対中デカップリングの勧め。

<トランプ大統領就任後、蜜月が続くと思われていた米中関係は、あっという間に関税報復合戦が展開される「新冷戦」といわれる時代に突入。両国が外交圧を掛けた経済制裁戦争は激しさを増していった。

 「軍民融合」を掲げる中国の台頭は、アメリカの危機感を煽り、トランプ政権では米中の関税報復合戦にまで発展することになった。ここに至るまでには、中国の経済成長を促してきたといえるアメリカの楽観視による関与政策があった。中国研究者であり「月間中国ニュース」編集長の中川コージ氏は『日本が勝つための経済安全保障――エコノミック・インテリジェンス』にて「変化する米中の経済戦争」について詳しく解説している。

伝統的な「統一戦線工作」という概念
 日本で経済安全保障に関する議論が高まってきた背景には、中国の成長・台頭と、米中対立の高まりという国際社会の潮流があります。 近年、経済的にも、軍事的にも台頭してきた中国は、「中華人民共和国成立から100年を迎える2049年までに、名実ともにアメリカを超えて世界一の国になる」、との国家目標(中国共産党目標)を陰に陽に掲げ、あらゆる施策を打っています。特に科学技術の発展は国家にとって経済だけでなく国防にも不可欠であるとの意識から、まさに国を挙げて重点分野に投資を行ってきた経緯があります。 
 その目標を達成するため、中国は、伝統的な「統一戦線工作」という概念のもとで、世界各国に点在している中国人(華人)をネットワークとして使い、時には滞在国の優良企業の技術を盗み出したり、あるいは軍事技術と民生品製造の垣根を低くすることによって、双方の発展に良い効果をもたらそうという発想も生まれてきました。これが現在の中国の「軍民融合」の発想につながっています。 とは言え、「軍民融合」は、もとより日米などでも一般化していた「デュアルユース」という概念とほぼイコールです。わざわざ中国が「軍民融合」に大きな舵を切った(と宣言した)のは、歴史的経緯から実質的に中国共産党のもとに、中華人民共和国(国家)と中国人民解放軍(軍)がぶらさがっているホールディングス構造になっているからです。

習近平が主導する「強力なリエゾン」
 日本は米欧先進諸国等に比べて軍事タブーイデオロギーが根強くあるため若干特殊ではありますが、米欧は国家に軍と民間企業が属しており、その二つのセクターはある程度自由にデュアルユースの行き来ができます。 しかし中国共産党のもとでの国家と軍は別の事業組織であり、この行き来は上部構造である中国共産党が主導しなければならない。より厳密にいえば中国共産党中央委員会(党)総書記であり、かつ中央軍事委員会(軍)主席であり、中華人民共和国(国家)国家主席である習近平氏個人が「強力なリエゾン」を宣言して主導する必要があったのです。 2017年1月に北京中央が中央軍民融合発展委員会を設置し、習近平氏自らがその主任ポストに就任したのはそのためです。

中国を支援していたアメリカ
 こうした中国側の統合総力化傾向に危機感を持ったのがアメリカでした。中国の経済発展が、すぐに軍事的成長につながる道筋ができつつありました。それまでアメリカは「中国が豊かになればいずれ民主化するだろう」との楽観的観測を元に、中国を支援するという関与政策を実施していました。 
 もちろんこれまでも、中国の経済的・技術的な台頭に対する懸念がなかったわけではなく、中国を対象とする外資規制や、米中の相互依存が高まっていく中で問題点は生じていないか、監視する制度も整えられてはいました。しかし基本的には、たとえば中国をWTO(世界貿易機関)に引き入れることで、むしろ国際ルールを順守することが中国を利するのだと理解させ、中国の政治体制をソフトランディングさせようという思想や期待も根強くあったのです。

トランプの登場により事態が一変
 ところが中国は力をつければつけるほど、自国の主張をあらゆる力をもって国際社会へ押し出そうという方向へ進んでいくことになりました。さらには軍事力の急拡大も顕著になりました。 
 そして2016年に「アメリカの製造業のお株を奪ったのは中国である」とし、選挙活動中から貿易不均衡を訴えていたドナルド・トランプ氏が大統領に就任。トランプ政権が誕生すると、当初こそ「米中蜜月」と言われる関係を築きかけましたが、早くも2017年末頃からは貿易不均衡を批判する姿勢に立ち返りました。 
 トランプ大統領は中国を名指しで批判し、「知的財産権を侵害している」「アメリカにあるいいものを盗んでいる」「アメリカ国民の富や仕事が中国に奪われている」と批判、中国からの輸入品に関税をかけると、中国側もこれに対抗するようになりました。 習近平国家主席との間で貿易不均衡の解消について話し合われたものの合意には至らず、2018年に中国の対米貿易黒字額が過去最高を更新。するとアメリカは緊急輸出制限を発動し、中国が世界2位のシェアを持つ太陽光パネルに追加課税をかけました。 
 アルミや鉄鋼に課税すると、中国も報復としてアメリカから輸入する果物に報復関税をかけると発表、これに対しアメリカは中国製品1300品目を関税対象とし、「米中関税合戦」が勃発。お互いに次々に関税をかけては報復し合う様相になりました。

新しい米中関係を定義づけた副大統領の演説
 さらに2018年10月、マイク・ペンス副大統領がシンクタンク・ハドソン研究所で「中国共産党が我々の技術を盗んでいる」などと強く中国を非難する演説を行っています。その内容は次のような激しいものでした。 
〈過去17年間、中国のGDPは9倍に成長し、世界で2番目に大きな経済となりました。この成功の大部分は、アメリカの中国への投資によってもたらされました。また、中国共産党は、関税、割当、通貨操作、強制的な技術移転、知的財産の窃盗、外国人投資家にまるでキャンディーのように手渡される産業界の補助金など自由で公正な貿易とは相容れない政策を大量に使ってきました。 中国の行為が米貿易赤字の一因となっており、昨年の対中貿易赤字は3750億ドルで、世界との貿易赤字の半分近くを占めています。トランプ大統領が今週述べたように、大統領の言葉を借りれば、過去25年間にわたって「我々は中国を再建した」というわけです。 
 現在、共産党は「中国製造(メイド・イン・チャイナ)2025」計画を通じて、ロボット工学、バイオテクノロジー、人工知能など世界の最先端産業の90%を支配することを目指しています。中国政府は、21世紀の経済の圧倒的なシェアを占めるために、官僚や企業に対し、米国の経済的リーダーシップの基礎である知的財産を、あらゆる必要な手段を用いて取得するよう指示してきました。 中国政府は現在、多くの米国企業に対し、中国で事業を行うための対価として、企業秘密を提出することを要求しています。また、米国企業の創造物の所有権を得るために、米国企業の買収を調整し、出資しています。最悪なことに、中国の安全保障機関が、最先端の軍事計画を含む米国の技術の大規模な窃盗の黒幕です。そして、中国共産党は盗んだ技術を使って大規模に民間技術を軍事技術に転用しています〉 
 中国の技術開発が、いかにアメリカの脅威となっているかが具体的に読み取れます。人権問題、アメリカの選挙に対する介入、領土的野心、知的財産権などの窃取など様々な論点を挙げながら、中国に対する警戒を強めるべきだと警鐘を鳴らしました。

米中対立は決定的なものに
 さらに同年11月には習近平国家主席がアジア太平洋経済協力会議で「保護主義と単独主義が世界経済に影を落としている」とアメリカを非難し、米中対立が決定的になりました。集権体制の中国が自由貿易を唱え、自由を標榜するアメリカに対して「保護貿易を行っている」と非難する、まさかの捻れ構図となったのです。 
 加えてアメリカは中国企業・ファーウェイの通信機器を使わないよう、同盟国に要請したとの報道を受け、アメリカ政府の要請でカナダ司法局がファーウェイ創業者の娘で副会長の孟晩舟を逮捕。さらに翌年も関税戦争は続き、さらには中国がレアアースの禁輸をほのめかすなどし、アメリカ側も中国のスーパーコンピューターを開発する5団体をエンティティリストに指定しました。
  関連記事【中国が「福島原発の処理水放出」を問題視した「ほんとうの理由」、「反日」なわけではない…】では中国を動かしている、とあるメカニズムについて解説しています>(以上「現代ビジネス」より引用)




「中国が技術を盗んでいる」アメリカが中国支援から一変…強い非難を浴びせた「深刻な事情」」と題して中川 コージ(管理学博士(経営学博士)・インド政府立IIMインド管理大学ラクナウノイダ公共政策センターフェロー)氏が論評を発表した。
 何を今さら、という驚きと共に中川氏の論評を一読した。まさに「何を今さら」だ。

 米中はトランプ大統領時代の貿易戦争と、それに続く対中デカップリングによって決定的になっている。しかし米国をしてそうさせたのは習近平氏の「戦狼外交」だ。習近平氏が中国の膨張主義を隠そうとしなくなって、オバマ大統領に「太平洋を東西に二分して、西半分の支配権を中国に寄こせ」と持ち掛けて、親中派だったオバマ氏は腰を抜かすほど驚いた。
 中国が南シナ海の複数の岩礁を埋め立てているのを偵察衛星などで知っていながら、軍事基地化をオバマ氏は放置していた。しかし、それ以降「航行の自由作戦」と称する米軍艦艇を南シナ海に航行させる「作戦」を実行するようになった。だが時既に遅しで、中国が勝手に南シナ海に線引きした「九段線」を中国は中国の領海だと主張して、南シナ海に面する国々と領海紛争を繰り広げている。その元凶を作ったのはオバマ氏で、彼こそが実に愚かな米国大統領だった。

 その後始末にトランプ氏は貿易制裁や対中デカップリング策を打ち出した。トランプ氏が対中関係を緊張関係にしたのではなく、オバマ氏の無能・無策がそうさせた。その事を忘れてはならない。
 米中関係が決定的になったのは米国のせいではない。米国は後進国だった中国に日本と共に経済支援し、国際舞台で中国が活躍できるようにWTO加盟などで手回しした。中国が「改革開放」で発展したのも、日米の協力があればこそだ。

 しかし中国は牙を剥いて米国に挑みかかった。もちろん日本に対しても「尖閣諸島は中国のものだ」と根拠のない暴論を吐いて日本領土に手をかけようとしている。そんな中国にお愛想笑いをして金儲けを企む経済人や政治家が日本にいることは、同じ日本人として恥ずべきことだ。
 未だに国会に「日中友好議員連盟」があるというから驚きだ。日本の国益を考えるなら、とっくの昔に、そんな団体は解散して、「日本の対中国益を守る会」でも設立する方が理に適っている。

 最先端技術を剽窃するのは中国の専売特許になっている。それは西側諸国に対してだけではなく、ロシアも中国に対して警戒している。もちろん中国の兵器の殆ど全部がロシア製兵器の劣化コピー版だ。「空母・福建」に設置しようとした電磁カタパルトも、おそらく米国空母ジェラルド・フォードに設置した電磁カタパルトの機密を盗んで設置しようとしたのだろうが、コピーが余りにも劣化していて使い物にならなかったようだ。
 いやコピーは上手く行ったのだろうが、電磁カタパルトを製造するための基礎素材が使い物にならなかったのだろう。中国がいかに最先端技術を盗もうと、基礎技術がなければ最先端技術はモノの役に立たない。たとえばロシアから購入したジェットエンジンを分解して、各部品を子細にコピーしたとしても、ブレードの耐熱性能を出すことまでコピーしなければ出力や使用時間が極めて低くなってしまうだろう。技術を盗んでも全く同性能の製品が造れるわけではない。

 しかし用心するに越したことはない。日本も米国に倣って、全国各地の研究機関や大学から中国人留学生を排除すべきだ。そうしなければ日本の技術や研究成果が盗まれるだけでなく、研究段階で機器や成果が破壊されることすらありうる。
 中国は自らが「戦狼外交」を展開し、中国利対外戦略は「超限戦」だと表明している。明らかに「俺(中国)はお前の敵だぞ」と喚き散らしている。そんな相手を受け容れていては国家と国民が棄損される。現に中国で日本人の子供が殺害されているではないか。

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