではない。
 アメリカの『相互』関税は、第一にWTOルールの根本的な拒否である。他の国が同じアプローチを採用すれば、ルールに基づく貿易システムは崩壊するだろう。これはすべての国に問題をもたらす。
 第二に、本格的な世界貿易戦争の可能性が高まっている。貿易障壁が上がると、そのままになる傾向がある。関税をかける根拠がなくなった後でも、それらを元に戻すことははるかに困難だ。
 アメリカは1930年代に、スムート・ホーリー法を通じて抜本的な関税引き上げを制定した。それに多くの国が抗議し、独自の貿易制限と関税で報復した。それによって世界大恐慌が深まり、拡大したのだ。今日のリスクは、当時よりも大きいかもしれない。
 問題なのは、すでに損害を与えている関税そのものだけでなく、この保護主義の新たな波が予測不可能で不安定であるということだ。保護主義は悪だが、不安定な保護主義はさらに悪なのだ。
 それにしても、米中関係は大きな懸念だ。紛争がエスカレートし、米中関係が不安定になれば、世界は悲惨なものになるだろう。
 アメリカは、保護主義に転向することを決めたのかもしれない。しかし、世界の他の国々は同じ道をたどる必要はない。われわれはこちら側に加わるパートナーとともに、強靱性を確保し、多国間システムの主要な部分を維持していく。
 私はシンガポール国民に、『恐れるな』と言いたい。私たちはこれまで以上に、毅然とした態度をとって団結していく。暗澹とした問題ある世界において、シンガポールの立場を守っていく」

 なぜ石破首相に、このくらいのスピーチができないのだろうか? 世界のGDPランキングで27位の小国に言えて、4位の日本に言えないことがもどかしい。
 日米関係について納得できないことは、他にもある。8月6日、石破首相も出席して広島で、広島市原爆死没者慰霊式並びに平和祈念式(平和記念式典)が開催された。
 周知のように、今年は原爆が投下されて80年という節目の年である。私も式典の直前に広島を訪れ、祈りを捧げた一人だ。

被爆者を踏みにじる米側の発言
 アメリカ時間の8月5日、米国務省が「談話」を発表した。それは次のようなものだった。
「明日、80年前、アメリカ合衆国と日本は太平洋における壊滅的な戦争を終結させた。そして80年間、アメリカ合衆国と日本は、太平洋の平和と繁栄を守るため、肩を並べて立ち続けてきた。明日は、広島の人々と、彼らが伝えてきた平和と希望の揺るぎないメッセージに敬意を表し、深く思いを馳せ、追悼する厳粛な日だ。80年間、彼らの立ち直る力は世界にインスピレーションを与え、彼らの和解の精神は米日同盟と、平和と繁栄への共通の関与を強めてきた。
 今日、両国は緊密な同盟国として共に立ち、団結と目的意識を持って未来に立ち向かう。可能性への希望を抱き続けることで、私たちは世界にとって自由と進歩の灯台となるパートナーシップを築いてきたのだ。まさに――付け加えるならば、これは二国間協力によって何が達成できるか、友情の本質、日本の美しさ、そして80年経った今、私たちがここに立ってそのことを語ることができるという事実を示す完璧な事例なのだ」
 約14万人もの無辜(むこ)の広島市民を虐殺した80年後の談話に、謝罪・反省・後悔といったものは欠けらもなく、ひたすら「未来志向」なのだ。広島での式典に参列したジョージ・グラス駐日米国大使もこの日、「X」でこうつぶやいた。
<この厳粛な追悼の日、広島の人々と、その平和と希望のメッセージに敬意を表します。80年にわたり広島の人々は、その不屈の精神で世界中に大きな影響を与えてきました。そして、その和解の心は、日米のパートナーシップと、平和と繁栄を追求する両国の取り組みを力強く後押ししてきたのです>

日本はもっと老獪な外交を
 同じく、「未来志向オンリー」である。おそらくアメリカとしては、「日本軍が起こした悪の戦争を終結させるために、アメリカ軍が取った不可避の措置だった」という解釈なのだろう。
 それは、アメリカ側の解釈としては理解できる。だが、日本の立場はまったく異なる。広島14万人、長崎7万人強という尊い命が、2発のアメリカの爆弾によって失われて、謝罪もされずに怨まない国があるだろうか。
 ちなみに石破首相は、アメリカ側に何も求めないどころか、式典中に居眠りしていたことが指摘された。後に林芳正官房長官が否定したが、もし事実なら、やはりこの総理はもう壊れている。
 いずれにしても、戦後80年を経て、日米関係は明らかに「変容」してきている。端的に言って、アメリカは従来のアメリカではなく、日米関係も従来の日米関係ではない。
 そしておそらくは、近未来に日本と中国との間で「尖閣有事」が勃発しても、アメリカは日本固有の領土を守ってはくれないだろう。今後、日本は、そうした覚悟を持っていかねばならない。私はそうしたメッセージを込めて、昨年、『尖閣有事』(中央公論新社)を上梓した。
 戦後80年を経たいまこそ、日本の将来について、われわれ自身が「日本ファースト」で考えていくべき時だ。日本は「老化」したが、それなら「老獪さ」も兼ね備えているはずだ>(以上「現代ビジネス」より引用)





戦後80年――壊れつつある総理、日本、そして日米関係」と題して、近藤 大介(『現代ビジネス』編集次長)氏が日米関係に関して苦言を呈している。その最大の眼目は「米国にやられっ放しの日本」と云うことだろう。
 なぜやられっ放しなのか。それは国民が対米関係のすべてを知らされてないからだ。たとえばトランプ関税に関してでも「「30年前は、アメリカの貿易赤字の3分の2が日本だったが、いまは6%しかない。額にすると約8兆6000億円だ。しかも日本のデジタル赤字が年間約7兆円あり、そのほとんどがアメリカ分なので、差し引きで1兆円余りしかない。さらに言うと、日本の製造業はアメリカに工場を作り、年間約10兆円分を世界に輸出している。」という対米取引関係のすべてを知っている国民は極めて少数だろう。

 注釈を加えるならデジタル取引とはインターネットなどのデジタル技術を利用して行われる取引全般を指す。具体的には、電子商取引(EC)やデジタルプラットフォームを通じた取引などが含み、その電子商取引市場規模やEC化率などの調査結果を経済産業省 が毎年公表している。だからトランプ関税に関してオールドメディアが対米輸出に関してだけ報道するのはオールドメディアの勉強不足と云うしかない。
 しかも米国に進出した日本企業が米国内で生産した工業製品を米国から輸出している10兆円を米国の対日取引の赤字から差し引かなければならないだろうし、米国内で操業している日本企業が米国民に支払っている賃金なども米国経済に対する貢献として考慮すべきだろう。そうした日本が果たしている対米取引の全体を俯瞰するなら、トランプ氏は日本に感謝こそすれ高関税を課すのは間違いだと反省すべきだ。

 シンガポールの黄循財(ローレンス・ウォン)首相が4月8日に議会で行った演説は秀逸だ。それは引用記事中にあるから精読して頂きたい。近藤氏が引用論文に要約だが引用してくれたのに感謝する。それを読めば日本の首相がいかに低能な俗物かが解るだろう。
 日本の政治に足りないのは覚悟だけではない。全体を俯瞰するだけの知能と、国際社会の来し方と行く末を考察する洞察力が決定的に欠落している。それは原爆投下に対する石破氏の記念式典での発言からも明確に窺がえる。原爆犠牲者の慰霊式典であるならば、なぜ無辜の市民が虐殺されたのか、を全世界に問わなければならない。戦争がいかなる経緯から始まったにせよ、その途次において非戦闘員を大虐殺する「核」兵器を使用した罪を米国政府に問わない限り、日本国民の原爆犠牲者に対する慰霊式典は永遠に終わらない。

 戦後80年の節目に、日本の80年は米国によって踏みつけられて来た80年だったことを忘れてはならない。戦後の食糧難を米国政府が飼料用の脱脂粉乳や古古小麦粉を援助してくれた、と感謝する一部国民がいるが、占領国が被占領地の住民を「飢えさせない」のは戦時国際法に定められた占領国の義務だ。しかも日本政府は米国の要求に応じて当時の日本国家予算の50%近い400億円もの対価を支払っている。戦後の米国からの食糧支援が無料支援ではなかったことを、なぜか日本国民の大半は知らされてない。もちろんオールドメディアは一度たりとも報道していないが。
 焼け野原になった日本で国民が必死に働き製造業を復興させると米国政府はその都度、日本産業を叩いた。最初は繊維業界でその次は造船業界そして半導体業界と、日本国民が祖国復興に全力を傾けて製造技術開発して生産力を付けるとその業界を叩き潰した。自動車業界も排ガス規制などを突き付けられ、様々な規制を掛けられた。その都度、日本の自動車企業は技術開発で対抗し、最後のCO2規制に対してはハイブリッドで乗り越えた。

 引用論評で近藤氏は「私が納得できないのは、そもそもアメリカ側が、2019年10月7日に締結した「日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定」に違反しているということだ。しかもこの協定は、1期目のトランプ政権時に結ばれたものだ。」と石破氏の対米交渉がいかに日米交渉の歴史を踏まえたものでないかを指摘している。
 勉強不足と云えばそれまでだが、官邸付きの官僚までも2019年10月に締結した「日本国とアメリカ合衆国との間の貿易協定」を失念しているとは思えない。そうすると、赤沢氏は官僚たちと一切交渉内容を協議していないのではないかと思わざるを得ない。これほど無能な内閣は国益を大きく棄損する。日本国民にとって恥じ以上の国家的損失を目撃していることになる。いつになったらシンガポールの黄循財首相に匹敵する宰相を私たちは戴けるのだろうか。それもすべては有権者たる日本国民の責任だ。無知蒙昧の政治家を選んだ責任は国民にある。

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