移民の権利を謳う前に、国民の権利こそ尊重されるべきだ。移民を行う事由が解消されたなら、移民は速やかに帰国すべきだ。そして自分たちの祖国の再建に努力すべきだ。
<<各地で頻発する紛争や自然災害、世界的な感染症の流行など絶えず変化している国際情勢は、「人の移動(移住)」と密接に関わっている。国連の中で、世界的な移住に関する課題に専門的に取り組む機関が、国際移住機関(国連IOM)だ。70年以上の歴史を持つ国際機関で、2016年に国連に加わり、さらに活動の幅を広げている。この12月に駐日代表に就任したナッケン鯉都(りつ)に、今後に向けた意気込みを聞いた>
「人の移動」にまつわる支援ニーズの多様化に伴い、組織も拡大
紛争、貧困、気候変動──。さまざまな理由で故郷を離れる「移民」。国連IOMがまとめた2024年版「世界移住報告書」によれば、国際移民の数は世界で2億8100万人、国内避難民の数は2022年末時点で過去最高の1億1700万人に達している。
コロナ禍を経た今日、目まぐるしく変化し複雑化する国際情勢とも歩調を合わせるように年々増えている、世界的な人の移動。同時に国連IOMも、その存在感を増している。
「実は、移民とは何たるか、国際法上の定義はないのです。私たちは、移動の理由や滞在期間、法的地位、そして国内か国外かに関わらず、本来住んでいた場所を離れて移住する人、そして移動の途中にある人をすべて移民と捉えています」
こう話すのは、国連IOM駐日代表のナッケン鯉都。事業規模は今日も増加傾向にあり、世界約180か国で任務にあたる職員数は約2万2000人を超えた。
「それだけ、人の移動にまつわる支援ニーズが多様化しているということですね。組織が拡大する中で、2023年に女性として初めて組織のトップに就任したエイミー・ポープ事務局長のリーダーシップの下、IOMの活動が拡大して、そのインパクトが増していると感じます」
国連IOMは現在、3つの戦略を掲げている。1つは、移動する人々の命を守り、保護すること。たとえば昨年1年間だけで、移動の途中で死亡及び行方不明となった人は8565人確認されている。死因の半数以上は溺死で、自動車事故が9%、暴力が7%と続く。命を賭けて国境を越えようとする移民や、世界各地で保護を求める避難民は後を絶たない。
2つめは、避難民の課題への解決策をもたらすこと。国連IOMは、故郷を追われた人々への緊急人道支援を強みとしながらも、そもそも避難民を発生させないように、平和構築や就業支援、防災や気候変動へのレジリエンス強化といった活動も各地で担う。
3つめが、正規のルートを通じた移住の促進。移住をより安全で秩序あるものとし、密入国や人身取引、または移民の搾取、虐待を引き起こす要因を撲滅するための取り組みだ。
「人の移動の課題には色々な側面があるので、職員にも様々な専門性が求められます」と、ナッケンは言う。「たとえば医師や看護師をはじめとする医療専門スタッフは約2000名。移民への直接支援以外にも、出入国管理や民間連携、ビジネスと人権などのバックグラウンドを持つ職員が働いています」
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始後にも、大規模な事業を展開。ウクライナ国内で人道支援機関として最大の約1000名の職員を動員し、周辺国でも並行して迅速に支援を始め、現在も継続している。
「私たちは現場をとても大切にしています。同地域では、2014年2月のクリミア半島への武力侵攻の頃から拠点を置いていたので、迅速に動くための体制や知見があったのです」
人材不足の日本も、外国人との共生というテーマの当事者
ナッケン自身は、20年以上にわたり国連機関でキャリアを築いてきた。外務省が国際機関へ若手日本人を派遣するJPO制度を通じてフィジーに駐在したのを皮切りに、イタリア、エチオピア、ベトナム、スリランカ、モルディブ等で複数の国連機関で勤務し、満を持して国連IOMの駐日代表に就任した。
「これまでのキャリアで人口問題や難民問題に関わるうちに、広範なアングルで『世界の人の移動』を捉えて、脆弱な立場に置かれた移住者の保護だけでなく、移住者が織り成す社会貢献にも光を当てる国連IOMのミッションに、強い魅力を感じるようになったのです」
駐日代表として日本で仕事をするにあたって、国や地域が移民とどう向き合い、共生社会を作っていくかに強い関心がある、とナッケンは力を込める。
「少子高齢化と人材不足が進む中、経団連が『Innovating Migration Policies~2030年に向けた外国人政策のあり方』を提言するなど、日本も国際移住や外国人との共生というテーマの当事者であることは間違いありません。これは世界中で論争になりやすい課題ですが、様々なバックグラウンドの人々が皆で幸せを実感できる社会の実現は、日本全体の未来のためにも重要です。
今年6月時点で、日本には358万人の外国人が暮らしていますが、移住労働者の需要はこれからも増えていく見込です。日本社会がどうしたら移住者と一緒に未来をつくっていけるのか、国連IOMの知見を活かして、少しでもよりよい方向に進むために貢献できたらという思いは強くありますね」
12月18日は、世界の人の移動に目を向ける「国際移住者デー」
その視線を培ってきたのは、20年来過ごしてきた海外での実体験だ。
「海外で暮らしていた頃は、私自身も移民でした。そして、社会に必要不可欠なサービスを海外からの移住労働者が担っている様子を各地で目の当たりにしました。スリランカでは移民の医師や看護師が地域医療を担っていたり、モルディブでは大勢のインド系の教員が活躍していたり、そうした事例を他のたくさんの国で見てきました。
今日の日本も、ほとんどの業種や職業で彼らの尽力なしには経済や社会が回らないし、彼らもそれにやりがいを見出している。移民と聞くと、治安が悪化するだとか、社会保障に負荷が掛かるとかイメージする方もいますが、データでは全く裏付けられていません。その国や地域によって最適解は異なると思いますが、うまく調和のとれた共生社会を築いていきたいですね」
そんなナッケンが、心のよりどころにしている言葉がある。現在のアフガニスタンで生まれた13世紀の哲学者、ジャラール・ウッディーン・ルーミーの残した一節だ。以下に引用する。
"Out beyond ideas of wrongdoing and rightdoing, there is a field. I'll meet you there."
(善行や悪行という観念を超えたところに、草原がある。私はそこで、あなたと会おう。)
「特に近年はソーシャルメディアの影響もあり、いろいろな社会課題に関して善悪の両極端の議論が起きやすく、時に政治化してしまうこともあります。でも、物事にはグラデーションがあり、ゼロかイチかでは答えにたどり着けないこともたくさんあります。この言葉は、多くの人の声に耳を傾けながら丁寧に仕事に向き合うことや、目の前の課題の解決のために俯瞰した視点を持つことの大切さを説いているようで、私が日々の業務に取り組む際の指針となっています」
12月18日は、世界の移民にまつわる課題について知り、その貢献に目を向ける「国際移住者デー」。ますます混迷の度を深める国際情勢において、安全やよりよい生活を求めて人々は移動する。移民と人の移動の課題に取り組む国連IOMの役割は、ますます増えていくだろう。ナッケンたちの日本での活動も、これから目にする機会が増えていくはずだ>(以上「Newsweek」より引用)
「すべての移住者とつくる共生社会のために──国連IOM駐日代表が語る世界と日本の「人の移動」」と題する「読物」があったので引用した。断っておくが、私は基本的に移民には賛成できない。人は生まれ育った地域で、生まれ育った国家と国民のために奉仕すべきだ、と考えるからだ。
「人の移動」にまつわる支援ニーズの多様化に伴い、組織も拡大
紛争、貧困、気候変動──。さまざまな理由で故郷を離れる「移民」。国連IOMがまとめた2024年版「世界移住報告書」によれば、国際移民の数は世界で2億8100万人、国内避難民の数は2022年末時点で過去最高の1億1700万人に達している。
コロナ禍を経た今日、目まぐるしく変化し複雑化する国際情勢とも歩調を合わせるように年々増えている、世界的な人の移動。同時に国連IOMも、その存在感を増している。
「実は、移民とは何たるか、国際法上の定義はないのです。私たちは、移動の理由や滞在期間、法的地位、そして国内か国外かに関わらず、本来住んでいた場所を離れて移住する人、そして移動の途中にある人をすべて移民と捉えています」
こう話すのは、国連IOM駐日代表のナッケン鯉都。事業規模は今日も増加傾向にあり、世界約180か国で任務にあたる職員数は約2万2000人を超えた。
「それだけ、人の移動にまつわる支援ニーズが多様化しているということですね。組織が拡大する中で、2023年に女性として初めて組織のトップに就任したエイミー・ポープ事務局長のリーダーシップの下、IOMの活動が拡大して、そのインパクトが増していると感じます」
国連IOMは現在、3つの戦略を掲げている。1つは、移動する人々の命を守り、保護すること。たとえば昨年1年間だけで、移動の途中で死亡及び行方不明となった人は8565人確認されている。死因の半数以上は溺死で、自動車事故が9%、暴力が7%と続く。命を賭けて国境を越えようとする移民や、世界各地で保護を求める避難民は後を絶たない。
2つめは、避難民の課題への解決策をもたらすこと。国連IOMは、故郷を追われた人々への緊急人道支援を強みとしながらも、そもそも避難民を発生させないように、平和構築や就業支援、防災や気候変動へのレジリエンス強化といった活動も各地で担う。
3つめが、正規のルートを通じた移住の促進。移住をより安全で秩序あるものとし、密入国や人身取引、または移民の搾取、虐待を引き起こす要因を撲滅するための取り組みだ。
「人の移動の課題には色々な側面があるので、職員にも様々な専門性が求められます」と、ナッケンは言う。「たとえば医師や看護師をはじめとする医療専門スタッフは約2000名。移民への直接支援以外にも、出入国管理や民間連携、ビジネスと人権などのバックグラウンドを持つ職員が働いています」
2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻開始後にも、大規模な事業を展開。ウクライナ国内で人道支援機関として最大の約1000名の職員を動員し、周辺国でも並行して迅速に支援を始め、現在も継続している。
「私たちは現場をとても大切にしています。同地域では、2014年2月のクリミア半島への武力侵攻の頃から拠点を置いていたので、迅速に動くための体制や知見があったのです」
人材不足の日本も、外国人との共生というテーマの当事者
ナッケン自身は、20年以上にわたり国連機関でキャリアを築いてきた。外務省が国際機関へ若手日本人を派遣するJPO制度を通じてフィジーに駐在したのを皮切りに、イタリア、エチオピア、ベトナム、スリランカ、モルディブ等で複数の国連機関で勤務し、満を持して国連IOMの駐日代表に就任した。
「これまでのキャリアで人口問題や難民問題に関わるうちに、広範なアングルで『世界の人の移動』を捉えて、脆弱な立場に置かれた移住者の保護だけでなく、移住者が織り成す社会貢献にも光を当てる国連IOMのミッションに、強い魅力を感じるようになったのです」
駐日代表として日本で仕事をするにあたって、国や地域が移民とどう向き合い、共生社会を作っていくかに強い関心がある、とナッケンは力を込める。
「少子高齢化と人材不足が進む中、経団連が『Innovating Migration Policies~2030年に向けた外国人政策のあり方』を提言するなど、日本も国際移住や外国人との共生というテーマの当事者であることは間違いありません。これは世界中で論争になりやすい課題ですが、様々なバックグラウンドの人々が皆で幸せを実感できる社会の実現は、日本全体の未来のためにも重要です。
今年6月時点で、日本には358万人の外国人が暮らしていますが、移住労働者の需要はこれからも増えていく見込です。日本社会がどうしたら移住者と一緒に未来をつくっていけるのか、国連IOMの知見を活かして、少しでもよりよい方向に進むために貢献できたらという思いは強くありますね」
12月18日は、世界の人の移動に目を向ける「国際移住者デー」
その視線を培ってきたのは、20年来過ごしてきた海外での実体験だ。
「海外で暮らしていた頃は、私自身も移民でした。そして、社会に必要不可欠なサービスを海外からの移住労働者が担っている様子を各地で目の当たりにしました。スリランカでは移民の医師や看護師が地域医療を担っていたり、モルディブでは大勢のインド系の教員が活躍していたり、そうした事例を他のたくさんの国で見てきました。
今日の日本も、ほとんどの業種や職業で彼らの尽力なしには経済や社会が回らないし、彼らもそれにやりがいを見出している。移民と聞くと、治安が悪化するだとか、社会保障に負荷が掛かるとかイメージする方もいますが、データでは全く裏付けられていません。その国や地域によって最適解は異なると思いますが、うまく調和のとれた共生社会を築いていきたいですね」
そんなナッケンが、心のよりどころにしている言葉がある。現在のアフガニスタンで生まれた13世紀の哲学者、ジャラール・ウッディーン・ルーミーの残した一節だ。以下に引用する。
"Out beyond ideas of wrongdoing and rightdoing, there is a field. I'll meet you there."
(善行や悪行という観念を超えたところに、草原がある。私はそこで、あなたと会おう。)
「特に近年はソーシャルメディアの影響もあり、いろいろな社会課題に関して善悪の両極端の議論が起きやすく、時に政治化してしまうこともあります。でも、物事にはグラデーションがあり、ゼロかイチかでは答えにたどり着けないこともたくさんあります。この言葉は、多くの人の声に耳を傾けながら丁寧に仕事に向き合うことや、目の前の課題の解決のために俯瞰した視点を持つことの大切さを説いているようで、私が日々の業務に取り組む際の指針となっています」
12月18日は、世界の移民にまつわる課題について知り、その貢献に目を向ける「国際移住者デー」。ますます混迷の度を深める国際情勢において、安全やよりよい生活を求めて人々は移動する。移民と人の移動の課題に取り組む国連IOMの役割は、ますます増えていくだろう。ナッケンたちの日本での活動も、これから目にする機会が増えていくはずだ>(以上「Newsweek」より引用)
「すべての移住者とつくる共生社会のために──国連IOM駐日代表が語る世界と日本の「人の移動」」と題する「読物」があったので引用した。断っておくが、私は基本的に移民には賛成できない。人は生まれ育った地域で、生まれ育った国家と国民のために奉仕すべきだ、と考えるからだ。
未開の地へ移住して開拓するのならまだしも、近代的な国へ移住して他の国の社会インフラなどを使って自由に暮らす、というのは他の国の国民が営々として築いた社会の「お世話」になっている、という感謝の思いを持たない限り、他国民の移住を認めてはならない。
もちろん難民を一時的に受け入れるのは必要だが、難民となった本国の事由が解消されたなら本国に帰還して本国の復興のために働くべきだ。
それぞれの国にはそれぞれの国の国民がいて、彼らが営々として築いた文化や社会インフラや慣習にただ乗りするどころか、その地を奪って移民先に本国の慣習やお祭りを持ち込んで騒ぎを起こすなど論外だ。郷に入って郷に従わない移民など受け入れる必要はない。トットと帰って頂きたい。
たとえばあなたの家に他人が入ってきて、この家は自分のものだと主張を始めたらどうするのか。ナッケン鯉都氏は「今日の日本も、ほとんどの業種や職業で彼(移民)らの尽力なしには経済や社会が回らないし、彼らもそれにやりがいを見出している」と論述しているが、果たしてそうだろうか。
日本は急速な西洋化の必要性に迫られた明治維新当時ですら、西洋人教師を招聘したが、西洋人の移民を求めはしなかった。古今東西、移民を求める場合は受入国住民が厭う労働を移民にさせた場合が多い。たとえば米国の黒人奴隷、という移民政策のケースがこれに当たる。
欧州諸国の移民も多くは欧州人が嫌う仕事を移民にさせた。しかし現代国際社会で、そのような移民が許されて良いわけがない。しかし国連移住機関のように「善行や悪行という観念を超えたところに、草原がある。私はそこで、あなたと会おう」ということにはならない。なぜなら移民した人たちは、それまでその国で営々と暮らしてきた人たちの社会に入り込む「異質な人たち」だからだ。
国連では「移民とはその国に他国もしくは他地域から移住して一年以上暮す者」と規定している。日本には130万人を超える「在日外国人=移民」が既にいて、地域社会と様々な軋轢を生じている。
いかなる国であろうと、基本的に移民は受け入れ難い。もちろん内乱や圧政に対して一時的に避難する人たちを受け容れないというのではない。しかし基本的に国家を形成するのは国民であって、圧政に対して避難するだけでは政治は無くならない。戦争であれば終戦を迎えるまで避難することはあり得ても、戦争が終われば国家の復興に役立つのが国民の務めではないだろうか。
国連移住機関が必要なのは移民の勧めではないだろうし、移民した人たちの帰還事業を積極的に行なう必要があるのは北欧など移民により社会秩序を著しく破壊されている国民にとって移民は迷惑な「闖入者」でしかない。しかも北欧の国民が営々として築いて来た社会保障制度にタダ乗りしようとするのは国民にとって耐え難いことではないか。
移民の権利を国連移住機関が主張するのなら、国民が国民の権利を主張し、移民に対して帰還事業を積極的に行なうように国家や国連に求めるのは至極当然の権利ではないだろうか。国連移住機関がまさか「入植」という民族による「帝国主義」を知らないわけではないだろう。まさにウクライナ戦争は「入植帝国主義」により勃発したことを忘れてはならない。
移民の権利を謳う前に、国民の権利こそ尊重されるべきだ。移民を行う事由が解消されたなら、移民は速やかに帰国すべきだ。そして自分たちの祖国の再建に努力すべきだ。