昨今の原油価格の下落がガソリン価格の引き下げに繋がらないことに疑問を呈して批判しないマスメディアは不勉強だと叱責するしかない。
<コモディティ(商品)価格の変動
エミン:エミン・ユルマズ。トルコ出身のエコノミスト・グローバルストラテジスト。レディーバードキャピタル代表。1996年に国際生物学オリンピック優勝。1997年に日本に留学し東京大学理科一類合格、工学部卒業。同大学院にて生命工学修士取得。2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に携わった。現在各種メディアに出演しているほか、全国のセミナーに登壇。
永濱:永濱利廣(ナガハマ トシヒロ)。第一生命経済研究所首席エコノミスト。1995年第一生命保険入社。98年より日本経済研究センター出向。2000年より第一生命経済研究所経済調査部、16年より現職。景気循環学会常務理事、衆議院調査局内閣調査室客員調査員などを務める。
永濱:地政学リスクが高くなれば、原油をはじめとするコモディティ(商品)価格は上がりやすくなります。トランプ再選でシェールオイルが増産されれば原油価格は下がるかもしれませんが、地政学リスクが恒常的に高いため、コモディティ価格は前回のトランプ政権時ほどは下がらないでしょう。
日本は原油や食料などの自給率が低いため、コモディティ価格の上昇には弱い構造です。ただ、1970年代のオイルショックでは、むしろそれを逆手にとって、さまざまなイノベーションが起き、日本経済は大きく発展しました。
エミン:中国経済が悪化しているので、原油や鉄の需要は減少傾向にあります。だからコモディティは多少の値上がりはあっても、バブルまではならないと思う。
問題は、コモディティに比べて通貨の価値が落ちていること。リーマン・ショックの時にはWTI原油先物価格が1バレルあたり100ドル程度でしたが、いまは80ドル前後。
高値からあまり下がっていないようにも見えますが、リーマン・ショック時に比べてインフレが進んでいる割には、かなり安いとも言えます。いまの80ドルは、リーマン・ショック時の50ドルくらいの価値しかないですから。それを考えると原油価格は大きく下がっているわけです。
なぜこんなことが起きるかというと、世界各国が進めた大規模な金融緩和によるもの。各国がお金を刷りすぎた結果、現金の価値が下がり、あらゆるモノの値段が上がった。コモディティ高もその一環です。
こういう環境なので、コモディティには投機マネーも入って価格が乱高下しやすい。2024年に入って、カカオ豆の価格が急激に上昇し、一時は1トンあたり1万ドル超と、2023年末の2倍以上に上がりました。ほかコーヒー豆やオレンジジュースの値段も高騰しています。
高まる「金投資」の人気
永濱:アメリカも金利は高水準ですが、マネタリーベースは劇的には減っていません。いまだに緩和的な環境が続いているとも言えます。
コモディティは株や債券と比べて市場規模が小さいので、少しのお金でも価格が大きく動きます。そのせいもあって、ボラティリティが高まっていると思います。
ちなみに金もコモディティの一つですが、インフレに強いとされ、近年では日本でも金投資の人気が高まっています。
金の特徴として、世界に存在している量が限られる、という点が挙げられます。そのため、インフレなどで通貨価値が下落すると、その分、金の価格は上昇しやすくなります。
ほか、近年は中国をはじめ新興国の中央銀行が金を購入する動きが目立っています。
中国はかつて世界一の米国債保有国でした。しかし、近年は米国債を売り、代わりに金を購入しているとされます。これをもって世界でドル離れが進んでいるとする論調もありますが、いずれにせよ、構造的に金価格が上がりやすい状況であるのは間違いないでしょう>(以上「現代ビジネス」より引用)
「中国経済の悪化で原油価格は大幅に下落…なのになぜ日本の石油事情はこんなにも苦しいのか」と題して原油価格の下落に対して石油製品価格が高止まりしていることに関する永濱 利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)氏とエミン・ユルマズ(エコノミスト /グローバルストラテジスト)氏との対談があった。
エミン:エミン・ユルマズ。トルコ出身のエコノミスト・グローバルストラテジスト。レディーバードキャピタル代表。1996年に国際生物学オリンピック優勝。1997年に日本に留学し東京大学理科一類合格、工学部卒業。同大学院にて生命工学修士取得。2006年野村證券に入社し、M&Aアドバイザリー業務に携わった。現在各種メディアに出演しているほか、全国のセミナーに登壇。
永濱:永濱利廣(ナガハマ トシヒロ)。第一生命経済研究所首席エコノミスト。1995年第一生命保険入社。98年より日本経済研究センター出向。2000年より第一生命経済研究所経済調査部、16年より現職。景気循環学会常務理事、衆議院調査局内閣調査室客員調査員などを務める。
永濱:地政学リスクが高くなれば、原油をはじめとするコモディティ(商品)価格は上がりやすくなります。トランプ再選でシェールオイルが増産されれば原油価格は下がるかもしれませんが、地政学リスクが恒常的に高いため、コモディティ価格は前回のトランプ政権時ほどは下がらないでしょう。
日本は原油や食料などの自給率が低いため、コモディティ価格の上昇には弱い構造です。ただ、1970年代のオイルショックでは、むしろそれを逆手にとって、さまざまなイノベーションが起き、日本経済は大きく発展しました。
エミン:中国経済が悪化しているので、原油や鉄の需要は減少傾向にあります。だからコモディティは多少の値上がりはあっても、バブルまではならないと思う。
問題は、コモディティに比べて通貨の価値が落ちていること。リーマン・ショックの時にはWTI原油先物価格が1バレルあたり100ドル程度でしたが、いまは80ドル前後。
高値からあまり下がっていないようにも見えますが、リーマン・ショック時に比べてインフレが進んでいる割には、かなり安いとも言えます。いまの80ドルは、リーマン・ショック時の50ドルくらいの価値しかないですから。それを考えると原油価格は大きく下がっているわけです。
なぜこんなことが起きるかというと、世界各国が進めた大規模な金融緩和によるもの。各国がお金を刷りすぎた結果、現金の価値が下がり、あらゆるモノの値段が上がった。コモディティ高もその一環です。
こういう環境なので、コモディティには投機マネーも入って価格が乱高下しやすい。2024年に入って、カカオ豆の価格が急激に上昇し、一時は1トンあたり1万ドル超と、2023年末の2倍以上に上がりました。ほかコーヒー豆やオレンジジュースの値段も高騰しています。
高まる「金投資」の人気
永濱:アメリカも金利は高水準ですが、マネタリーベースは劇的には減っていません。いまだに緩和的な環境が続いているとも言えます。
コモディティは株や債券と比べて市場規模が小さいので、少しのお金でも価格が大きく動きます。そのせいもあって、ボラティリティが高まっていると思います。
ちなみに金もコモディティの一つですが、インフレに強いとされ、近年では日本でも金投資の人気が高まっています。
金の特徴として、世界に存在している量が限られる、という点が挙げられます。そのため、インフレなどで通貨価値が下落すると、その分、金の価格は上昇しやすくなります。
ほか、近年は中国をはじめ新興国の中央銀行が金を購入する動きが目立っています。
中国はかつて世界一の米国債保有国でした。しかし、近年は米国債を売り、代わりに金を購入しているとされます。これをもって世界でドル離れが進んでいるとする論調もありますが、いずれにせよ、構造的に金価格が上がりやすい状況であるのは間違いないでしょう>(以上「現代ビジネス」より引用)
「中国経済の悪化で原油価格は大幅に下落…なのになぜ日本の石油事情はこんなにも苦しいのか」と題して原油価格の下落に対して石油製品価格が高止まりしていることに関する永濱 利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)氏とエミン・ユルマズ(エコノミスト /グローバルストラテジスト)氏との対談があった。
結論として商品価格は貨幣価値の下落により高止まりしている、という。世界各国が金融緩和に乗り出し各国の貨幣印刷量が増えたから、玉突きが起きているのだそうだ。しかし、それだけで日本のガソリン価格の高騰を説明するのはかなり困難だ。
二人はなぜ「中国経済の悪化で原油価格は大幅に下落…なのになぜ日本の石油事情はこんなにも苦しいのか」と題する議論をわざわざ発表したのだろうか。日本の石油事情が苦しいのは、日本の何処が苦しいのだろうか。まさか原油精製事業をしている石油元売り各社が苦しい、ということはないだろう。
貨幣流通量が増えたから商品価格が高騰している、というのは正しいようで正しくない。なぜならインフレは供給(商品)に対して需要(貨幣)が多いから商品価格が高騰する。現在は日本国内では原油に関しては供給が多く、需要は依然として変わらない。だったらガソリン価格は下がるはずだ。それが経済原則だが、下がらないで高止まりしたままだというのは何処かでガソリン価格が下がらないようにしているからだ。
原油価格はトランプ氏の登場によりさらに下がると思われる。なぜなら米国が原油輸入国から輸出国に転じるからだ。世界的に原油がダブついているのにガソリン価格が下がらない、というのは明らかにおかしい。
エミン氏は原油価格が80ドル前後まで下がっているが、かつての価値から言えば50ドル前後に下がっているのと同じだ、と訳の分からないことを言っている。経済評論家なら120ドルの原油価格が80ドルまで下がればガソリン価格は貨幣価値がどうのこうのとは関係なく2/3に下がらなければならない。つまり180円のガソリン価格は120円にならなければおかしいが、大部分が揮発油税で原油価格に連動しない定額だから、それを割り引いたとしても140円~150円程度には下がらなければならない。
石油元売り各社が儲けを拡大している(つまり価格の上乗せを拡大している)のではないか、と疑わざるを得ない。なぜなら石油のような装置産業は仕入れ価格の変動がモロに商品価格に連動するからだ。
自動車製造業なら各種部品価格や人件費などの部分が大きいから、プレスして車体を造る特殊鋼板の値段が多少は上がっても、自動車の値段にモロに連動することはない。石油産業が装置産業だという点からして、昨今の原油価格の下落がガソリン価格の引き下げに繋がらないことに疑問を呈して批判しないマスメディアは不勉強だと叱責するしかない。