プーチンの肩を持つ日本の国際政治学者。
<第一回投票の結果
大統領選の第一回投票は5月18日に行われた。結果は、1位がチャスコフスキで投票率は31.36%、2位がナブロツキで29.54%、3位が極右政党「自由と独立連盟(同盟)」のスワボミル・メンツェンで14.81%、4位が極右政党「ポーランド王冠同盟」のグジェゴシュ・ブラウンで6.34%であった。投票率は67.31%で、第一回投票としては過去最高であった。
決選投票では、ナブロツキが50.89%、チャスコフスキが49.11%であった。
ポーランドでは、2015年の総選挙でPiSが勝ち、2期8年にわたって政権を担ってきた。PiSは、司法への介入、メディアの統制強化、人工妊娠中絶反対、LGBTの排除、移民の排斥、歴史的事実の否定(ユダヤ人迫害など)、反EUなどの政策を展開した。
ウクライナ戦争についても、ポーランドでは「支援疲れ」のムードが広がっており、支援に批判的な右派の勢力拡大の背景になっている。EUやウクライナよりも、「ポーランドが第一」だという声である。
2023年10月の総選挙では、PiSは第一党の座は確保したものの、野党が過半数を握り、EUの大統領も務めたトゥスク前大統領を首相に選び、政権交代が実現した。しかし、大統領はPiSのドゥダであり、法案に対して拒否権を発動できるため、その権限を行使してきた。大統領と首相の「ねじれ」が、円滑な政治運営の障害となってきたのである。
それだけに、今回の大統領選挙で、その「ねじれ」が解消できるかどうかが注目された。
「ヨーロッパの国々はますます「ウクライナ支援」に消極的に…ポーランド大統領選挙が示したポピュリズムの変化」と書き立てる国際政治学者・舛添 要一氏のお粗末な論評を取り上げる。その前にBBCが5月26日に報じたニュースを見て頂きたい。
大統領選の第一回投票は5月18日に行われた。結果は、1位がチャスコフスキで投票率は31.36%、2位がナブロツキで29.54%、3位が極右政党「自由と独立連盟(同盟)」のスワボミル・メンツェンで14.81%、4位が極右政党「ポーランド王冠同盟」のグジェゴシュ・ブラウンで6.34%であった。投票率は67.31%で、第一回投票としては過去最高であった。
決選投票では、ナブロツキが50.89%、チャスコフスキが49.11%であった。
ポーランドでは、2015年の総選挙でPiSが勝ち、2期8年にわたって政権を担ってきた。PiSは、司法への介入、メディアの統制強化、人工妊娠中絶反対、LGBTの排除、移民の排斥、歴史的事実の否定(ユダヤ人迫害など)、反EUなどの政策を展開した。
ウクライナ戦争についても、ポーランドでは「支援疲れ」のムードが広がっており、支援に批判的な右派の勢力拡大の背景になっている。EUやウクライナよりも、「ポーランドが第一」だという声である。
2023年10月の総選挙では、PiSは第一党の座は確保したものの、野党が過半数を握り、EUの大統領も務めたトゥスク前大統領を首相に選び、政権交代が実現した。しかし、大統領はPiSのドゥダであり、法案に対して拒否権を発動できるため、その権限を行使してきた。大統領と首相の「ねじれ」が、円滑な政治運営の障害となってきたのである。
それだけに、今回の大統領選挙で、その「ねじれ」が解消できるかどうかが注目された。
ナブロツキの勝利が意味するもの
しかしながら、「ねじれ」は継続することになった。
ナブロツキは、トランプと関係が深く、5月にはホワイトハウスを訪ねている。トランプ流の自国第一主義を掲げ、移民排斥を主張する。また、気候変動対策にも反対である。
ただ、国境を接するロシアからの脅威を深刻に感じているため、ナブロツキは、ウクライナ支援は継続する。しかし、ウクライナのNATOやEUへの加盟、またウクライナへのポーランド軍の派遣には反対である。ハンガリーのオルバン首相は、ナブロツキを支持している。
1943年〜1944年に、今のウクライナ西部からポーランド東部で、ウクライナの国家主義集団UPAがポーランド人住民10万人を殺害した事件が起こった。これを「ボルヒニアの虐殺」というが、ナブロツキは、その責任をウクライナがまだ取っていないと批判している。まさにナショナリストである。
ナブロツキの勝利は、ヨーロッパにおいて、ウクライナ支援に批判的な勢力をさらに増大させることにつながる可能性がある。
ナブロツキの勝因はいくつかある。ポーランドは、国民の約9割がカトリック教徒であるが、その中でも保守派は、愛国主義から移民排斥に賛成した。そして、二つの極右政党を支持する有権者が投票したことも大きい。「同盟」の支援を受けるため、メンツェン党首の主張する銃保有の自由、減税などの政策を支持したのである。さらに、トゥスク首相の政権運営に対する批判が高まっていたことなどが指摘されている。
しかしながら、「ねじれ」は継続することになった。
ナブロツキは、トランプと関係が深く、5月にはホワイトハウスを訪ねている。トランプ流の自国第一主義を掲げ、移民排斥を主張する。また、気候変動対策にも反対である。
ただ、国境を接するロシアからの脅威を深刻に感じているため、ナブロツキは、ウクライナ支援は継続する。しかし、ウクライナのNATOやEUへの加盟、またウクライナへのポーランド軍の派遣には反対である。ハンガリーのオルバン首相は、ナブロツキを支持している。
1943年〜1944年に、今のウクライナ西部からポーランド東部で、ウクライナの国家主義集団UPAがポーランド人住民10万人を殺害した事件が起こった。これを「ボルヒニアの虐殺」というが、ナブロツキは、その責任をウクライナがまだ取っていないと批判している。まさにナショナリストである。
ナブロツキの勝利は、ヨーロッパにおいて、ウクライナ支援に批判的な勢力をさらに増大させることにつながる可能性がある。
ナブロツキの勝因はいくつかある。ポーランドは、国民の約9割がカトリック教徒であるが、その中でも保守派は、愛国主義から移民排斥に賛成した。そして、二つの極右政党を支持する有権者が投票したことも大きい。「同盟」の支援を受けるため、メンツェン党首の主張する銃保有の自由、減税などの政策を支持したのである。さらに、トゥスク首相の政権運営に対する批判が高まっていたことなどが指摘されている。
ヨーロッパのポピュリズム
ヨーロッパでは、EUの政策に異を唱え、移民排斥を訴える勢力が力を増している。同時に、彼らは、ウクライナ支援にも批判的である。
ドイツでは、「AfD(ドイツのための選択肢)」がそうで、今年2月に行われた総選挙では、保守野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)に次ぐ2番目に多い票を得た。
フランスでは、極右の「国民連合(RN)」が勢力を拡大している。昨年の総選挙では、予想に反して、第一党になれず、左翼連合、マクロンの与党連合の後塵を拝して3位に沈んだが、2027年の次期大統領選では、RNの候補が当選する可能性がある。
東欧でも、スロバキアでは、2023年10月の総選挙で、ウクライナ支援の停止・ロシアへの制裁停止を訴えた左派の野党「スメル(道標)」が第一党になり、党首のフィツォ元首相が返り咲いた。今年5月9日にモスクワで行われたロシアの対独先勝80周年記念式典には、EUの反対を押し切って参加し、プーチン大統領と会談している。
昨年5月15日には、銃撃され、重傷を負ったが、その犯人によると、犯行の動機は、ウクライナ支援停止、公共放送改革、特別検察局廃止、司法評議会長官解任などの首相の政策に反対だからだという。
首相の暗殺未遂まで起こるほど、ヨーロッパの分断は厳しい状況になっている。
そのフィツォ首相と親しく、同様な政策スタンスをとるのが、ハンガリーのオルバン首相で、2010年5月以来、首相の座にいる。EUは、オルバンの親ロシア路線を厳しく批判している。
来年の4月には総選挙が予定されており、オルバン政権に対する国内の批判も強まっており、このまま権力を維持できるかどうかは不明である。
一方、5月18日に決選投票が行われたルーマニア大統領選挙は、親EUのダン候補(ブカレスト市長)が、親ロシアの候補に競り勝った。
ヨーロッパでは、EUの政策に異を唱え、移民排斥を訴える勢力が力を増している。同時に、彼らは、ウクライナ支援にも批判的である。
ドイツでは、「AfD(ドイツのための選択肢)」がそうで、今年2月に行われた総選挙では、保守野党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)に次ぐ2番目に多い票を得た。
フランスでは、極右の「国民連合(RN)」が勢力を拡大している。昨年の総選挙では、予想に反して、第一党になれず、左翼連合、マクロンの与党連合の後塵を拝して3位に沈んだが、2027年の次期大統領選では、RNの候補が当選する可能性がある。
東欧でも、スロバキアでは、2023年10月の総選挙で、ウクライナ支援の停止・ロシアへの制裁停止を訴えた左派の野党「スメル(道標)」が第一党になり、党首のフィツォ元首相が返り咲いた。今年5月9日にモスクワで行われたロシアの対独先勝80周年記念式典には、EUの反対を押し切って参加し、プーチン大統領と会談している。
昨年5月15日には、銃撃され、重傷を負ったが、その犯人によると、犯行の動機は、ウクライナ支援停止、公共放送改革、特別検察局廃止、司法評議会長官解任などの首相の政策に反対だからだという。
首相の暗殺未遂まで起こるほど、ヨーロッパの分断は厳しい状況になっている。
そのフィツォ首相と親しく、同様な政策スタンスをとるのが、ハンガリーのオルバン首相で、2010年5月以来、首相の座にいる。EUは、オルバンの親ロシア路線を厳しく批判している。
来年の4月には総選挙が予定されており、オルバン政権に対する国内の批判も強まっており、このまま権力を維持できるかどうかは不明である。
一方、5月18日に決選投票が行われたルーマニア大統領選挙は、親EUのダン候補(ブカレスト市長)が、親ロシアの候補に競り勝った。
ウクライナ停戦協議
6月2日、トルコのイスタンブールで、停戦に関して、ウクライナとロシアの直接協議が行われた。6000人ずつの遺体の返還、1000人の捕虜交換などは決まったが、大きな進展はなかったようである。
ウクライナ側は少なくとも30日間の無条件停戦を求めたが、ロシアは拒否した。ロシアは、「平和に関する覚書」を手渡したが、ウクライナの大統領選の実施など、要求をこれまで以上につり上げている。
ウクライナは、6月20〜30日に第3回目の協議を行うことを提案した。
この停戦交渉の間にも、双方が攻撃を激化させている。ウクライナは、ドローンを使ってロシアの地方、たとえば、イルクーツクにも攻撃をくわえた。
ウクライナが今後も戦争を継続するためには、西側の支援が不可欠であるが、ヨーロッパ諸国にその余裕があるか否か問題である。とくに、トランプ関税への対応に忙殺されており、経済情勢の悪化はウクライナ支援どころではない状況になっている。しかも、移民問題は、治安の悪化などを深刻化させており、国民の関心はウクライナから離れていっている。
これからも、ヨーロッパでは、ウクライナ支援に消極的な勢力が拡大することが予想される。難航しているウクライナ停戦交渉に、それがどのような影響を与えるのか注視していきたい>(以上「現代ビジネス」より引用)
6月2日、トルコのイスタンブールで、停戦に関して、ウクライナとロシアの直接協議が行われた。6000人ずつの遺体の返還、1000人の捕虜交換などは決まったが、大きな進展はなかったようである。
ウクライナ側は少なくとも30日間の無条件停戦を求めたが、ロシアは拒否した。ロシアは、「平和に関する覚書」を手渡したが、ウクライナの大統領選の実施など、要求をこれまで以上につり上げている。
ウクライナは、6月20〜30日に第3回目の協議を行うことを提案した。
この停戦交渉の間にも、双方が攻撃を激化させている。ウクライナは、ドローンを使ってロシアの地方、たとえば、イルクーツクにも攻撃をくわえた。
ウクライナが今後も戦争を継続するためには、西側の支援が不可欠であるが、ヨーロッパ諸国にその余裕があるか否か問題である。とくに、トランプ関税への対応に忙殺されており、経済情勢の悪化はウクライナ支援どころではない状況になっている。しかも、移民問題は、治安の悪化などを深刻化させており、国民の関心はウクライナから離れていっている。
これからも、ヨーロッパでは、ウクライナ支援に消極的な勢力が拡大することが予想される。難航しているウクライナ停戦交渉に、それがどのような影響を与えるのか注視していきたい>(以上「現代ビジネス」より引用)
「ヨーロッパの国々はますます「ウクライナ支援」に消極的に…ポーランド大統領選挙が示したポピュリズムの変化」と書き立てる国際政治学者・舛添 要一氏のお粗末な論評を取り上げる。その前にBBCが5月26日に報じたニュースを見て頂きたい。
見出しは「ドイツ首相、ウクライナの長距離ミサイル製造支援を約束」で、
「ドイツのフリードリヒ・メルツ新首相は28日、ベルリンを訪れたウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領に対し、対ロシア防衛のためウクライナが長距離ミサイルを製造することを支援すると述べた。他方、ロシアのセルゲイ・ラヴロフ外相は同日、ロシア政府はウクライナ政府と2度目の和平協議を行う用意があると発言した。
ウクライナにドイツ製ミサイル「タウルス」を提供するのかという記者団の質問に対し、メルツ首相は「我々は製造について話し合うが、詳細を公に協議するつもりはない」と述べた。ゼレンスキー氏との共同記者会見で発言した。
今月6日に就任したメルツ首相は、ドイツのウクライナ支援強化を約束している。首相は26日には、西側諸国がウクライナに供給している兵器について、射程範囲の制限は「もはやない」と発言していた。タウルス・ミサイルの射程範囲は500キロで、他の長距離ミサイルよりもロシア領土の奥深くまで到達する可能性がある」。
ウクライナにドイツ製ミサイル「タウルス」を提供するのかという記者団の質問に対し、メルツ首相は「我々は製造について話し合うが、詳細を公に協議するつもりはない」と述べた。ゼレンスキー氏との共同記者会見で発言した。
今月6日に就任したメルツ首相は、ドイツのウクライナ支援強化を約束している。首相は26日には、西側諸国がウクライナに供給している兵器について、射程範囲の制限は「もはやない」と発言していた。タウルス・ミサイルの射程範囲は500キロで、他の長距離ミサイルよりもロシア領土の奥深くまで到達する可能性がある」。
というものだ。
BBCのニュースに照らし合わせれば、舛添氏が「ヨーロッパの国々はますます「ウクライナ支援」に消極的に」と書いている文章は必ずしも正しくないことになる。確かに「ポーランド大統領選挙が示したポピュリズムの変化」とあるように、決選投票でポーランドでは僅少差でウクライナ支援に慎重なナブロツキ氏が大統領になった。しかし、それがどうしたというのだろうか。
ポーランド国民は決して親ロ派国民ではない。むしろロシア侵攻に危機感を抱いている国民だ。ロシアはウクライナの次には間違いなくポーランドに侵攻して来る、との危機感は日本国民が抱いている対中危機感とは比較にならない。なぜなら実際に他国によって国土を蹂躙され、国民を虐殺された歴史を持つからだ。
ドイツだけではない。フランス政府は2025年3月7日、19件のウクライナ復興支援プロジェクトを選定したと発表した。このプロジェクトは、健康、水、エネルギー、地雷除去・消火、インフラの5つの戦略分野を対象に、ウクライナの復興を支援することを目的とする。フランスとウクライナは、2024年6月に総額2億ユーロの「ウクライナ基金」を創設することで合意しており、今回のプロジェクトはその一環となる。
またイギリス政府はウクライナへの支援を強化しており、軍事支援、経済支援、人道支援など多岐にわたる支援を行っている。具体的には、無人機の供与、軍事支援、シリアへの穀物・食品の輸送支援、社会サービスの強靭化支援などが挙げられる。そのように欧州の主要三ヶ国はウクライナ支援強化で足並みを揃えている。なぜなら、プーチンに肩を持つトランプが出しゃばってウクライナ停戦協議を始めたからだ。ただプーチンは決して停戦を望んでないとの見通しを誤ったトランプ停戦協議は潰え、それに呆れたトランプ氏は匙を投げてしまったため、欧州諸国のウクライナ支援強化だけが残った。ただ、ハンガリーやスロバキアといった、かつてソ連の衛星国だった小国は態度を曖昧にしているが、このままロシアが弱体化すれば独立勢力が勢いを盛り返すのは目に見えている。
それにしても、舛添氏は未来に何を望んでいるのだろうか。彼は中国当局から「評論家」として招待され、何事もなく無事に帰国した親中派の人物だ。だから中共政府が好きなのは判っているが、プーチンも好きだとは思わなかった。彼には独裁国家が世界中の厄災の元だと解らないのだろうか。
いかに非効率な政治体制とはいえども民主主義が最も良い政治システムで、それを凌駕する政治システムは他にないという事実すら、彼の眼には見えないのだろうか。独裁国家で国民の人権が尊重され、国民が自由で幸福に暮らしている国があるなら教えて頂きたい。