日本の中小零細企業の技術や知的財産が狙われている。

明星大教授 細川昌彦氏
 中部経済の未来と地域づくりを考える「読売Biz(ビズ)フォーラム中部」が20日、名古屋市中区のホテル「TIAD(ティアド) オートグラフ コレクション」で開かれた。通商産業省(現経済産業省)出身で明星大教授の細川昌彦氏が「激動の経済安保に企業はどう立ち向かうのか」と題し、日本の技術と経済を守るための心得を約60人に説いた。

■経済的威圧 
 30年前、省内に安全保障貿易管理課という部署を作った。経済官庁で「安全保障」という名前を付けた第1号だったが、外務省に激怒された。当時、安全保障は外務省と防衛庁(現防衛省)の専管事項で、商売人が安全保障なんてけしからん、という雰囲気だった。
 今ではグローバル企業の経営者が一番悩んでいるのが、経済安全保障で何に気をつけたらよいかということだ。離れた存在だった経済と安全保障という二つの輪の重なりが、近年急速に拡大してきた。大きな要因の一つが、中国が頻繁に行う「経済的威圧」だ。
 2010年、尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した事件で、中国は日本向けレアアース(希土類)の輸出を止めて製造業が打撃を受けた。最近では東京電力福島第一原発の処理水の海洋放出に反発し、日本の水産物の輸入停止に踏み切った。中国は自国市場を武器にこうした攻撃を毎年のように行っている。
 備えるには長期的な目線で、中国への依存度を下げていくことが欠かせない。訪日客もコロナ禍前、3~4割が中国人だったが、中国が出国制限を課す可能性を考える必要がある。WTO(世界貿易機関)への提訴など、ルールに基づいた措置も講じていくべきだ。

■戦略産業 
 米中対立の主戦場はドローンや人工知能といった技術の掌握になっている。中国は国産化できていない「戦略産業」を明確化し、ネックとなっている技術を外国企業から入手することに力を入れている。
 戦略産業のうち、半導体製造装置や、スマホなどに使われる電子部品「積層セラミックコンデンサー」は日本企業が高い技術を持つ。こうした企業に中国は地場企業との合弁会社設立を持ちかけ、積極的に誘致する。日本国内に乗り気な企業がいくつもある。
 ところが実際に合弁会社を設立すると、日本側がどんなに守ろうとしても、中国は国の規制を変えるなどして基幹技術の獲得を図る。そして技術を手に入れると、中国は日本企業が不要になったとして排除に動く。
 例えば日本が得意としていた電気自動車(EV)のモーターに使われる高性能磁石は、日本の大手が16年に合弁会社を作った。今では合弁のパートナーだった中国企業がEV最大手のテスラに単独納入している。
 中国は技術の獲得のため、誘致に加えて買収も手段としている。この場合、危険なのは大企業でなく、基幹部品を納める地方の中小企業だ。大企業に部品を安く買いたたかれ続けて経営が苦しくなり、やむを得ず買収を受け入れたというケースが実際に起きている。
 大企業にはサプライチェーン(供給網)のなかで、死守すべき技術は何かを見極めてほしい。その技術に磨きをかけ、「持続可能なサプライチェーン」を築くことが求められている。

■揺さぶり
  日本では、特定分野で強みを持つ複数の企業が競争している。独占禁止法を気にして、競合同士は情報交換を行わない。中国はここにつけ込み、交渉時に「競合はこの話に乗り気だぞ」と揺さぶりをかけてくる。
 ドイツの自動車メーカー3社は、北京の商工会議所で情報交換をしている。日本も同様に業界内で意思疎通を深め、どこまでの技術は外に出してよいのか、共通認識を持たなければならない。高性能磁石のような苦い経験も、産業界全体で共有していくべきだ。
 とはいえ、危ないから中国とは商売をしないというのは思考停止だ。経済と安全保障が重なる境目を見極め、重ならない部分は貪欲に取りにいってもらいたい。この見極めは、経営者にしかできない。
 企業経営は経済合理性だけでなく、リスク管理が今後ますます重要になる。データ保護やサイバー攻撃への対応についても、担当部署任せではなく、経営者が率先して対策を講じる時代になったと認識するべきだ。

◎質疑応答  ――中国への技術流出を防ぐために、国が「待った」をかけてはどうか。
 (輸出などを規制する)外為法(外国為替及び外国貿易法)を強化しようとすると、経済界は判を押したように「規制は最小限に」と注文する。民間は「規制される側」という発想が強いが、これは経済安保の本質からずれている。
 大事なことは規制に頼るのではなく、民間も(経済安保の)プレーヤーという意識を持つことだ。外為法で最低限の線引きを行い、そこから先は民間が自分たちで何を守るべきか考えられる社会が望ましい。業界が守るべきものと、外為法の規制はイコールではない。私の周りでは、経済安保を自分ごとと捉える経営者が少しずつ増えている>(以上「読売新聞」より引用)




 昨今、日本の後継者のいない中小零細企業を狙って、中国国営企業が資本参加による買収M&Aを盛んに仕掛けているという。もちろん傑出した技術を持たない企業ではなく、ニッチな隙間技術を持つ中小・零細企業を狙ってのことだ。ことに東京や大阪、京都などの工場は特出した技術がなくても企業の土地を狙ったM&Aが横行しているようだ。
 そこでバックナンバーになるが2023/09/23付の読売新聞に掲載された「日本の先端技術狙う中国 経済安保経営者が先頭に」という記事を引用した。日本の中小・零細企業が持つ世界的な技術はゴマンとある。それらを部品の一つとして大企業が調達して日本は世界的な高品質製品を製造している。しかしそうした中小・零細企業をM&Aもしくは資本参加して支配権を獲得するケースが多々見られる。

 引用記事にも「例えば日本が得意としていた電気自動車(EV)のモーターに使われる高性能磁石は、日本の大手が16年に合弁会社を作った。今では合弁のパートナーだった中国企業がEV最大手のテスラに単独納入している。 中国は技術の獲得のため、誘致に加えて買収も手段としている。この場合、危険なのは大企業でなく、基幹部品を納める地方の中小企業だ。大企業に部品を安く買いたたかれ続けて経営が苦しくなり、やむを得ず買収を受け入れたというケースが実際に起きている」と高性能磁石の場合を例にとって説明している。
 日本が開発した高性能磁石には、ネオジム磁石、サマリウム・コバルト磁石、フェライト磁石などがある。ネオジム磁石はEVに広く使われている。その技術を中国が奪い取った。日本企業は技術防衛に疎いというか、人はそうした悪辣なことをしないと思い込んでいる。しかし中国や韓国人は利益のためなら平気で人を裏切る。しかも裏切られた者が愚かだと嘲笑される社会だ。全く日本とは精神風土の異なる社会だということを知った上で付き合わなければならない。

 日本には未だに「スパイ防止法」がない。もちろん企業スパイ防止法という法律がないのは云うまでもない。だからこそ、大企業は云うに及ばず、中小零細企業に到るまで所有する製造特許権を守る法律を国は制定しなければならない。そして国外へ進出する際には製造特許権を獲得している部品等の製造に関して、国外へ移転させるのに厳しい制限を課すべきだ。
 それは工業に限ったことではない。農業産品に関しても、種子や育苗などに関する特許を国が保護する機関を設置して、海外流出に関して厳しい検疫等を課すようにすべきだ。これまで様々な農産品の種や育苗などが持ち出されたケースがあり、それによる損害は甚大だ。今後とも日本の優秀な研究者の成果が盗まれることがないように国は積極的に保護政策を展開すべきだ。

 中小零細企業では後継者のいないことが大問題になっている。2024年における後継者がいない中小企業の数は全国の全業種で約14.2万社、後継者不在率は52.1%だったという。経産省はそうした後継者のいない中小零細企業の問題に積極的に関与していくべきだ。そのためにも全国総合開発計画を策定して、中小零細企業の経営基盤の近代化を促進すべきだ。もちろん補助制度等も整えて、日本の技術・製造立国の礎を壊さないように努めなければならない。
 こん後、日の丸半導体製造に日本は乗り出そうとしている。既に1nm半導体製造の実用化に向けて開発の目途も付いている。もちろん次世代コンピュータの量子コンピュータも東大などで研究開発が進んでいる。そのような最先端技術開発の成果を奪われないように、経産省は文科省などと連携を取って中国人留学生などの受け入れには慎重になるべきだ。産業安全保障体制の構築に日本政府は積極的に乗り出すべきではないか。

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