GDPで国家間の経済比較するのは統計と為替レートを介したマヤカシでしかない。

ビッグマック指数なら「円高」
 プーチン大統領は、「ロシアの購買力平価での経済規模は日本を抜いて世界4位になった」と述べたと報じられた。国際力の比較でランキングを参照する機会が多い本コラムだが、今回もそのカラクリを紐解いていこう。
 まず、各国のGDPはそれぞれの自国通貨建てだが、それらのデータを比較するために、共通の通貨に換算しなければならない。基軸通貨であるUSドルに換算することが一般的だが、その方法は二つに大別できる。
 一つは市場為替レートを使用するもので、外国為替市場の実勢レート(期末レートまたは期間平均レート)を使用する。現時点では、1ドル155円程度だ。
 もう一つは購買力平価(PPP- Purchasing Power Parity)為替レートを使う。これは、それぞれの国で同額の財やサービスを購入する場合、自国通貨建てとドル建てがあるが、その比率を為替レートとするものだ。いわゆる「ビッグマック指数」が、これを用いた数値として有名だ。
 日本のビックマックは現在530円だが、アメリカでは5.69ドルなので、PPP為替レートは1ドル93円という「円高」だ(編注:ビッグマックの価格は同国内でも地域差あり)。実際、国際機関がPPP為替レートを算出するときには、当然だがビッグマックではなく、さまざまな商品・サービスを採用しそれらの加重平均としている。

GDP1位は中国か、米国か
 それではデータを見ていこう。世界銀行が公表している2022年の名目GDPデータであるが、USドルベースで、1位アメリカ25兆4397億ドル、2位中国17兆9632億ドル、3位日本4兆2564億ドル、4位ドイツ4兆824億ドル、5位インド3兆4166億ドル、6位イギリス3兆890億ドル、7位フランス2兆7790億ドル、8位ロシア2兆2404億ドル、9位カナダ2兆1614億ドル、10位イタリア2兆497億ドル、である。
 一方、PPPドルベースでは違ったランキングが浮かび上がる。1位中国31兆7731億ドル、2位アメリカ25兆4397億ドル、3位インド12兆9981億ドル、4位ロシア5兆9878億ドル、5位日本5兆8621億ドル、6位ドイツ5兆5822億ドル、7位ブラジル4兆1195億ドル、8位インドネシア3兆9798億ドル、9位フランス3兆9147億ドル、10位イギリス3兆8482億ドル、となる。

 PPP為替レートは高所得国では市場為替レートとの差が小さいが、低所得国ではその差が大きく出がちだ。というのも、非貿易財やサービスの価格は、高所得国よりも低所得国の方が安い傾向がある。PPP為替レートはそれを調整しているため市場為替レートよりも高く(自国通貨高)でPPPドルベースはUSドルベースより大きくなる傾向がある。実際、世銀における一人あたりGDPを市場為替レートベースとPPP為替レートベースでみるとそのとおりになる。

いちばん都合のいい数字
 なお、対象とする商品・サービスの差があるため、国際機関の間でもPPPドルベースGDPは異なる。

 国際通貨基金(IMF)が公表している2022年のPPPドルベースの名目GDPは、1位中国30兆1911億ドル、2位アメリカ25兆7441億ドル、3位インド11兆9287億ドル、4位日本6兆1597億ドル、5位ドイツ5兆3656億ドル、6位ロシア4兆8250億ドル、7位インドネシア4兆333億ドル、8位ブラジル3兆8299億ドル、9位イギリス3兆7733億ドル、10位フランス3兆6971億ドル。これは、世界銀行との数字とも異なっている。プーチン大統領は「いちばん都合のいい数字」を使った。
 GDPのような数字での国際ランキングはまだわかりやすいが、そうでないものはより注意が必要だ。
 最近の一例をあげれば、男女格差(ジェンダー・ギャップ)が話題になった。
 世界経済フォーラムが発表した2024年版「男女格差(ジェンダー・ギャップ)報告」で日本は調査対象の146カ国中118位となり、話題になった。では果たして、この報告は国際比較において、どこまで妥当なのか。
 世界経済フォーラムは、ダボス会議を主催するスイスの非営利団体だ。そこが、健康、教育、経済、政治の分野毎に各使⽤データをウェイト付けしてジェンダー・ギャップ指数を算出している。

都合の悪い数字を取り上げるケース
 より具体的には、健康で健康寿命、出生性比、教育で識字率、初等就学率、中等就学率、高等就学率経済的、経済で労働力(参加)率、同類職における賃金、平均所得、立法職・政府高官・管理職比率、専門・技術職比率、政治で国会の議席、大臣数、最近50年の首長の在任期間が使われている。
 健康と教育では、それぞれの順位は58位、72位でまずまずであるが、政治の順位は113位、経済は120位。健康と教育の数値は世界トップクラスであるが、経済は平均より低く、政治では世界最低ランクだ。いずれにしても指数計算上、政治と経済が大きく足を引っ張っている。同種の指標として知られているのは、国連が発表しているジェンダー開発指数(GDI)とジェンダー不平等指数(GII)がある。
 GDIは、人間開発の3つの基本的な側面である健康、知識、生活水準における女性と男性の格差を測定し、人間開発の成果におけるジェンダー不平等を表している。3月に公表されたもので、日本は193カ国中92位となっている。
 また、GIIは、リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)、エンパワーメント、労働市場への参加の3つの側面における女性と男性の間の不平等による潜在的な人間開発の損失を映し出す指標である。これも3月に公表されているが、日本の順位193カ国中22位である。
 それにしても、男女平等ランキングは数多あり、日本がポジティブな位置に入っている数値もあるのに、なぜか順位の低いもの、都合の悪いものだけをマスコミは取り上げる。
 なお、林芳正官房長官は、今回ジェンダー・ギャップ指数で日本が118位であったことに対し、「政治分野では立候補や議員活動と家庭生活との両立の困難や人材育成の機会の不足、経済分野では女性の採用から管理職、役員へのパイプラインの構築が途上であることなどが背景にある」とした。

指標の選び方次第で変わる
 ただし、筆者から見れば政治での低順位が問題であり、女性の国会議員が相対的に少ないことに帰着する。これは、民主主義による投票結果であり、政府の努力ではいかんともしがたい。経済でも民間経済を前提とする以上、政府ができることには限界がある。
 いずれにしても、作成主体の考え方次第で大きく変動するのが世界ランキングだ。その順位に一喜一憂、右往左往するのではなく、高くと比較して、自国の観点から見て足りない点があれば、改善する程度の参考指標である。
 いわんや、それを具体的な数値目標として扱うのはいささか問題であろう。特に、大学の国際比較ランキングや国際競争力ランキングなどは、指標の選び方次第ともいえる面が大きく、「悪用」について筆者は常に懸念している>(以上「現代ビジネス」より引用)




 プーチン大統領が「ロシア経済が日本を抜いた」と発表したが、その数字について髙橋 洋一(経済学者・嘉悦大学教授)氏は「データの「ヤバいカラクリ」」だと看破する。つまり「数字は都合よく使われる」というのだ。
 しかし現実問題として、ロシア国民は「GDPでロシアは日本を抜いたゾ」といわれて、誰が喜ぶというのだろうか。それよりも「ウクライナ侵略戦争からロシアは手を退く」とプーチンが発表した方がロシア国民は喜ぶだろう。

 同様に、習近平氏が「中国は世界第二位の経済大国だ」と国民に宣伝したところで、腹ペコの「躺平(タンピン)族」が起き上がって欣喜雀躍するとは思えない。いかに経済指標を国民に示したところで、実態が伴わなければ誰も喜ばない。
 高橋氏が分かりやすいようにビッグマックの値段で日ロ経済比較をしている。それによると「日本のビックマックは現在530円だが、アメリカでは5.69ドル(約845円)なので、PPP為替レートは1ドル93円という「円高」だ」という。つまり現在の為替レート1ドル157円前後がいどれほど不当に円安に操作されているかお解りだろう。

 現在の円レートで各国のビッグマックの値段を比較すると、 ロシアの牛肉のハンバーガーのメニューを見ると、「ビッグマック」にあたる「ビッグヒット」は日本円で約330円だつまり貨幣価値で云えば「米国>日本>ロシア」となる。だから為替相場という操作された貨幣交換比率でGDPを比較するのは間違いだ。
 人の幸福度はGDPだけでは測れない。たとえロシアのGDPが世界一になったところで、ロシア国民にとって幸福を現してないことは明らかだろう。自分の夫や恋人や家族の誰かが戦場で死傷している国で、誰が「幸福だ」と心から感じるだろうか。そして中国のGDPが世界一になったところで、思想信条や表現の自由のない極端な監視社会で「幸福だ」と国民の多くが心から思うだろうか。

 高橋氏は「世界一」を測定する様々な統計数字があることを示している。たとえばスイスの非営利団体のダボス会議では健康、教育、経済、政治の分野毎に各使⽤データをウェイト付けしてジェンダー・ギャップ指数を算出しているという。具体的には、健康で健康寿命、出生性比、教育で識字率、初等就学率、中等就学率、高等就学率経済的、経済で労働力(参加)率、同類職における賃金、平均所得、立法職・政府高官・管理職比率、専門・技術職比率、政治で国会の議席、大臣数、最近50年の首長の在任期間が使われている。だがそうした統計数字のでみると日本は健康と教育では、それぞれの順位は58位、72位でまずまずであるが、政治の順位は113位、経済は120位と世界の最低ランクに位置している。
 しかし日本社会でジェンダー差別は全く行われていない。それどころかデタラメなジェンダー行政が行われている。銭湯に何歳まで異性が親と一緒に入れるか、すら国際会議では問題視される。それほど日本のジェンダーに対する観念は天衣無縫だ。そもそも日本の神様の最高位は天照大神という女性神だった。

 引用文中で「林芳正官房長官は、今回ジェンダー・ギャップ指数で日本が118位であったことに対し、「政治分野では立候補や議員活動と家庭生活との両立の困難や人材育成の機会の不足、経済分野では女性の採用から管理職、役員へのパイプラインの構築が途上であることなどが背景にある」とした」とあるが、役員へのパイプラインが構築の途上だとは思わない。
 男女のいずれかを役員にするかはそれぞれの企業の自由裁量で実行されていて、そこに男女差別などない。もちろん国会議員選挙に男女差別はない。地方議員も然りだ。むしろ若くて見た目が魅力的な女性が立候補すると人気が沸騰して簡単にトップ当選する傾向さえある。そのどこに男女差別があるというのだろうか。

 GDPでも為替相場の貨幣価値で各国を評価するのと、購買力平価為替レートで評価するのとでは結果に著しい違いが出る。購買力平価レートでGDPを評価すると中国が名目で世界一になるという。しかし中国民がGDP世界一だと云われて欣喜雀躍するだろうか。
 むしろ世界一のGDPだから「もっと税金を払え」と当局から要求されないかと心配するのではないだろうか。意味のない統計数字を製造して、世界各国を扇動する「~~会議」など、どれほどの意味があるというのだろうか。むしろ実態として女性の着飾る自由や学問の自由を抑圧するイスラム諸国を厳しく批判すべきではないか。ロシアのGDPが日本を抜いたところで、プーチンが戦争をしている国の何処に幸福の青い鳥がいるというのだろうか。


<私事ながら>
この度、私が書いた歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにCAMPFIREでクラウドファンディングをはじめました。「蒼穹の涯」は伊藤俊輔(後の伊藤博文)の誕生から明治四年までを史料を元にして描いたものです。維新後の彼の活躍は広く知られていますが、彼が幼少期からいかに苦労して維新の功労者になり得たのかを史実に基づいて記述しています。現在、明治維新以前の彼に関する小説等の著書は殆どありません。
 既に電子版では公開していますが、是非とも紙媒体として残しておきたいと思います。クラウドファンディングは7月3日までです。残り少なくなりましたが、皆様方のご協力をお願いします。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」をお読みになりたい方はこちらをクリックして下さい。

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