「大阪都」の三度目の住民投票を許してはならない。

三度目のチャレンジなど絶対に許してはならない
 驚くべきことに、日本維新の会の馬場伸幸代表が、大阪都構想について「3度目チャレンジしたい」と発言した。
 大阪都構想と言えば、これまで一度ならずも二度までも、直接の住民投票で「否決」された維新提案だ。
 一度目の否決の際には、当時の橋下大阪市長は、「最後、この結果は本当に悔いなし、リベンジはないです」と再住民投票を明確に否定し、二度目の否決の際には、吉村大阪府知事も「僕自身が大阪都構想に政治家として挑戦することはもうありません。もうやり切ったという思いです」と、同じく、自身が再住民投票に関わることを明確に否定している。
 したがって、吉村府知事はここまで言っていた以上、この馬場宣言を受けても「今も考え方は変わらない」と発言せざるを得ない状況であるし、横山大阪市長も「今時点で何も議論は動いていない。実施の有無含めて現段階では白紙」とし、馬場氏への賛同の意は明確には表明していない。
 ただ、逆に言うなら、明確に否定しているわけでもなく、腹の底では「都構想三度目のチャレンジ」を密かに企図している様子が見え隠れする。
 しかし、そもそも民主主義における住民投票・選挙というものは、事前にどれだけ激しく論争していようが、一旦結果が出れば、ノーサイドとなり、その結果を有権者「全員」が受け入れることを「義務」付けられている。それが民主主義の最低限のルールだ。
 したがって、言うまでも無く、馬場代表自身にも、過去の住民投票で否決された結果を受け入れる「義務」があるわけだ。だから、今回の馬場氏が言う「三度目のチャレンジ」なるものは、その「義務」に完全に違反した、民主主義の前提を破壊する極めて深刻な暴挙だと言わざるを得ない。

大阪都構想とは「大阪市廃止・分割構想」である
 そもそも大阪都構想というものは、単なる「通称」に過ぎず、その本質は「大阪市廃止・特別区設置構想」である。
 つまり、大阪市という地方自治体を解体してしまい、それをいくつかの「特別区」という、大阪市よりも財源も権限も極端に小さな自治体に分割する、というものだ。
 したがって都構想が実現すれば、大阪市民は大きな財源と権限を失い、住民サービスレベルが大幅に低下することは必至なのだ(このことについての詳細は拙著『都構想の真実』を参照されたい)。
 維新は「二重行政を廃止するため」と主張してはいるが、二重行政そのものは悪いものでも何でもない。例えば当方は「京都市民」だが「京都府民」でもあり、両方の自治体のサービスを享受しており、何ら不都合などない。
 それどころか、京都市民の当方は、府と市の双方のサービスを享受できることから、いわば「京都都構想」なるものが実現する京都市が解体された状況よりも明らかに高いレベルのサービスを享受している。
 かつての住民投票で都構想に賛成票を投じた人々は、こうした「事実」を知らないが故に賛成したに過ぎないのであり、こうした事実が知れ渡りさえすれば、賛成する市民はさらにさらに減少することは確実なのだ。
 すなわち、こうした<真実>が住民投票の機会を通してそれなりに大阪市民に広まったからこそ、二度にわたって否決されているのである。
 つまり、「筋論」から考えても、「政策論」から考えても、「都構想」の住民投票など繰り返す必要は微塵もないのだ。
 もちろん、前回の住民投票の時から大きな根本的な変化があるのなら、再度の住民投票が正当化されることもあり得る。しかし、馬場代表自身、再度の住民投票を正当化できるような何らかの大きな変化があったとは、一言も説明してはいない。
 これでは「最高裁判決」が出た後に「僕はその判決が気に入らないから、もう一回、裁判やってもらう」と言っているようなものだ。つまり、今回の「三度目チャレンジ」宣言は、民主主義における根本的なルール違反であり、こんなルール違反の発言など、本来、いちいちメディアで取り上げるべきではない「戯れ言」の類なのだ。

対象を「大阪府民」に広げるのは、地方自治の原則を破壊する暴挙
 ただし、こうした構図を認識している馬場代表は、今度は投票対象者を「大阪市民」だけでなく「大阪府民」に広げようとしている。
 そうなると、賛成者は今よりも増えることになる。なぜなら、大阪市以外の大阪府民は、大阪市が持つ財源と権限を「奪い取る」「吸い上げる」ことができるのだから、自分たちにとっては「得だ」と考え、賛成に回る可能性が考えられるわけである。
 しかし、それもあくまでも「短期的」な話しであって、「長期的」に考えればまったく別の側面が見えてくる。
 そもそも、大阪市は、大阪府の成長の「メインエンジン」なのであり、大阪市の成長あっての大阪府なのである。にもかかわらず、その大阪市を解体し財源と権限を奪い取ってしまえば、大阪市は確実に衰退することになる。そうなれば、回り回って大阪府民も、最終的に巨大な不利益を被ることになるのである。
 ただし、こういう議論以前に、そもそも、「大阪市の解体」を「大阪市民自身」で決めるのではなく、「大阪市以外の府民」の意見も含めて決めようとするのは、大阪市の「自治の精神」に完全に反するものだ。
 これでは、日本の政策を、アジア全体の会議体で決定するようなものである。そんなことが許されて良いはずがない。

今回の馬場氏の都構想「三度目住民投票」宣言は、
 第一に、過去に否決された民主的決定を尊重せず、それを受け入れる義務を無視することを通して「民主主義」の原則を破壊するものであり、
 第二に、大阪市の行政のあり方を大阪市民以外が関与して決定することを通して「地方自治」の原則を破壊するものである。
 したがってそれは、民主主義や地方自治の原理原則の視点から、絶対に是認できない宣言なわけである。
 要するに、大阪市民が最悪の地獄に突き落とされるか否かは、結局は、「日本人」、とりわけ「大阪人」が、この<真実>をどれだけ理解していけるのかにかかっていると言えるのである>(以上「現代ビジネス」より引用)




 「維新・馬場代表の「大阪都構想三度目チャレンジ」宣言は民主主義と住民自治の原則を無視した「最悪の暴挙」である」との見出しに驚いた。このバカな連中は税金を使って大阪万博や大阪IRを企てるだけでなく、過去に二度も大阪府民によって否定された「大阪都構想」を住民投票に問うという。
 もちろん藤井 聡(京都大学大学院工学研究科教授)氏が猛反発するのは当然だ。なぜなら大阪都構想など大阪市や堺市などの解体でしかないからだ。富と権力を大阪都に集中して、今後とも万博やIRに匹敵する利権を大阪に誘致して、甘い汁を吸おうというのだろう。

 藤井氏が「大阪都構想」がいかに馬鹿げたものかを最終章で的確にまとめている。
「 第一に、過去に否決された民主的決定を尊重せず、それを受け入れる義務を無視することを通して「民主主義」の原則を破壊するものであり、
 第二に、大阪市の行政のあり方を大阪市民以外が関与して決定することを通して「地方自治」の原則を破壊するものである。
 したがってそれは、民主主義や地方自治の原理原則の視点から、絶対に是認できない宣言なわけである」と、大阪都構想が内蔵する危険性を看破している。

 それは平成の大合併にも通じる「指摘」でもある。平成の大合併により都市部の周辺地域に成り果てた町村は一様に寂れている。それもそのはずで、かつては人口一万人台の町ですら年間一般会計で50~60億円の予算を執行していた。もちろん義務的経費が大半を占めるが、それでも地域経済の中核を役場が担っていた。
 各種政策も地域住民が選出する町村議会議員で議論して決定していた。しかし平成の大合併により町村議会は解散となり、新市の議会議員に町村の代表が送られたにせよ、極めて少数となり町村の意見は殆ど通らなくなった。つまり平成の大合併により町村の多くは解体され都市部に吸収されてしまった。先日このままの人口減で740余の町村は消滅する、と元自治大臣が予測していたが、平成の大合併でそれに匹敵する以上の町村が消滅した。

 大阪都構想は大阪府下の市を消滅させることだ。ことに大阪市は二重行政だとして真っ先に消されてしまう。しかし二重行政の何処が悪いというのだろうか。大阪府と大阪市の図書館が同一行政区域内にあったとして、その何処が無駄だというのだろうか。
 殆どの県庁所在地にその名を冠した「市」が全国各地に存在しているが、二重行政だと大騒ぎしているのは大阪の維新議員諸氏だけではないだろうか。私の暮らす山口県で山口市を山口県に包括させよ、と叫ぶ地方政治家を私は知らない。

 山口県には県としての行政の役目があり、山口市の役目とは全く異なる。もちろん大阪府と大阪市とでは行政上の役割が異なる。それぞれが存在してそれぞれが機能している現状を変えることが、必ずしも「改革」とは云わない。それは大阪府が大阪市を呑み込んで、大阪府の行政を煩雑化させるだけだ。三度目の住民投票という「無駄」を許してはならない。


<私事ながら>
この度、私が書いた歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにCAMPFIREでクラウドファンディングをはじめました。「蒼穹の涯」は伊藤俊輔(後の伊藤博文)の誕生から明治四年までを史料を元にして描いたものです。維新後の彼の活躍は広く知られていますが、彼が幼少期からいかに苦労して維新の功労者になり得たのかを史実に基づいて記述しています。現在、明治維新以前の彼に関する小説等の著書は殆どありません。
 既に電子版では公開していますが、是非とも紙媒体として残しておきたいと思います。クラウドファンディングは7月3日までです。残り少なくなりましたが、皆様方のご協力をお願いします。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」をお読みになりたい方はこちらをクリックして下さい。

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