政治家は自らの身を律しなければ国民の怒りは大きな波となって、国会議員を総入れ替えしなければならないと気付くだろう。
<企業・団体献金の禁止が自民党政治に終止符を打つための決定打であるということは、このコラムでも何回か指摘してきた。企業・団体献金は日本政治が贈収賄構造になっている最大の原因だ。これをやめるべきなのは、高校生でもわかる話ではないだろうか。
■政治が大きく歪められている可能性
「「企業・団体献金」は自民党の専売特許ではない トヨタと電力会社のために働く野党議員はクビにせよ!」と題して企業団体献金の全面的禁止を古賀茂明(評論家)氏が論評している。それは与党・自民党だけでなく野党・立憲党にもそうした政治献金を懐に入れている政治家がいると警鐘を鳴らしている。
国会議員に、なぜそんなに金がかかるのかと聞くと、必ず聞こえてくるのが、「企業・団体献金なしでは、事務所が運営できない」という声だ。
しかし、有力議員の中にも、例外的ではあるが、企業・団体献金を一切受け取っていない議員もいる。もちろん、各党の幹部議員は、政党から政策活動費などを受け取っているので、幹部になれば企業・団体献金なしでもやっていけるかもしれない。だが、役職についていなくても企業・団体献金を受け取らない議員もいる。
つまり、やる気になればできるのだ。
企業・団体献金をもらえば、どんな議員でも、その企業や団体が嫌がる政策はやりにくくなる。逆に喜んでもらえる政策には力が入る。それがごく普通の人情というものだ。
企業・団体献金を全くもらっていないある議員は、「人が良い人ほど、“ご恩返し”をしたくなるものだ」と言っていた。「人間は弱いんだよ。俺だってそうだ。それがわかっているから、企業・団体献金はもらわない」ということだった。
企業・団体献金の弊害は、これまで、いくつもの事件で示されてきた。リクルート事件や佐川急便事件のことがよく引き合いに出されるが、それ以外にもたくさんの贈収賄事件があった。あまりにも多いので、国民はもしかすると、「政治とはそういうものだ」と諦めたり、あるいは慣れっこになってしまったりしていたのかもしれない。
今回のようにメチャクチャな裏金事件がわかれば、国会議事堂や自民党本部に何万人もの群衆が押し寄せてもいいと思うが、そんなことは起きなかった。
今年の夏までの通常国会の議論を見ていても、最初から、「企業・団体献金の禁止は無理」という相場観が支配し、大手紙の政治部記者は、そんなことはできるはずがないので、野党がどこまで歩み寄れるかが鍵だなどというバカな記事を書いていた。
しかし、国民は政治部記者などよりはるかに賢明だった。中途半端な政治資金「改革」などまやかしだということを見抜き、衆議院選挙で与党を過半数割れに追い込んだのだ。
今頃になって、新聞は、企業・団体献金の禁止が重要なテーマだと書くようになったが、それでもまだ、完全禁止までは無理だろうという雰囲気が漂っているのを感じる。
■トヨタ系労組の政治団体から「1億円」
しかし、しつこいようだが、完全な企業・団体献金禁止ができるかどうかで、日本の政治が変われるかどうかが決まるのだから、今回こそはどうしても実現しなければならない。 企業・団体献金がなくなれば、自民党の議員は、「ただの人」に成り下がる。多くの議員は、「カネ」がなければ何もできないからだ。そうなって初めて、本当の意味で国民のために働く議員だけによる政治が実現するだろう。逆に言えば、企業・団体献金がなくならなければ、どんなに綺麗事を並べても、結局は、カネを出す人たちのための政治しか行われなくなるのだ。
企業・団体献金と言えば、自民党議員の専売特許だと思いがちだが、野党議員にもこれに頼り切った議員が結構いることには注意が必要だ。
その代表例が、労働組合から巨額献金を受けている議員たちだ。自民党の裏金議員の陰に隠れて、これまであまり批判されてこなかった。共産党の機関紙「赤旗」も、野党のカネの問題を詮索するまでの余裕はなかったようだ。 「赤旗」が本気にならないと、政治とカネの問題の真相に迫るのは非常に困難だというのがこれまでの日本のマスコミの状況だったが、企業・団体献金が本気で議論され始めたことで、大手紙が、急に野党の労組系団体からの献金について、「真面目に」調査を始めた。
と言っても、政治資金収支報告書を見て書いたというだけの非常に原始的な内容だ。それでも、我々普通の国民から見ると、「えーっ!」と声を上げたくなるようなことを知ることができる。
例えば、毎日新聞の記事(11月29日配信「連合傘下、国民民主・立憲側に2.4億円寄付 企業献金抜け道の指摘も」)によれば、連合傘下の主要な労働組合や関連政治団体が、自ら擁立・支援する立憲民主党と国民民主党の参議院議員10人に対し、2023年に計約2億4000万円を寄付したという。
国民民主の議員では、トヨタ自動車系労組の政治団体「全トヨタ政治に参加する会」が浜口誠政調会長に計1億円、礒崎哲史副代表に1482万円を、電力総連の政治団体「電力総連政治活動委員会」は浜野喜史選対委員長に2000万円、竹詰仁氏に1000万円をそれぞれ寄付している。
また、立憲の議員では、日本郵政グループ労組の政治団体「郵政未来研究会」が小沢雅仁氏に5000万円、鉄鋼・重工などの産業別労組・基幹労連の政治団体「組織内議員を支援し政策実現を推進する会」は村田享子氏に2000万円を寄付したなどと報じられた。
また、12月7日配信の読売新聞の記事「労働組合関連の献金、立憲民主・国民民主両党の8議員に計3億2142万円…23年分収支報告書を集計」によれば、同じ23年に、立憲と国民民主の衆参8議員に労組や労組関連の政治団体から計3億2142万円の献金がなされていたということだ。
対象となる範囲が毎日と読売では違うために金額などが食い違うだけでなく、重要な献金が落ちているなどやや杜撰な面もあるが、やらないよりははるかに良い。ナイストライと言っておこう。
■政治が大きく歪められている可能性
さらに、日刊ゲンダイは、12月10日配信の記事で、21~22年についての調査を行い、立憲と国民民主の参議院議員8人に対して、労組と労組系政治団体が、総額5億3009万円の献金を行っていたと報じている この記事によれば、21~22年に、電力総連系の団体が竹詰氏に5000万円も献金したり、浜口氏にトヨタ系だけで2億5000万円近い献金がなされていたりしたことがわかる。
全体としてみると、電力総連や基幹労連などの原子力ムラの労組やトヨタ系労組の存在感が大きく、これらの業界は、経営側でも自民党に巨額の献金を行っていることから、日本の政治が原子力ムラやトヨタによって大きく歪められている可能性が高いと疑いたくなる結果だ。 国民民主だけでなく、立憲議員でも、基幹労連の巨額献金を受け取っている議員がいる。こういう議員は、原発ゼロには賛成できないはずだ。
国民民主は露骨に原子力推進を叫んでいるが、その理由は、要するに巨額献金をもらっているからだということが、非常にはっきりとわかってしまう結果だ。
また、トヨタ系労組の巨額献金を受ければ、トヨタが困る政策はとり得ず、国民民主は、ガソリン車やハイブリッド車への減税を廃止して電気自動車(EV)の急速な普及を図る政策には後ろ向きにならざるを得ないだろう。また、ガソリン税の引き下げを執拗に求めるのは、国民のためではなく、トヨタなど、ガソリン車に頼らざるを得ない自動車メーカーのためではないかという疑念も生じる。
さらに、巨額献金に関わる労組は大企業が中心の組合が多く、したがって、大企業が困る政策は、その組合員たる大企業サラリーマンも嫌がるので、結果的に国民民主や立憲もあまり熱心にならないという弊害が出ている。
大企業への増税を立憲や国民民主が強く主張しないのは、その典型例だと言って良いだろう。
現在、国会では、政治資金規正法などの改正について、与野党がさまざまな案を出して審議が始まっているが、そこにも、労組系の巨額献金の影響がはっきりと出ている。
企業・団体献金については、自民党だけでなく、国民民主党が難色を示している。色々と理屈をこねているが、要するに労組からの巨額献金を守りたいということだろう。
立憲は、社民党などと共同で、企業・団体献金禁止の法案を出しているが、実は、そこには大きな抜け穴がある。
それは、労組からの献金は禁止されるが、労組系の政治団体からの献金は禁止されないというマヌケな抜け穴だ。
■禁止法案の「密かな抜け穴」
■禁止法案の「密かな抜け穴」
実は、この問題は、以前から知る人ぞ知るという話だったが、これまでは、企業・団体献金の禁止などできるはずがないということで、野党側もあえて議論していなかった。誰も気づかないように静かにしていて、いざとなったら密かに抜け穴を作ればいいと考えていたのだろう。
立憲の野田佳彦代表は、早々とこの抜け穴を認める法案を作って提出しようとしたが、今回は、企業・団体献金の禁止を国民が本気で求めているということに気づかなかったのだろうか。
テレビや新聞が真面目に調査し、立憲も労組系団体の巨額献金を受けていると報じたことで、「密かな抜け穴」が白日の下に晒されてしまった。企業・団体献金で攻勢に出ようとしていた矢先にずっこけてしまったという感じだ。
野田氏は、「自由な意思に基づいて政治団体をつくって自発的に寄付をするような、まさに政治活動の自由の根幹に関わることまでは否定できないだろうということがあって、またそういう政治団体もたくさんありますので、そのことを意識しての“政治団体を除く”なんです」と釈明したが、「抜け穴だ!」という批判に応えるのはとても無理という状況だ。
個人が自由な意思で政治団体をつくるのはもちろん自由だ。また、個人が自由な意思で政治献金をするのも自由である。しかし、「政治団体を通して」献金する自由というのは、必ずしも絶対というものではない。それを認めると、企業系団体、労組系団体というようなものとの見分けがつきにくく、結果的に贈収賄的性格を持つにもかかわらず、それが見えない不透明な献金の抜け穴になってしまう。そのような政治を歪める恐れを生み、政治への信頼を失わせるという弊害があるのであれば、そのような献金方法は禁止しても良いはずだ。 これを禁止しても、個人は、自由意思で個人として政治献金をするのに何ら支障はないから、個人の政治活動の自由を阻害するということにはならない。
国民は、自民党の贈収賄政治を終わらせたいと願っている。一方で、野党による労組を通じた大企業優遇政治という問題には気づいていない人が多かったと思われる。しかし、今回これを知ることになった以上、この問題にも終止符を打ちたいと考えるだろう。 「時間がないから、とりあえずこれで行きます」という野田代表のやり方を認めるべきではない。
12月21日で国会を閉会にする必要はないはずだ。会期を延長して、年末年始も挟んでじっくり議論し、抜け穴を完全に封じた「完全な企業・団体献金禁止」を実現すべきだ。
そのために、国民は、厳しく与野党を監視していかなければならない>(以上「AERA」より引用)
「「企業・団体献金」は自民党の専売特許ではない トヨタと電力会社のために働く野党議員はクビにせよ!」と題して企業団体献金の全面的禁止を古賀茂明(評論家)氏が論評している。それは与党・自民党だけでなく野党・立憲党にもそうした政治献金を懐に入れている政治家がいると警鐘を鳴らしている。
企業・団体献金をなぜ全面禁止すべきか、理由は簡単だ。金を貰えば必ず政治が歪むからだ。国民のために政治を行うのではなく、特定の企業や団体のために政治を行う、という事態が平然と罷り通る現状を改めるためには企業・団体献金を全面禁止にするしかない。
国民党が原発再稼働に賛成なのはそうした労組から献金をもらっているからだ、という。また立憲党の野田氏に至っては記事で「 野田氏は、「自由な意思に基づいて政治団体をつくって自発的に寄付をするような、まさに政治活動の自由の根幹に関わることまでは否定できないだろうということがあって、またそういう政治団体もたくさんありますので、そのことを意識しての“政治団体を除く”なんです」と釈明したが、「抜け穴だ!」という批判に応えるのはとても無理という状況だ」と指摘されているように、労組などからの団体献金を「自由意思による献金」だとして、認めようとしていた。
しかしいずれの企業・団体であれ、献金するものはその献金を通して政治家に政治を自分たちの企業や団体に有利にしてもらおうとする魂胆があるからだ。 それでは「政治は国家と国民のためにある」という理念から大きく外れて、政治は特定の企業や団体の利益のためにある、ということになる。
政党自制金を導入した理由はすべての企業・団体献金を禁止にするためではなかったか。古来より金の力で政治を歪める贈収賄だと相場が決まっている。だからこそ、全面禁止するしかない。こんどこそ、政治家は自らの身を律しなければ国民の怒りは大きな波となって、国会議員を総入れ替えしなければならないと気付くだろう。