北京の異変は「本当」か。しかし中国民とっては経済崩壊こそが大問題だ。

ありえない!「習近平」が主語から抜け落ちる
 8月16日、中国の李強首相は国務院全体会議を主宰した。そしてこの会議において、今までに様々な場面で「習近平離れ」の動きを見せてきた李首相は、それこそ旗幟鮮明に「習近平排斥」の姿勢を示したのである。
 この国務院全体会議は、李強が首相に就任してから5回目の主催である。17日の人民日報の公式発表によると、会議には中央政府各部門の責任者が列席した以外に、各省・自治区の責任者もオンライン方式に参加したという。今まで5回の国務院全体会議のうち、各省・自治区の責任者が参加したのは今回が初めてのことだ。この会議が全国規模の大変重要なものであることを示唆している。
 まず、人民日報掲載の会議発表は冒頭からこう述べる。「会議は党の三中総会の精神と中央政治局会議・政治局常務委員会議の精神を深く学び、党中央の精神を持って思想の統一・意思の統一・行動の統一を図るべきことを強調する」と。  
 ここで大いに注目すべきなのは、国務院会議としては、学ぶべきところの「精神」は党の一連の会議の精神であって、思想・意思・行動の「統一」の軸となる精神は「党中央の精神」であること。つまり、肝心の「習近平」と「習近平思想」が完全に抜けて「党」「党中央」が主語となっている。
 現在の中国政治を熟知している人ならば、このような表現を目にしただけでビックリ仰天するのであろう。習近平ワンマン独裁政権下では普通、党と政府の「思想統一・意思統一・行動統一」の軸とされるのはまさに「習近平思想」であある。そして「党中央」のこととなると、「習近平総書記を核心とする党中央」は絶対不可欠な標準的な表現であって、習氏自身の発言以外に、「党中央」から冠としての「習近平総書記」を外すのはありえない話である。
 しかし、李首相主宰の国務院会議はまさにこのような「あり得ない」ことをやってしまった。国務院の学ぶべき「精神」と「思想・意思・行動統一」の軸から「習近平」「習近平思想」を堂々と外して、あまりにも露骨な「習近平排斥」を行ったのである。

習近平ではなく「党中央の方策」に従う
 その一方、発表されたところでは、李首相が会議での発言で一度だけ、習近平のことに触れたことがある。「改革の全面的深化に関する習近平総書記の一連の新思想・新観点・新論断を深く学習し理解し、改革の全面深化に関する党中央の方策を断固として実施していく」と。
 「習近平」に関する李首相のこの発言は実に興味深いものである。彼は一応、習近平の「新思想・新観点・新論断」を「深く学習・理解すべき」と語っているが、しかしその直後に「党中央の方策の実施」を述べたのがミソである。
 つまり彼はここで、習近平の「新思想・新観点・新論断」に関してはそれを「深く学習・理解すべき」と言ったものの、それの「貫徹」や「実施」については何も言わない。国務院として実施していくのは「党中央の方策」なのである。
 要するに彼はここで、「習近平の思想・観点たるものは一度学んで理解したらそれで終わり。実際にやることは別である」と言わんばかり。そして自分が従うのは「党中央の方策」であって「習近平の思想」ではないことを公言しているのである。

「習近平からの離反」の決定的な一歩
 今回の李首相発言がどれほど「異常」なものなのか、彼自身がそれまでに主宰した国務院全体会議の「習近平」に関する表現と比べてみればよく分かる。
 例えば2023年3月、李氏が首相になった第1回会議は習近平のことについてこう述べる。「新しい政府は習近平思想を指針とし、習近平総書記の重要講話を深く学び理解し、それを真剣に貫徹させ実施に移さなければならない」。
 あるいは今年3月開催の李首相主宰4回目全体会議は、「習近平総書記の重要講話は、非常に強い思想性・指導性を持ち、われわれはそれを深く学び貫徹させなければならない」と。
 つまり以前の国務院会議は、習近平の講話などに関し、国務院のそれに対する「実施」「貫徹」が強調されているが、今回の場合、「実施」も「貫徹」も抜けて事実上「棚上げ」されたのである。
 以上は、人民日報発表の李首相主宰国務院会議の注文内容であるが、習近平の子分であるはずの李氏はこれで、「習近平からの離反」の決定的な一歩を踏み出したと言って良い。彼は今後、国務院総理として、党中央の一員として「党中央の精神と方策」に従って仕事していくとの姿勢を明確に示し、もはや習近平一個人の言いなりにならないと宣言したのである。

「北戴河会議」で暗闘?
 どうしてここに来て、李首相はそれほどの思い切った習近平離反をやってしまったのか。一つの推測としてはおそらく、この二週間に開かれたかもしれない恒例の「北戴河会議」に関係している可能性がある。
 「北戴河会議」とは毎年の盛夏の8月に、党中央の指導?者と引退した長老たちが避暑地の北戴河にある党中央専用の「別荘団地」に集まって断続的に開く非公式会議のことだ。
 今年の場合、政治局常務委員の蔡奇が8月3日に北戴河で科学者たちを慰問し、また、習近平・李強を含めた中央指導者たちが8月に入ってから姿を消していたことからすれば、いわゆる「北戴河会議」がこの二週間に実際に開かれた可能性は大。
 そこで様々な政治的暗闘が行われたことの結果、習近平の力が後退して李首相がある程度の主導権を取り戻したのではないかと推測できるが、実際には何か起きたのかについては、今後の観察が必要である>(以上「現代ビジネス」より引用)





 学者でもある石平(評論家)氏が「中国共産党「北戴河会議」で“政治的暗闘”勃発か…李強首相が国務院全体会議でまさかの「習近平思想」排除の衝撃」と題する論評で中国指導部の異変を指摘した。
 昨日ニュースで「パリ・オリンピックで活躍した選手団をねぎらう習近平氏」として、テレビに元気な姿を現した。しかし、だからといって習近平氏の身辺に異変がないと云いきれるだろうか。

 現実に習近平氏関係の書籍が書店から撤去され、人民日報の一面から習近平氏の写真が消えたのは事実のようだ。そして軍事委員会の管理部門の幹部に登用されていた(中将クラス)彭麗媛の名前が消えた。
 おそらく北戴河会議で長老たちから叱責され、習近平氏が何らかの「罰」を受けたことは間違いないだろう。しかし中南海で武力衝突が起きたとする情報は未確認のままだ。一説には習近平氏の近衛兵(2万人規模の軍)と鄧小平氏がかつて近衛兵として創設した38部隊(5万人規模の軍)の一部が中南海西側で衝突し、機関銃を撃ち合い習近平氏の軍が敗れた、という情報は未確認のままだ。

 だが誰が中国の実権を握ろうと、経済崩壊は止まらない。巨額に膨れ上がった不良債権が金融機関を蝕み、既に中国の銀行の90%以上がデフォルト状態だという。だから銀行員の給与が遅配したり、40%以上もカットされたり、昨年のボーナス返還を迫られたりしている。
 それは中央と地方政府も同じで、これまで中国民が羨む高給を食んでいた官僚たち・公務員も遅配や給与カット、さらには昨年のボーナス返還を余儀なくされているという。それでも中央・地方とも公的機関がデフォルトするのは避けられない。なぜなら経済が縮小すれば税収が減少するが、その反対にインフレによって義務的経費の財政支出要請は高まる一方だからだ。

 ここに来て、大きな社会不安が中国を襲っているようだ。それは度重なる各地の洪水により重篤な感染症が中国で大流行の兆しを見せているという。既に新株のコロナウィルスが感染拡大しているようだし、悪魔のような感染症といわれたペストやコレラの伝染も疑われている。
 洪水被災地の汚泥の速やかな除去と、耕作地に流れ込んだ汚泥の除去を急ぐべきだが、流れ込んだ大量の自動車など復興を妨げる大型ゴミが絶望的な光景を見せているという。しかし外国メディアにそうした映像が流れることはない。

 中国の全国各地を襲った洪水は街を汚泥で覆っただけではない。もちろん洪水は工場や企業をも水没させ、中国の製造業にも甚大な影響を与えている。中国は経済崩壊と同時に社会崩壊にも立ち向かわなければならない。
 しかし政府には経済崩壊を止めるべく、デフォルト金融機関を助ける原資すらない。空っぽの国庫から金融機関に公的資金注入をすることは不可能だ。しかし国民から預かった預金を奪い取れば、国民は金融機関を誰も信用しなくなる。しかし「元」の発行を続ければ、「元」の価値が暴落して、凄まじいインフレに見舞われる。それでなくても人民銀行は貸し出しを増やそうと、公定歩合を引き下げたばかりだ。支離滅裂な経済政策をその場凌ぎに打ち出しているが、それでは社会がますます混乱するばかりだ。

 国民の多くが(一説には9億人とも云われる)借金苦に陥っているという。しかし個人破産を申請すれば罰として、海外へ出掛けることも、クレジット・カードを使うことも停止される。それはつまり死の宣告に等しい。
 日本や先進自由主義諸国のように、中国では個人破産が「その個人が再び人間らしく再生するための出発点」になる、という考え方はないようだ。だから「飛ぶ=自殺」人が増加し、橋には飛ぶ者を監視する警官が立っているという。

 生活苦に塗れた人が「飛ぶ」間は社会秩序の崩壊にはならない。だが「すべてを失った国民」が蜂起すれば、政府はたちまち瓦解する。それでも中国民を救うのは中国民でしかない。決して他国でもなければ、外国人でもない。
 もはや中国共産党に当事者能力がないとすれば、中国を中国民の手に戻すしかないだろう。つまり民主化の断行を宣言して、中共政府は経済崩壊の後始末とともに、通貨「元」の崩壊と共に政治権力の場から去るべきだろう。日本が敗戦により「円」を「新円」に切り替えたように、中国もすべてを一新するしかない。中国共産党の責任を問うのは、それからだ。

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