米国は製造に関するテクノロジーを失いつつある。
<国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、モーリス・オブストフェルド氏は、トランプ米政権の高関税政策をきっかけとする経済・金融秩序の変動に関し、次期政権以降も「世界は長期にわたって元に戻らない」という可能性を考慮する必要性を訴えた。日本に対し、アジアや欧州諸国との連携強化を促した。10日までに時事通信のインタビューに応じた。
オブストフェルド氏は、米政権が高関税や政府債務膨張といったドルの信認を損なう政策を展開していると問題視。「貿易相手国を米国以外との統合深化へ向かわせる」と分析した。
日本に対し、「包括的および先進的な環太平洋連携協定」(CPTPP)や、東南アジア諸国連合と日本、中国、韓国(ASEANプラス3)といった経済連携を「強化すべきだ」と訴えた。
今後の国際通貨体制については、基軸通貨ドルの地位がやや低下し、ユーロや人民元の存在感が増す「多極化」時代を予想。ドルの信認低下を招くような米国の政策もあり、特に人民元の「将来性は大きい」と評価した。
オブストフェルド氏は米有力シンクタンク「ピーターソン国際経済研究所」のシニアフェロー。日銀金融研究所の海外顧問を歴任した>(以上「時事通信」より引用)
「「世界、元に戻らず」 日本はアジア、欧州と連携強化を―元IMF高官・戦後80年」と見出しの記事がある。本当にトランプ氏は自ら米国を世界から孤立させる道へと追い込んでしまった。そのことは先週何回かに分けてこのブログで紹介した。
オブストフェルド氏は、米政権が高関税や政府債務膨張といったドルの信認を損なう政策を展開していると問題視。「貿易相手国を米国以外との統合深化へ向かわせる」と分析した。
日本に対し、「包括的および先進的な環太平洋連携協定」(CPTPP)や、東南アジア諸国連合と日本、中国、韓国(ASEANプラス3)といった経済連携を「強化すべきだ」と訴えた。
今後の国際通貨体制については、基軸通貨ドルの地位がやや低下し、ユーロや人民元の存在感が増す「多極化」時代を予想。ドルの信認低下を招くような米国の政策もあり、特に人民元の「将来性は大きい」と評価した。
オブストフェルド氏は米有力シンクタンク「ピーターソン国際経済研究所」のシニアフェロー。日銀金融研究所の海外顧問を歴任した>(以上「時事通信」より引用)
「「世界、元に戻らず」 日本はアジア、欧州と連携強化を―元IMF高官・戦後80年」と見出しの記事がある。本当にトランプ氏は自ら米国を世界から孤立させる道へと追い込んでしまった。そのことは先週何回かに分けてこのブログで紹介した。
確実に米国から先進自由主義諸国は離れてしまった。ことに製造工場建設に大規模投資を必要とする企業にとって、トランプ関税という非常識な関税政策が容認される国への投資は控えるのが常識だ。トランプ氏が米国に投資してほしいのなら、米国政府は外国企業が米国へ進出するための勧誘策を提示すべきだ。例えば米国に新規製造工場を建設した外国企業には三年間の固定資産税を連邦政府が補助金として供与する、とかいう経済政策だ。
しかしトランプ氏は何を間違えたか、企業活動であるべき投資を貿易相手国の政府に約束させてしまった。それでは貿易相手国政府は国内企業と癒着でもしていない限り、トランプ氏の請求通りの投資などできない。日本政府は愚かにも80兆円という巨額投資を約束したが、どのような形で投資するつもりなのだろうか。日本が保有する米国債の80兆円分をトランプ氏に貸与する形を取れば、それなりにトランプ氏は満足して身内の企業などに資金を回すだろうが、資金だけ手に入れても外国から製造企業が進出しなければ何の役にも立たないだろう。
トランプ氏は日本政府に対して造船や自動車や半導体などの企業投資を期待している、と意思表明しているようだが、米国内企業が米国内で投資するのを諦めて外国へ生産拠点を移したことを知っているのだろうか。それは労働賃金が高くなって、米国内で生産すると製品が高額になり、企業収益を確保するのが困難だからだ。そうした米国の問題には手を付けずに、米国に投資しろ、と恫喝する手法は国際的に受け入れられない。だから日本政府はトランプ氏と関税合意しても、日本企業はトランプ関税の米国から撤退しようとしている。
しかし国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミスト、モーリス・オブストフェルド氏が「日本に対し、「包括的および先進的な環太平洋連携協定」(CPTPP)や、東南アジア諸国連合と日本、中国、韓国(ASEANプラス3)といった経済連携を「強化すべきだ」と訴えた」という下りは賛同できない。なぜなら中国と韓国は国民に対して反日教育を未だに推進しているからだ。
日本を敵視する教育を国民に行っている国と経済連携を深化させることは出来ない。それは日本の国益を大きく棄損する行為になりかねないからだ。たとえば、中国と韓国の造船業は日本の技術・資金支援によって勃興した。しかし、その後の両国の造船業は日本から獲得した像全技術を利用して、たちまち造船大国になって日本の造船業を圧迫した。造船業だけではない。製鉄業も中国・韓国両国とも日本の技術支援によって近代化した。しかし中国は獲得した技術で次々と鉄鋼企業を国内各地に展開して、ついには世界最大の鉄鋼生産国家になり、世界に向かって安価な鉄鋼製品を大量輸出して各国の製鉄業を窮地に追いやっている。
モーリス・オブストフェルド氏はそうした中国の協調性を欠く振舞いを知らないのだろうか。現在では終息に向かっているものの、中国に進出したテスラから学んだEV製造ノウハウを生かして中国製EVを世界中へ大量輸出して世界各国から顰蹙を買った。
現在、中国は最先端半導体製造機器の輸入に心血を注いでいる。少し前までは「製造2025」を掲げて、自前で2nm半導体製造を2025年までに成し遂げようと15兆円もの巨費を国内企業に投じたが結果が思わしくなかったため、方針を独自開発から製造機器購入により最先端半導体製造へ切り替えた。だからTSMCや日本国内の半導体製造関連企業の知的財産の剽窃に励んでいるようだ。
韓国も中国ほどではないが、似たようなものだ。独自技術開発能力が劣るため、日本に技術支援を求めている。しかし過去の経験から日本も学び、安易に韓国への技術支援に踏み切ることはない。
さて、トランプ氏が高関税で破壊した「サプライチェーン・ハブとしての米国」の立場はモーリス・オブストフェルド氏が指摘するようにトランプ後も後遺症は深く残るだろう。なぜなら半導体製造でも自動車製造でも工場建設に多額の資金を必要とするからだ。巨額投資を行うには少なくとも政情が安定していなければならないし、投資先の政府が信用出来て協調性がなければならない。そうでなければ相手国による接収などの措置を取られたなら悲惨な結果になるからだ。
米国はトランプ関税により世界各国から信用を失った。「サプライチェーン・ハブとしての米国」の地位を失った代償は余りに大きい。たとえトランプ関税を廃止しても、再び「サプライチェーン・ハブとしての米国」が信用を取り戻して甦るには半世紀近い歳月が必要とされるだろう。その間、米国の製造業の技術蓄積の維持拡大が持続できるだろうか。
カーネギーホールがあるように、かつて米国は世界最大の鉄鋼大国だった。しかし技術革新への投資を怠り、製造装置の革新を怠り、ついにはUSSまでも日鉄の子会社になってしまった。もちろん造船大国だった栄光は失われて久しく、米海軍の最先端ステルス軍艦の建造は米国内では出来ないため、日本の造船企業に発注した。既に米国が誇る大型空母の新規建造は米国内では出来ないと云われている。米国製造業はあらゆる分野でロスト・テクノロジー現象が起きている。その流れをトランプ関税が「固定化」した。そのことに米国民が気付くまで、それほど時間はかからないだろう。