過ぎたるは及ばざるが如し

異例のスピード
 アメリカ東部時間11月6日朝5時半すぎ、ドナルド・トランプの当選確実が多くのメディアによって報じられた。
 どのメディアも当確が出るまでにはもっと時間がかかるだろうと踏んでいたので、これほど早く結果が出たことに、彼ら自身が驚きを隠せない様子だった。
 筆者が投票日(現地時間の5日)の夜に取材したワシントンDCは圧倒的にハリス支持の街だ。この夜はカマラ・ハリスの母校である名門黒人大学のハワード大学キャンパスで、開票速報パーティと銘打って大集会が開かれた。正確な動員数は発表されていないが、1万人はいたと思う。
 開票速報を大画面で見るのと同時に、DJがプレイするダンスミュージックに乗って踊ったり歌ったり。ハリス当選を信じる若いZ世代たちで大いに盛り上がった。しかし夜11時も過ぎると、今夜中には決まらないだろうと見込んで多くが家路についた。その時にはまだかなりの「ハリス勝利」の希望が残っていた。
 しかしそれは、数時間後のうちに打ち砕かれることになる。
 当確がこれほど早く出た理由は、2020年の大統領選で開票の遅れが陰謀論に結びつくなど、多くのトラブルが生まれたからだ。前回の轍を踏まないよう開票作業のプロセスを改善したことが、当確がここまで早まった1つの要因とされている。
 しかし何よりも大きかったのは、おそらくトランプ本人もトランプ支持者も、そしてもちろんハリス側も予想しないほど、トランプが強かったということだ。
 ではなぜアメリカ人はカマラ・ハリス副大統領ではなく、ドナルド・トランプ元大統領に、これほどの大きな勝利をもたらしたのか?

一貫したメッセージの勝利
「アメリカは移民問題が危機的状況なのよ」
 筆者のインタビューに対して第一声でそう訴えた白人女性は、アメリカ激戦州の1つペンシルバニア州の中でもさらに激戦地と言われる、バックス郡レビットタウンという街の住人である。
 レビットタウンは「全米の結果を左右するのはこの街だ」という記事さえ出たほどの重要な土地だが、ついこの間まで民主党寄りだったのが、今回は共和党トランプにかなりの票が流れると予測されていた。たしかに道路沿いの芝生に立てられた看板は、トランプ氏のものがハリス氏の数を大きく凌いでいる。
 彼女はこう続ける。
「実は近隣で十代の女の子数名が行方不明になっているの。もしかすると誘拐されて人身売買の犠牲になっているかも」
 果たして本当にそういった事件が起きているのか? ニュースを詳細に検索しても、彼女が言うような事件は出てこなかった。しかし彼女は、こうした犯罪を起こしているのは不法移民だと決めつけるかのような言い方をする。
 この街の住人はほぼ100%白人で、移民の姿などまったく見かけない。それがなぜ、不法移民=誘拐=人身売買=犯罪者となるのか?
 それはトランプが繰り返し繰り出すレトリックが原因だと考えられる。
 筆者はトランプの集会を2回取材した。ニューヨーク郊外のロングアイランドと、マンハッタンのど真ん中マジソンスクエアガーデンでの集会だ。
 そこでのトランプ氏のメッセージはシンプルで一貫していた。
「アメリカは地に落ちた。経済もだめになり今や犯罪の巣だ。その理由は南部の国境から不法移民を好きなだけ入国させているからだ。それをやっているのがハリスで、このままだとアメリカは滅びてしまう」
 こうしたメッセージは客観的に見ればかなり的外れなものだ。アメリカはパンデミックから驚異の経済復興を見せ、株価は記録を更新。重犯罪も減少している。
 しかしトランプはそんな状況にはおかまいなしに、こうしたメッセージを約1時間半〜2時間のスピーチの中で、「ハイチ人がペットの犬や猫を盗んで食べている」みたいなショッキングなエピソードをちりばめながら繰り返す。
 驚いたことに、インタビューした支持者は皆、申し合わせたかのようにトランプと全く同じレトリックを繰り出してくるのだ。このメッセージがどれほど支持者たちに刺さりまくっているか、いや刷り込まれているかがありありとわかる。
 物価の異常な高騰で富裕層を除く庶民の生活が苦しいのは事実だ。パンデミック前の古き良き時代に戻りたいという願望もあるだろう。そうした思いは、トランプの力強くかつシンプルでわかりやすいメッセージによって増幅され、強化され、「絶対にトランプでなければ!」という強い信念となり、MAGAムーブメントの中核として確立されている。
 その圧倒的なパワーと説得力は、ハリスには絶対にないものだ。それもトランプ支持に流れる人が増えた理由だろう。

ヒスパニック男性の獲得

 もう1つ、出口調査では、ヒスパニック系の男性のトランプ票が思ったより伸び、これがトランプ勝利に大きく貢献したと伝えられている。
 実はこれも筆者がニューヨークでの取材で肌で感じていたことだ。
 ニューヨーク市の人口のおよそ3割はヒスパニック系だ。彼らは移民や移民2世が多く、伝統的に民主党支持だった。しかしこの春くらいから街でインタビューをしていると、「トランプに投票する」という人が確実に増えていた。
 しかしこれは不思議なことではないだろうか。前述した通り、トランプといえば移民へのバッシングが強烈だ。ヒスパニック系の市民に「あなた自身は移民だが、それは気にならないのか」と尋ねると、
「トランプが攻撃しているのは不法移民だ。我々は合法的に移民しているから問題はない」
 と答えた。
 この人物は「不法移民」と言い、自分と全く違う存在であるとするが、そうした「不法移民」も、もともとは彼と同じ地域で暮らし、同じように家族を抱え、貧困から逃げるようにアメリカに渡ってきた、言わば「同胞」である可能性が高い。運よく合法的に移民できた人が「自分はワンランク上」とでも言わんばかり言い方をすることにはショックを受けた。
 このように移民の内部における分断をあおることで支持者を獲得するやり方は、トランプ陣営の一つの作戦だったと言われる。また特にヒスパニック系はカトリック信者が多く保守的で、女性蔑視の傾向も未だ強いとされる。そうした部分も、トランプ陣営の考え方と親和性が高いと考えられている。

未知の悪よりも、よく知っている悪のほうがマシ

 一方負けたハリスはどのように見られていたのか。
 興味深かったのは、前出ペンシルバニア州レビットタウンで小学校の教頭先生を務める白人男性の言葉だ。
 彼はひとしきりトランプの批判をした後、
「トランプがいいとは思わない。でも彼は一度政権をとっているから、どんなことになるかは皆わかっている。それに比べると、未知のハリスのほうが怖いんだ。だからみんなトランプに入れるんだと思うよ」
「ではあなたはどちらに投票したの?」と聞くと、彼はなんとなくバツの悪そうな顔で「トランプ」と答えた。
 内心驚いた。有罪判決を受けた経験があり、女性やマイノリティを差別し、政敵への復讐を主張するトランプより、ハリスのほうが怖いというのも解せなかった。
 そこで、「あなたはもしかすると、ハリスが女性でマイノリティだから投票したくないのでは?」と聞いてみた。
「いやそんなことはない、女性でも大統領にふさわしい人だったら投票する」と彼は主張したが、同じ意見を2016年のヒラリー出馬の時にも多くのアメリカ人から聞いた。
 少なくとも2024年のアメリカは、史上初の女性大統領を迎える準備はできていなかったということだろう。

アメリカはどこに向かう?

 トランプは、第二次トランプ政権では、閣僚だけでなく官僚までトランプ支持者で固めるとしている。政策的には、大企業、富裕層に対するさらなる減税を進め、気候変動対策を後退させ、中国に高い関税をかける……といった政策を、確実に実行に移したいようだ。
 また、女性に対しては人工妊娠中絶禁止の厳格化、それの全米での法制化、移民やマイノリティの人権縮小などが待っているだろうと考えられている。
 昨日あれほど楽しげに開票速報を見ていた、ワシントン、ハワード大学の学生たちは今何を思っているのだろう?
 少なくとも筆者の周囲のニューヨークのZ世代たちはすっかり落ち込んでいる。彼らが気を取り直して、再び2017年のような抗議行動を起こすまでには、まだ少し時間がかかるかもしれない>(以上「現代ビジネス」より引用)




なぜトランプは「大勝利」したのか…?「最大の激戦州」の有権者たちが「トランプとハリスについて語ったこと」」とシェリー めぐみ(ジャーナリスト・Z世代評論家)氏が選挙期間に実感した両陣営の印象を記述している。
 めぐみ氏のインタビューした選挙印象を一読して感じるのは「人権運動疲れ」や「自由運動疲れ」を米国民の多くが感じていることだ。民主党政権下で野放しになっていた活動家たちの過激な運動は米国社会を混乱させ、価値観を混乱させ、そして社会を分断した。「もう沢山だ」と米国民の多くが「静か」で「平和」な米国の原風景に回帰したいと思っているのかも知れない。

 トランプ氏は妊娠中絶や堕胎禁止法を制定して米国中で施行するだろう、という予測は「妊娠中絶や堕胎の自由」よりは穏やかだ。「万引の千ドル基準」よりは「1ドルの商品でも対価を支払え」という方が社会正義は報われる。
 今回接戦州でヒスパニック系の支持をトランプ氏が得たのが大きかったという。めぐみ氏は同じヒスパニック系の移民が多いのに、なぜトランプ氏を支持するのか、と問うと、「私たちは合法的な移民だが、今何百万人と流れ込んでいる移民の多くは不法移民だから禁止すべきだ」と答えたという。

 民主党政権は赤州を青州にする手段として伝統的に移民政策を採ってきた。移民してきた人たちを保護して民主党支持者にした。その代表例がニューヨークでありカリフォルニアだろう。しかし大量の移民が入って来て、それらの州の治安はどうなっているか。
 元から居住している米国民はニューヨークやカリフォルニアの治安の悪さからそれらの州から逃げ出している。もちろんカリフォルニアにあるシリコンバレーも治安の悪化から、IT企業が逃げ出している。それが米国の現実だ。

 元々米国は敬虔なキリスト教徒の国だった。現在でも国民の約70%はキリスト教徒だ。しかし、かつてのように日曜の午前中に家族揃って教会へ行ってミサに参加する風景は見られなくなっている。いつからそうした習慣が米国から失われたのだろうか。
 そして極端な「人種間の結果の平等」を求める社会が実在しているのには驚く。ある大学入学では人種毎の「結果の平等」が実施されている。だから学力で劣るアフリカ系が入学して、学力に勝るアジア系が排斥されているという。これこそ人種差別ではないだろうか。

 「結果の平等」を強制するのなら、NBAはアフリカ系の選手が制限されるだろう。しかし現実はそうなっていない。これはどういうことなのだろうか。
 もちろん人種差別撤廃は「機会の平等」を保障する事であって、「結果の平等」を保障することは人種差別の一環だ。同様に「男女差をなくす」と云うのは「機会の格差をなくす」のであって「結果の格差をなくす」ことではない。だから米国で女性大統領が一度も当選していないのは女性差別があるからだ、という批判は正しくない。米国憲法の何処にも「女性は大統領になってはならない」と書かれていない。しかし女性に対して「機会の平等」は米大統領選では確実に果たされている。現にハリス氏が大統領候補としてトランプ氏と争ったではないか。

 にほんでも行き過ぎたLBGTq運動を採り入れた渋谷の男女の壁を撤廃したトイレは男女から不評のようだ。パリオリンピックでは元男子選手が女子重量挙げに出てブーイングを浴びた。生まれながらの「性」を否定するのは心の問題であって、肉体的な問題にすり替えてはならない。しかし米国では子供が親の承認もなく、生まれながらの「性」障害治療と称して肉体的な手術が行われているという。じつに驚愕すべき事態が米国では進行している。
 これが果たして「性」からの自由なのだろうか。あるいは、そうだとして、それが何をもたらすというのだろうか。実にオゾマシイ現実が米国には存在している。なぜ生まれながらの「性」を神に感謝し、生まれながらの「性」を尊重する教育を子供たちに施さないのだろうか。米国の行き過ぎた「自由」はもはやクレージーだと云わざるを得ない。そうした常軌を逸した米国の現実に米国民の多くがウンザリした結果がトランプ氏の選択に繋がったのではないだろうか。何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」という。

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