「世界の工場」は先進自由主義諸国から嫌われて「世界の工場の廃墟」になっている。
<経済的に追い詰められた中国、手あたり次第のラブコールも袖にされ
中国政府は破れかぶれになっているに違いない。国内経済も貿易も投資の流れも状況は見るからに思わしくなく、かつて世界を席巻した中国ビジネスへの熱狂は、米国でも欧州でも日本でも潮が引くように冷めつつある。米国政府は対中貿易で対決姿勢を強め、欧州連合(EU)や日本も米国ほどではないにしろ中国離れを加速させている。
中国政府は破れかぶれになっているに違いない。国内経済も貿易も投資の流れも状況は見るからに思わしくなく、かつて世界を席巻した中国ビジネスへの熱狂は、米国でも欧州でも日本でも潮が引くように冷めつつある。米国政府は対中貿易で対決姿勢を強め、欧州連合(EU)や日本も米国ほどではないにしろ中国離れを加速させている。
こうした中、中国の指導者たちはここ数カ月というもの、分野を問わず先進国の実業家や政治家を口説こうと躍起だ。習近平国家主席は米国のビジネスリーダーたちを2度にわたって歓待し、中国がいかに彼らを高く評価しているかをアピールした。欧州を歴訪した際にも同様のもてなしをした。ごく最近では李強首相を韓国・ソウルに派遣し、日韓の経済界に対してはもちろん、両国首脳にも積極的なメッセージを伝えた。しかし、反応はいずれもあからさまな拒絶ではなかったにしろ、温かさはほとんど感じられないものだった。
中国政府が必死になる理由ははっきりしている。国内では深刻な不動産危機が収束する気配もなく、住宅購入や建設活動が停滞し、家計資産の目減りなどを理由に消費者は財布のひもを固く締めている。これに加えて、民間企業を敵視する習政権の以前の政策が響き、民間投資や事業拡大、雇用も停滞。対中貿易規制や、積極的なサプライチェーンの多角化と中国からの生産移転により、輸出の遅滞も起きている。
経済を下支えできる要因が内外に見当たらないがゆえに、中国政府は現状「魅力攻勢」としか評しようのない外交姿勢を取らざるを得なくなっているのだ。ねらいは、かつて中国の急速な発展を後押しした外資の熱意をいくばくかでも取り戻し、経済を活性化させることにある。
習主席は昨年11月、米サンフランシスコで開催されたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で米財界人と会談し、中国には豊かなビジネス環境があり外資を歓迎していると太鼓判を押した。今年に入ると、さらに多くの米ビジネスリーダーを北京に招待し、同じメッセージを伝えた。その直後には欧州歴訪でも同様の売り込みを行った。米国でも欧州でも人々は習主席を好意的に迎え、礼儀正しく友好的に接したが、さほど実質的な成果にはつながらなかった。投資の流れも貿易も大して回復していない。
中国は過去のふるまいの代償を支払わされている
直近では、韓国と日本に対しても同じような働きかけをしている。李首相はソウルで韓国の尹錫悦大統領、日本の岸田文雄首相と2019年以来となる3カ国首脳会談を行い、日中韓の貿易促進と対中投資を呼びかけた。
直近では、韓国と日本に対しても同じような働きかけをしている。李首相はソウルで韓国の尹錫悦大統領、日本の岸田文雄首相と2019年以来となる3カ国首脳会談を行い、日中韓の貿易促進と対中投資を呼びかけた。
李首相が日韓首脳に約束した内容は多くの点で欧米諸国に提示したものと同じだったが、さらに一歩踏み込み、2012年に浮上した後ほとんど停滞していた日中韓自由貿易協定(FTA)の交渉再開を提案した。東アジア3カ国の絆を強調することで、日韓のいずれか、または双方を米国との緊密な経済・外交関係から引き離そうとしているようにも見えた。
ソウルでも誰もが非常に礼儀正しかったが、李首相が目的を達成できたとは思えない。貿易やクリーンエネルギーなどの分野で協力を推進するといったお決まりの美辞麗句が踊った以外に、具体的な会談の成果と呼べるものはなかった。李首相は、経済・投資・貿易を安全保障や外交から切り離すことを主張したが、会談では安全保障問題をめぐって温度差が露呈した。
尹大統領と岸田首相はともに、北朝鮮のミサイル発射実験をはじめとする敵対的行為に歯止めをかけるため中国の協力を求めたが、李首相は韓国側に「貿易の政治化」をしないよう(自国のふるまいを棚に上げて)警告した他は、北朝鮮問題に言及しなかった。
岸田首相は台湾周辺で中国が最近行った軍事演習に懸念を表明し、「台湾海峡の平和と安定」が日本と国際社会にとって「極めて重要だ」と李首相に伝えた。李首相が求める貿易と投資に関する進展はもちろん、ましてや3カ国のFTA推進など、安全保障問題をある程度解決しなければ望めないことが痛いほど明らかになった。
中国がこれまで貿易面で高圧的な態度に出たりせず、譲歩を要求したり制裁的措置を取ったりもしていなかったならば、経済・投資・貿易を安全保障・外交から切り離すといった提案は必ずやもっと生産的な展開を生んだはずだ。 中国は新型コロナウイルス感染症のパンデミックに際して重要な物資の輸出を停止し、中国に進出している外国企業に対しては独自技術や企業秘密を中国のパートナー企業と共有するよう要求した。外交問題をめぐり、日本への制裁措置としてレアアース(希土類)の対日輸出を禁止したこともある。
今、中国政府はこうした過去のふるまいの代償を支払わされており、必死のほほえみ外交は望む結果を得られていない>(以上「Forbes」より引用)
もはや、何度も書いた。中国経済がおかしくなったのは習近平氏が登場してからだ。その原因は彼が中国経済は充分に実力を付けて、西側諸国と伍して行けると勘違いしたからだ。
確かに中国経済は名目ドルベースで換算したGDPで2000 年代後半に欧州主要国、2010 年には日本も 抜いて米国に次ぐ世界第二の経済規模へと成長した。しかし、中国国内で稼ぎ出したGDPの主要な部分は中国に進出した先進自由主義諸国の企業だった。
ただ習近平氏は中国内に進出した外国企業の生産技術や製品に詰め込まれた知的財産を奪い取れば中国の国営企業でも同一製品を製造できると勘違いした。だから中国内の外国企業が製造する製品を自国から輸出するのも中共政府で自由に制御できると勘違いした。
もっとも、コロナ禍で世界的に医療製品が不足した折、習近平氏は医療物資の輸出制限を掛けることで先進諸国を慌てさせ、世界のサプライチェーンの中核たる・ハブを中共政府が支配していると実感した。その実感が習近平氏を増長させた。
その象徴的な出来事が2021年3月18日アラスカ州アンカレジで米中高官による直接会談で起きた。会議の冒頭の慣行として「記者たちの写真撮り」が10分ほど行われるが、その写真撮りの最中に米中政府代表は激論を交わし、記者たちがいる前で一時間以上も激しくやり合った。
その米中の高官級対面会談はバイデン政権下で初めてもので、ブリンケン米国務長官は「新疆、香港、台湾などの問題、米国へのサイバー攻撃、同盟国への経済的な強要行為を含む中国の行動に対する米国の深い懸念を取り上げる」と表明し、「これらの行動は全て、世界の安定を維持しているルールに基づく秩序を脅かしている」と指摘した。
それに対して中国外交トップの楊潔チ・共産党政治局員はこれに15分かけて応答して、「米国は軍事力と金融における覇権を用いて影響力を広げ、他国を抑圧している」とし、「国家安全保障の概念を悪用し、通常の貿易取引を妨害し、一部の国々が中国を攻撃するよう仕向けている」と批判した。同時に、米国のマイノリティー(少数派)の扱いや外交・通商政策を非難した。習近平氏の「戦狼外交」を強く全世界に印象付けた。
それに対して中国外交トップの楊潔チ・共産党政治局員はこれに15分かけて応答して、「米国は軍事力と金融における覇権を用いて影響力を広げ、他国を抑圧している」とし、「国家安全保障の概念を悪用し、通常の貿易取引を妨害し、一部の国々が中国を攻撃するよう仕向けている」と批判した。同時に、米国のマイノリティー(少数派)の扱いや外交・通商政策を非難した。習近平氏の「戦狼外交」を強く全世界に印象付けた。
全世界に配信された米中代表団の激論の様子に、先進自由諸国は冷水を浴びせかけられた。ニコニコとして外国投資や企業進出を受け容れていた中共政府の本当の姿を初めて知り、彼らが中国経済の進展に手を貸したことが誤りだったと深く悔いた。
中共政府は2022年2月24日から始まったプーチンのウクライナ侵略戦争で、プーチンを支援する挙に出た。その点でも、先進自由主義諸国は中共政府の中国は決して自分たちと価値観を共有しない異質な独裁専制国家だと強く認識させられた。そして習近平氏の「一帯一路」や「新シルクロード」などの世界戦略の本質を知るにつけて、対中デカップリングを急ぐようになった。
中国経済の崩壊を目の当たりにして、習近平氏は慌てて西側諸国に笑顔を振りまくようになったが、もはや先進自由主義諸国が友好関係を深めようと中国に接近することはない。そこに中国製EVが集中豪雨的に欧州市場に溢れた。
欧州諸国も関税引き上げなどで対抗して、対中デカップリングに動き始めた。引用記事にある通り、中共政府は国際的な商慣習を破って「世界の工場」で製造した製品を戦略物資として利用した。そのため中国に進出していた外国企業は一様に撤退せざるを得なくなった。もはや中国は「世界の工場」の立場から転落するのを止めることは出来ない。しかも中国の国営企業に製造技術も製造ノウハウもない。ましてや蓄積した知的財産もない。ただただ「世界の工場」は「世界の工場の廃墟」になるだけだ。まさに自業自得と云うしかない。「戦狼外交」のツケは大きい。
<私事ながら>
この度、私が書いた歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにCAMPFIREでクラウドファンディングをはじめました。「蒼穹の涯」は伊藤俊輔(後の伊藤博文)の誕生から明治四年までを史料を元にして描いたものです。維新後の彼の活躍は広く知られていますが、彼が幼少期からいかに苦労して維新の功労者になり得たのかを史実に基づいて記述しています。現在、明治維新以前の彼に関する小説等の著書は殆どありません。
既に電子版では公開していますが、是非とも紙媒体として残しておきたいと思います。クラウドファンディングは7月3日までです。残り少なくなりましたが、皆様方のご協力をお願いします。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」をお読みになりたい方はこちらをクリックして下さい。