中国もソ連と同じ道を歩むのだろうか。
<旨みなき中国ビジネス
最近、先進国企業の中国事業は重大な転換点を迎えている。
多くの海外企業が中国から撤退したり、合弁事業を解消したりする動きが目立っている。わが国企業の中でも、TOTOが中国にある2つの製造拠点の閉鎖を発表した。ここへきて、中国の不動産バブル崩壊の影響は住宅設備分野にも及んでいる。中国ビジネスにこれまでのメリットがなくなっているとみられる。
その背景には、中国では生産年齢人口の減少により、労働賃金が上昇していることがある。
バブル崩壊により、経済全体にデフレ圧力は高まっている。新エネルギー車の購入補助金によりEVの販売は堅調のようだが、市場の競争は一段と激化している。BYDや浙江吉利(ジーリー)は値下げを繰り返し、シャオミなども新規参入している。過度な値下げにより企業の収益性は悪化しており、国務院が競争激化の監督を強めなければならなくなった。
また、中国当局は反スパイ法違反で海外企業の社員を拘束したり、出国禁止にしたりしている。2023年には、企業調査会社のミンツグループやコンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーといった米国企業の事務所が強制捜査の対象となり、ミンツの従業員は身柄を拘束された。拘束された側が泣き寝入りせざるを得ないケースは多く、米国政府も中国で活動する自国企業に注意喚起を行っている。
チャイナリスクを軽減するため、製造拠点を中国からアジア新興国にシフトする動きは増えるだろう。中国市場で一定のシェアを維持しながら、中長期的に個人消費の増加期待が高い米国やインドでの売り上げ増加を目指す企業も増えると考えられる。テスラは、早くもインドでショールームを開設した。企業の脱中国は、わが国企業の戦略転換のきっかけとなるはずだ。
中国から撤退する企業が増加
2013年以降、中国の生産年齢人口は減少し労働コストは上昇し始めた。2016年以降はIT先端分野での米中対立の先鋭化により、インドやベトナムなどに生産拠点を移す多国籍企業も増加。不動産バブル崩壊で2021年頃から足許まで不動産価格は下落基調だ。
デフレ圧力は高まり、企業業績は悪化している。中国の世界の工場としての地位は低下し、過剰生産能力のリストラに取り組む企業は増加傾向にある。
自動車分野では、フォルクスワーゲンが今年7月、2008年に設立した南京工場(国有自動車大手の上海汽車集団と合弁工場)の生産を停止したことを認め、今年後半には閉鎖する方針だという。
米GMも今年2月、国有・上海汽車集団と合弁で運営していた遼寧省の工場を閉鎖。2024年にはメルセデス・ベンツがBYDとの合弁を解消している。
欧州ステランティスと国有自動車大手、広州汽車集団の合弁事業(広汽FCA)も破産した。広汽FCAは工場などを5回公売にかけたが入札はなかったという。中国企業にとっても、価格競争の激化による粗利率の低下は深刻だ。
わが国の自動車メーカーも事業の見直しが相次ぐ。三菱自動車は7月23日に中国事業からの完全撤退を発表。日産は最新鋭の武漢工場を2025年度中に閉鎖する方針を固めており、すでにホンダは広州エンジン工場の生産能力を半減させている。
石油化学分野では、三井化学が合弁事業を相手側の中国企業に売却。日本製鉄は宝山鋼鉄との自動車用鋼板の合弁事業を解消した。技術移転の加速により、中国企業は多国籍企業のライバルになり始めた。合弁を続けると競争力の源泉を中国側に吸い取られるリスクも増す。
ニトリもひっそりと大量閉店
さらに個人向けのモノやサービスの分野では、アパレルメーカーのバロックジャパンリミテッドが今年4月、中国合弁2社の全株式を売却した。ポーラ・オルビスホールディングスも5月にオルビス北京の解散を発表している。
家具のニトリも積極展開してきた中国事業を縮小した。1月17日には106店舗あったが、6月末時点で83店舗にまで減少している。わずか半年で23店舗も閉店した。5月に実施された同社の決算説明会では、不況にある中国で大型店舗を出店したことが減益の一因になったと似鳥昭雄会長は述べ、自身の判断の誤りに反省の色を見せていた。
2024年には、100均ショップで知られるダイソーも上海市内の店舗を閉鎖し、三越伊勢丹ホールディングスも27年続いた上海梅龍鎮伊勢丹を閉店した。
お茶の文化が根付いていた中国にコーヒーを持ち込み、ドル箱市場に育てた米スターバックスの撤退観測も浮上している。
近年、スターバックスは低価格戦略でシェアを伸ばすミーシュエ、ラッキンコーヒーなどに追い抜かれ、店舗数で中国3位に転落した。スターバックスは否定しているものの、主要投資家の間では同社が中国事業の売却に追い込まれるとの見方が増えている>(以上「現代ビジネス」より引用)
真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)氏が中国の消費市場の縮小を報告している。題して「中国のニトリがひっそりと大量閉店していた…似鳥昭雄会長の想像を超えていた「中国市場の悲惨な現状」」という。
最近、先進国企業の中国事業は重大な転換点を迎えている。
多くの海外企業が中国から撤退したり、合弁事業を解消したりする動きが目立っている。わが国企業の中でも、TOTOが中国にある2つの製造拠点の閉鎖を発表した。ここへきて、中国の不動産バブル崩壊の影響は住宅設備分野にも及んでいる。中国ビジネスにこれまでのメリットがなくなっているとみられる。
その背景には、中国では生産年齢人口の減少により、労働賃金が上昇していることがある。
バブル崩壊により、経済全体にデフレ圧力は高まっている。新エネルギー車の購入補助金によりEVの販売は堅調のようだが、市場の競争は一段と激化している。BYDや浙江吉利(ジーリー)は値下げを繰り返し、シャオミなども新規参入している。過度な値下げにより企業の収益性は悪化しており、国務院が競争激化の監督を強めなければならなくなった。
また、中国当局は反スパイ法違反で海外企業の社員を拘束したり、出国禁止にしたりしている。2023年には、企業調査会社のミンツグループやコンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーといった米国企業の事務所が強制捜査の対象となり、ミンツの従業員は身柄を拘束された。拘束された側が泣き寝入りせざるを得ないケースは多く、米国政府も中国で活動する自国企業に注意喚起を行っている。
チャイナリスクを軽減するため、製造拠点を中国からアジア新興国にシフトする動きは増えるだろう。中国市場で一定のシェアを維持しながら、中長期的に個人消費の増加期待が高い米国やインドでの売り上げ増加を目指す企業も増えると考えられる。テスラは、早くもインドでショールームを開設した。企業の脱中国は、わが国企業の戦略転換のきっかけとなるはずだ。
ドイツを甦らせた過去も
ここ数年で、中国の合弁事業を見直し、一部の拠点を閉鎖する主要先進国や韓国の企業が増えた。
売上高48兆円超のトヨタ自動車ですら、一時、販売減少に悩まされるほど中国の需要は落ち込んだ。中国の化粧品需要増加のため中国事業を拡大した資生堂も、2024年には同事業低迷が鮮明化し、一部の店舗や事務所の閉鎖に踏み切った。
これは、世界経済における中国の地位が変化していることを意味する。
1978年の改革開放以降、中国政府は経済特区を設定した。海外企業の直接投資を誘致し、主に鉄鋼や石油化学の分野で国内企業への技術移転を加速させた。
2000年代、工業化は進展し、農村部から沿海部に大量に労働力(農民工)が供給され、“世界の工場”としての地位を確立した。そうした変化に目をつけ、主要先進国の自動車メーカーはこぞって中国で合弁事業を設立し、シェアの拡大に取り組んだ。
中国戦略で目立ったのがドイツ勢だった。独フォルクスワーゲングループの一員であるメルセデス・ベンツは、メルケル元首相のトップセールスも相まって中国で地歩を築いた。自動車メーカーの進出により、総合化学メーカーのBASFや鉄鋼メーカーのティッセンクルップなど関連企業の中国進出も加速した。ドイツ企業の対中進出は一時、“欧州の病人”と呼ばれたドイツ経済の持ち直しに寄与した。
しかし、そうした状況はいつまでも続かない。
ここ数年で、中国の合弁事業を見直し、一部の拠点を閉鎖する主要先進国や韓国の企業が増えた。
売上高48兆円超のトヨタ自動車ですら、一時、販売減少に悩まされるほど中国の需要は落ち込んだ。中国の化粧品需要増加のため中国事業を拡大した資生堂も、2024年には同事業低迷が鮮明化し、一部の店舗や事務所の閉鎖に踏み切った。
これは、世界経済における中国の地位が変化していることを意味する。
1978年の改革開放以降、中国政府は経済特区を設定した。海外企業の直接投資を誘致し、主に鉄鋼や石油化学の分野で国内企業への技術移転を加速させた。
2000年代、工業化は進展し、農村部から沿海部に大量に労働力(農民工)が供給され、“世界の工場”としての地位を確立した。そうした変化に目をつけ、主要先進国の自動車メーカーはこぞって中国で合弁事業を設立し、シェアの拡大に取り組んだ。
中国戦略で目立ったのがドイツ勢だった。独フォルクスワーゲングループの一員であるメルセデス・ベンツは、メルケル元首相のトップセールスも相まって中国で地歩を築いた。自動車メーカーの進出により、総合化学メーカーのBASFや鉄鋼メーカーのティッセンクルップなど関連企業の中国進出も加速した。ドイツ企業の対中進出は一時、“欧州の病人”と呼ばれたドイツ経済の持ち直しに寄与した。
しかし、そうした状況はいつまでも続かない。
中国から撤退する企業が増加
2013年以降、中国の生産年齢人口は減少し労働コストは上昇し始めた。2016年以降はIT先端分野での米中対立の先鋭化により、インドやベトナムなどに生産拠点を移す多国籍企業も増加。不動産バブル崩壊で2021年頃から足許まで不動産価格は下落基調だ。
デフレ圧力は高まり、企業業績は悪化している。中国の世界の工場としての地位は低下し、過剰生産能力のリストラに取り組む企業は増加傾向にある。
自動車分野では、フォルクスワーゲンが今年7月、2008年に設立した南京工場(国有自動車大手の上海汽車集団と合弁工場)の生産を停止したことを認め、今年後半には閉鎖する方針だという。
米GMも今年2月、国有・上海汽車集団と合弁で運営していた遼寧省の工場を閉鎖。2024年にはメルセデス・ベンツがBYDとの合弁を解消している。
欧州ステランティスと国有自動車大手、広州汽車集団の合弁事業(広汽FCA)も破産した。広汽FCAは工場などを5回公売にかけたが入札はなかったという。中国企業にとっても、価格競争の激化による粗利率の低下は深刻だ。
わが国の自動車メーカーも事業の見直しが相次ぐ。三菱自動車は7月23日に中国事業からの完全撤退を発表。日産は最新鋭の武漢工場を2025年度中に閉鎖する方針を固めており、すでにホンダは広州エンジン工場の生産能力を半減させている。
石油化学分野では、三井化学が合弁事業を相手側の中国企業に売却。日本製鉄は宝山鋼鉄との自動車用鋼板の合弁事業を解消した。技術移転の加速により、中国企業は多国籍企業のライバルになり始めた。合弁を続けると競争力の源泉を中国側に吸い取られるリスクも増す。
ニトリもひっそりと大量閉店
さらに個人向けのモノやサービスの分野では、アパレルメーカーのバロックジャパンリミテッドが今年4月、中国合弁2社の全株式を売却した。ポーラ・オルビスホールディングスも5月にオルビス北京の解散を発表している。
家具のニトリも積極展開してきた中国事業を縮小した。1月17日には106店舗あったが、6月末時点で83店舗にまで減少している。わずか半年で23店舗も閉店した。5月に実施された同社の決算説明会では、不況にある中国で大型店舗を出店したことが減益の一因になったと似鳥昭雄会長は述べ、自身の判断の誤りに反省の色を見せていた。
2024年には、100均ショップで知られるダイソーも上海市内の店舗を閉鎖し、三越伊勢丹ホールディングスも27年続いた上海梅龍鎮伊勢丹を閉店した。
お茶の文化が根付いていた中国にコーヒーを持ち込み、ドル箱市場に育てた米スターバックスの撤退観測も浮上している。
近年、スターバックスは低価格戦略でシェアを伸ばすミーシュエ、ラッキンコーヒーなどに追い抜かれ、店舗数で中国3位に転落した。スターバックスは否定しているものの、主要投資家の間では同社が中国事業の売却に追い込まれるとの見方が増えている>(以上「現代ビジネス」より引用)
真壁 昭夫(多摩大学特別招聘教授)氏が中国の消費市場の縮小を報告している。題して「中国のニトリがひっそりと大量閉店していた…似鳥昭雄会長の想像を超えていた「中国市場の悲惨な現状」」という。
ニトリは親中企業で有名だ。家具の廉価販売で名高いが、その廉価販売を実現しているのが中国での家具製作だ。だから家具店を中国で展開するのは生産地で販売する、という合理的な側面があった。もちろん中国の消費者物価上昇も中国で家具店を今年一月には106店舗もあった。しかしわずか半年で23店舗を閉じたという。
中国は失業者が街に溢れ、耐久消費財の購入どころではない。飲食業は対前年比で300万軒も減少したほど、外食好きな中国民が街の飲食店へ行かなくなった。そのため上海の有名なモールですらテナントが相次いで撤退して、シャッターだらけの通路が果てしなく続いている有様だ。
もちろん記事にあるように「2024年には、100均ショップで知られるダイソーも上海市内の店舗を閉鎖し、三越伊勢丹ホールディングスも27年続いた上海梅龍鎮伊勢丹を閉店した」という。そしてビジネスマンで溢れていたスターバックスすらも「低価格戦略でシェアを伸ばすミーシュエ、ラッキンコーヒーなどに追い抜かれ、店舗数で中国3位に転落した」というから深刻だ。
「中国から撤退する企業が増加」の章を読むと、外国企業が雪崩を打って撤退している様が手に取るように分かる。それら撤退する企業が雇用していた中国人労働者は失業して、街を彷徨している。操業を止めたのは撤退した外国企業だけではない。中国企業もバタバタと倒産している。
一時は「我が世の春」を謳歌していたEV企業も、一昨年に欧州への大量輸出が批判され、欧州諸国が中国製EVを排斥し始めてから風向きが変わった。それを決定づけたのが2024年の厳冬だった。EV車が寒さに弱く充電能力が落ちる「欠陥」が露呈し、欧州諸国の厳冬期で中国製EVに乗るのは消費者は命に係わると気付いた。もちろん中国製EVにも支払っていたEV購入補助金を打ち切ったことも大きいだろう。
EVが厳冬期に弱いと気付いたのは欧州人だけではない。中国民にとっても厳冬期にEVの充電切れは命に係わる。さらにEVのリチウムイオン電池の信頼性が低下し、EVの発火事故が相次いでいる。テスラは値段の安さからリチウムイオン電池を中国製にしていたが、発火事故が相次だためパナソニック製に戻した。
中共政府が中国経済を牽引する産業として補助金を注いだEV企業は在庫の山と需要後退に悩まされている。もはや中国経済を牽引する力はない。そして製造2025の主役と見込んだ半導体製造もなかなか結果が出ていない。7nm半導体製造に成功したとニュースを賑わしたことがあったが、製品の歩留まりが悪く操業段階には達してないようだ。一時は一万社以上もあった半導体製造企業は補助金を受け取っただけで工場すら建設しないで破産したり、工場は建設したが、その中には半導体製造の機械は何もなく伽藍洞のまま、経営者は姿を晦ましたという事件が報告されている。結果として、マトモに2nm最先端半導体を製造している企業は一社もない。
外国企業が多く進出した深圳や広東は町の火が消えた。国際都市上海からも外国人の姿が消えた。テナントビルは空室ばかりで、中古マンション価格は2020年当初から50%以上も下落している。それでも中共政府は金融破綻処理に着手しようとしない。共産主義国の計画経済に失敗は許されないからだろうか。しかしソ連は計画経済が崩壊して、ついに国家まで破綻し崩壊してしまった。中国もソ連と同じ道を歩むのだろうか。