原油の需給関係が逆転して、中東の火種が消えるかも知れない。

原油価格は60ドル台に
◎主要消費国で景気の先行きへの警戒感が高まっているうえに、懸念されていたリビア情勢が国連の仲介により沈静化したほか、カナダ産原油の輸出拡大が見込まれている。
◎ハマスとイスラエルの停戦交渉の行方など地政学リスクには市場はあまり反応しなくなっており、価格下落圧力は今後も強まりそうだ。

 米WTI原油先物価格(原油価格)は今週半ばから1バレル=70ドル割れで取引されている。一時、68ドル後半に下落し、昨年12月以来約9カ月ぶりの安値を付けた。供給途絶の懸念が後退する中、主要消費国の景気の先行きへの警戒感が高まっている。
 まず、いつものように世界の原油市場の需給を巡る動きを確認しておきたい。
 ブルームバーグによれば、石油輸出国機構(OPEC)の8月の原油生産量は前月比7万バレル減の日量2706万バレルだった。リビアの生産量が前月に比べて日量15万バレル減ったことが主な要因だ。クウェートやナイジェリアの生産増やイラクの生産枠の超過状態を打ち消した形だ。
 市場の関心を集めていたリビア情勢について劇的な変化が見られた。
 中央銀行総裁を巡る東西両勢力の対立のせいで「リビアの原油生産量は日量100万バレル(世界の供給量の1%に相当)減少する」と懸念されていたが、3日に行われた国連の仲介により「新たな中銀総裁を30日以内に選出する」との合意が得られ、事態が沈静化した。これを受けて「リビアからタンカーによる輸出再開の動きがある」との観測も広がり、原油価格は急落した。
 OPECの価格下支えの取り組みに水を差す存在も出現している。米国、サウジアラビア、ロシアに次ぐ世界第4位の産油国となったカナダのことだ。
カナダ産原油の輸出拡大、9月以降日本にも
 カナダの昨年の原油生産量は日量565万バレル、10年前に比べて41%増加していたが、国際市場での存在感は薄いままだった。
 だが、北米西海岸につながるパイプラインの輸送能力が拡張されたことで状況は一変した。カナダには北米地域の製油所の集積地であるメキシコ湾岸に向けたパイプラインが敷設されていたが、輸送能力が実際の生産量を下回る状況が続いていた。
 長年、ボトルネックを抱えていたカナダだったが、政府系企業「トランス・マウンテン」が今年5月に西部アルバータ州から北米西海岸に原油を輸送するパイプラインを拡張したことで輸送能力は従来の日量30万バレルから同89万バレルと約3倍となった。
 これにより、太平洋を経由したアジア地域向けの原油輸出が増えることが予想されており、日本にも9月以降の輸出が見込まれている。
 国際エネルギー機関(IEA)によれば、カナダの2030年の原油生産量は日量651万バレルと昨年に比べて12%増加する見通しだ。
 カナダ産原油の性質は中東産原油と近く、アジア地域で競合が起きれば、原油価格の下落圧力になるというわけだ。
 一方、需要サイドの懸念は高まるばかりだ。

影響力を失った地政学リスク
 世界最大の原油需要国である米国では2日のレーバーデーの祝日が過ぎてドライブシーズンが終了し、ガソリン需要が落ち込む季節に入った。3日に発表された8月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数は47.2と市場予想(47.9)に届かなかった。雇用市場の軟調さも暗い影を投げかけている。
 ゴールドマン・サックスは3日、「人工知能(AI)が今後10年、物流の改善がもたらすコスト削減などを通じて原油価格を圧迫する可能性がある」との見方を示している。
 世界最大の原油輸入国である中国も不動産バブルの崩壊で景気が悪化しており、原油需要の下振れ予想が確実視されている。8月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が49.1と4カ月連続で好不況の境目である50を下回ったことも「売り」を誘った。中国で原油在庫が急増していることも問題視されている*1。
*1:中国で爆発的に膨らむ商品在庫、景気不振の深刻さ表す(9月2日付ブルームバーグ)

1年近く原油市場を支えてきた地政学リスクも影響力を失った感が強い。
 イスラエルとハマスの停戦交渉に市場が反応しなくなったと言っても過言ではない。
 イランのイスラエルへの報復も腰砕けに終わったようだ。むしろ融和路線の兆しが出ている。イランの最高指導者ハメネイ師は8月27日、改革路線を掲げるペゼシュキアン大統領らとの会合で「(宿敵米国との)交渉に障壁はない」と発言した。2015年の核合意を彷彿とさせる発言を踏まえ、「イランは長年の強硬路線から外交努力に切り替えるサインだ」と受け止められている。
 ウクライナ軍によるロシアの石油関連施設に対するドローン攻撃が続き、イエメンの親イラン武装組織フーシ派による石油タンカーへの攻撃も相次いでいる。だが、これらの事案が市場を動かす力はもはやないようだ。
 このような展開はOPECプラス(OPECとロシアなどの大産油国で構成)にとって逆風だ。サウジアラビアなど有志8カ国が実施している日量220万バレルの自主減産を10月から徐々に縮小する方針を8月末まで堅持していたが、9月4日付ロイターは「OPECプラスは10月以降に計画していた原油の減産幅縮小の延期を協議している」と報じた。
 だが、自主減産の延長では原油価格の下落傾向を止めることはできないのではないだろうか。
 米シティは4日、「OPECプラスが減産を拡大しない場合、来年の原油価格(平均)は1バレル=60ドルまで下落する可能性がある」との見通しを示した。
 原油消費国である日本にとっては望ましいことだが、原油価格の急落は中東産油国の財政を悪化させ、政情不安を招くリスクをはらんでいる。原油輸入の中東依存度が世界で最も高い日本にとって「先楽後憂」の結果とならないことを祈るばかりだ>(以上「JB press」より引用)




 日本では170円台の高値に張り付いたガソリン価格が一向に下がらない。円安も一服したし、一時120ドル以上に高騰していた原油価格も今では半値近くに下がったが、それでもガソリン価格や電気料金は引き上げられたままだ。
 「原油価格70ドル割れ」「もはや市場は地政学リスクに無反応、世界4位カナダ産原油の輸出拡大が価格下落圧力に」と藤和彦(経済産業研究所コンサルティング)氏が経済評を掲載しても、ガソリン価格は下がりそうにない。それを多分「石油業界の寡占による談合体質」と呼ぶのだろうが、そうした体質に公取の調査が入りそうにないのも、日本の悪しき談合体質の成れの果てだろうか。

 世界の趨勢はCO2地球温暖化詐欺がバレて、再びEVから内燃機関へ自動車動力は回帰しているが、それで爆発的に原油需要が増えることはない。なぜなら世界で一位と二位の原油消費国たる米国と中国の原油需要がそれほど見込めないからだ。
 まず米国はトランプ氏だけでなくハリス氏まで自国のシェールオイル開発に乗り出そうとしている。再び米国は原油輸出国になるだろう。そして中国は経済崩壊から原油需要が減少することはあっても増加することはない。そしてロシア原油はプーチンの戦争がどうなろうと、戦費か戦後賠償資金のために増産せざるを得ない。つまり中東原油が減産しようと、国際的な原油需給が緊迫することはない。

 そうするとイランの「開戦するぞ=原油減産するぞ」という国際社会に対する脅しは利かなくなる。いかに拳を振り上げても「どうぞ」ということになり、イスラエルをミサイル攻撃したなら、報復として米国製のトマホークがテヘランに撃ち込まれるだけだ。そうすると国民のハメネイ師の独裁体制に疑念を抱き、イスラム教を隠れ蓑にした独裁体制が崩壊しないとも限らない。
 異教徒の国イスラエル(=ユダヤ教徒)とイスラム教徒との対立を梃子にした独裁政権を維持するために「戦争の緊張感」は必要だが、直接イラン国民を戦乱に巻き込む戦争は不要だ。つまりハマスやヒズボラなどのテロ集団がペルシャ湾を隔てた遠くでドンパチするのは好ましいが、イランを戦場にしては元も子もなくなる。だから私はイランがイスラエルをミサイル攻撃することはあり得ないと「予言」していた。

 イランがハマスやヒズボラを支援して来た原資は云うまでもなくオイルマネーだ。そのオイルマネーが原油価格の低迷で減少したなら、支援を続けることは出来なくなる。戦争を継続するには潤沢な戦費が必要だ。テロ集団の破落戸たちを養うだけでも膨大な資金提供が必要だろう。
 しかしイランから送金する資金が枯渇したなら、今度は彼らが資金提供を求めてテヘランで自爆テロを敢行しないとも限らない。テロ集団はもとより無法者の集まりだ。道義や正義などといった観念は皆無だ。いかにして楽して儲けるか、が彼らの価値観のすべてだ。

 藤氏は「原油価格の急落は中東産油国の財政を悪化させ、政情不安を招くリスクをはらんでいる。原油輸入の中東依存度が世界で最も高い日本にとって「先楽後憂」の結果とならないことを祈るばかりだ」と結論付けているが、産油国以外の国はオイルマネーなしで国家財政を運営している。もちろん日本も潤沢なオイルマネーなどなしで有色人種の国にして先進国となり経済大国になった。
 イランやサウジアラビアなど、独裁体制でオイルマネーを独占してきた支配体制が揺らぎ、国民が「国民国家」を希求し始める契機になるだろう。早晩、中東諸国の国民は「なぜ自分たちは産油国の果実をなぜ手にしていないのだろうか?」との疑問を抱くだろう。それを政情不安と呼ぶのか、それとも独裁体制の終焉と呼ぶのか、藤氏と私の観点の相違があるだけだ。いずれにせよ、膨大なオイルマネーを好き放題にして来た独裁体制が瓦解するのは国民の自由と人権拡大には歓迎すべきことではないだろうか。世界はそうした方向へと、既に動き出している。

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