対中デカップリングこそ日本企業の最善の防衛策だ。

2024年、すでにデフレ状態
 2025年の中国経済を展望する前に、まず2024年の中国経済を振り返っておこう。 2024年3月に開かれた全人代で李強首相は政府活動報告で5%前後の成長を目標として掲げた。確かに中国国家統計局が公表した2024年の経済成長率は第1四半期5.3%、第2四半期4.7%、第3四半期4.6%と5%前後の目標に近いが、傾向的に下り坂を辿っている。
 また専門家の間では、国家統計局が公表しているGDP統計が水増しされているとの指摘が多い。中国経済の実態が公式統計よりも悪いのはほぼ間違いないであろう。 同じ国家統計局が公表した公式統計では、2024年10月の若者の失業率は17.1%と高止まりしている。そして、同年1~10月の不動産投資伸び率はマイナス10.3%と大きく落ち込んだ。経済統計の基本は各部門の統計が互いに連動することである。
 一般的に、GDPが5%前後で推移しているのに、若者の失業率が高止まりするのは不自然である。そして、中国では、GDPに占める不動産業の割合は3割に上るといわれているが、GDPが5%前後も成長しているのに、不動産関連の投資がマイナス10.3%も落ち込むのは論理的に通じない。 
 2024年の中国経済を振り返って総括すれば、政府が掲げた成長目標は達成できなかった可能性が高く、中国経済はすでにデフレ状態になっている。同年12月、中国共産党中央経済工作会議が開かれ、景気減速を食い止めるために、「より積極的な財政政策と適度な金融緩和政策」が決定された。 実は、この経済工作会議が開かれる前の11月に、地方債務対策費として10兆元の財政出動がすでに決定された。では、これらの中国版バズーカ砲の景気対策は中国経済のデフレ進行を食い止めることができるのだろうか。 残念ながら、答えはノーである。なぜならば、中国経済の病根は有効需要が著しく弱くなっているのに、政府が発動する政策は政府部門と生産者(サプライヤー)を助けるものだからである。

なぜ若者が大量に失業しているのか
 若者の失業率が高騰する直接な原因は3年間のコロナ禍をきっかけに数百万社の中小零細企業が倒産したからである。世界のどこの国でも同じだが、中小企業はもっとも雇用創出に貢献するセクターである。
 中国では、中小企業の99%は民営企業であり、民営企業は国有銀行から無担保で運転資金の融資を受けることができないだけでなく、政府の財政支援の対象外でもある。景気が減速局面に入ると、中小企業の多くはすぐさま資金難に陥ってしまいがちである。
 コロナ禍が中国社会に落とした影は予想以上に深刻である。 中国では、若者にとって大学に進学することは人生のジャンプ台に乗るようなものである。エリートの若者の間で外国企業や大手民営企業は花形職業だった。しかし、コロナ禍をきっかけに、外国企業はサプライチェーンの一部を海外へ分散している。大手民営企業もリストラを余儀なくされている。とくに若者の失業率が高騰するなかで、現役の会社の給料も下方修正されている。こうしたなかで一般家計は生活防衛に走り、消費を控え消費性向が低下傾向にある。
  一方、不動産バブルが崩壊し、不動産不況が長期化する様相を呈している。中国では、持ち家比率が高く、そのうえ、投資目的で二戸目、三戸目のマンションやアパートを保有する割合が高い。不動産バブルが崩壊したため、
 不動産投資を行っている家庭は逆資産効果により、消費を控えざるを得なくなった。 不動産バブル崩壊の影響は予想外の展開として地方政府に飛び火している。不動産バブルが膨らむプロセスにおいて地方政府は土地使用権(定期借地権)を払い下げることで巨額の財源を手に入れた。それをもとに地方政府は傘下の「融資平台」(日本の第三セクターに相当する)を利用して巨額の債務を借り入れた。しかも、その債務にはオフバランスの隠れ債務も相当の割合になっていると推察される。 
 習近平政権にとっての難題はフローのGDP伸び率を押し上げなければいけないが、同時にストックの地方債務も解消しなければならない。地方債務を解消しなければ、国有銀行への利払いが滞ると、国有銀行にとって不良債権になってしまう。場合によって金融危機に発展する心配がある。したがって、共産党中央経済工作会議で決定された地方債務問題を解決するための財政政策は間違ったものではないと思われる。ただし、それはあくまでもストックの債務問題を解決するためのもので、フローのGDP伸び率を押し上げることができない。

2025年の中国経済も減速を続ける
 中国政府の政策当局が根本的に間違っているのは、政策を実施して助けなければならない対象者の順番が間違っていることである。国有銀行と地方政府を救済する目的は状況がさらに深刻化するのを避けるためであろう。そして、中国政府は自動車や家電の買い替えを奨励しているが、これは消費者を救済するための政策ではなくて、生産者を救済するための政策である。
 この政策は生産を調整することについて有意義だが、有効需要を刺激することについて無意味である。 中国では、自動車メーカーと家電メーカーのほとんど大型企業である。これらの企業は雇用創出能力が限定的である。重要なのは中小零細企業を助けることだが、その政策が提起されていない。 とくに懸念されるのはトランプ政権2.0の対中経済制裁である。
 トランプ政権は中国との貿易不均衡を問題視している。2023年、アメリカの対中貿易赤字は2791億ドルに上り、アメリカのすべての貿易相手国のなかで最多だった。トランプ政権2.0が対中貿易不均衡を是正するために制裁関税を課すのは確実視されている。これは中国経済に深刻なダメージを与えると予想される。 
 2025年の中国経済を一言で表現すれば、「内憂外患」といえる。アメリカ政府の経済制裁によりハイテク技術を入手できなくなった。日用品の輸出もアメリカ政府の制裁関税により難しくなる可能性が高い。中国国内に目を転じると、失業率を下げる有効な政策が講じられていない。

習近平時代になって市場経済後退
 では、なぜ中国経済は回復しないのだろうか。 
 2009年、リーマンショックのとき、中国政府は4兆人民元の財政出動を決定し発動した。当時、4兆人民元の財政出動によって中国経済の落ち込みが免れた。しかし、今回10兆人民元の財政出動が発表されたが、中国経済は成長に転じていない。
 その原因は15年前に比べ、今の中国経済の市場メカニズムが機能しなくなったからである。 習近平政権が発足してからの10年あまり、民営企業に対する締め付けが強化され、国有企業が再び市場を独占するようになった。結局のところ、市場経済の後退が中国経済の持続的な成長を妨げている。 
 繰り返しになるが、中国経済の減速は貨幣的な現象ではないため、いくら流動性を注いでも、中国経済を成長軌道に戻すことができない。根本的に問題を解決するには、抜本的な制度改革と市場経済型の政策を組み合わせて早急に実施する必要がある。とくに、外国企業と民営企業が安心してビジネスを展開できるように、法による統治を徹底することを約束する必要がある。

日本企業にとってリスクはより高く
 最後に日本企業の対中投資戦略について述べておこう。日中経済は予想以上に一体化しており、相互依存関係が高い。日本企業にとって中国は有望な市場である。この点について今も変わらない。ただし、中国市場は決して簡単に攻略できるものではない。かつてに比べると、中国ビジネスのリスクは明らかに高くなっている。 
 日本企業は米中貿易戦争に巻き込まれないようにサプライチェーンを分散する必要がある。同時に、中国でのビジネス基盤をさらに固めるようにIn China for Chinaのビジネス戦略を強化する必要がある。したがって、日本企業にとって中国とのデカップリングではなくて、中国を市場として捉える一方、再輸出するための工場としての存在が弱くなると考えられる。 
 2025年は不確実性に満ちた一年になると思われる。グローバルビジネスもリスクがさらに高くなるだろう。日本企業はディフェンスの戦略とオフェンスの戦略をうまく組み合わせないといけないと思われる。>(以上「現代ビジネス」より引用)




習近平政権の絶望…中国で若者が大量に失業し「すでにデフレ状態」での経済政策が「根本的に間違っている」といえる理由」と題する論評を柯 隆(東京財団政策研究所主席研究員・静岡県立大学グローバル地域センター特任教授)氏が発表している。だが現在の中国は誰が見ても明らかに経済崩壊の坂道を転がり落ちている。
 ただ中共政府だけが楽観的な経済統計を発表し続けていて、国際機関も昨年の半ばまで楽観的な中共政府発表の経済数字に騙されていた。しかし今ではIMFですら中国経済に警鐘を鳴らし始めた。

 柯氏は2024年から中国経済はデフレ化に入ったとしているが、実際にはコロナ禍当時からマイナス成長になっていたのではないかと推測する。なぜなら習近平氏のゼロコロナ政策により全国各地が断続的なロックダウン(中国の「ロックダウン」策は文字通りの全経済活動停止のロックダウンだ)策を講じていた。
 つまり全ての経済活動を停止する徹底したロックダウン策を持続したため、2022年2023年の中国経済は対前年比マイナスになっていたと推定するのが自然だ。そこに来て、習近平氏が中国に進出した外国企業が製造した医療製品の移動を禁止してしまった。それにより中国にハブ製造企業を展開していた外国企業が「中国の危険性」に気付いてしまった。

 さらに習近平氏が実施した「戦狼外交」により、先進諸国政府も中国の危険性に気付いた。もちろん米国が中共政府が「超限戦」を実行しているという習近平氏の演説に驚いたのも事実だ。それにより研究機関や大学などに受け容れていた大量の留学生などを締め出し始めた。つまりトランプ氏が始めた対中デカップリング策が先進諸国に共通な対中政策になってしまった。
 また欧州が始めた自動車のEV化政策に便乗して、中国がEV製造企業を全面支援してEVの大量生産に乗り出した。そして太陽光パネルと同様に、全世界の需要を上回るEV供給体制を確立して、中国製EVが洪水のように世界中へ輸出された。しかし、その反動は極めて迅速にやって来た。

 太陽光パネルはほぼ需要が一巡すると同時に、パネルを敷き詰めるために広大な土地を必要とし、それが環境破壊を行うという「環境のため」の再エネが「環境破壊」をする、という現実に環境派活動家たちは戸惑いを見せ始めている。
 EVに関しては厳冬期にリチウムイオン電池の能力が著しく低下する、という現実に直面してEVに飛びついた消費者たちがEV離れを起こしている。そして先進諸国が実施して来たEV補助金が中国補助金になっている現実により、EV推しを廃止していることも中国製EVへの逆風になっている。既に中国製EVは世界各地の港湾に野晒とされ、中国内でも新車EVの墓場が全国各地に出来ている。それらにより中国貿易の稼ぎ頭だった太陽光パネル製造企業やEV製造企業がバタバタと倒れている。

 さらに中共政府の「戦狼外交」による強気一辺倒の姿勢に嫌気がさして、外国企業が中国から撤退する動きが急増している。ことに新疆綿問題で国際的な批判が起きていたユニクロが中国から全面撤退を発表したことは中国民に衝撃を持って受け止められている。それにより中国各地のユニクロ269工場と中国全土で展開している販売店舗800ヶ所が閉鎖され、10万人以上の雇用が失われる。
 ユニクロ一社だけではない。他の日本企業も続々と中国から全面撤退することを表明している。柯氏は中国経済の減速が日本に与える影響は少なくないと指摘しているが、私はそれほど深刻な影響はないと受け止めている。なぜなら中国市場は人口の割に日本が考えていたほど大きくなかったからだ。それは中国民の所得が低く、消費市場としてみた場合の魅力がそれほどでもなく、当初中国に出店したスーパーや大規模小売店舗業者はその大半が既に撤退している。

 今後経済崩壊が進み、習近平政権の指導力に翳りが見られるようになると、反日を打ち出す可能性が高い。そうすると再び「反日、愛国」運動が激化して、日本企業や日本人が攻撃対象になることは充分に考えられる。
 政府は日本国民に中国渡航を控えるように、対中国人ビザの発給を制限するようにすべきだ。昨年末に岩屋外相が中国へノコノコ出掛けて、富裕層に限定するとしつつも10年ビザを発給すると勝手に発表したことは万死に値する。これほどの「売国奴」がかつていただろうか。

 中国は鄧小平氏の「改革開放」で経済市場を開放し、市場の自由化によって外国投資や外国企業が中国へ進出した。2000年以後の中国経済の急成長は「改革開放」策の賜物だった。
 しかし習近平氏は鄧小平氏に嫉妬して、自由市場を閉鎖してしまった。株式市場だけではない、不動産市場も「統制」されているし、為替市場も「半固定性」になっている。さらに急成長していたIT関連企業を潰して有能な経営者たちの財産を奪い、身柄を拘束した。そんな中国に明るい未来があるだろうか。

 柯氏は「日本企業にとって中国とのデカップリングではなくて、中国を市場として捉える一方、再輸出するための工場としての存在が弱くなると考えられる」と指摘するが、もはや中国と付き合うことがリスクでしかない。中国市場は個人所得2,000元以下の国民が8億人もいる国に、何を売り込むというのだろうか。
 しかも工場を進出させれば、すぐにコピー商品を大量に製造して世界中に廉価で売り出す商魂には辟易する。だから日本企業防衛のためには中国と付き合わない方が賢明だ。つまり対中デカップリングを徹底させて、米国トランプ大統領の方針に沿う方が日本企業にとって安全だ。間もなくトランプ氏が米国大統領に就任する。そうすると中国の輸出品に高い関税を課すのは火を見るより明らかだ。つまり中国で製造するリスクが高くなる。まだ中国に製造部門を置いている経団連加入企業経営者諸氏は一日も早く撤退すべきだ。

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