中国民に協調性や社会性といった国民意識が存在するだろうか。

情報統制の反動でフェイクニュースの洪水
 習近平が共産党総書記に就任したのは2012年秋の党大会、国家主席に就任したのは2013年3月に開かれた全人代だった。習近平政権が正式に発足したのは、この2013年3月。それ以来、中国経済は減速の一途を辿っている。
 半面、政権にとって都合の悪いニュースが出回らないように、情報が厳しく統制されている。とくに、コロナ禍の3年間(2020~22年)、スマホアプリによる追跡が著しく強化されている。中国のインターネット利用者はすでに11億人を超えているといわれ、コロナ禍のとき、スマホに健康コードと呼ばれる追跡アプリのインストールが義務付けられた。見方を変えれば、コロナ禍は中国政府にとって人民を監視する追跡システムの運用と有効性をテストする絶好の機会だったといえる。
 中国社会は、政府がビッグデータを使って人民の一挙手一投足をつぶさに監視することができるようになった。逆に政府の情報は外に漏れないように厳重に管理されている。
 2024年3月の全人代において李強首相は恒例の記者会見を取りやめ、しかも、これからも記者会見を実施しないと通知した。それをきっかけに、中国人は政府から情報を受け取るチャネルが閉ざされた。とくに、習近平上層部で何が起きているか、信頼できる情報が表に出てこなくなった。それと呼応するように最近、大量のフェイクニュースが波状攻撃のように流れている。
 フェイクニュースを大別すると、1)習近平主席の健康不安に関するものと、2)クーデター説である。
1)について、2012年ころの写真や映像と最近の写真と映像を並べて比べると、当然のことながら、かなりの老衰が観察される。しかも、映像でみるかぎり、習近平主席はかなりのメタボのようにみえる。しかし、それだからといって、何か深刻な病気を患っているとの判断はあまりにも根拠不足である。2024年初め、中国国内発の重病説が全世界を飛び交った。とくにすい臓がんが見つかったなど、かなり具体的なフェイクニュースまで出ていた。その後、重病説のフェイクニュースは徐々に下火になって姿を消した。
 2025年に入ってから、クーデター説が浮上した。その根拠の一つは習近平主席の側近の軍幹部たちが相次いで粛清されたことである。常識的に考えれば、習近平主席自らが抜擢した側近を追放するとは考えにくい。それゆえ、日本だけでなく、アメリカやフランスなど主要国メディアも、このクーデター説をあたかも事実かのように報じている。

あまりに稚拙なクーデター説
 では、習近平主席はほんとうに権力を失ったのだろうか。あるいは、習近平主席の権力基盤がほんとうに揺らいでいるのだろうか。
 結論を先取りすれば、答えはノーである。
 健康不安説は占い師の占いと同じであり、根拠がなくても、確率論の設問である。人の身体は加齢とともに、深刻な病気を患う確率が次第に高まっていく。しかし、政治学や社会学は社会科学である以上、基本的にエビデンス・ベースの論理を展開しないといけない。何よりも自分の期待に基づいてストーリーを恣意的に描くことは認められない。
 一方のクーデター説はあまりにも稚拙で、まじめに受け取るに値しないものである。
 習近平主席が自らの側近を粛清することはない、という仮説は、そもそも成り立たない。かつて、毛沢東自らが指名した後継者林彪を追放したことが、その有力な参考例である。独裁政治のパワーゲームは信頼に立脚するものではない。独裁者は猜疑心が強くなるにつれ、側近に対する信頼が自ずと揺らいでしまう。独裁政治の基本は互いの利用価値の有無である。利用価値がなくなれば、即座に遠ざけられ粛清されてしまう可能性が高くなる。
 どうみても、習近平政権の権力構造はすでに一強体制になっている。現状では、中国政府の中枢に、習近平主席に挑戦できる人物と勢力は見当たらない。むろん、これまでの十数年間、数百万人の共産党幹部が腐敗を理由に追放された。そのことについて不満を持つ共産党幹部が少なくない。それに経済が減速して、底辺の人民の不満も爆発する寸前であろう。しかし、今の中国社会でいわゆる反習近平勢力がすでに結成されているとは思えない。
 習近平政権執行部をみると、習近平主席に絶対的な忠誠を誓う取り巻きによって固められている。彼らが習近平に絶対な忠誠を誓っているが、個々人の権限が相当レベル抑制されている。要するに、彼らが習近平に造反する意思があるかどうか別として、そうする力すら持っていない。習近平が軍上層の側近を相次いで追放した一番の理由は彼らに対する信頼が揺らいだからであろう。
 一強体制の構造上の欠陥として、取り巻きは習近平に忠誠を誓うが、互いに足を引っ張りあう力が強くなることがある。彼らはそれぞれ習近平に迎合するために、同僚の陰口をいうことは排除できない。それを聞いた習近平は誰を信用したらいいか、分からなくなる。習近平政権になってからの共産党幹部追放のほとんどは、腐敗したことが理由だった。しかし、もともとほとんどの幹部が腐敗していることから、やはり習近平への忠誠が十分かどうか、習近平に信用されているかどうかが決め手となっているようだ。
 独裁政治の特徴は恐怖の政治である。習近平にとっては、側近を相次いで粛清することで現役の幹部に恐怖を与えることができる。当面、このパワーゲームが続くと思われる。

次回党大会でも引退はない
 問題は、すべての重要事項の決済が習近平一人に委ねられていることである。たとえ習近平がスーパーマンであるとしても、14億人の大国を1人で統治することができるとは思えない。一方、習近平が2027年に開催される予定の第21回党大会で引退する可能性はほぼゼロである。むしろ、これからさらに加齢していくことから、体力の限界を意識して、習近平は新たな政治構造をデザインしている可能性が高い。
 喩えれば、今の習近平主席は日本の大企業でいうと、代表取締役会長兼社長を一身に背負う独裁体制である。だからこそあらゆる重要事項は習近平自身が決済しないといけない。この体制では、習近平は徐々に体力も能力も限界を迎える。第21回党大会では、習近平はある程度分権を進めるだろう。具体的には代表取締役会長であり続けるが、社長の役割を取り巻きに移譲する可能性が高い。それは習近平が権力を失うことを意味するものではなくて、軍に対する指揮命令権と人事権をしっかり握れば、部下によって造反される心配は低いということだ。
 習近平の健康不安説は、これから加齢とともに繰り返し出てくると思われるが、重要なのは軍に対する指揮命令権と共産党中央の人事権を一人で掌握することである。代わりに、日常的な雑務を取り巻きの「社長役」、すなわち、総理に任せる。ただし、この権力構造が安定して機能する前提は、習近平と「社長役」の総理をはじめとする取り巻きとの信頼関係が維持されることである。とくに、取り巻き同士の足の引っ張り合いが激しくなると、陰口に影響され、習近平と取り巻きたちとの信頼関係も揺らいでしまう心配がある。
 結論をいえば、短期的には習近平政権が揺らぐ可能性はそれほど高くないが、長期的にみると、取り巻き同士の争いがその権力基盤を動揺させてしまう可能性が高いと推察される>(以上「現代ビジネス」より引用)




「習近平失脚」なんて、あるわけがない…「2027年以降も続投する」と言い切れる根拠と、中国共産党の権力構造の見えざる「真実」」と柯 隆(東京財団政策研究所主席研究員・静岡県立大学グローバル地域センター特任教授)氏が「未確認情報」を悉く否定している。
 しかし柯隆氏が強く否定すればするほど、未確認情報の方が真実味を帯びて来るのは何故だろうか。習近平氏に関して広がっている未確認情報として柯隆氏が上げている2つについて検証してみよう。

 まず習近平主席の健康不安説だが、未確認情報では脳梗塞で倒れて北京の中国人民解放軍総医院(通称「301病院」)に搬入されたとの情報があった。脳梗塞は恢復したものの若干の麻痺が残っていて専ら中南海の自宅で過ごしているという情報だ。
 次にクーデター説だが、最新の未確認情報ではつい先日の8月8日に中南海から激しい銃撃戦の音がして、救急車11台が中南海へ入った、というものだ。具体的には張又侠率いる部隊「人民解放軍82軍」が中南海に入ったところ、習近平氏の「近衛兵」が中南海の秩序維持は「近衛兵」の任務だと主張して82軍を排除しようと発砲したため衝突し、機関銃を撃ち合ったという。そのため100人を超える死者が出て多くの兵士が救急車で運ばれたという。そして中南海を制圧したのは張又侠率いる「人民解放軍82軍」だそうだ。

 その衝突の翌日には習近平氏の秘書韓世明が身柄を拘束されたという。柯隆氏はクーデター説は「稚拙」だと切り捨てているが、果たして根も葉もないことだろうか。かつて習近平氏が軍を統帥する党中央軍事委員会主席地位にあって実権を握っていたが、現在では党中央軍事委員会副主席の張又侠(陸軍上将)氏が実権を握り、同じく党中央軍事委員会副主席に 何衛東(陸軍上将)氏が就任しているが、習近平派の 何衛東氏に実権はないという。また一時期、彭麗媛(習近平氏の妻)氏が軍のナンバー2の地位についていたが、現在では軍関係の会議に姿を見せてないという。
 張又侠氏の後ろ盾は北戴河会議に集まっている長老たちで、中国経済が悪化している責任を習近平氏に取らせて失脚させようとしているようだ。昨年の北戴河会議では習近平氏を長老たちが口々に批判し、それ以後習近平氏は自宅軟禁されているのではないかと云われていた。それでも直ちに習近平氏が失脚しないのは、中国共産党内部で混乱が生じている、との印象を国内外で持たれるのを恐れているからだという。

 ハドソン研究所やCSISではポスト中国の戦略を分析しているという。中共政府は中國の崩壊情報を隠し様々な統計数字を捏造してきたが、もはや隠蔽し難い段階に達しているとみている。おそらく習近平氏に経済政策失敗の全責任を負わせて、今秋の全人代で自ら「辞任」する形で表舞台から降ろそうというシナリオが進んでいるという。
 日本との関係で見ると公明党の国会議員が朝貢外交のように毎年中国を訪れているが、その折に公明党国会議員団と面会していた劉建超外交部長が身柄を拘束されているという。劉建超氏は王毅氏の後継者と見做され党中央の反腐敗部門の幹部でもあった。中国を頻繁に訪問しているのは公明党だけではない。立憲党も良く中国を訪れ、岡田氏も劉建超氏と何度も面会しているし、もちろん自民党の日中友好議員団の面々も中国を訪問して彼らと接触して来ていた。

 日本政府は実にバカげた対中政策を執って来たものだ。なぜ、習近平一派ともっと突き放した関係に終始して来なかったのだろうか。それとも中国共産党支配が絶大だとでも考えていたのだろうか。1991年に崩壊したソ連を見れば、誰にだって計画経済で国家運営するのは無理だと解っているはずではないか。習近平氏が「改革開放」を廃した段階で、中国の崩壊は明らかだったはずだ。
 習近平氏が鄧小平氏を批判し「改革開放」から「戦狼外交」に転じた段階で、日本の国会議員諸氏は中国を見捨てるべきだった。未だにパンダが欲しい、とほざく哀れな政治家たちには言葉もない。彼らには国家戦略が何たるか解ってないようだ。

 柯隆氏は2027年で習近平氏が再任されると予言しているが、それどころか間もなく習近平氏は失脚するだろう。さもなければ経済崩壊した中国民の憤懣が爆発して、中国全土が大混乱から騒擾状態に陥るだろう。中国共産党が最も恐れているのは中国共産党一党独裁体制が終焉することだ。彼らの「暖衣飽食」生活が終わるのを、彼らは最も恐れている。だから習近平氏が変更した「終身主席」制度を再び変えることなど微塵も意に介しない。なぜなら中国共産党は政府よりも憲法よりも上位の存在だからだ。
 ハドソン研究所やCSISは中国民主化に向けて、いかなる戦略が有効かと策略を模索しているようだが、中国民の社会思想教育の程度がいかなるモノかが問題だ。民主国家がいかなる制度で、制度である以上は自己規制装置が必ず伴われなければならない、と云うことを中国民は理解するだろうか。それとも政権さえ取れば自らの一族の「暖衣飽食」生活が保障される、と思い込まないだろうか。中国民に協調性や社会性といった国民意識が存在するだろうか。柯隆氏はそうした民主国家運営の基盤的な思想が中国民にあるか否かを心配しなければならないだろう。

このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。