世紀の愚策、重商主義者トランプの関税政策。

限界が見え始めた「対中デカップリング」。
トランプ関税が変える国際社会の流れ
 7月12日、アメリカのドナルド・トランプ米大統領が欧州連合(EU)とメキシコに対し、8月1日から30%の新税率を適用すると表明した。
 メキシコはさておき、相互関税などさまざまな分野の関税をめぐり、直前までアメリカとギリギリの詰めの交渉を行ってきたEUにとっては、ダメージの大きな決定となったはずだ。
 第2次トランプ政権(2.0)は、とにかくEUに冷淡だとささやかれてきたが、どうやら前評判通りの性質を備えていることがまたしても証明された形だ。
 トランプ2.0の特徴の一つは、「友好国だから」という甘えが通用しないことだと早い段階から指摘されてきた。現状を見る限り、敵対国よりもむしろ友好国に対する風当たりの強さが際立っている。
 そのことは、関税をめぐる対米交渉で苦戦を強いられている日本ならば、あらためて説明の必要もないだろう。
 実際、11日には、関税の期限を前に各国へのアドバイスを記者たちから訊ねられたトランプは、「ただ努力し続けることだ」と語った後に、「多くの場合、友好国の方が敵対国よりもアメリカに対しひどい扱いをしてきた」と持論を改めて披露した。
 こうしたなかで発表された対EUへの30%の新税率だった。
 これが単純な貿易への不満を解消するためなのか、それとも別の目的があるのかはまだ判然としない。
 というのも現在のトランプ政権内部には、EU政界への不満がくすぶっているとの見方が拭えないからだ。
 関税は単純に貿易不均衡改善のためだけではなく、政治的なメッセージが含まれているということだ。
 象徴的なのは、ブラジルに対する50%の関税だ。対ブラジルでアメリカは貿易不均衡問題を抱えていない。アメリカにとっての貿易黒字国だ。それなのに高関税を課す理由は、政治的プレッシャーにある。
 トランプ氏が個人的に親しいジャイール・ボルソナーロ前大統領を援護するためだ。「ミニ・トランプ」とも呼ばれたボルソナーロは、クーデターを企てた罪などで起訴されている。
 トランプはSNSで「世界から尊敬されたボルソナーロ前大統領に対するブラジルの扱いは、国際的な恥だ。この裁判は行われるべきではない。魔女狩りは即刻やめるべきだ」と発信している。
 これほど露骨な内政干渉も珍しいと言わざるを得ない。
 トランプ政権の他国への内政干渉は、トランプだけでなく、高官たちの口を通じても行われてきた。

目立ったのは、実はヨーロッパ政治への介入だ。
欧州のリーダーたちを慌てさせたヴァンスの発言

 今年2月、ミュンヘン安全保障会議に出席したJ・D・ヴァンス米副大統領は、ドイツの極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」を「適格な政治パートナーとして支持する」と発言し、欧州のリーダーたちを慌てさせた。
 極右勢力の台頭が著しい欧州で、この発言が歓迎されるはずはない。ドイツだけでなく欧州全体でトランプ政権への警戒感が高まった。今回の30%の新税率は、その上でふっかけられた難題だった。
 米欧間に生じた不協和音は、ゼロ・サム思考が好きな西側メディアの目には、「中国有利」と映った。
 だが、そう単純な話ではない。というのも6月30日から7月5日まで中国の王毅外相がヨーロッパを歴訪したにもかかわらず、中国とEUとの意見の相違を和らげることはほとんどできなかったからだ。
 それどころか訪問中、王毅がロシア・ウクライナ戦争にからみ「ロシアの敗北は見たくない」と発言したとして批判が巻き起こった。
 王毅の訪欧を報じたフランス『ル・モンド』紙の見出しは、「中国とEUの関係強化は不可能」だった。
 ただ、その一方で、EUの対中姿勢の変更を促す声がフランス政界から上がったのも事実だ。話題となったのはフランス国民議会欧州問題委員会から出された153ページからなる報告書(6月17日)だ。
 文書はジャン=リュック・メランション党首が率いる「不服従のフランス」(LFI)から4名、マクロン大統領の中道政党「ルネッサンス」から3名、極右政党「国民集会」から1名というように計8名で構成される委員会の公式文書だ。
 欧州が中国と歩調を合わせるべきとの主張は、いまのところ欧州では特殊な意見と受け止められているようだが、トランプ政権を前に中国との経済的な関係は強めていかざるを得ないのも一面の真実だろう。文書が指摘しているのも、そうした現実だ。
 興味深いのは、EU以上に中国との関係をこじらせてきたインドの変化だ。
 3月21日、ロイター通信はニューデリー発で、インド政府が「230億ドル規模の国内製造奨励制度を終了すると決めた」と報じている。「奨励制度」とは中国依存脱却を進める企業を獲得する取り組みで、4年前に始まったものだ。
 2020年に起きた国境での軍同士の衝突を機に対中デカップリングを積極的に進めてきたインドのモディ政権が、明らかな政策変更を行ったというニュースだったが、決断の背景にあったのは対中デカップリングへの限界だった。
 対中デカップリングを仕掛けた多くの国が、最終的にはこうした現実的な路線に戻らざるを得なくなるのだが、トランプ関税がそれを促進する役割を果たすことは間違いなさそうだ>(以上「MAG2」より引用)




習近平を高笑いさせるだけ。インドですら“中国外し”を断念した米国「トランプ関税」の逆効果」と題する富坂聰(ジャーナリスト)氏の論評を読む前に、事前の知識として書かなければならないことがある。
 それは「一国の国際収支は為替取引の記録」でしかない、ということだ。トランプ氏は米国の国際収支の赤字が問題だとして、貿易赤字国に対して赤字額に相当する関税の引き上げを一方的に宣告した。それは国際収支が赤字であろうと黒字であろうと、米国が米国ドルの発行主権を有し、米国ドルで決済する限り何の問題も起きない。現に米国は1972年以来貿易赤字だが、それで貿易取引を断られたことでもあるだろうか。
 たとえば米国を世界と見做して50州を一つ一つの国とした場合、米国で最大の輸入超過州はカリフォルニア州だが、ワシントンDCやニューヨーク州も輸入超過州だろう。しかし、それでカリフォルニア州やワシントンDCやニューヨーク州に何か問題でもあるだろうか。

 また政府の赤字支出に関しても、米国が米国債を自国通貨で発行している限り、何も問題は起きない。ただ赤字が溜まればそれだけドル発行額が増加して、為替相場がそれぞれの国の対GDP比発行量に反比例することからドル安に動くだけだ。それはある意味、自然の調整弁というべき作用で、ドル安になれば米国から他国へ輸出し易くなり、他国から輸入する物資の価格が上昇するから、米国への輸入が抑制される。トランプ氏が同盟国相手に必死になって良好な関係を破壊して課そうとしているトランプ関税と同じ効果を持つ。
 だからトランプ氏が苛立って高関税を世界中の貿易相手国に乱発する必要など何もない。国際収支の赤字が積み重なれば、自然とドル安になって「関税引き上げ」と同じ効果を発揮する。その場合は貿易相手国は心証を害することもなく、従って同盟関係にひびが入ることもない。トランプ氏はいったい如何なる経済学を学んだのだろうか、そして如何なる人物がトランプ氏の経済ブレーンにいて、トランプ関税なる最悪の政策を提言したのだろうか。ちなみに世界の主な国の対GDP貿易依存度を下に示す。
 上図を見ると米国は日本よりも貿易依存度が低いことが分かるだろう。それだけ米国の内需が強く、経済力があるという証拠だ。何も貿易赤字があるから「大変だ」とトランプ氏がパニックになっているのは彼が貿易収支が何を現しているのか知らない、ということでしかない。そうした知識を事前に入れた上で、富阪氏の論評をお読み頂きたい。

 第一期目のトランプ関税は中国に対してだけ引き上げられた。それは対中デカップリングという明確な戦略の上で実施された。実際に当時の中国は「世界の工場」というサプライチェーンのハブとして、物資供給を中国の覇権拡大戦略の一環として使っていた。ことにコロナ禍の医療物資供給を意図的に止めることで、国際社会を震え上がらせた。しかし、そうした横暴は直ちに手痛い反発を招くことになった。
 第一期トランプ政権が始めた対中デカップリングには日本やEUも協力的だった。その後、バイデン民主党政権になって対中デカップリング策が緩和され、バイデン氏は「中国はライバルだ」と表現した。

 第二次トランプ政権が始まると、トランプ氏は何を勘違いしているのか、貿易赤字の相手国に高関税を課す、と実にバカげた政策を強行している。その政策により米国が手にする果実は殆ど何もないが、その代わり同盟国との友好関係を失うという手痛い置き土産が米国にもたらされるだろう。
 おそらく中国はトランプ関税に大笑いしているだろう。なぜなら第一次政権当時よりも強力な対中デカップリング策が発動されるだろうと戦々恐々としていたら、トランプ氏が世界中の貿易相手国に喧嘩を売る、愚策を展開して、米国の影響力を自ら棄損しているからだ。

 トランプ氏は商売上かも知らないが、貿易収支や政府赤字といった簡単な財政学に関しては、全くの素人だと云うことが全世界に明らかになった。米国には世界的に名高い経済学者が多数いる。誰かトランプ氏に金融学のレクチャーをしてくれないか、それも出来るだけ早く。

このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。