46―46を成し遂げた大谷は意外な効果を米国にもたらしている。

＜ドジャースの大谷翔平投手（30）は8日（日本時間9日）、本拠でのガーディアンズ戦に「1番・DH」で先発出場。第2打席で安打を放ち、2022年に記録した年間160安打を更新する今季161安打目をマークした。第3打席では2戦ぶりの一発となる今季46号を放ち、2021年にマークした自己最多本塁打に並んだ。 

　1―0の5回1死走者なしで迎えた第3打席で大谷が特大の一発を放った。右腕バイビーの甘く入ったチェンジアップを捉えると手応えは十分。あとは右翼ポール際の内側か外側かだけの当たりだった。打球速度は116.7マイル（約187.8キロ）、角度は34度。飛距離は450フィート（約137.1メートル）で右翼後方に設置されたブルックリン・ドジャース時代の1955年のワールドシリーズ初制覇を記念する看板に直撃する特大弾だった。大谷は本塁打を確信してダイヤモンドを一周。場内の大型スクリーンには46―46の文字が映し出された。審判団によるビデオ判定もあったが、判定は覆ることなく本塁打と判定され、ベンチで大谷がガッツポーズを見せた。これで打点も101打点で自己最多を更新し、リーグトップのブルワーズ・アダメズに並んだ。 

　第1打席は左飛に打ち取られ、3回2死走者なしで迎えた第2打席。大谷は内角を中心に攻められながらフルカウントに持ち込むと、8球目の内角高めスライダーにうまく腕をたたんでやや詰まりながら中前に落とした。これがチーム初安打となった。しかし、次打者ベッツの打席で二盗を試みようとしたのか、右腕バイビーのけん制に戻りきれずにタッチアウトとなった。 

　6日のガーディアンズ戦で45号ソロを放ち、2021年の自己最多100打点に並んでいたが、これで自己最多を更新。シーズン安打数も同日の8回の右前打で2022年に記録した自己最多160安打に並んでいたが、こちらも自己最多を更新した。7日の同戦では4打数無安打で小休止となったが、この日一発で年間52本塁打ペースをキープしている。 

　盗塁は2日のダイヤモンドバックス戦で自己最多タイとなる1試合3盗塁を決めて46まで伸ばしており、こちらも年間52盗塁ペース。前人未踏の50本塁打＆50盗塁へ、この試合も含めて残り20試合で順調に数字を積み上げている。 

　自己最多キャリアハイの47号を放てば、メジャー通算218本塁打となり、アジア出身選手最多の韓国・秋信守（元レンジャーズ）に並ぶ。また、49号を放てば球団タイ記録と今後も記録的アーチの量産が期待される＞(以上「スポニチ」より引用)

「大谷翔平　自己最多タイ46号！打点、安打は自己最多更新　WS初制覇記念ボード直撃の吉兆特大弾」との見出しがスポーツ新聞の一面で踊っている。日本人として誇らしい気分になる。

　大谷氏と云えば野球の記録以外にも数々の面で米国人を驚かしている。たとえば球場や打席のゴミを拾ってポケットに入れているのも米国人を驚かせている。米国人はゴミ拾いは清掃員の仕事だから、メジャーリーガーがやるようなことではない、と思っている。

　他にもデッドボールを当てた投手に対して「大丈夫だから、気にしなくていいよ」という仕草をして、米国人を驚かせている。もちろん、大谷氏は打席に入る都度、審判に挨拶しているが、それも米国人を驚からることの一つだ。

　しかし、それらは日本人なら極めて当たり前のことだ。高校生でも野球選手として過ごした大谷氏はそうした野球選手である前に一人前の人としてあることを教えられている。だから球場や打席のゴミを拾うのは当たり前だし、審判をリスペクトするのも当たり前だ。

　ドジャースに移籍する際の契約金が高額だったのも話題になったが、それよりも契約金を現役時代に受け取るよりも、現役を退いてから億受け取るような契約を締結したことに米国人は驚いている。

　もとより、大谷氏は野球選手である限り、野球以外に時間を割きたくないと思っている。だから彼は夜の街へ繰り出すことをしない。野球選手である限り、すべての時間は野球のために費やすべきだ、とストイックなまでに考え実行している。だから多額な契約金を手にしても仕方ないと思っている。それよりも現役を退いてから多額の資金がある方が人生が充実すると考えているのだろう。

　米国人は大谷翔平氏に日本人の生き方や感情表現や行動原理をみている。そして日本人の生き方が米国人のそれとは異なることを知り、米国人に良い影響を与えているようだ。

　米国人は個人主義であると同時にプラグマティズムだ。プラグマティズムとは「功利主義」とも訳されるが、つまり個人にとって価値のあるものが価値のあるものだ、という考えだ。しかし世の中には個人にとって価値あるものでなくても、普遍的に価値あるものは幾らでもある。たとえば他国の存在する歴史遺産など、他国にとっては価値あるものだが異国人には何の価値もない。だが、他国の歴史遺産に対しても価値を認めることが、その人の人たらしめることだと理解するのを見識と呼ぶ。

　米国社会はキリスト教的価値観を失い、混乱と分裂へと向かっている。日本人的発行と行動原理を大谷氏に見ることは、ささやかでも米国社会にとってプラスに働くのではないだろ。それもまた大谷効果と呼べるのではないだろうか。