「最高機密の新型ステルス機を人民解放軍が白昼堂々「お披露目」か?
<■ 「ステルス戦闘機と爆撃機のハイブリッド」
「最高機密の新型ステルス機を人民解放軍が白昼堂々「お披露目」、西側軍事関係者をザワつかせるハイスペックぶり」と題して木村正人(国際ジャーナリスト)氏が最新の中国軍機開発を紹介した。そこには尾翼のない一枚の葉っぱのような形をした戦闘機(デルタ型機)の姿が報じられている。
1,後退翼の剛性不足や翼端失速などの空力問題を克服できる
2,厚み比を小さくできるため、発生する乱れが小さくなる
3,超音速飛行に適している
一方、デルタ翼の欠点としては、次のようなものがあ.。
「中国人民解放軍空軍(PLAAF)が新型機を真っ昼間に飛ばしたのは興味深い。NGAD(次世代航空支配)相当の第6世代戦闘機というよりJH-XXと呼ばれる第5世代戦術爆撃機・攻撃戦闘機プロジェクトの可能性が高いと考える」
第5世代戦闘機J-20S(複座型)のエスコートで初めて飛行した新型機について英国のシンクタンク「王立防衛安全保障研究所」(RUSI)のジャスティン・ブロンク上級研究員(空軍力・軍事テクノロジー)は12月26日こう投稿した。
新型機は言うまでもなく軍の最高機密。それが姿をあらわにした。米国際関係雑誌ナショナル・インタレスト(11月3日付)は中国のステルス爆撃機JH-XXについて「ステルス戦闘機と爆撃機のハイブリッドでスピードと機動性を優先している」との見方を紹介していた。 JH-XXは、射程2500キロメートルの巡航ミサイルを搭載できるH-6K(戦神)爆撃機に取って代わる可能性が高く、戦術攻撃と核兵器運搬の両方が可能とされる。中国人民解放軍空軍の軍事的リーチを大幅に広げて、インド太平洋、特に台湾に睨みをきかせる米軍への圧力を強める狙いがある。
■ 「世界一流の軍隊」を目指す習近平
■ 「世界一流の軍隊」を目指す習近平
もう一つのステルス爆撃機H-20(航続距離8500~1万2000キロメートル)は「空飛ぶ翼」の設計を採り入れ、米軍が開発する世界初の第6世代長距離戦略爆撃機B-21と比較される。習近平国家主席が目指す「世界一流の軍隊」を実現するための最新兵器だ。
ナショナル・インタレスト誌によると、戦術・中距離ステルス爆撃機JH-XXの存在は米国情報機関によって以前から確認されていたが、機体の詳細は厚いベールに覆われてきた。米国防総省は核兵器運搬も可能な戦闘爆撃機の可能性があると警鐘を鳴らしてきた。
米国防総省は2023年「中国人民解放軍空軍は新型のH-20ステルス戦略爆撃機の開発により戦力投射能力を拡大しようとしている。中国国営メディアはこの新型ステルス爆撃機は通常任務に加え、核任務も担うと伝えている。中距離ステルス爆撃機も開発している」とJH-XXにも言及していた。
「先進爆撃機の開発には10年以上かかる」(国防総省)ものの、航続距離2000~4000キロメートル(推定)のJH-XXは東シナ海と南シナ海における中国の領有権主張を守るために投入され、空母でも運用可能とみられている。
■ 超音速、ステルス性、ダブルデルタの形状
■ 超音速、ステルス性、ダブルデルタの形状
米軍のステルス戦闘機F-22やステルス多用途戦闘機F-35に近いデザインになると観測されていたJH-XXの機体について、ベテラン航空ジャーナリストでステルス専門家ビル・スウィートマン氏は英国王立航空協会のサイト(12月27日付)でこう分析している。
「成都飛機工業公司の新型機JH-XXの初飛行が行われ、エスコート飛行したJ-20Sが新型機の大きさを際立たせた。明らかに大型機で、乗務員を乗せ、超音速で、ステルス性があり、ダブルデルタの形状を持ち、垂直安定板がなく、(驚くべきことに)3基のエンジンを搭載している」
瀋陽飛機工業集団の別のステルスデザインの無人小型実証機も登場した。「JH-XXは最初のJ-20に非常によく似ている。最小限の技術実証機というよりフルサイズの試作機で、これから少量の生産ロットに移行する。このプロセスはJ-20でもうまく行った」(スウィートマン氏)
同氏によると、人民解放軍の軍隊と装備は地域の軍事的優位を確立するために設計されている。人民解放軍から見れば、米空軍と米海軍の空母、日韓豪などの同盟国からの支援が最大の脅威だ。それに対抗するJH-XXの特徴はステルス性、スピード、航続距離、武器搭載量だ。
■ 爆撃機サイズの武器庫
■ 爆撃機サイズの武器庫
J-20より大きく、ダブルデルタ翼は19メートル超、総面積は約186平方メートル。大量の燃料と兵器を積める。長さ7.62メートル、幅2.13メートルという爆撃機サイズの武器庫を備えている。最大マッハ数は1.8前後とみられる。
これまでの超音速機と異なり垂直尾翼がない。対空が主任務で、空対空ミサイルのほか、空母や空軍基地などより大きな目標を攻撃するためのより大きな武器を搭載できる。B-21を配備する遠方の米空軍基地に向けて大量の徘徊型兵器も発射できる。
「最初のJ-20は10年12月に登場、14年ごろに量産前の機体がお目見えした。20年代の終わりにはJH-XXの生産が開始される可能性がある」とスウィートマン氏は予測する。米国防・安全保障オンラインマガジン「ウォー・ゾーン」(12月26日付)も新型機について分析している。
「NGAD相当の第6世代戦闘機というよりJH-XXと呼ばれる第5世代戦術爆撃機・攻撃戦闘機」との見方を示したRUSIのブロンク上級研究員と異なり、ウォー・ゾーンは「ステルス性のある高性能の第6世代有人戦闘機」の可能性も指摘する。
■ ステルス性が「指数関数的」に改善されている可能性も
■ ステルス性が「指数関数的」に改善されている可能性も
「最も目を引くのは平面形状と無尾翼だ。機首部分まで伸びる改良型デルタ翼を持ち、中央の胴体部分、少なくともその下部はJ-20を彷彿とさせる。1人乗りなのか2人乗りなのかは分からないが、タンデムツインシートの可能性もある」(ウォー・ゾーン)
伝統的な尾翼を排除した機体はステルス性を大幅に向上させるのが目的だ。空気力学的な効率性もよくなる。空気抵抗を減少させることによってより良い飛行性能を発揮する。しかし敏捷性と全体的な安定性を向上させる推力方向の転換エンジンは搭載されていない。
総重量がJ-20より重いことを考慮すると、持続的な高速飛行と高高度での運用を可能にするため3基のエンジンが必要になったとみられる。第6世代の空戦プログラムは現在のプラットフォームと比較しステルス性が「指数関数的」に改善されている可能性があるという。 「現段階では新型機が第6世代戦闘機のプロトタイプなのか、もっと一般化されたデモンストレーターなのか、大型戦術機を含むさまざまな異なるプラットフォームに使われる可能性のある新技術をテストするものなのかはっきりしない」と「ウォー・ゾーン」は断定を避けている。 《このページから読み始めた方へ: 記事をはじめから読む》
■ 米政府効率化省率いるマスク氏はドローン派
■ 米政府効率化省率いるマスク氏はドローン派
第2次トランプ政権で歳出削減や規制緩和を進める新設の助言機関「政府効率化省(DOGE=ドージ)」を率いる実業家イーロン・マスク氏は自らが保有するXで、ウクライナ戦争でドローン(無人航空機)の有用性が証明された今、F-35のような高額の有人戦闘機が必要なのかと問いかけている。
RUSIのブロンク氏がいうように新型機が第5世代戦術爆撃機・攻撃戦闘機で、30年代に実戦配備された場合、太平洋地域における米中の戦略バランスを大きく変えてしまう可能性がある。第2次トランプ政権が迷走すれば、米国は西太平洋地域の制空権を失う恐れが出てくる。
【木村正人(きむら まさと)】 在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争 「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)>(以上「JB press」より引用)
「最高機密の新型ステルス機を人民解放軍が白昼堂々「お披露目」、西側軍事関係者をザワつかせるハイスペックぶり」と題して木村正人(国際ジャーナリスト)氏が最新の中国軍機開発を紹介した。そこには尾翼のない一枚の葉っぱのような形をした戦闘機(デルタ型機)の姿が報じられている。
しかし従来からデルタ型機の長短は以下のように挙げられている。
デルタ型機の長所は1,後退翼の剛性不足や翼端失速などの空力問題を克服できる
2,厚み比を小さくできるため、発生する乱れが小さくなる
3,超音速飛行に適している
一方、デルタ翼の欠点としては、次のようなものがあ.。
1,揚力傾斜が小さいため、低速時の空力性能が悪い
2,発着時に高速、高迎角の姿勢をとる必要がある
3,高迎角時には翼上面の流れが剥がれやすく、非定常な揚力の変化を生じる
2,発着時に高速、高迎角の姿勢をとる必要がある
3,高迎角時には翼上面の流れが剥がれやすく、非定常な揚力の変化を生じる
といったことが知られている。
つまり高速巡行には適しているが、翼の形状から揚力が少ないため離着陸時に高速でしかも仰角を高くする必要がある。それは飛行時でも同じで、上昇する場合に飛行角度を上げる必要があり、仰角を上げると急激な気流変化が生じて操縦が難しい、という点が否めない。
欠点で上げたように「低速時の空気性能が悪い」ため、エンジン推力で不足しがちな揚力をカバーしなければならない。従ってデルタ型機のエンジン出力は他機種よりも高出力でなければならない。
しかし中国で小型で高出力のジェットエンジン開発に成功したとの情報はない。むしろ未だにロシア製ジェットエンジンの劣化コピー版のジェットエンジンしか製造できず、中国機のエンジンの耐用時間は米軍機の8分の1しかないといわれている。それは多分にエンジン素材による面が大きいとされている。
こうした考察を重ねると、中国が白昼堂々と「お披露目」してと云われる木の葉型デルタ・ジェット戦闘機を開発したとは思えない。それでなくても中国製ジェットエンジンはコピーしたロシア製ジェットエンジンよりも推力が劣るという。それで木の葉型デルタ・ジェット戦闘機を実戦可能な飛行を実現することは困難だ。
ただ現在世界各国が開発に鎬を削っている第六世代の次の世代に関しては、開発するか否か懐疑的だ。なぜなら戦争形態がウクライナ戦争で大きく変化したからだ。つまりジェット戦闘機による空中戦を想定した開発ではなく、無人戦闘機による攻撃に重点が置かれるようになる、と想定されるからだ。
もちろん無人戦闘機ならパイロットの安全を配慮する必要がなくなり、開発は格段に容易になり、従って開発費のみならず製造費も桁違いに安価になると予想される。しかもスピードを競う必要もなくなり、ステルス性能を高め正確に目標を破壊することだけを考えれば良い。つまり今後の戦争ではドローンによる戦争場面が拡大すると想定される。
そうするとゲーム感覚で操縦する操縦士は安全な場所にいて、モニターに映る場面に応じて操作することが求められる。それは必ずしも近距離とは限らない。人工衛星を経由して画像や電波を送れば、地球の反対にいても戦争に参入することは可能だ。
あるいは目標を設定して自動飛行で攻撃することも考えられる。既にウクライナ軍はそうした目標設定型のドローンでロシアの石油精製施設などを破壊している。今後の戦争とは、そのような人が直接かかわらない戦争になる、と予想される。中国が木の葉型デルタ・ジェット戦闘機を白昼に堂々と披露したのは、そうした兵器の変遷に鑑みて、時代遅れになったジェット戦闘機開発の大型模型を見せただけかも知れない。いかに中国の兵器開発能力が劣っているとはいえ、本気で役にも立たない次々世代ジェット戦闘機を開発するとは思えないからだ。