プーチンには国際司法裁判所で裁きを受けさせなければならない。そうしない限り、野心を滾らせる愚かな独裁者は後を絶たないだろう。

<2025年2月23日付ウォールストリート・ジャーナル紙は、ウクライナが停戦に当たって安全の保障を求める理由を歴史的経緯から説明する社説を掲載している。

  2月24日で、ロシアのウクライナ侵略から3年となる。先立つ週末、ロシアはこれまでで最大のドローン攻撃を行った。プーチン大統領は「和平」を望んでいるとトランプ大統領は述べたが、ウクライナはそうした約束についての苦い経験をしてきている。
  発端は1994年のブダペスト覚書である。ウクライナは、米国、英国、ロシアによる安全の保障と引き換えに核兵器を放棄した。ロシアは、ウクライナの主権、領土の一体性を尊重すること、経済的威圧を行わないことを約束したが、それらは破られ続けた。
  2003年、ロシアは、ウクライナ領のトゥズラ島付近に突堤を建設し始めた。この領域侵犯に対し、ウクライナは軍の派遣で応じた。この危機はクチマ大統領がプーチン大統領と妥協を図ることで沈静化したが、妥協の中身はロシアに有利なものであった。
  トゥズラ危機以降、ウクライナは西欧との政治的・経済的結びつきを深化させようと努めた。ロシアは、エネルギー供給による恐喝を行い、ウクライナとの貿易関係を武器にした。  13年、ロシアは、ウクライナの輸出を国境で阻み、その一方でウクライナ政府への資金提供を申し出た。当時のヤヌコヴィッチ大統領はロシアの経済的威圧に屈し、13年に欧州連合(EU)との連合協定から撤退した。これは、ウクライナで大衆の抗議行動を起こし、ヤヌコヴィッチは14 年にロシアに逃亡した。
  ロシアは、この14年の事態に対し、軍隊を派遣し、クリミアとセヴァストーポリ港を占拠した。同年、ロシアは、親ロシアの分離派を武装させ、ウクライナ東部のドンバス地方で戦争を始め、東部の二つの州を占拠した。
  14年8月、イロヴァイスクを解放しようとしたウクライナ軍はロシア軍に包囲された。ウクライナ軍が安全に撤退できるように、プーチンが「人道的回廊」と呼んだものが設けられたが、ウクライナ兵が武器を置いた後、ロシア軍は攻撃し、退却中の360人の兵士を殺害した。
  これ以降、ロシアはウクライナ東部で攻勢を強めた。が、オバマ大統領は殺傷兵器の支援を拒み、米欧はウクライナに停戦交渉を求めた。米国とドイツの圧力で、ウクライナは14年後半にミンスクIの停戦に合意した。しかし、ミンスクIは続かず、ウクライナは15年にミンスクIIに合意した。しかし、ロシアは、ミンスクIIについてロシアは当事国ではないと主張し、ドンバス地方に重火器を集積し、22年の侵略の準備をした。
  ロシアの22年2月の侵攻は、ウクライナ政府の断首作戦を電撃的に行い、全土を掌握することが意図されていた。ゼレンスキー大統領は、米国からの国外離脱の申し出を拒絶し、キーウの包囲を打ち破った。その後ロシアは、民間施設を攻撃し、東部で消耗戦を行う現在の戦略に転じた。
 今、プーチンは、和平について語っている。しかし、ロシアが守る合意は、力による合意とロシアの利益になる合意であり、ウクライナはどちらも受け入れられない。
  ウクライナが欧州と米国から信頼できる安全の保障を求める理由はそこにある。今度、停戦を行ったとしても、それはミンスクIIIにすぎず、対ロシア制裁を緩めさせ、ロシアが軍備をさらに強化し、後に再侵略するための時間を与えることにしかならない。 * * *

ブダペスト覚書への2つの誤解
 ロシア・ウクライナ戦争の停戦に向け、将来の安全の保障が大きな論点となっているが、その議論の前提として、過去の経緯を整理した社説である。今日、ウクライナとしてどうすべきかを考える際、「ブダペストの教訓」が語られる。
  ソ連の解体を受けて、ウクライナは領土に核兵器が存する形で独立を果たしたが、その後、核兵器をロシアに移送することで非核化した。それに際し、94年12月に、ブダペストにおいて米国、英国、ロシアとの間で安全の保証についての文書に署名したのが「ブダペスト覚書」である。この社説は、ブダペスト覚書が、その後、ロシアによっていかにないがしろにされてきたかを時系列で示している。
  ウクライナの非核化とブダペスト覚書を巡っては、不正確な理解が流布しているので、それについて触れておきたい。第一に、「ウクライナが非核化をせず、核兵器を少しでも残していたら、ロシアに侵略されるようなことはなかった」との指摘があるが、当時の状況を見誤っている。
  当時、ウクライナに残されていたのは、米国を標的としていた大陸間弾道ミサイル(SS-19が130基、SS-24が 46基)であり、発射統制はモスクワからなされていた。仮に、これらの核兵器が移送ないし廃棄されなかったとしても、ウクライナにとっては「使えない」核兵器であったのだ。
  第二に、「ブダペスト覚書で安全の保証を得たことで非核化したが、失敗だった」との指摘があるが、ウクライナがなぜ非核化したかの本質を見誤ってはいけない。ウクライナが非核化したのは、米国も、ロシアも、欧州もそれを求めたことにあり、ウクライナにとっては、非核化するか、国際社会で孤立するかの選択肢しかなかった。核不拡散条約(NPT)上も、非核兵器国として加盟するか、NPT に加盟せず、国際社会から非難を受け続けるかの二つの選択肢しかなかった。
 このような誤解を排して議論する必要があるが、弱い保証とはいえ、ウクライナが「ブダペスト覚書」でロシアからの安全を確保しようとしたものの、それが守られなかったことは疑い得ない。ロシアは「ブダペスト覚書は法的拘束力を持つものではない」と述べ、自らの行動を正当化しようとしているが、外交交渉を経て作成された政治的文書における自らの約束を破ったことは明らかである。もちろんブダペスト覚書がなくても、ロシアの行為は国連憲章違反である。
  それでは、どのようにして停戦後、ウクライナの安全を保障するのか。ウクライナが求める北大西洋条約機構(NATO)加盟は実現しそうにない。NATOと切り離して、欧州の有志国で停戦監視部隊を派遣することは現実的に考えられる。一方、部隊の規模にもよるが、それがロシアの再侵略を抑止する機能を持ちうるかはわからない。

どうロシアから守るか
 問題の根幹は、プーチンがロシアの勢力圏として確立したいと考えている国々の安全をどのようにして確保するかとの点である。この問題は、ロシアの国力が弱体化しているとき、また、ロシアが西側諸国と親和的な関係を維持しようとしているときには顕在化しなかった。一方、ロシアが国力を強め、西側諸国と別の道を歩むと決めた後、顕在化することになった。 
 この問題は、08年のジョージア・ロシア戦争で浮上したが、「どちらが武力行使を始めたか」の問題でうやむやになった。14年のロシアによるウクライナ侵攻(クリミア半島、ドンバス地方)はまさにこの問題を浮き彫りにしたが、西側の対応は微温的なものに止まった。それが今、問われている。米国の関与が期待できない状況では、欧州がどれだけのことができるか次第であり、それがプーチンの勢力圏回復の野心・野望を押しとどめられるかどうかである>(以上「Wedge」より引用)




 Wedgeは「歴史が証明する裏切りの数々…ロシアが停戦合意を守らないと言えるこれだけの理由、プーチンの野心をどう抑えるか?」とウクライナ停戦に関する見識ある記事を掲載した。つまり「プーチンの野心をどう抑えるのか」というものだが、どうやらプーチンの野心は止まるところを知らないようだ。
 そうすると1991年当時の国境線までロシア軍が撤退する事しかないし、それはプーチンの野心を満たすどころか、プーチンの面目を潰すものだ。しかしプーチンの野心を満たして「ウクライナ全土の占領」を認めたとしても、彼は次の野心を募らせるだけだ。

 ロシアは国際条約など何とも思っていない。先の大戦で日本は「日ソ不可侵条約」を守ってヒトラーがモスクワに迫った当時、日本軍をシベリアへ派遣してソ連を二方面攻撃で攻めることをしなかった。しかしソ連はヒトラーとの戦争に勝利すると「日ソ不可侵条約」を破棄して、満州国に攻め込みポツダム宣言受諾後に日本の北方領土を占拠した。
 ソ連の後継国・ロシアも同じNDAを引き継いでいるようだ。ウクライナは1994年に米国、英国を交えてロシアとブダペスト覚書を交わしてクライナの安全の保障と引き換えに核兵器を放棄した。だが、それが間違いだった。ブダペストの会談に米英を立ち合わせたが、何の意味も持たなかった。

 トランプ氏は停戦の条件としてウクライナに譲歩を求めて、プーチンの野心に迎合している。ロシアがウクライナに攻め込んだウクライナ領土をウクライナに放棄させるのを条件とするのは欧州諸国は納得させるものではない。もちろん極東の日本で暮らす日本人たる私も異を唱えざるを得ない。軍事力による国境線の変更を認めると次々と軍事侵攻するのはヒトラーの例を上げるまでもなく、歴史的に明らかだ。プーチンは決して攻め込んだ範囲だけで満足しないだろう。
 現にプーチンは「ウクライナ全土の占領」が停戦条件だと口にしている。それを認めれば、次はベラルーシを併合し、ポーランドを攻め込むために軍拡に勤しむだろう。トランプ氏は完全に現代のチェンバレンになってしまう。それは「これ以上の戦死者を出さないため」とトランプ氏がウクライナ停戦に乗り出した趣旨にも反する。戦争を拡大するだけの停戦協議を急ぐよりも、プーチンを排除しロシアに領土拡大の野心を抱くと痛い目にあうと経験させる必要がある。ならぜならそれはロシアの独裁者一人の排除ではなく、領土的野心を抱く世界中の独裁者たちの野心をも砕くからだ。

 プーチンがウクライナをどこまで攻め獲るかを眺めている独裁者が中南海にいる。彼は台湾を攻め込んだ場合、国際社会はどう動くかをウクライナ戦争をお手本にしてシュミレートしているはずだ。
 現実問題として、中国が台湾を占領するのは不可能だ。なぜなら今の中国に兵站を賄うだけの兵器と経済力がないからだ。北部インドとの国境紛争ですら人民解放軍はお粗末さを露呈した。中国軍の装甲車はインド兵の石や木の攻撃ですら防げなかったという。訓練中の最新鋭中国軍機は何機も墜落事故を起こしている。そのような戦闘機で空中戦を演じることは出来ない。

 しかし暴走する可能性は否定できない。プーチンも「ウクライナなら簡単に勝てる」と踏んで暴走したのだろう。この結末はプーチンの国際舞台への復帰ではなく、両軍の戦死者の霊に報いるべくプーチンの命で購うしかない。
 間違ってはならない。プーチンは戦争犯罪人だ。出来ることなら、彼には国際司法裁判所で裁きを受けさせなければならない。そうしない限り、野心を滾らせる愚かな独裁者は後を絶たないだろう。

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