高市総裁で自民党は劇的に変わる。

進次郎氏早くも失速で、自民党総裁選劇場のシナリオに狂い
 自民党総裁選で、大本命とみられた小泉進次郎氏の勢いが失速しているようだ。もしかして、高市早苗氏または石破茂氏が総理・総裁の座に就く可能性もあるのだろうか。
 そうなると、“刷新感”の衣を纏った進次郎劇場を総選挙に向けて繰り広げ、国民を幻惑しようとする自民党裏選対のシナリオは崩れてしまい、逆に地味な代表選を続ける立憲民主党にとっては、一筋の光明となる可能性がある。
 16日の読売新聞オンラインに、党員・党友への電話調査(14、15日)と、国会議員に投票先を取材した結果が掲載されている。
 それによると、党員・党友の投票先は、石破氏が26%、高市氏が25%、小泉氏が16%で、他の候補者に圧倒的な差をつけている。これを票として試算すると、石破氏が97票、高市氏が94票、小泉氏が60票になるという。
 また、誰に投票するかを党所属国会議員の96%に当たる352人から聞き取りしたところ、小泉進次郎氏(45人)、小林鷹之氏(40人)、林芳正氏(35人)、茂木敏充氏(33人)、高市早苗氏(29人)、石破茂氏(26人)、河野太郎氏(24人)、上川陽子氏(23人)、加藤勝信氏(21人)の順になった。もっとも、「未定」と「未回答」の91人がどうするのかは、わからない。“勝ち馬”を見定めたいということだろうか。

「石破氏vs高市氏」の決選投票になる可能性
 今回の総裁選は9人もが乱立しているため、票が分散し、国会議員367票、党員・党友367票による1回目の投票で過半数を獲得する候補者はいないとみられている。注目のマトは、決選投票にのぞめる上位2人が誰になるかだ。
 そこで、この読売調査で判明した党員票と議員票を足してみると、高市、石破両氏が123票で並び、小泉氏が105票となった。実に意外な結果である。
 読売だけではない。日本経済新聞社とテレビ東京の世論調査(13~15日)でも、自民党支持層に限れば、トップの石破氏が25%、2位の高市氏が22%。小泉氏は21%で、前回のトップから3位に転落した。
 石破氏への支持はもともと高かったので不思議はない。特筆すべきは、ついこの間まで小泉氏や石破氏の後塵を拝していた高市氏の急伸だ。もともとネット上では、安倍元首相の後継者として人気があったが、ここへきて岩盤保守層の界隈では、高市総裁を待望する声が澎湃(ほうはい)として湧き上がっている。
 これまで小泉進次郎氏が強いと見られていたのは、総裁選に出馬する意思を示したとたん、世論調査で石破氏と肩を並べるほど人気がハネ上がったことと、党の刷新をアピールする広告塔としての期待感が、衆院選をひかえた議員たちの間で高いからだ。
 石破氏はメディアのインタビューに応じて政権に批判的な発言をすることが多いためか、国会議員間の評判はよくない。かりに党員・党友票でまさっても、議員票では劣勢とみられている。このため、全体としては小泉氏が1位で、2位に石破氏か高市氏という見方が強かった。それは今でも変っていないのではないかと筆者は個人的に思う。
 だが、読売や日経の調査を素直に受け取るなら、上位2人から小泉氏がはじき出される可能性がなくはない、ということになる。かりに石破、高市両氏による決選投票になれば、議員票の比率が高いため、高市勝利も十分考えられるのだ。

人気急落、小泉進次郎氏の大誤算とは?
 それにしてもどうして、小泉人気が急落したのだろうか。9月14日の夕刊フジは、12日の日テレの調査などで高市氏の評価が上昇していると指摘したうえ、小泉失速の原因について、二人の識者のコメントを掲載した。
「告示(12日)前に行った出馬会見で差が出たのではないか。高市氏は自分の言葉で力強く語っていた一方、小泉氏は用意された原稿をうまく読むだけで演出に失敗したようにみえた」(政治ジャーナリスト、安積明子氏)
「高市氏と石破氏は強気に見える一方、小泉氏は根っこがないように感じる」(経済ジャーナリスト、荻原博子氏)
 各候補者の出馬会見を見た後、人々の小泉氏に対して抱く印象が以前とは変ってきたのだろうか。政策面をみると、「解雇規制の見直し」を打ち出していることがマイナスに響いているかもしれない。
「新卒入社した企業で定年まで働く終身雇用は通用しなくなっている。賃金が上がらない理由も、優秀な人材が成長分野に流れていかないことにある。日本経済のダイナミズムを取り戻すために不可欠な労働市場改革の本丸である解雇規制の見直しに挑みたい」(小泉氏出馬会見より)
 大企業に眠る人材が、スタートアップや中小企業に流れやすくする仕組みをつくるために、解雇がしにくい今の規制を見直すというのである。解雇を検討するさい、働く人のリスキリング・学び直しとその間の生活・再就職支援を義務付けるのが改革の主眼だと小泉氏は言うが、世間の納得を得るのは、なかなか難しい。
 不要な社員を整理し国際競争力をつけるための規制緩和を求める経済界のニーズにそったもの、あるいは、首切りをしやすくするための政策手段と言われても仕方がないだろう。

TV討論で進次郎氏を圧倒した高市氏
 その点を小泉氏の弱みとみた高市氏は12日のテレビ討論(フジテレビ系)で小泉氏を指名し、次のように質問した。
「労働市場の流動化のご主張ですが、OECDの指標をみると、イタリア、フランス、ドイツの方がかなり解雇しにくい。G7では日本は4番目で、どちらかというと解雇しやすい国になっている」「労働市場の自由化をしたら、より生産性が高く賃金が高いところにいけず、失業してしまう可能性はないですか」
 小泉氏は「解雇の自由化なんてまったく考えていません。大企業にセーフティーネットとしてリスキリング(職業能力の再開発)や再就職支援の義務づけをやっていきたい」と、主張した。
 高市氏は、日本はすでに解雇しやすい国なのだから、規制を見直す必要はないと言っているようなのだが、進次郎氏はそれには反論せず、企業に再就職支援の義務づけをするのだと、出馬表明用に作成した文言の一部を繰り返すだけ。かみ合わない議論の仕方はいつも通りだ。
 他の候補者に比べ、進次郎氏の能力はお世辞にも高いとは言い難い。それでもなお、進次郎氏の人気をアテにしなければならないのが、今の自民党のつらいところだ。

だが高市氏で自民は衆院選に勝てるのか?
 それにしても、かりに高市氏が自民党の総裁になり、首相の座につくとして、衆院選で党の再生を堂々とアピールできるのだろうか。
 高市氏の推薦人の顔ぶれを見てみよう。20人のうち、安倍派が14人を占め、その中には派閥からパーティー券売り上げの裏金キックバックを受けた議員が12人もいるのだ。
 今年2月2日の東京新聞に掲載された「還流額の一覧」をもとに、高市氏の推薦人となった安倍派議員14人の裏金金額を記入してみた。
 杉田水脈(872万)、鈴木淳司(52万)、関芳弘(524万)、高鳥修一(484万)、谷川とむ(134万)、赤池誠章(98万)、衛藤晟一(0)、古庄玄知(0)、佐藤啓(236万)、西田昌司(234万)、堀井巌(466万)、山田宏(282万)、三ツ林裕巳(1808万)、若林健太(184万)=敬称略
 これでは、裏金問題の真相解明や、責任のさらなる追及、政治資金問題の根本的解決に後ろ向きになるのもうなずける。高市氏は政治資金を党幹部の好き勝手にさせないで公平に配分するべきだと主張するが、小泉氏が政策活動費の廃止、旧文通費の使途公開を主張しているのと比べて具体性に欠ける。

高市氏が“自民の顔”になるなら野党に勝機あり
 高市氏が自民党の総選挙の“顔”になるとしたら、野党としてはどうだろうか。攻めやすくなるのは間違いない。進次郎氏は政治的な能力こそ全くの未知数だが、刷新イメージはなんとなく漂っていて、その茫漠感が野党にとって最大の脅威だった。高市氏だと若さや鮮度は薄れ、野党は、裏金にまみれた安倍派の傀儡として徹底的に攻撃を仕掛けるだろう。
 もっとも、そんなことは自民党国会議員なら先刻承知のはず。最終的には自分の選挙に有利な総裁を選ぶことになるのだろうが、現時点では、進次郎氏の危うさの方が目について仕方がないようだ。
 自民党裏選対の「総裁選ショー」プロデューサーが、古い政治に倦んだ人心を背景に、候補者個々人の資質などを無視してシナリオを構想していたうちは、イメージ先行の小泉旋風が巻き起こりそうな幻想に自民党関係の誰もが浸っていられた。だが、候補者討論などコップの中の争いになってからは、政策通のベテランの知識量やディベート能力に心が奪われ、鑑識眼が定まらなくなっているのではないだろうか。
 おりから、朝日新聞が17日の朝刊1面、2面の大半を割いて、特ダネ写真と記事を掲載した。13年6月の参院選公示の4日前、自民党本部総裁室で、当時の安倍晋三首相が、統一教会の徳野英治会長や関連団体のトップらと面談している写真3枚だ。自民党の参院比例候補を教団が支援することに関する会談だったとみられている。
 自民党は「教団との組織的な関係はない」と言い張るが、参院選直前のタイミングといい、安倍首相による総裁室での丁重な応対ぶりといい、特別な間柄であったことは否定のしようがない。特定の宗教団体に集票を頼んで、かわりに“特権”を与えてきた証拠写真ともいえるものであり、総裁選の候補者はそれをどう受けとめるか、再調査についてどう考えるかを明らかにしなければならない。
 ともあれ、新総裁に誰がなろうと、長期政権がつくりあげた自民党の腐敗体質は変りそうにない。見せかけの派閥解消ではなく、いったん解党して出直すのが本来あるべき姿だろうが、そんな声がつゆほども上がらないのもまた、自民党なのである>(以上「MG2」より引用)




 立憲党は新恭(あらたきょう、評論家)氏が彼女が党代表になったら政権交替も夢ではない、と推奨した吉田はるみ氏が負けて、「昔の名前」の野田佳彦氏が古い新代表になった。それで政権交代の「芽」は消えたかと思ったが、「小泉進次郎が急失速!それでも自民党が「高市早苗総理総裁」を躊躇するウラ事情とは?口だけ男の“刷新感”消滅なら立憲に勝機も」と題する論評を掲載した。
 確かに高市氏には「刷新感」はない。新氏が指摘するように彼女の推薦人には安倍派の「裏金」塗れの連中が多く名を連ねている。立憲党はその弱点を突けば政権交替も不可能ではないかも知れないが、しかし高市氏は野田氏のような「出たとこ勝負」をするほど愚かだろうか。

 なぜなら衆議院任期はまだ一年有余ある。来年の参議院選に衆議院選を合わせる同時選挙を考えれば一年弱あり、その間に決算委員会や予算委員会といった論戦の場は何度かある。
 そうすると高市氏が唱える「経済成長」「積極財政」策と、野田氏が唱える「消費税10%堅持」と「緊縮財政」とが論戦を闘わせれば、どっちが革新でどっちが保守か分からなくなるだろう。確かに対中策や防衛では高市氏はタカ派だが、昨今の中国民の日本人殺傷事件で国民世論は概ね反中派、防衛力強化に傾いている。つまり経済でも防衛でも野田氏の方が分が悪い。

 さらに米国民主党が左派活動家に乗っ取られて「不法移民」やLGBTなどによって社会の分断と治安の悪化を招いているが、日本でもその真似をする左派活動家や大袈裟な人権活動家に毒された民主党議員たちによる「選択的別姓」といった旧姓使用に関する緩和策を講じるだけで済む話を、戸籍の廃止にまで踏み込む社会制度の破壊にまで及ぶかのような議論を展開している。それでは国民多数の賛同を得ることは出来ない。つまり立憲党が政権交替を果たすことは不可能だ。
 なぜ立憲党は「働く者の」党にならないのだろうか。働く者が報われる社会を目指せば良いだけなのに、下らない社会分断騒ぎを演じるのだろうか。なぜ正社員だけの、しかも組織化率16%ほどしかない連合に顔色を窺う政党に成り下がったのだろうか。立憲党はすべての労働者の「権利」を代弁し、すべての働く労働者の「意見」を代弁する政党でなければならない。そうした固い決意を持った政党にならない限り、政権交替など夢のまた夢だ。

 だから野田氏が党代表では立憲党が政権に就くことなどあり得ない。なぜなら消費税10%を安倍氏に提起したのは他ならぬ野田氏だからだ。こんなバカげた「働く者」の政党などあり得ない。
 それに対して高市氏は消費税減税に言及していないものの、デフレギャップを埋めなければ経済成長できない、という経済学の基礎は弁えているようで、総理大臣になれば消費税の思い切った減税や廃止に踏み切ることもありうるのではないか。彼女がyou tubeで三橋貴明氏や藤井聡氏たちとの鼎談で繰り返し経済成長の重要性を述べていたことからも、そうした政策展開の可能性さえ窺える。新氏は高市氏には「裏金議員」が多くいると指摘しているが、議会には一事不再議の原則がある。高市氏がその原則を盾に取れば再び国会で高市氏を「裏金」で追及することは出来ない。

 高市氏の積極財政発言に対して、野田氏は相変わらず「ザイム真理教」の信徒のままだ。実に愚かと云うしかない。しかも幹事長に据えたのが小川氏だ。彼はかつて「朝まで生テレビ」に出演した際に「SDGsの社会で経済成長は必要なのか」と馬鹿げて見解を披歴して、出演者一同の顰蹙を買っていた。小川氏は「経済成長しない=失われた30年」という図式すら理解してないようだ。その程度の見識を持つ御仁を幹事長に登用する野田氏の経済音痴には慨嘆するしかない。
 社会の分断と破滅を策す活動家の合言葉SDGsを政治家が口にするとは驚くが、立憲党にはそうした活動家の影響を強く受けた政治家が多数いるとすれば政権交替などしない方がマシだ。国民が求める政治課題は「選択的別姓」や「マイナンバーカードへの紐付け」ではない。いかにして「失われた30年」から脱却して、国民が貧困から抜け出せるのか、の道筋を明示する政治だ。活動家モドキのスローガンを口にする立憲党の国会議員からは無能・無策すら連想する。国民が政治に求める最大のものは憲法改正でもなければ女性天皇でもない。ましてやLGBTq推進法でもない。国民をいかにして貧困から脱却させるのか、という処方箋を提示し、それの実行に向かって力強く最大の抵抗勢力「ザイム真理教」を排除するかを見守っている。

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