現実主義のトランプ氏と理想主義のゼレンスキー氏との衝突。

<アメリカのトランプ大統領とウクライナのゼレンスキー大統領が2月28日、ワシントンで会談した。ロシアの停戦協議について両首脳がカメラの前口論する大荒れの展開となった。 口論部分も含めたやりとりの詳細は以下の通り。 
  ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 トランプ大統領: 私が両者(ロシアとウクライナ)と連携しなければ、合意は絶対に成立しない。私が(ロシアの)プーチン大統領について本当にひどいことを言っておいて、「やあ、ウラジミール。合意の方はどんな感じ?」と言うか?そんな風にはいかない。 私は、プーチン大統領とは同調していない。誰とも同調していない。私は、アメリカ合衆国と同調している。そして世界の利益のために、私は世界と同調している。 この件を終わらせたいんだ。彼(ゼレンスキー大統領)は、プーチン大統領に憎しみを抱いている。そういう憎しみを抱いてる中、私が合意を仲介するのは難しい。彼はとてつもない憎しみを抱いていて、その気持ちも理解できるが、向こう(プーチン大統領)もそちらにほれ込んでいるわけでもない。だから、同調の問題ではない。私は世界と同調している。物事に決着をつけたい。私はヨーロッパと同調している。これをやり遂げられるのか見極めたい。 タフになってほしいなら、私はみなさんが今まで見たどんな人間よりもタフになることができる。非常に強硬になってもいいが、それでは合意には至らない。そういうものだ。 
 バンス副大統領: 私もひとこと言う。アメリカは4年間、記者会見の場でプーチン大統領に対して強硬な発言をする大統領がいたが、その後プーチン大統領はウクライナに侵攻し国土の一部を破壊した。平和と繁栄への道は外交に取り組むことかもしれない。バイデン前大統領は胸を張って、アメリカの大統領の言葉が行動よりも重要であるかのように見せかけた。アメリカをいい国にしているのは外交への取り組みだ。それがトランプ大統領のやっていることだ。 
 ゼレンスキー大統領: 聞いてもいいか? 
 バンス副大統領: もちろん。 
 ゼレンスキー大統領: 彼(プーチン大統領)は、ウクライナの広い地域、東とクリミアの一部を占領した。2014年に占領したので、何年もの間…バイデン前大統領(の任期の間)だけではないが、当時は、オバマ元大統領、そこからトランプ大統領、バイデン前大統領、そして今はトランプ大統領。神のご加護によりトランプ大統領がプーチン大統領を止めてくれるだろう。しかし、2014年の間は誰も彼を止めなかった。彼は占領して奪い、人々を殺した。  トランプ大統領: 2015年だ。 
 ゼレンスキー大統領: 2014年。 
 バンス副大統領: 2014年と2015年だ。 
 トランプ大統領: 私はここにいなかった。 
 ゼレンスキー大統領: そうだが、2014年から2022年まで状況は同じで、戦線で人々が亡くなっている。誰も彼(プーチン大統領)を止めなかった。ご存じのように我々は彼と多くの話し合いをした。私も2国間協議をし、署名をした。2019年に大統領になった私は彼と署名し、合意した。(フランスの)マクロン大統領と(ドイツの)メルケル前首相も一緒で、停戦に署名した。 彼らはみな、プーチン大統領は行動をおこさないと言った。ガスについて合意をし、署名をしたが、彼は停戦を破った。彼は我々の国民を殺し、捕虜の交換もしなかった。我々は捕虜交換について署名をしたが、彼は実行しなかった。JD(バンス副大統領)、それはどういう「外交」だというのだ?どういう意味だ?  
 バンス副大統領: 私は、あなたの国の破壊を終わらせる外交について話しているんだ。大統領、恐縮だが、あなたが大統領執務室に来て、この件をアメリカメディアの前で訴えようとするのは失礼だ。あなた方は、兵士のマンパワー不足のため、徴兵を前線に押し出している。この紛争を終わらせようと努力しているトランプ大統領に感謝すべきだ。 
 ゼレンスキー大統領: どんな問題があるのか見るためにウクライナに来たことはあるのか?一度来てください。 
 バンス副大統領: 実際に何が起きているのか、話は分かっている。大統領、人々をプロパガンダツアーに連れて行っているのも知っている。あなたは兵士を集める問題に直面しているのを否定するのか? 
 ゼレンスキー大統領: 問題はある。 
 バンス副大統領: どう思っているんだ?アメリカの大統領執務室に来て、あなたの国の破壊を阻止しようとしている政権を攻撃するのは、敬意を表す行為だとでも?  
 ゼレンスキー大統領: 色々質問があるようだ、最初から話そう。まず、戦争中は誰もが問題を抱える。みなさんは(ロシアとの間に)素晴らしい海があり、今は(脅威を)感じていないだろうが、将来は感じることになる。神のご加護を。 
 トランプ大統領: そっちが知るわけないだろ「我々が何を感じることになるのか」とか言うな。我々は問題を解決しようとしている「我々が何かを感じることになる」とか言うな。あなたはそんなことを言う立場にない。 
 ゼレンスキー大統領: 私はあなたに言っているわけではない。 
 トランプ大統領: あなたはそれを言う立場にない。覚えておけ、あなたは我々がどう感じることになるのか言う立場にない。我々は良い状況になり、我々は強いという気持ちになる。  ゼレンスキー大統領: あなたは影響を感じることになる。 
 トランプ大統領: ウクライナは今、いい状況ではない。その状況をあなたは許した。 
 ゼレンスキー大統領: 戦争の最初からだ。 
 トランプ大統領: そっちの状況はよくない。あなたは切り札を持っていない。我々と一緒にやってはじめてカードゲームができるという状況だ。 
 ゼレンスキー大統領: 私はカードゲームをやっているわけではない。 
 トランプ大統領: いや、カードゲームだ。あなたはカードゲームをしている。あなたは何百万人もの人々の命でギャンブルをしている。第3次世界大戦が起きるかどうか、ギャンブルをしている!第3次世界大戦のギャンブルをしている!あなたがしていることは我が国にとって無礼だ!人々が必要だという以上に多くの支援をしてきた我が国に対して。 
 バンス副大統領: 一度でもお礼を言ったことがあるのか?  
 ゼレンスキー大統領: 何度もだ。 
 バンス副大統領: いや、この会議中にだ。この会議中「ありがとう」と言ったか?あなたは(2024年)10月にペンシルベニア州に行って敵陣のために選挙応援をした。あなたの国を救おうとしているアメリカ合衆国の大統領に感謝の言葉を言ったらどうだ。 
 ゼレンスキー大統領: 戦争について大声で話す、ということなのか? 
 トランプ大統領: 彼は大声で話していない、大声で話していない。あなたの国は大変なトラブルに直面している。 
 ゼレンスキー大統領: 聞いてもいいか? 
 トランプ大統領: いや、いや、あなたはもうたくさん話した。あなたは大変な状況にある。  ゼレンスキー大統領: 分かっている。わかっている。 
 トランプ大統領: そちらの戦況は悪い、勝ってない状況だ。ここから無事に抜けられる非常に良いチャンスがあるのは、我々のおかげだ。 
 ゼレンスキー大統領: 大統領、我々は国に留まり、強くあり続けている。戦争が始まった当初から我々は孤独だった。感謝している。私はこの内閣にも感謝を伝えた。 
 トランプ大統領: 孤独なんかじゃない、孤独なんかじゃ。我々は…愚かな大統領は、あなた方に3500億ドルを与え、軍事装備を与えた。あなた方の兵士は勇敢だが、我々の軍事装備を使わなければならなかった。我々の軍事装備を使わなければ、この戦争は2週間で終わっていた。 
 ゼレンスキー大統領: 「3日」だろ、プーチン大統領は「3日」と言っていた。 
 トランプ大統領: もっと短かったかもしれない。 
 ゼレンスキー大統領: ああ、「2週間」だ。 
 トランプ大統領: こんな状況では、交渉するのは本当に難しくなる。 
 バンス副大統領: 間違っている時は、アメリカメディアの前で争うより「ありがとう。意見の相違があるのは認める」と言って話合ったらどうなんだ。我々はあなたが間違っているのをわかっている。 
 トランプ大統領: こうやって、アメリカ国民に何が起きているのかを知ってもらうのはいいことだ。とても重要だと思う。だからここまで議論を止めなかった。そちらは感謝すべきだ、切れるカードを持っていない。 
 ゼレンスキー大統領: 感謝しているんだ。 
 トランプ大統領: あなたの国民は死に、兵士が不足している。不足しているんだ。合意はそちらにとって最高なことになるのに、あなたは「停戦はやりたくない、停戦はやりたくない」と言っている。「あれがほしかった」とか…。 いいか、今停戦ができるのなら、銃弾が飛び交い、兵士が死ぬのを止めるためにやれ。でもあなたは「停戦は望んでいない」と言っている。 
 ゼレンスキー大統領: もちろん、我々は戦争を止めたい。でも私はあなたに「安全が保証された停戦がしたい」と言った。 
 トランプ大統領: でもそちらは「停戦はほしくない」と言っている。私は「停戦」がいい。「合意」よりも早く「停戦」が実現するからだ。 
 ゼレンスキー大統領: 我々の国民に「停戦」についてどう思うか聞いてくれ。 
 トランプ大統領: (前回の停戦は)私とは関係ない。私とは関係ない。それはバイデン前大統領という賢くない男とのことだ。それはオバマ元大統領とのことだ。 
 ゼレンスキー大統領: 彼らはあなたの国の大統領だった。 
 トランプ大統領: いや、それはオバマ元大統領だ。オバマ元大統領がそちらに与えたのは“シーツ”(のような弱い支援)だ。私はあなたに“ジャベリン”(携帯型対戦車ミサイル)をあげた。あんなにたくさんの戦車をやっつけるために私はそちらに“ジャベリン”を与えた。そうだ、声明は「オバマはシーツを与え、トランプはジャベリンを与えた」だ。そちらはもっと感謝しなくてはならない。 言っておくが、なぜならそちらにはカードがないからだ。我々と一緒であれば手元にカードはある状態だ。でもそうでなければゼロだ。取引は難しくなる。そちらの態度を変えてもらわないといけないから。
 ゼレンスキー: もしロシアが停戦を破ったらどうなるのか? 
 トランプ大統領: もし何かあったらどうするって?どうだって。もし今、頭の上に爆弾が落ちたらどうするとか。彼ら(ロシア)が停戦をやぶったらどうなるかって?知るか。バイデン前大統領が相手じゃない?だってリスペクトされていなかったから。彼らは、オバマ元大統領もリスペクトしていない。彼らは「私」をリスペクトしている。言っておくが、プーチン大統領は私と一緒にひどい目にあった。彼は私に対するでっちあげの魔女狩りに利用され「ロシア、ロシア、ロシア」って騒ぎに巻き込まれた。聞いたことあるだろ?あれは偽りのハンター・バイデン、ジョー・バイデン詐欺・ヒラリー・クリントン、ズルのアダム・シフのネタだ。民主党による詐欺で、彼はそれを経験しければならなかった。でも彼は耐え抜いた。我々は戦争をしなかったが、彼はそれを経験した。彼は無関係だったのにやり玉にあがった。結局、ハンター・バイデンの浴室、寝室から出てきた端末のひどい話だ。「地獄のラップトップ端末」はロシアが作って、51人のエージェントが関わったと。全てウソで、彼はそれを耐えなければならなかった。 私が言えるのは、彼はオバマ氏やブッシュ氏との合意を破ったかもしれないし、バイデン氏ともそうだ。何が起きたのかは分からないが、彼は私との合意は破らなかった。彼は合意をしたがっている。実際に合意するかは分からない。 問題は、私はそちら(ゼレンスキー大統領)を「タフガイ」にすべく力を与えたし、アメリカなしでは「タフガイ」にはならないと思う。あなたの国の人々は非常に勇敢だが、合意しなければ、我々は手を引く!我々が手を引いたら、そちらは戦い抜くしかない。カードがない状態だから、悲惨なものになると思うが戦い抜くしかない。合意に署名できれば、もっといい状況になるが、あなたは感謝しているような態度じゃない。よくない。正直に言って、それはいいことではない。 もう、これで十分でしょ。これはテレビ的にいいのは間違いないけど。今後、何ができるかみてみよう。>(以上「FNN」より引用)





 以上がホワイトハウス執務室で行われたトランプ-ゼレンスキー会談の「全文」だ。この後、ゼレンスキー氏は予定されていた昼食会を中止し、トランプ氏との共同記者会見も取りやめて一人で帰国した。
 それに対してEUでは、
「トランプ米大統領が「米国への感謝が足りない」と声を荒らげるなどして協議が決裂した2月28日のトランプ氏とウクライナのゼレンスキー大統領の会談。欧州の首脳からは、ウクライナへの連帯を示す声が相次いだ。
 会談の直後、ポーランドのトゥスク首相は「親愛なるゼレンスキー大統領、親愛なるウクライナの友人たちよ。あなたたちは1人じゃない」とX(旧ツイッター)に投稿した。
 北欧スウェーデンの首相府も「ウクライナは自らの自由だけでなく、欧州全体の自由のために戦っている。スウェーデンはウクライナとともにある」との声明をXに投稿した。
 欧州連合(EU)の高官によると、EUの大統領にあたるコスタ首脳会議常任議長は会談直後のゼレンスキー氏に電話をし、さらなる支援を表明。「公平で永続的な平和のために協力し続ける」とXに投稿した」(以上「朝日新聞」より引用)
 とEU各国首脳はゼレンスキー氏に同情を示し、ウクライナとの連帯を強める発言が相次いだ。

 ゼレンスキー氏は「1991年当時の国土保全」というウクライナがあるべき姿に向かって国民を鼓舞し激励して戦争を遂行している。それに対して、トランプ氏は現実を受け容れて直ちに停戦協議を始めるべきだ、とゼレンスキー氏を説得しようとした。
 そしてウクライナに戦費や武器を援助した見返りの話を始めようとした。それが実業家たるトランプ氏の常識だが、ゼレンスキー氏には祖国ウクライナの領土保全が最優先される。ロシアにクリミアや東部地域を奪われたままで停戦など考えられない。米国はもっとウクライナを支援すべきだ、とゼレンスキー氏はバンス副大統領に噛み付いた。「ロシアに破壊されたウクライナの実態も知らないで何を言うか」と。

 若い頃から数度の破産を経験してきたトランプ氏は修羅場の中で藻掻いているゼレンスキー氏の心理状態が手に取るように分かるのだろう。窮状に陥った者とディベートするには高圧的に出るべきだ、との読みがあるのだろう。これ以上のウクライナ国民の命を犠牲にしてはならない、とゼレンスキー氏が判断すれば、停戦条件のハードルはたちまち下がるからだ。
 しかしゼレンスキー氏はトランプ氏の高圧的な態度にいささかも怯まなかった。立派と云うしかないが、ウクライナ国民の命が失われる戦争が継続することに変わりない。ゼレンスキー氏の立場に同情するが、トランプ氏との会談決裂により欧州諸国は隣国ウクライナと連帯して、対ロ制裁で共同戦線を組む意を固めたようだ。それこそが得難いトランプ-ゼレンスキー会談の結実かも知れない。

 原則論でいえば、武力で国境線の変更する者を許してはならない。それは先の大戦で終結した前世紀の話ではないか。プーチンの戦争は犯罪そのもので、そもそもディベートで決着する類の事柄ではない。ロシアからプーチンを排除すべきが本来の世界平和のあり方であって、そのために米国がCIA員を派遣してプーチンを始末したとしても、誰も米国を責めないだろう。
 断るまでもなく、プーチンは戦争犯罪者だ。彼が一人前の顔をして停戦会談に出席する資格などない。ましてやウクライナの占領地の権利など、プーチンが言及する資格など1mmない。トランプ氏はゼレンスキーに「お前の手の内にカードはない」と取引材料がないことをあからさまに指摘したが、プーチンが「ジョーカー」でしかないことがトランプ氏には解らないのだろうか。最初にプーチンというカードこそトランプ・ゲームから排除しなければならないカードだということが、解らないのだろうか。

 欧州諸国は「ジョーカー」のプチンを排除するまで対ロ制裁を強めるべきだ。同時に裏口からロシアを支援する中国とインドを締め上げなければならない。国際社会から排除も辞さない、という決然たる態度で「火事場泥棒」を働く中国とインドを厳しい態度で叱らなければならない。
 戦争を一日も早く終わらせるには、ロシア経済を徹底的に制裁して、戦費調達を困難にするしかない。そうすれば、プーチンは万策尽きて何処かへ亡命するしかないだろう。あるいはチャウシェスクのようにロシア国民によって始末されるかも知れない。それが停戦へ最も近い道だ。プーチンを相手にしては「千日手」を打ち続けるだけだ。なぜなら戦争している現在こそがプーチンにとって至上の幸福だからだ。戦争を始める者に常識などない。あるのは殺戮と侵略の狂気だけだ。プーチンはウクライナ東部やクリミアの併合を決した時から狂気に憑りつかれていた。だからプーチンはロシアから排除されなければならない。決して停戦の交渉相手ではない。

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