停戦条件としてプーチンをロシアから排除しなければならない。
<プーチンのトランプ礼賛
アメリカ大統領選でのトランプ当選の直後、2024年11月7日に開催され、筆者も参加していたロシアの国際戦略シンポジウム「ヴァルダイ・クラブ」の年次総会で、プーチン大統領は自らのセッションで、トランプ評を語った。
「彼をどう見るかは自由だ。結局のところ、最初の大統領任期中は、彼は主にビジネスマンであり、政治についてあまり理解しておらず、間違いを犯す可能性があると誰もが言っていた。暗殺未遂に直面したときの彼の行動は本当に感銘を受けた。彼は勇敢な男だった。それはただ手を挙げ、共通の理想のために戦おうと呼びかけただけではない。もちろん、これは反射的なものではあったが、男は非日常的な状況下でこそ、その真価を発揮するものだ。そして、彼は正しい方法で、男としての勇気を示したのだと私は思う。就任1期目の政治については、私の言うことが彼に届くかどうかわからないが、それでも今言っておく。本当に心から言っている……彼は四方八方から追い回され、何もさせてもらえなかったという印象がある。左へ一歩、右へ一歩、余計なことを言うのを恐れていた。
結局のところ、これが彼の最後の任期なのだから、彼の選択次第だ。しかし、これまで公の場で語られてきたことは、ほとんど……大統領選挙中に語られたことについては、今はコメントしたくない。そして、ロシアとの関係を回復させ、ウクライナ危機を終わらせる手助けをしようという観点から発言されたことは、少なくとも注目に値すると私は思う。
この機会を利用し、合衆国大統領に選出されたことに祝意を評したい。私はすでに、米国民の信頼を得られるいかなる国家元首とも協力すると申し上げてきた。私たちはこの公約を守っていく。」
そして、司会者の「トランプ大統領と話し合う用意があるということか」という質問に対し、「もちろん準備はできている」と答えた。ある種の期待感を表明したことになる。
「プーチンはトランプを待ち望んでいた~アメリカが譲歩しようとしている停戦条件の「大きな隔たり」ーー米ロ・ウクライナ停戦交渉の深層」と題して畔蒜 泰助(笹川平和財団主任研究員)氏がウクライナ停戦の仲介者トランプ氏の思惑を論述している。
アメリカ大統領選でのトランプ当選の直後、2024年11月7日に開催され、筆者も参加していたロシアの国際戦略シンポジウム「ヴァルダイ・クラブ」の年次総会で、プーチン大統領は自らのセッションで、トランプ評を語った。
「彼をどう見るかは自由だ。結局のところ、最初の大統領任期中は、彼は主にビジネスマンであり、政治についてあまり理解しておらず、間違いを犯す可能性があると誰もが言っていた。暗殺未遂に直面したときの彼の行動は本当に感銘を受けた。彼は勇敢な男だった。それはただ手を挙げ、共通の理想のために戦おうと呼びかけただけではない。もちろん、これは反射的なものではあったが、男は非日常的な状況下でこそ、その真価を発揮するものだ。そして、彼は正しい方法で、男としての勇気を示したのだと私は思う。就任1期目の政治については、私の言うことが彼に届くかどうかわからないが、それでも今言っておく。本当に心から言っている……彼は四方八方から追い回され、何もさせてもらえなかったという印象がある。左へ一歩、右へ一歩、余計なことを言うのを恐れていた。
結局のところ、これが彼の最後の任期なのだから、彼の選択次第だ。しかし、これまで公の場で語られてきたことは、ほとんど……大統領選挙中に語られたことについては、今はコメントしたくない。そして、ロシアとの関係を回復させ、ウクライナ危機を終わらせる手助けをしようという観点から発言されたことは、少なくとも注目に値すると私は思う。
この機会を利用し、合衆国大統領に選出されたことに祝意を評したい。私はすでに、米国民の信頼を得られるいかなる国家元首とも協力すると申し上げてきた。私たちはこの公約を守っていく。」
そして、司会者の「トランプ大統領と話し合う用意があるということか」という質問に対し、「もちろん準備はできている」と答えた。ある種の期待感を表明したことになる。
ロシアが要求するのは「ウクライナ無害化」
ただ一方で、トランプ周辺から出てくる和平案については、ロシアにとって受け入れがいたいものだった。
2024年9月12日にJ・D・ヴァンス副大統領候補(当時)がメディア・インタビューに答えて示したウクライナ停戦・和平案は、
・ロシアは現在占領している領土を保持する
・現在の戦闘ラインに沿って非武装地帯を設ける
・ウクライナ側はロシアからの新たな侵略を阻止すべく厳重に要塞化される
・ウクライナに残った領土は独立した主権国家として残る
・ロシアはウクライナがNATOその他の同盟組織には加盟しない中立の保証を得る
だった。
また、トランプ新政権でウクライナ特使に任命された、キース・ケロッグ元陸軍中将は、
・和平合意後、ロシアにそれ以上の侵攻をさせない
・和平協議参加をウクライナへの防衛強化の条件とする
・ロシアを協議に参加させるため、ウクライナが求めるNATO加盟を長期間延期する
と、両方とも、基本的に、停戦と、その時点での戦線を元にした休戦ラインでの兵力分離という内容にすぎない。
これに対し、2024年6月14日、プーチン大統領は、
・ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、ザポロージェ、ケルソン地域からの軍隊の完全撤退
・ウクライナの中立・非同盟の立場、非核化、非武装化、非ナチ化
・2022年のイスタンブール交渉での非武装化に対する具体的内容も含めた、大筋の合意の履行
・ウクライナでのロシア語を話す市民の権利、自由、利益の完全な保護
・クリミア、セヴァストポリ、ドネツク・ルガンスク人民共和国、ヘルソン、ザポロージェ地域がロシア連邦の一部である事を含む、新たな領土の現実の承認
これらの基本原則を将来的に基本的な国際協定によって正式に定められる
・欧米の対ロ制裁の撤廃
という7項目を挙げ、ウクライナがこのプロセスを真剣に開始すれば、ロシアは遅滞なく速やかに和平交渉を開始する用意があると発言していた。
領土、占領地の問題はともかく、ロシア側にとって、最も重要なのは、2番目の「ウクライナの中立・非同盟の立場、非核化、非武装化、非ナチ化」、つまり、ロシアの安全保障にとってのウクライナの「無害化」である。
両者の隔たりは非常に大きい。一般的には合意に達するのは難しいだろうと思われる。交渉そのものは始まるだろうし、プーチンはそれを断らないだろうが、交渉で詰めていく中で、この隔たりが明らかになり、最終的には合意に到らず、この戦争は続くであろうというのが、昨年末の私の予測だった。
ロシア側が譲歩するか、アメリカ側が譲歩するかしなければ進展はないはずである。ロシア側について言えば、戦況は今、ロシアが有利であり、国内情勢も経済は労働者不足に伴うインフレの問題はあるものの、少なくともこの先一年は、それが劇的に大きな問題になるというということはないと見られている。ロシア側にはこの段階で譲歩する可能性は少ないのである。
となると、アメリカ側、つまりトランプ大統領が譲歩するしか、停戦に向けて大きく動き出すことはなかったのである。
ただ一方で、トランプ周辺から出てくる和平案については、ロシアにとって受け入れがいたいものだった。
2024年9月12日にJ・D・ヴァンス副大統領候補(当時)がメディア・インタビューに答えて示したウクライナ停戦・和平案は、
・ロシアは現在占領している領土を保持する
・現在の戦闘ラインに沿って非武装地帯を設ける
・ウクライナ側はロシアからの新たな侵略を阻止すべく厳重に要塞化される
・ウクライナに残った領土は独立した主権国家として残る
・ロシアはウクライナがNATOその他の同盟組織には加盟しない中立の保証を得る
だった。
また、トランプ新政権でウクライナ特使に任命された、キース・ケロッグ元陸軍中将は、
・和平合意後、ロシアにそれ以上の侵攻をさせない
・和平協議参加をウクライナへの防衛強化の条件とする
・ロシアを協議に参加させるため、ウクライナが求めるNATO加盟を長期間延期する
と、両方とも、基本的に、停戦と、その時点での戦線を元にした休戦ラインでの兵力分離という内容にすぎない。
これに対し、2024年6月14日、プーチン大統領は、
・ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国、ザポロージェ、ケルソン地域からの軍隊の完全撤退
・ウクライナの中立・非同盟の立場、非核化、非武装化、非ナチ化
・2022年のイスタンブール交渉での非武装化に対する具体的内容も含めた、大筋の合意の履行
・ウクライナでのロシア語を話す市民の権利、自由、利益の完全な保護
・クリミア、セヴァストポリ、ドネツク・ルガンスク人民共和国、ヘルソン、ザポロージェ地域がロシア連邦の一部である事を含む、新たな領土の現実の承認
これらの基本原則を将来的に基本的な国際協定によって正式に定められる
・欧米の対ロ制裁の撤廃
という7項目を挙げ、ウクライナがこのプロセスを真剣に開始すれば、ロシアは遅滞なく速やかに和平交渉を開始する用意があると発言していた。
領土、占領地の問題はともかく、ロシア側にとって、最も重要なのは、2番目の「ウクライナの中立・非同盟の立場、非核化、非武装化、非ナチ化」、つまり、ロシアの安全保障にとってのウクライナの「無害化」である。
両者の隔たりは非常に大きい。一般的には合意に達するのは難しいだろうと思われる。交渉そのものは始まるだろうし、プーチンはそれを断らないだろうが、交渉で詰めていく中で、この隔たりが明らかになり、最終的には合意に到らず、この戦争は続くであろうというのが、昨年末の私の予測だった。
ロシア側が譲歩するか、アメリカ側が譲歩するかしなければ進展はないはずである。ロシア側について言えば、戦況は今、ロシアが有利であり、国内情勢も経済は労働者不足に伴うインフレの問題はあるものの、少なくともこの先一年は、それが劇的に大きな問題になるというということはないと見られている。ロシア側にはこの段階で譲歩する可能性は少ないのである。
となると、アメリカ側、つまりトランプ大統領が譲歩するしか、停戦に向けて大きく動き出すことはなかったのである。
そしてトランプは「譲歩」をしたのか
プーチンは、トランプに対する期待感を述べたが、この当時、ロシア側の有識者の間でも厳しい見方が有力だった。ロシアの著名なアメリカ専門家でロシア国立高等経済学院ヨーロッパ・国際関係総合研究センター副所長のドミトリー・スースロフは、トランプがウクライナ紛争を迅速に解決しようとするだろうが、成功はしないしないだろうとした上で、
「トランプ次期政権は、ウクライナの中立的地位とNATO不加盟を提案するかもしれないが、同時にウクライナの軍事的強化、軍事化の進展、NATOからウクライナへの武器供与、欧米の教官によるウクライナへの武器供与、欧米の教官によるウクライナ軍の訓練、NATO諸国とウクライナの軍事協力の強度を制限なしに主張する。つまり、彼らはウクライナの軍事か政策を継続すべきだと主張するだろう。
ロシアはもちろん、そのような条件には断固として同意しない。ロシアにとって、ウクライナの非軍事化と非武装化を達成し、ウクライナが我々にとって脅威とならない状況の実現が極めて重要なのだ。NATOと緊密な安全保障協力を維持するウクライナは、たとえば正式加盟国でなくとも、軍事化されたままでは、われわれにとって脅威であり続ける。ロシアはこのシナリオを拒否するだろう」
と解説。これが当時のロシアの外交・安全保障サークルの支配的な考えだった。トランプに期待するが、それでも彼我の距離は遠い、という見方だ。
しかし、プーチンに近い人物の中には、トランプ政権に対する異なった見方を示すものがいる。ヴァルダイ討論クラブ発展基金研究ディレクターのヒョードル・ルキヤノフは、トランプを頭ごなしに否定するべきではないと指摘した上で、
「トランプは位置づけの変更を主張している。世界支配の代わりに、特定の米国の利益を精力的に守ることになる。(長期的ではなく、今の)明確な利益をもたらすものが優先される。外交政策よりも国内政策が優先されるという信念はトランプ支持者を常に特徴づけてきたものであり、今や共和党全体に広がっている。米国の道徳的・政治的覇権を維持することは、それ自体が目的ではなく道具である。このような優先順位のシステムでは、ウクライナ・プロジェクトは自由主義秩序の信奉者の目に映る運命を失う。ウクライナ・プロジェクトは、より大きなゲームの駒と化すのだ」
と、主張。加えてプーチンが状況次第では戦術的に停戦に応ずる可能性にも言及した。
スースロスは、トランプは所詮アメリカのシステムの中の一人なので限界があるとしているが、ルキヤノフは、そのシステムを壊す人間なのかもしれないと見ているわけである。
最終的にどういう展開になるかは、まだわからない。だがともかく蓋を開けてみたら、アメリカ側が大きく譲歩する可能性を掲げて、アメリカのイニシアティブでロシアとの対話の窓を開けたのである。
ロシア側にしてみると、アメリカとの関係を回復させるということに、今後がかかっている。しかし、その上で最大の障害となるのがウクライナ問題なのである。ロシア側が拘るのは、この問題の根本の原因の解消ということを、このプロセスの中で出来るのか。それも完全な解消になるのか、ある程度の解消なのか、それはまだ見通せない。
ロシアは頑なに「自国の安全保障問題の解決が根底」と主張する。しかし、具体的には、何を導することがその条件を満たすことになるのか>(以上「現代ビジネス」より引用)
プーチンは、トランプに対する期待感を述べたが、この当時、ロシア側の有識者の間でも厳しい見方が有力だった。ロシアの著名なアメリカ専門家でロシア国立高等経済学院ヨーロッパ・国際関係総合研究センター副所長のドミトリー・スースロフは、トランプがウクライナ紛争を迅速に解決しようとするだろうが、成功はしないしないだろうとした上で、
「トランプ次期政権は、ウクライナの中立的地位とNATO不加盟を提案するかもしれないが、同時にウクライナの軍事的強化、軍事化の進展、NATOからウクライナへの武器供与、欧米の教官によるウクライナへの武器供与、欧米の教官によるウクライナ軍の訓練、NATO諸国とウクライナの軍事協力の強度を制限なしに主張する。つまり、彼らはウクライナの軍事か政策を継続すべきだと主張するだろう。
ロシアはもちろん、そのような条件には断固として同意しない。ロシアにとって、ウクライナの非軍事化と非武装化を達成し、ウクライナが我々にとって脅威とならない状況の実現が極めて重要なのだ。NATOと緊密な安全保障協力を維持するウクライナは、たとえば正式加盟国でなくとも、軍事化されたままでは、われわれにとって脅威であり続ける。ロシアはこのシナリオを拒否するだろう」
と解説。これが当時のロシアの外交・安全保障サークルの支配的な考えだった。トランプに期待するが、それでも彼我の距離は遠い、という見方だ。
しかし、プーチンに近い人物の中には、トランプ政権に対する異なった見方を示すものがいる。ヴァルダイ討論クラブ発展基金研究ディレクターのヒョードル・ルキヤノフは、トランプを頭ごなしに否定するべきではないと指摘した上で、
「トランプは位置づけの変更を主張している。世界支配の代わりに、特定の米国の利益を精力的に守ることになる。(長期的ではなく、今の)明確な利益をもたらすものが優先される。外交政策よりも国内政策が優先されるという信念はトランプ支持者を常に特徴づけてきたものであり、今や共和党全体に広がっている。米国の道徳的・政治的覇権を維持することは、それ自体が目的ではなく道具である。このような優先順位のシステムでは、ウクライナ・プロジェクトは自由主義秩序の信奉者の目に映る運命を失う。ウクライナ・プロジェクトは、より大きなゲームの駒と化すのだ」
と、主張。加えてプーチンが状況次第では戦術的に停戦に応ずる可能性にも言及した。
スースロスは、トランプは所詮アメリカのシステムの中の一人なので限界があるとしているが、ルキヤノフは、そのシステムを壊す人間なのかもしれないと見ているわけである。
最終的にどういう展開になるかは、まだわからない。だがともかく蓋を開けてみたら、アメリカ側が大きく譲歩する可能性を掲げて、アメリカのイニシアティブでロシアとの対話の窓を開けたのである。
ロシア側にしてみると、アメリカとの関係を回復させるということに、今後がかかっている。しかし、その上で最大の障害となるのがウクライナ問題なのである。ロシア側が拘るのは、この問題の根本の原因の解消ということを、このプロセスの中で出来るのか。それも完全な解消になるのか、ある程度の解消なのか、それはまだ見通せない。
ロシアは頑なに「自国の安全保障問題の解決が根底」と主張する。しかし、具体的には、何を導することがその条件を満たすことになるのか>(以上「現代ビジネス」より引用)
「プーチンはトランプを待ち望んでいた~アメリカが譲歩しようとしている停戦条件の「大きな隔たり」ーー米ロ・ウクライナ停戦交渉の深層」と題して畔蒜 泰助(笹川平和財団主任研究員)氏がウクライナ停戦の仲介者トランプ氏の思惑を論述している。
一読して見てトランプ氏の仲介案をプーチンが呑むのは困難だ、ということだ。それはロシアが侵略し占領しているウクライナ東部とクリミア半島をロシア領と認め、ウクライナを非軍事化する、ということだからだ。それこそトランプ氏が現代のチェンバレンになることでしかない。それではNATO諸国は決して容認しないだろう。
根本的な紛争解決には原点へ戻ることだ。つまり1919年に定めたウクライナ-ロシア国境線まで軍を退くことだ。ウクライナ東部もクリミア半島もウクライナ領に戻すし、ウクライナ軍が侵攻しているロシア領内から撤退することだ。
そしてウクライナの未来はウクライナが決めることであって、プーチンの指図に従わないことが停戦の最低ラインだろう。そうしない限り、領土拡大を目論む独裁者は軍備に国家予算を注ぎ込んで軍事大国を維持するだろう。戦争の絶えない世界が今後も続くことになる。
世界から戦争をなくすには戦争は決して割に合わないことを、独裁国家であれ民主国家であれ、すべての国民に知らしめることだ。戦争を始める政権を支持すれば国民は塗炭の苦しみを味わう、と世界に知らしめれば、戦争を始める国は無くなるだろう。
現実的な解決策として現在のウクライナ及びロシアの占領地を非武装地帯として、両者とも占領の果実を手にしない、という妥協案がある。戦争は割に合わない、ということを独裁者に知らしめなければ戦争の誘惑にかられる独裁者が世界には幾らでもいる。だからこそ、プーチンは痛い目に合わせなければならない。
幸いにしてトランプ氏がゼレンスキー氏をホワイトハウスから蹴り出したのを機にEU諸国が軍事的にウクライナを支えることで一致(ハンガリーは反対したようだが、ハンガリーの拒否権を凍結した)した。フランスの核をEU諸国の核の傘として共有することも決めた。トランプ氏がヘタな妥協案でまとめようとしても、EU諸国が拒否することもあり得る。欧州の問題で米国の指図を受けない、という態度に出れば、米国が欧州から手を退くことになるかと云えば、そうはならない。米国の安全保障にとって欧州は重要な位置を占めているからだ。
果たしてトランプ氏はウクライナ支援予算を凍結したが、同時にロシア経済制裁を強化した。ことに金融制裁を強めてロシアを兵糧攻めにしようと企んでいるようだ。だからこそ、米国はシェールオイルや天然ガスを増産して欧州諸国に「買え」と迫っている。どうじにサウジアラビアが原油増産に踏み切って、原油価格を現在の半分まで下げると宣言した。
トランプ氏は欧州EUの頭越しにロシアと停戦協議することは出来ない。EUの全面的な支援を受けるウクライナは強気で対プーチンと対応するだろう。
戦争は一日も早く終結させなければならない。しかしその終結が次の戦争の導火線になってはならない。ロシアにプーチンがいる限り、ウクライナの次にはバルト三国やポーランドをプーチンは狙っているに違いない。そして独立の意を表明したロシア中央地域に軍を派遣して徹底的に弾圧するだろう。そうさせてはならない。だからこの際、プーチンを敗北させなければならない。決して安易な妥協を試みようと思ってはならない。トランプ氏は停戦の時期に拘らずに、ロシアを兵糧攻めにして干し上げる必要がある。停戦の最低条件としてプーチンをロシアから排除しなければならない。世界平和のために、世界中の独裁者に戦争は割に合わないことを知らしめなければならないからだ。