柳井氏の「少数精鋭で仕事するということを覚えないと日本人は滅びる」は必ずしも真ではない。

<ユニクロを展開するファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が「少数精鋭で仕事するということを覚えないと日本人は滅びるんじゃないですか」と発言したことが話題だ。労働力が減るなかで生産性を上げていくには、管理職や研究開発を担えるような移民などの受け入れが必要だとしている。
 楽天グループの三木谷浩史会長兼社長は、日本以外の国のベンチャーやIT企業などの従業員は猛烈に働いているとし、健康管理の枠組みの整備を前提に、時間外労働の上限を原則月45時間などとする現行の労働規制の見直しを求めている。
 一方、ZOZO創業者の前澤友作氏は「日本人らしさを生かして連帯していくべきだ」と主張している。
 これらの意見の違いは、企業経営のやり方の違いだと受け取ることができる。外国人を雇用したい、時間を長く働かせたい、日本人でやりたい―という経営者のやり方や好みの違いであり、それらは企業を取り巻く環境に依存するので、一律的な正解はないだろう。

 そもそも経営者の発言が及ぶ範囲は、自分の企業や、せいぜい業界までで、ミクロ経済の話だ。一方、日本全体というとマクロ経済の視点が重要になる。ミクロとマクロはしばしば混同しがちになるので注意が必要だ。
 マクロの観点から、バブル崩壊後の日本経済の低調は
①過度に引き締めた金融政策
②緊縮財政による過小な政府投資
―という2つの要因によるものだと答えは出ている。①は過小な民間投資にもつながり、その結果、生産性が低くなった。
 ミクロの観点からはこうした因果が分からず、生産性低下から議論するから、マクロの答えにならない。
 たしかに、安価な外国人労働力を使えば企業の生産性は増すだろうが、国全体としてみると一方で雇用が失われ、国としての生産性は向上しない。なお、労働時間を増やせば、企業としての生産性も低下するだろう。
 日本にもマクロ経済の学者はいるが、①と②を主張すると、日銀と財務省批判になるから黙っている。しかし、①は外部からでも分かりやすいので、ベン・バーナンキ氏、ポール・クルーグマン氏、ジョセフ・E・スティグリッツ氏らのノーベル経済賞学者から、かなり批判されてきた。
 マスコミも元々マクロとミクロを識別できず、具体的な事例から記事を書こうとするから、マクロの日本経済全体についてはまともな論評にならないことが多い。
 要するに、経営者にマクロの問題を聞いても解決策は出てこない。いろいろな意見があることで、いたずらに問題を複雑にしているだけだ。
 政府(財務省)と日銀にも、こうした状況は好都合だ。これまでの失政を暴かれずに済むからだ。
 経営者の発言について、マスコミに聞かれると、筆者はこのように答えている。しかし、筆者のコメント原稿は没にされることが多いのではないだろうか>(以上「夕刊フジ」より引用)




ユニクロ柳井氏の「日本人滅びる」発言 混同に注意、企業経営者の「ミクロ」の視点で「マクロ」経済の答えは出てこない」と題して高橋洋一(元内閣参事官・嘉悦大教授)氏が論述しているが、極めて当たり前の話だ。それこそ高橋氏が国家レベルの経済観で一企業を経営している経営者を批判するのも間違っている。
 なぜなら経営者は経営している企業利益だけを追求してきただけだからだ。彼らは国際経済も経済原理も何も解らなくても問題ない。むしろ余計な知識など不要で、儲け第一主義で猛烈に突っ走った方が成功する例が多いからだ。

 柳井氏が「少数精鋭で仕事するということを覚えないと日本人は滅びるんじゃないですか」と発言したのは企業経営者として「少数精鋭企業でありたい」との願望を述べたに過ぎないのではないか。そうしなければ「日本は滅びる」とは云い過ぎだが、少なくとも経済成長するためには生産性を向上させなければならない。
 柳井氏が携わっている業界はアパレル産業で、最終的には服を消費者に売ることだ。販売業で究極の省力化を図るにはネット販売に行き着くしかないだろう。しかし柳井氏はネット販売よりも店舗販売を優先して世界中に店舗展開している。だからこそ、膨大な社員を抱えていては人件費で経営が圧迫されるため、少数精鋭でなければならないのだろう。しかし、それは柳井氏の企業経営に限っての話であって、日本が滅びる、ということにはならない。

 高橋洋一氏は日本のバブル崩壊後の不良債権・債務処理を担当した官僚として有名だ。しかし彼の実績はバブル処理までで、その後の「構造改革」により日本を「失われた30年」に導いた金融政策「過度に引き締めた金融政策」と「緊縮財政による過小な政府投資」には関係していない。それらを実施したのは消費増税と金融引き締めを断行した財務官僚と無能な自民党政権だ。
 ただ「構造改革」を主導した竹中氏たちグローバリストは「国際分業論」を盾に取って日本企業の海外(主として中国)への移転を奨励した。それにより廉価な労働力を手にした「国際企業」は莫大な利益を手にすると同時に、中国の経済成長にも寄与した。柳井氏のファーストリテイリングもそうした「国際分業」によって荒稼ぎした企業の一つだ。

 しかし路店経営が繁栄を極めたのは過去のものになりつつある。それはネットショッピングが激しく拡大しているからだ。ことに店舗立地条件の悪い地方ほどネットショッピングの浸透が凄まじい。そのため宅配業者が悲鳴を上げてトラック運転手の手配が出来なくなっている。
 柳井氏が経営する衣料業界は「試着」という参入障壁によってネットショッピングの参入から護られているものの、少しづつシェアを奪われている。やがてネットショッピング業界が現行の曖昧な衣料サイズではなく、もっと緻密で明確なサイズ・モデルが完成すれば、ネットショッピングの劇的な参入が起きるだろう。路店経営の大規模衣料企業が姿を消すのも時間の問題ではないだろうか。

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