連続4年広島県が人口減ワースト1だというが、その打開策は「インスタ映え」ではない。

<「映(ば)える」写真をインスタで発信すれば、Uターン促進につながるのではないか――。
 2週間ほど前、広島市議会の本会議を傍聴していたら、「地方創生」と題して、ある男性市議がそんな提案をしていたので、思わずのけぞってしまった。

「4年連続人口流出全国ワーストワン」の衝撃
 総務省が発表した2024年の人口移動報告で、広島県が、人口の転出数が転入数を上回る転出超過で全国ワーストワンという不名誉な記録を4年連続で更新したことが判明した。加えて、広島市も全国20の政令指定市でワーストワンに3年ぶりに返り咲いた。県においても市においても、20代の流出が顕著といい、今期の市議会では人口流出問題に関する質問が相次いでいる。
 冒頭で紹介した、Uターン、Iターン、Jターン促進のためにインスタの「映え」を活用しようと提案した市議の発言は、こんな内容だった。
〈将来の広島市を支える若い世代で転出超過が続いているのは深刻な問題だ。「世界に誇れるまち」を掲げているにもかかわらず、若い人を惹きつける機能が低下しているのではないか。進学先や就職先として選ばれていないまちであることは、構造的な課題だ〉
 ここまでは、首をぶんぶんふりながら聞いていた。ただ、その後の提案には首を傾げた。
〈「広島に戻りたい」という気持ちを醸成させる手段の一つとして、インスタグラムを活用してはどうか。現在、広島市公式アカウントには、美しい景色や人気スポットなど、いわゆる「映える」写真が掲載されているが、ハッシュタグをつけて投稿されたインスタの中から、広報課の女性職員が厳選して投稿している。この仕組みをUIJターンに活用しては〉
〈山や海、神社やお寺や公園、そしてカープやサンフレッチェを間近に感じる写真など、広島に戻りたいな、と想像できるような「映える」写真の投稿を募り、市として公式に投稿する。離れた地で見返せば広島への思いは蘇り、雇用推進や移住就労支援などの取り組みと相まって、UIJターン促進に大きな効果ができる〉
 インスタの担当職員をあえて「女性職員」と表現していることから考えると、つまりは若い世代の女性をターゲットにした提案なのだろう。だが、インスタ映えをUIJターンのきっかけにする人など、果たしているのだろうか。「今日のランチどこにする?」「連休どこ行く?」といった行動なら、インスタ映えが選択や判断のきっかけになることも、そりゃあるだろう。
 だが、若い女性は移住という大きな決断まで「映え」をきっかけにするとでも思われているのだろうか。そんな見方、彼女たちに対して失礼ではないだろうか。

構造的課題をゆるふわ「映え」発信で解決できるのか
「広島」「インスタ」といえば、折しも、兵庫県知事選をめぐって公選法違反などの疑いが指摘されている兵庫県のPR会社が、広島市の「SNS活用プロモーション業務」を受託していることが判明した。渦中の会社との取引が存在していることだけでなく、その発信の内容にも注目が集まることに。
「広島tabi物語」では、原爆ドームの写真に「じゃけぇ、広島に恋しとる♪」というテキストを被せた表現が、原爆ドームが訴えてきたメッセージと合わないなどといった批判が集まった。
 広島市公式サイト「広島tabi物語」。同サイトの企画・運営は、兵庫県知事選で有名になったPR会社が行っている。ゆるふわな雰囲気で原爆ドームを紹介する表現方法に批判の声もあがった
 表現は多様な方がいいとわたし自身は考えるが、趣旨や訴えたいメッセージなどについて理解のないまま「ゆるふわ」な発信をすることは適当だとは思わない。このプロモーション活動をきっかけに「広島に行こう」となった人たちがどれほどいるのかは、わからないが。
「広島が選ばれない『構造的な課題』」とまで表現しているあたり、根深い課題であるという認識はあるのに、その問題認識から導かれる解決策の案が、なんで「映え発信」といういかにも表面的なものになるのだろうか。その残念さこそが、「選ばれない」理由なのではないかとすら思えてくるのはわたしだけだろうか。
 全国で最も人口が流出しているまちという不名誉をなんとかしないければ、という危機感は日増しに高まっている。企業関係者も、行政関係者も、カープや天気の話をするような頻度でこの話をしている。
 地元メディアでも議論が始まっており、中国新聞は「イケてない?広島」というシリーズ企画を立ち上げた。ただ、アーティストの全国ツアーなどで広島が飛ばされるいわゆる「広島飛ばし」が理由では、など、やはり表面的な議論ばかりがされている気がしてならない。行政が大型コンサートホールというハコモノを作る動機付けを作ってあげているだけでは?と思ってしまうわたしのモノの見方が捻くれているのだろうか。

ジェンダーの視点を欠く論議が続く
 一方で、広島に暮らしながらいろんな世代の女性たちと会話をする中で、ここは圧倒的に男性優位なコミュニティだなとわたしは感じている。男尊女卑とは言い過ぎかもしれないが、古ーい性別役割分業意識が根強く染み付いているのだ。
 つい先日は、自分が夕食を作る番だったのにできなくなったので夫に頼んだら、夫が母親を家に呼んで作らせていたのでキレた、という話を知人から聞いた。数年前だが、ある会社に勤める女性が同じ職種なのに女性だけが早く出社してデスクを拭くという謎のルールがあると話していた。こういう話は、日常に溢れすぎていて枚挙にいとまがない。こういう、データで示されにくい残念な空気感も一因ではないかと思うのだが。
 広島と同様地方の中核都市である札幌、仙台、広島、福岡の「札仙広福」で様々な指標を比べたことがある。現職の女性首長がいないのは広島県だけで、女性議員割合も一番低い。なのに、広島を離れる、あるいはその後戻らない理由を問う各種アンケート調査のようなものを見ても「ジェンダー」観点での質問はほぼ皆無。その観点から人口流出問題を見ようとする動きはまるで乏しい。
 そんな中、中国新聞にもついに昨年末、「広島県の人口流出 ジェンダー視点でも深掘りを」と大した女性論説委員の大型コラムが掲載された。
〈広島県内には女性の首長がいない。人口が多い方から20位までの都道府県で唯一である。(中略)要因はいろいろあるだろうが、つまるところジェンダーバイアス、男女の役割について固定的な観念が強い地域だと考えている〉と始まるその文章。
 最後は、この視点で人口転出超過の原因を検証する必要性を説き、〈ジェンダー平等に前向きというメッセージを届ける、インパクトある対策を望む〉と求めた。

「インスタ映え」よりマシ?男性活躍推進条例
 広島県の湯崎英彦知事は先月、「男性活躍推進条例」の制定を目指す方針を明らかにした。県が実施した「ひろしま共育て大調査」の(回答者数2950)で、家事を45、育児を57の項目に分け、それぞれ男性と女性どちらが担当しているかを尋ねた結果、家事育児のいずれも「主に女性が実施」との回答が多く、かつ、男性は自分がやっているあるいは分担している、と思っていることについても、女性は自分が行っていると思っていることがあると示唆される、との内容だった。
 女性は「女性活躍推進」という号令のもと、「仕事も家庭も」と言われているのに、男性は共働きであってもいつまでたっても「仕事も家庭も」にならない。ならば、男性の家庭での活躍推進を、という考えだという。
「これまでも男女共同参画推進条例など進めてきたが、現実としては、それがなかなか変化していない。依然として性別による固定的な役割分担意識が残っている中で意識を変化させていくためには、ある程度インパクトを持って進めていかないと」と知事は語った。
 今後条例素案を練り、パブリックコメントにも付す予定というこの条例。こびりついたものが条例によって剥がれるほど構造的課題の解決は単純ではないとは思うが、少なくとも「インスタ映え」発信よりは、「選ばれていないまち」の汚名返上につながるような気がしている>(以上「JB press」より引用)




 広島県が人口流出四年連続ワーストワンに輝いたという。だから「人口流出ワースト1の広島、状況改善の方策として市議が「映え写真」の発信を提案、ズレたその感覚にがっかりーーーー【どーしょーるん】広島が「選ばれない」理由はそんな表層的ものじゃない、県議会に上程される条例に一縷の望み」と題して宮崎園子(ジャーナリスト。広島県出身)氏が寄稿している。
 しかし、一読してみて広島県に人口増を起こすインパクトに欠けると思わざるを得ない。広島県の隅々まで男尊女卑の観念が行き渡っているから若い女性は広島に魅力を感じない、とする宮崎氏の意見には同意できない。男尊女卑と人口流出との因果関係は何も証明されていないし、広島県に女性首長が一人もいないことと男尊女卑とは、おそらく因果関係は証明されないだろう。

 なぜ広島県から人口が流出するのか。それは単純に魅力的な雇用がないからではないか。確かに広島には世界に誇る自動車会社マツダがあるが、近年は新規工場を県外に建設する傾向がある。いわばマツダでドーナツ現象が起きているから、マツダの従業員ですら県外へ転出せざるを得ない。
 では広島県はマツダに対して県内に工場建設などを積極的に働きかけ、補助政策や固定資産税の減免措置などを講じているだろうか。或いはマツダの協力企業が広島県内に進出すれば移転支援策などを講じているだろうか。まずは働く場がなければ人は集まらないし、安定した雇用がなければ、その地に棲みついて家庭を営もうとは思わない。

 さらに広島市が全国に20ある政令指定市で3年連続人口減ワースト1という不名誉に輝いているという。なぜそうなっているのか、広島市は真剣に分析・検証をしているのだろうか。件のPR企業にSNS展開を任せるなど、愚の骨頂と云わざるを得ない。そんな小手先の「振興策」で広島市に棲みたい、と思うような人は、他のチョット気の利いたインスタを見て住処を変えるだろう。
 そうしたインスタ映えを狙う予算があるのなら、なぜ若者が気にしている支援策を検討しないのだろうか。たとえば泉氏が明石市長時代に人口増政策として実行した出産祝い金の増額や子供手当を独自に広島市で制定して支給するなど、他の市に見られない人口増加政策を展開する必要がありはしないだろうか。そのために必要とされる予算がどれくらいか、その財源をどこに求めるのか。そうした検討を真剣に行う必要がありはしないだろうか。

 インスタ映えといった気分で人口減を止めようと考えてはならない。ましてやジェンダー的に広島は問題がある、などといった根拠のない極めて不自然な理由付けを真に受けてはならない。例えば女性市長にしたら人口減が止まるとでもいうのか。もちろん女性市長の誕生を阻む政令や条例など広島県にも広島市にもない。広島に特別な男女差別などもない。
 むしろ人口減を止める政策がないことに気付くべきだ。それは雇用の拡大策でもあるから経済の活性化につながるし、人口増で転入した若者たちの婚姻や子育てを積極的に行政が支援する制度を広島県や広島市で独自に設ける必要がある。国が掲げた「街ー人-仕事」のスローガンは逆だ。仕事があれば人は集まるし、人が集まれば自然と街は出来る。つまり「仕事-人-街」の連鎖こそが正しい街造りのあり方だ。宮崎氏は「構造的課題の解決」と問題点を指摘しているが、その問題とされる「構造」とはいかなるものか、抉り出して丁寧に解説しなければ誰にも解らない。しかし宮崎氏は「構造的課題の解決」という言葉を投げかけただけだ。

 人は安定した暮らしがなければ人生設計など出来ない。異性と婚姻を成して家庭を営み、子供を育てようと考えることは出来ない。なぜ東京都が全国都道府県で最も出生率が低いのか。それは国交省が発表している「全国都道府県民可処分所得」ランクを見れば一目瞭然だ。東京都民が可処分所得で見れば最も貧困だからだ。全国都道府県で東京都民の可処分所得が一番少ないのだ。だから出生率が0.99と最も低いのだ。
 確かに総所得で見れば東京都民はそれほど悪くない。しかし所得から諸々の食費や交通費や家賃などを差し引くと、手元に残る所得は最低ランクになる。東京都民は様々な便利で豊かな社会インフラに囲まれて暮らしているが、所得が少なければ異性との婚姻は考えられない。人口の社会動態が止まれば、東京都はたちまち人口半減の過疎化することは歴然としている。

 それと比べれば、まだ広島には救いがある。インスタ映えなどといった小手先に惑わされることなく、地域対策の王道たる「雇用の確保」をまず図ることだ。そのためには三原市郊外に造成している県営工業団地のような工場用地の確保と、そこに企業を誘引する魅力的な政策を実施することだ。
 そうした予算には資金源が必要だが、それこそ政府に働きかけて工業特区の指定を受けて全国規模の工場誘致運動を展開する必要がある。折しも中国へ進出していた企業の多くが中国から撤退している。その受け皿に名乗りを上げることもできるだろう。三原市の工業団地は内陸部にあるが、運輸を考えれば海岸部にも工業団地開発は必要だ。広島市西部近郊の埋め立て地は商業センターにしてしまったが、その並びなどに工業団地を造成することも考えられるのではないか。そうした確実な発展策を考え、実行する事こそが広島の人口減を止める最大にして最良の手段ではないだろうか。



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