報復外交は習近平氏の首を絞めるだけ。

中国がEUへの報復準備-貿易戦争、対米国ではなく対豪州型か
◎食品と農産物がしばしば貿易障壁の対象となる
◎中国が全面的な自動車関税賦課に動けば、日米の企業に影響も

 中国はこれまでの貿易紛争と同様に、電気自動車(EV)への追加関税を決めた欧州連合(EU)に報復するため、一連の行動を準備しているようだ。
 ただ、米国との大規模な貿易戦争とは状況が異なる。米中は互いにペナルティーを包括的に科した。中国が今狙っているのは、数年前にオーストラリアに対して講じた措置に似ている。中国政府や国営メディアはすでに、課税対象となりそうな特定の製品を公表している。

ブランデー: フランス狙い撃ち
 中国が最初に照準を定めたのは欧州のブランデーだ。中国は反ダンピング調査を1月に発表。調査が1年以上かかる可能性もあるが、中国商務省は豪州産ワインに対する調査時のように、いつでも暫定関税を発表することもできる。
 食品と農産物はしばしば貿易障壁の対象となる。中国はこれまで、中国が輸出国にとって大きな市場であるにもかかわらず、必要不可欠でないか、あるいは別の国からでも調達可能な商品をターゲットにしてきた。つまり、中国消費者へのダメージは少ないが、生産者への打撃は大きいということだ。
 ブランデーはまさにその条件に合っている。中国の愛飲家は常に代替品を見つけることができるが、EUが行った中国製EV調査を最も強く支持してきた一国であるフランスへの影響は大きいだろう。
 国際貿易センター(ITC)のデータによると、中国は2023年、フランスにとって2番目に大きなブランデー輸出市場だった。

豚肉:スペインなどに苦痛
 中国政府は今週、欧州の豚肉がダンピングされている疑いがあるとして調査すると発表した。これが関税につながれば、その影響はスペインをはじめとし、デンマークやオランダのような主要供給国に集中するだろう。
 中国が自国で被り得る影響は限定的かもしれない。いずれにせよ、豚肉の大半を国内の農家から調達している中国は、必要に応じてブラジルや米国といった他の輸出国に頼ることができるため、品不足や価格上昇のリスクを抑えることができる。

ワイン:主に地中海産
 中国国営メディアが先月報じた記事には、乳製品や飛行機と並んで、ワインが標的にされる可能性があると指摘されていた。フランスは欧州最大の対中ワイン輸出国であり、ここでも打撃を受けるだろう。
 関税を課すなどして欧州からのワイン輸入を阻止したとしても、中国が他のサプライヤーを見つけるのは容易だろう。中国が3月に懲罰的な関税を廃止した豪州産ワインは市場に戻っている。
 世界のワイン市場は現在、歴史的な供給過剰状態にある。つまり、他国の生産者は空白があれば殺到するだろう。中国の輸入はここ数年縮小傾向にある。

自動車:ドイツに大きな打撃
 在EU中国商業会議所(欧盟中国商会、CCCEU)は先月、大型エンジンを搭載した輸入車も中国の報復対象となる可能性を示唆した。
 国営メディアは19日、中国のEVメーカー数社が欧州の大型エンジン車に対する関税を引き上げるよう政府に要請したと報じた。
 もし欧州の輸出メーカーにだけに関税が課されれば、ドイツとスロバキアに大きな打撃となるが、全面的な措置となれば米国と日本の企業にも影響を与えるだろう。
 中国はこれまでの貿易戦争で、自動車関税を利用する意向を示してきた。トランプ政権時代には米国車に課す関税率を一時40%まで引き上げた。
 中国の欧州からの輸入のほとんどは、ポルシェやメルセデス・ベンツグループ、BMWといった高級車メーカーからのものだろう。中国市場を急速に席巻しつつあるEVを含め、買い手側には他の高級車という選択肢もある。

乳製品:デンマークの憂鬱
 国営メディアは、乳製品がターゲットにされる可能性に触れている。中国が輸入に依存し過ぎていない分野の一つであり、他の売り手が参入する可能性もある。
 中国の乳製品輸入の約半分はニュージーランドからで、3分の1ほどがEUからだ。デンマークとオランダ、ドイツ、フランスはいずれも新たな障壁の影響を受けるだろう。

航空機:標的になり得ない
 もう一つの標的として航空業界が挙げられているが、大型旅客機の主要サプライヤーが2社しかないことから、その可能性は低い。
 エアバスがターゲットとなった場合、中国には米ボーイングしか選択肢が残らず、米企業への依存度が高まることは、恐らく習近平政権が望んでいることではないだろう。
 特に、仮にトランプ前大統領が11月の大統領選を制した場合、米中の緊張が一段と高まることが予想される。さらに、ボーイングは一連の安全問題を抱えており、一方のエアバスは一部の航空機を中国で組み立てているため、中国はエアバスを罰したくないかもしれない。
 実際、中国の航空会社がエアバスから100機以上のワイドボディ-機を購入する交渉に入っていると関係者が明らかにしている。これは中国製EVへの関税を巡る協議において有益な交渉材料として使えるかもしれない>(以上「Bloomberg」より引用)




 欧州諸国が中国製EVへ関税措置を取ったことに対して、中国は欧州諸国に対して個別的に品目を決めて対抗措置に出るようだ。その手法は嘗てオーストラリアと演じた関税措置と品目別の禁輸で対抗した「貿易戦争」を彷彿とさせる。
 しかし中国経済の現状を見れば、中国製EV締め出しに対抗して中国が特定の貿易品目を決めて対抗措置を課すのは得策とは云えない。それは貿易の拡大へ向かうよりも、貿易の縮小へ向かうからだ。中国経済が成長したのは中国へ進出した欧米企業が中国人を雇用して先進諸国向けの製品を生産して、それを先進諸国へ輸出したからだ。

 自由貿易を前提としたWTOの枠組みで中国は経済成長した。だから中国製EV締め出しの動きに対して、中国はあくまでもWTOの土俵内で対抗措置を取るべきではないか。そうすればWTOの土俵で中国製EVがダンピングに当たるのか、貿易相手国の産業に甚大な影響を及ぼす可能性があるため、欧州諸国の措置が正当化されるのか、WTOの判断を待つのが大人の対応ではないだろうか。
 しかし習近平氏の中国はドラえもんのジャイアンだ。すぐに直截的な対抗措置に訴える。まるで中国人の喧嘩だ。国際関係の場で中国人の喧嘩を演じれば、二度と誰も相手しなくなるだろう。

 中国にとって必要なのは自由市場だ。だから国際的な自由市場を破壊するような、強引な中国製EVの押し売りは却って中国にとってマイナスだ。しかし損して得取る、という商売手法は中国人には通じないのかも知れない。
 それなら中国は世界から孤立して「改革開放」以前の中国に戻るしかない。だが一度覚えた蜜の味を、中国民があっさりと忘れるだろうか。生活水準を上げるのは容易いが、生活水準を落とすのは困難だ。

 地方政府のみならず、中央政府の公務員まで遅配や減給が及んでいるという。それほど中国の国庫は払底している。だから民間企業に30年も遡って税務調査を行って罰金などを徴収しているという。まさに何でもアリのカウス状態に陥っている。
 法治主義が全く機能しない国から外国投資家や外国企業が撤退するのは当然だ。習近平氏の気分次第で反・スパイ法が発動されて外国人が身柄を拘束されるような国へ、誰が行きたいと思うだろうか。習近平氏は世界が中国から孤立していく、と思っているかも知れないが、実態は中国が世界から孤立している。習近平氏に残された時間は少ないが、世界が中国から孤立していく、と考えている間は経済崩壊の打開策は決して見つからない。


<私事ながら>
この度、私が書いた歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにCAMPFIREでクラウドファンディングをはじめました。「蒼穹の涯」は伊藤俊輔(後の伊藤博文)の誕生から明治四年までを史料を元にして描いたものです。維新後の彼の活躍は広く知られていますが、彼が幼少期からいかに苦労して維新の功労者になり得たのかを史実に基づいて記述しています。現在、明治維新以前の彼に関する小説等の著書は殆どありません。
 既に電子版では公開していますが、是非とも紙媒体として残しておきたいと思います。クラウドファンディングは7月3日までです。残り少なくなりましたが、皆様方のご協力をお願いします。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」をお読みになりたい方はこちらをクリックして下さい。

このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。