トランプ関税が最高裁に提訴されたが、

<ーー経済的影響が極めて大きいため、最高裁が即時に介入すべきだと主張
 ーー最高裁の最終判断が年内に下されるよう、迅速な審理手続きを要請

 家族経営の米玩具メーカー2社が17日、トランプ大統領が世界各国・地域に課した上乗せ関税を無効とするよう、連邦最高裁に審理を求める申し立てを行った。世界経済に影響を及ぼし得る重大な問題が、最高裁で初めて争われる可能性が出てきた。
 申し立てでは年内に最高裁の最終判断が下されるよう、迅速な審理手続きへの移行を要請。高裁の判断を待たずに最高裁が直接この案件を扱うという異例の対応を求めている。
 申し立てを行ったのはイリノイ州に拠点を置く玩具メーカー、ラーニング・リソーシズとハンドトゥーマインドの2社。1977年の国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づくトランプ氏の関税発動権限について、経済的な影響が極めて大きいため、最高裁が即時に介入すべきだと主張している。
 両社は訴状で「この関税が全国のほぼすべての企業と消費者に大きな影響を及ぼしており、大統領が主張する無制限の関税権限がもたらす混乱が深刻であることを踏まえると、IEEPAに基づく関税への異議申し立ては通常の控訴審手続きを待つべきではない」と指摘した。
 米国際貿易裁判所は先月、トランプ氏が関税措置を正当化するためにIEEPAを適用したのは不当だとの判断を下した。その後、トランプ政権側が控訴。これを受けて、連邦高裁が7月31日に予定する審理まで、関税の継続を認める判断を下していた>(以上「Bloomberg」より引用)




 米国の玩具メーカー二社がトランプ関税に噛みついた。「米最高裁に介入を要請、トランプ関税の無効化求める-米2社申し立て」との見出しに、米国社会の健全性を見る。たとえ大統領令であろうと、不法行為と思われることに対しては提訴する権利を有する、というのは自由主義諸国においては普通に認められている。
 ただトランプ氏がトランプ関税を始めた動機も理解できる。米国の財政状況は、財政赤字の拡大と債務残高の増加という課題に直面しているからだ。2023会計年度には、1兆6950億ドルの財政赤字を記録し、これは前年度から23%拡大している。もちろん、その原因はコロナ禍だったが、連邦債務残高は36兆ドルを超え、GDP比で100%を超える水準に達している。

 財政赤字が拡大すると様々な影響が出る。まず金利上昇だ。財政赤字の拡大は、国債の金利上昇を招き、政府の利払い負担を増大させる可能性がある。
 次に経済成長への影響が懸念される。財政赤字が拡大すると、経済成長の鈍化やインフレを誘発する可能性があるからだ。三番目として、財政規律の低下が考えられ、政府の財政規律が低下して将来的な経済不安を高める可能性がある。

 そのため米議会予算局(CBO)は、今後30年で財政赤字と公的債務が著しく増加すると警鐘を鳴らしている。高齢化の進行に伴う社会保障費の増加や、金利上昇による利払い費の増加が、財政状況をさらに悪化させる可能性があるからだ。つまりトランプ政権にとって財政赤字の削減と債務残高の抑制に向けた政策が、喫緊の課題となっている。 

 その対外債務削減のカードとして、トランプ政権は相互関税を掲げた。そのメッセージは次のものだ。
「もう、あなた(=他国)から借金をしてまで、あなたのモノは買えなくなりました。なぜなら、利払いを含め、あなたへの債務の返済負担がとても重くなっているためです」とのば緊縮宣言だ。
 そして「でも、あなたがわれわれのモノを買ってくれるなら、あなたからお金を借りる必要はないので、その代金でもってあなたのモノを買えますよ」との貿易の不均衡是正。
 さらに「それでも、もしも、あなたがわが国からは買うほどのモノがないと言うなら、あなたが買いたいと思うようなモノをわが国で作って販売します」という、米国への生産回帰だ。それは米国内での投資拡大を目指すものであっても良いし、そりにより米国内での生産拡大をもたらすものなら認める、というものだ。

 ベッセント財務長官は就任前から米国の政府債務に懸念を示してきた。米国の貿易赤字のGDP比は4%である一方、政府の財政赤字はGDP比7%に迫っている。ベッセント長官や著名投資家のレイ・ダリオ氏は「米国は財政赤字(後者)を3%に減らすべき」としている。これを実現できれば、米国の貿易赤字(=現在4%)も同じだけ(=4%分)減り、貿易収支は均衡すると予測している。


 米国の資金循環統計をみると、米国は家計部門と企業部門は資金余剰で、赤字になっているのは政府部門だけだ。


 だったら政府が歳出を減らせばよいというと、そうでもない。なぜなら政府の赤字は「国民の黒字」だからだ。オバマ氏の時代に赤字が拡大したのはオバマ・ケアがその原因だ。政府がお金を借りて、何に使っているかをみると、社会保障支出による家計への所得移転が拡大しているのが分る。オバマ政権以降が特にそうだが、メディケアやメディケイドなどで歳出が増大している。



 実際には「政府が家計にお金を渡す、家計は政府から受け取る分までしっかり消費に使い切っている」という状況が生じている。政府の補填がなければ本来は家計が赤字になっている。つまり(家計に補填している)政府が家計のかわりに赤字になっているのだ。





 たしかに米国政府には、家計への所得移転という歳出に問題がある。しかし、政府がこれを削減するならば、家計は実入りが減るため、消費を減らすという本来の過剰消費の問題に帰着する。先のベッセント長官の指摘のとおりだ。
 トランプ氏はそのことを承知の上で財政赤字に切り込むのだろうか。現在のところ、政府機関の公立化を推進してきたが、その影響か大洪水が発生してしまった。財政赤字を承知の上で、米国は社会インフラの整備を進めるのか、それとも「自己責任」社会に進むのか。トランプ関税が連邦最高裁に提訴されたが、議会はどのような対応をするのだろうか。

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