中共政府の不動産バブル対策は見当違いの「too little too late 」だ。

<不動産市場の低迷が3年にわたって続く中国がようやく政策カードを切った。地方政府が売れ残りのマンションを買い取ることを認めるほか、住宅ローン規制の緩和などを柱とする総合的な不動産支援策だ。ただ、世界経済にとっても無視できないリスクになっている不動産不況からの脱却に有効打となるかは不透明だ。

 新華社電によると、中国政府は5月17日に住宅政策に関するオンライン会議を開き、金融や経済政策を担当する何立峰副首相が、一部の売れ残り住宅について、地方政府が「妥当な価格」で購入することを認めるほか、地方政府の助力で未完成住宅を完工させていく方針を示したという。
 中国人民銀行(中央銀行)も同日、低迷する不動産需要喚起のため、住宅ローン金利と購入契約時の頭金比率を引き下げると発表。1兆元(約21兆6600億円)規模の貸付制度も確保するという。
 今回の発表を受けて、中国株式市場の不動産指数は一時、9.1%上昇したが、事態が一気に好転するかは疑問だ。実質的には既に実施されている政策が目立つ、地方政府の住宅買い取り規模が不透明-など、全体的な力不足を指摘する声も出ている。
 とはいえ、不動産大手、恒大集団の債務危機が表面化して3年近く。中国の不動産バブル崩壊は、リーマン・ショックのように世界に危機が波及するのではないかとの懸念もあっただけに、政府がやっと対策に本腰を入れたともいえる点は評価できる。
 今後、さらに大胆な不動産政策が必要としても、土地の払い下げや「融資平台」といわれる傘下の投資会社を通じた資金調達で不動産バブルを生んだ地方政府や、バブルに狂奔し、未完成や売れ残りの不良物件を多数抱えたデベロッパーの救済策にとどまってはならない。中低所得層の国民に、住宅を安定供給するという本来の目的を後回しにすべきではない。
 何副首相が「不動産の健全性は中国の経済や社会の発展に密接に結びついている」と強調したように、国内総生産の3割は不動産関連部門が占め、その帰趨(きすう)は中国経済を左右する。習政権3期目の経済政策を決める共産党中央委員会の全体会議の遅れが指摘されてきたが、7月の開催が決まった。不動産対策に加え、長期的経済戦略を早急に公表すべきだ>(以上「東京新聞」より引用)




 中国を襲っている経済不況はB/S不況だ。つまり中国の各セクションが抱える不良債権を償却できないまま、抱え込んでいることが全ての原因だ。
 債権が不良債権化したのは経済が上手く回らなくなったからだ。その原因は「改革開放」路線からの強引な転換だ。官から民へ、という資本の流れを、権力の弱体化を招くと危惧した習近平氏が民から官へと時間の流れを逆回転させた。つまり経済という飛行している飛行機をいきなり逆噴射させたのだ。

 そこに「戦狼外交」が大きく関与して来る。「改革開放」以来、中国は外資や外国企業を取り込んで、腹ペコだった農民工に職を与え貧困層に一定の所得をもたらした。しかしコロナ禍でサプライチェーンのハブたる中国の立場を悪用して、先進自由主義諸国に貿易圧力を掛けた。
 それこそが習近平氏の大きな勘違いだ。「世界の工場」は外資と外国企業によって成り立ち、中国の貿易は外国企業の先進自由主義諸国への輸出によって成り立っていた。別に中国政府が輸出しているわけではない。中国に進出した外国企業が高度な製品を製造して、先進自由主義諸国へ輸出しているだけで、生産拠点を中国から他国へ移せば、中国貿易からその部分は簡単に欠落してしまう、という単純明快なカラクリすら習近平氏は理解してなかったようだ。

 かくして、中国から外資や外国企業が撤退すると、それらが担っていた中国経済の一角が失われる。つまり農民工たちの格好の雇用先が閉鎖され、彼らは路頭に迷うことになる。それだけではない。外国企業に部品や素材を供給していた中国企業まで開店休業状態になってしまった。
 さらに習近平氏が強引にIT企業を主体とする民間企業を叩き、ジャック・マー氏たち有名経営者たちを叩いて裸にしてしまった。学習塾にも禁止措置を取り、千万人もの知識労働者たちを失業させた。もちろん国安保の適用により香港を国際金融センターから中国の一つの地方にしてしまったことも中国の国際金融の立場を弱める結果になってしまった。

 一人の無能な権力者の登場によって、中国経済は急成長から崩壊へと登って来た坂道を転がり落ちている。もとより彼の施策に一貫性はない。
 彼は鄧小平以来「改革開放」で自由市場の導入をして来た経済の流れを断ち、社会主義化へ逆戻りさせようとした。しかし不動産バブル崩壊を目の前にして、慌てて自由市場へ戻そうとしたり、過剰になっている新築市場へさらに新築物件を流入させようとしている。いや、そもそも社会主義では土地や家屋はすべて国有ではなかったか。そなん「良いとこ取り」の場当たり的な弥縫策で不良債権化した不動産を甦らせること自体が経済原則に反している。中国経済は水膨れしたB/Sを実体経済まで縮小させる必要に迫られている。つまり債権債務の両建てになっている不良資産の償却こそが中国に突き付けられている経済政策だ。そのことを中共政府当局の誰も理解してないようだ。中国経済の崩壊が止まらないのは経済政策当局者の無知蒙昧による。


<私事ながら>
この度、私が書いた歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにCAMPFIREでクラウドファンディングをはじめました。「蒼穹の涯」は伊藤俊輔(後の伊藤博文)の誕生から明治四年までを史料を元にして描いたものです。維新後の彼の活躍は広く知られていますが、彼が幼少期からいかに苦労して維新の功労者になり得たのかを史実に基づいて記述しています。現在、明治維新以前の彼に関する小説等の著書は殆どありません。
 既に電子版では公開していますが、是非とも紙媒体として残しておきたいと思います。クラウドファンディングは7月3日までです。残り少なくなりましたが、皆様方のご協力をお願いします。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」をお読みになりたい方はこちらをクリックして下さい。

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