2021/1/6の議会乱入事件でトランプ氏は嵌められたのか。
<トランプの主張通りだった
2021年1月6日は、いわゆる米連邦議事堂襲撃事件が起こった日である。1月6日であることから、略称でJ6と記されることも多い。
この日に起こった事件は、主流派マスコミの報道によると、前年11月に行われた大統領選挙でバイデンが勝ったとされる選挙結果に不満をいだいたトランプが、この選挙結果を認証する議会の手続きを阻止するために、支援者を呼び集めて議事堂に突撃させたことになっている。このため、トランプを国家反逆罪に問うべきだという動きまで起こっていた。
これに対してトランプは、自分が支持者たちに連邦議事堂に突入させたなどとんでもない、自分は平和的に愛国的に我々の声を届かせようとしか語っていない、暴力的な行動を煽るような発言自体していないではないか、そもそも自分は当日の混乱を避け、安全に集会が行われるようにするために、州兵などの派遣要請を行っていたのに、これが拒絶されて実行されなかったのだ、自分がそうした目的で支持者たちを議事堂に突撃させたのであれば、そんな派遣要請などするわけがないではないかと主張してきた。
だが、トランプのこうした州兵などの派遣要請を行ったとの主張には根拠がないとして、主流派マスコミにおいてはトランプの発言は完全に無視されてきたのだ。
ところがこのトランプの主張通りだったことが、米下院管理委員会の監督小委員会の調査で明らかになった。
トランプは州兵派遣を要請していた
同小委員会のバリー・ラウダーミルク委員長は、この事件が起こった数日前に、当時のトランプ大統領が多くの人が集まる当日のイベントの安全を確保するために、アメリカ国防総省の高官たちと会った際に、議事堂警察の支援要請を間違いなく行っていたことを明らかにした。
トランプ大統領との会話を回想して、当時の国防総省の制服組トップのマーク・ミリー統合参謀本部議長は、当時のクリス・ミラー国防長官代理に対して、次のような発言を行っていた。
トランプ大統領は「1月6日には多数の抗議者がやってくることになる。安全なイベントとなることを確実にするために、十分な州兵または国防軍の兵士が必ずいるようにしてもらいたい。州兵を使うか国防軍を使うかは気にしないから、やるべきことは何でもして、安全であることを確保してくれ」と話した。
このようなトランプ発言が実際にあったことを、ミリー統合参謀本部議長がミラー国防長官代理に語っている記録が発掘されたのだ。
にもかかわらず、トランプ大統領の要請は、なぜか完全に無視された。これが実際に進行した話である。
国防総省は州兵出動を制限した
さらに不思議なのは、事件があった1月6日の前日の1月5日に、ライアン・マッカーシー陸軍長官が、ワシントンDCの州兵の司令官であるウィリアム・ウォーカー少将に、マッカーシー陸軍長官の許可なく、1月6日と7日に国会議事堂に州兵を動かすことを許さないという、異例の制限を加えていたことだ。
大統領からは州兵派遣の支援要請がありながら、国防総省の幹部はこの要請を無視するどころか、逆に州兵派遣が簡単に行えように厳しい制限を加えるという、大統領の要請と完全に真逆の行動に出ていたということになる。
そして、この厳しい制限が加えられたことで、1月6日に暴徒たちが国会議事堂に侵入を許しながら、その対応が全くできない事態が長引くことになった。
おかしなことはそれだけでなく、その日に州兵が議事堂に到着したのは、午後0時53分に議事堂侵入を許してから、なんと5時間も経った後になってからのことだったのだ。
ワシントンDCの州兵たちは、スマホなどでの情報を通じて、議事堂侵入事件が起こっていて、この事件を沈静化するのに自分たちが必要とされていることを理解していた。だが出動命令がなかなか出されないまま時間がいたずらに経過し、最終的に出動命令が出たのはなんと午後5時8分になってのことだった。
ワシントンDCの州兵のマイケル・ブルックス軍曹は、「州兵たちは議事堂に向かう準備はできていたが、なぜ出動命令が出ないのか、理解できなかった。自分たちが最善を尽くしたいと思いながら、バスに乗って座ったまま、バスが議事堂に向かうのを待っていたのだ」と語っている。
なお、午後3時04分、ミラー国防長官代理はマッカーシー陸軍長官にワシントンDCの州兵たちの即時配備を承認している。
議事堂突入から2時間たって
ここでこの日の時系列を改めて確認しよう。
午後0時53分に暴徒たちが議事堂に突入することを許した。
午後3時04分に、ミラー国防長官代理がマッカーシー陸軍長官にワシントンDCの州兵たちの即時配備を行うことを承認しているが、この段階で暴徒たちが議事堂に突入し始めてから、2時間以上経過している。
ところがこの配備承認を受けても、マッカーシー陸軍長官はなぜかすぐに行動に移すことをしなかった。
さらに配備承認を受けてから、2時間以上経過した午後5時8分になってようやく、マッカーシー陸軍長官は現場の部隊に出動命令を出すという、実に不可思議な動きになっているのだ。
マッカーシー陸軍長官はこの2時間以上の間、いったい何をしていたのだろうか。
なお、米下院管理委員会の監督小委員会のラウダーミルク委員長は、この動きについて、アメリカ国防総省の高官たちは、議事堂警察を援助するために軍隊を議事堂に配置するのは見た目がよくないことを心配し、命を守るということをおろそかにしたのだと、語っている。
だが、本当にそんな軍隊を出動させるという見た目の悪さを気にして動かさなかっただけなのだろうか。
議事堂の中に暴徒が侵入している、アメリカの民主主義を破壊するための行動が進行しているとの認識があるなら、そんな見た目なんて気にしていられない事態だと、当然思っていたはずで、悠長な行動などとれなかっただろう。
さらにワシントンDC州兵の副司令官であるアーロン・ディーンが衝撃的なことを語っている。州兵の司令官であるウィリアム・ウォーカー少将が、午後2時30分から5時の間にマッカーシー陸軍長官に3回電話をかけたが、すべて留守番電話に変わってしまい、連絡が取れなかったと話しているというのだ。
ウォーカー少将が事態の展開に危機感を感じて、州兵派遣を止めているマッカーシー陸軍長官に、州兵派遣を認めさせようとして電話をしているのに、なぜかマッカーシー陸軍長官はその電話に出ないということが続いていたのだ。
マッカーシー陸軍長官は、ミラー国防長官代行から、州兵派遣の承認を受けているのだから、議事堂の緊急事態を理解していたはずだ。だが、自ら州兵を動かす現場の指揮官に部隊の出動を命じなかったばかりか、現場の指揮官からの問い合わせの電話にも出ないという、全く理解しがたい行動に出ていたのだ。
なぜこれほどまでにマッカーシー陸軍長官はのんびりしていたのだろうか。
この連邦議事堂襲撃事件については、反トランプ派がトランプを陥れるために仕組んだものだという有力な仮説がある。すなわち、トランプ側が議事堂前の広場に集まることを知った反トランプ側が、議事堂の窓などを割って入るような、派手な暴力的な動きを行い、議事堂前に集まってきた人たちを議事堂へと手招きして誘導し、大量のトランプ支持者が議事堂の中に誘導されたのではないかというものだ。これにより、トランプ支持者が議事堂を打ち壊して議事堂の中に押しかけ、力ずくで選挙結果を変えようとする暴力事件を引き起こしたのだというストーリーにしてしまう企みが行われたのではないかというものだ。
この話を人々に信じ込ませれば、トランプを民主主義の敵だとすることができ、大統領選挙に関わる大規模な不正が行われたとするトランプ側の主張も吹っ飛ばせることになるではないか。
このような話は荒唐無稽な陰謀論に聞こえるだろうが、このように理解しないと辻褄が合わないことが様々にわかっている。
そもそも議事堂内の監視カメラ映像が初めて明るみに出たのが、2022年秋の中間選挙が終わって、共和党が下院の多数派になってからのことだ。
トランプ支持者が暴力的に議事堂内に押し入り、大統領選挙結果を力ずくで阻止するための集団行動を取ったというのが事実であるならば、事件直後に監視カメラ映像が公開されてしかるべきではなかったか。誰の目にも明らかな襲撃の様子をビデオ映像で確認できるなら、証拠として最も有力なのは、こうした映像である。
だが、民主党が下院を抑えている間は、この映像が表に出てくることすらなかったのだ。そして公開されたビデオ映像を見ても、トランプ支持者たちが暴力的に議事堂内で暴れている様子はまるでなかった。
奇抜な格好をし、「Qアノン・シャーマン」とも呼ばれたジェイコブ・チャンスリーは、議事堂警察の誘導に従って、議事堂内をあちこち案内されていた。議事堂警察の警察官たちは、チャンスリーを捕らえようともしていなかった。
他のトランプ支持者たちも、議事堂警察の誘導に従って議事堂内を観光して見て回っていたにすぎないことが、動画の公開で明らかになった。
トランプ側が議事堂襲撃を起こしたというのは、とんだ濡れ衣ではないのか。
むしろトランプを嵌めようとする勢力が計画的に引き起こしたのが、いわゆる連邦議事堂襲撃事件の真相だったのではないか。
アメリカの中で未だにトランプが大きな支持を集めていることが理解できない人は多いだろうが、アメリカ国民の中にこの構図に気がつく人が増えてきたからだと考えれば、辻褄が合ってくるだろう。
主流派メディアがこぞってトランプ叩きに狂奔する中で、そんな主流派メディアの報道をもはや信用しない層が分厚くなってきたのが、今のアメリカだと理解すべきである>(以上「現代ビジネス」より引用)
「トランプはハメられたのか…下院委員会調査で新たに判明!「米議事堂襲撃事件」で握りつぶされていた「大統領の州兵派遣要請」」と朝香豊(経済評論家)氏は未だに2021/1/6のことに言及している。しかし、それも必要かも知れない。米国には平気でバレバレの陰謀を仕掛ける者たちがいるからだ。
明らかにトランプ氏は嵌められた。そのことは2021/1/6を時系列に振り返れば一目瞭然だ。トランプ氏がホワイトハウス前で支持者に演説した3分後に議事堂に暴徒が乱入していることは監視カメラのビデオによって証明されている。しかもその時に常時いたはずの議事堂警備の警察官の姿は一人もない、という摩訶不思議な事態が起きている。