中国の台湾侵略が明日にもあるかのように煽るテレビ出演者たち。

台湾侵攻を想定した米軍の非対象戦略
 米インド太平洋軍(INDOPACOM)のサミュエル・パパロ司令官(海軍提督)は、中国が台湾に侵攻した場合、米軍が数千の無人機や無人艦を配備し、「無人の地獄絵図」を作り出すとの戦略を明らかにした。
 米誌ワシントン・ポストのコラムニストが、先般のアジア安全保障会議/シャングリラ対話(シンガポール、5月31日~6月2日)で、パパロ司令官にインタビューした際に明らかにしたもので、6月10日、同紙に記事を掲載し、それを各紙が伝えた。
 その戦略は、「ヘルスケープ(Hellscape)」戦略、すなわち「地獄絵図」戦略と呼ばれるものだ。
 同戦略は、中国軍が台湾海峡を渡ろうとした瞬間に、無人の水上艦艇、空中ドローンおよび潜水艦数千基(隻)を台湾の全周に張り巡らし、事実上の第一防衛線戦力として機能させ、致命的なドローン攻撃によって中国軍を「惨めな」状態に陥らせることを目的としている。
 この背景には、2022年8月、米国のナンシー・ペロシ下院議長(当時)が台湾訪問した際、その対抗措置として、中国軍は「Short, Sharp War」といわれるように迅速に台湾を包囲し、戦略的封鎖を課す能力を示した。
 そのことが、台湾と米国を警戒させただけでなく、逆に米軍にとって台湾の全周にドローンを展開して台湾を防衛するアイデアを得る貴重な学習経験となったと言われている。
 パパロ司令官は、「私は彼らの生活を1か月間ひどく惨めにすることができるので、残りのすべてのことに費やす時間を稼ぐことができる」とワシントン・ポスト紙に語っている。
 この発言は、後ほど説明を加えるが、米軍の大量の重装備や軍事資器材、兵站物資などを米本土から輸送して本格的軍事介入を行うまでには概ね1か月程度の時間が掛かることを示唆している。
 その間、同戦略は、中国の注意をそらし、米国が対応する時間を稼ぐために考案された、米国に大きな非対称的優位性をもたらす、いわゆる「繫ぎの戦略」と見ることができよう。
 この「地獄絵図」戦略は、2023年8月にキャスリーン・ヒックス国防副長官によって発表された「レプリケーター(Replicator)」構想に基づくものである。
(編集部注:Replicator=自己複製すること)
 同構想は、無人機・自律型兵器システムを本格的に配備して、中国軍に対抗するための計画であり、米国は同構想の速やかな実現に向け注力し、実戦配備を加速させている。

数的優位を打ち負かすレプリケーター構想
 ヒックス副長官は、「中国の最大の利点は数だ。兵士、艦船、ミサイルの数で勝っている。レプリケーター構想は、その利点を打ち負かすための計画だ」と述べ、無人機とAI(人工知能)を組み合わせた拡張可能な自律型兵器システムを開発し、本格的に配備して中国軍の数に対抗する方針を明らかにした。
 また、ヒックス副長官はウクライナでの戦闘にも言及し、「小型で、精密で、安価で、大量に、生産できるシステム」の開発について述べた。
 ウクライナが無人機を使ってロシア軍の進攻を阻止することに成功したことは大きなヒントであり、無人機の能力について改めて理解を深め、ウクライナの戦い方を教訓に無人機の大量配備に意欲を示し、米軍の戦略を後押しする形となっている。
 本構想の推進に当たって、ヒックス副長官は、統合参謀本部副議長のクリストファー・グレイディ大将と共同議長を務める「副長官レベルのイノベーション運営グループ(DISG)」を設立した。
 同グループは、「国防イノベーション・ユニット(DIU)」およびINDOPACOMと協力し、構想の目標達成を進めている。
 なお、DIU の中核的な任務は、国防省、起業家、スタートアップ企業、民間技術会社を結ぶインターフェースとして機能し、そのネットワーキングを通じた軍事利用可能な先端的民間技術や人材の獲得にある。
 INDOPACOMには、作戦・戦闘上のニーズを求めている。
 2023年発表された本構想を実現するプログラムは、18~24か月以内に大量の安価なドローンを迅速に開発して配備する意欲的な取り組みである。
 ヒックス副長官は2024年3月、数千機の安価でスマートな戦闘用ドローンをネットワーク化して、将来の紛争に対応できるよう配備する「レプリケーター」構想に年間約5億ドルを費やす方針を示した。
 そして、2024年度に5億ドル(1ドル150円換算で7500億円)、25年度にも約5億ドルの支出を見込んでいると説明し、この取組みは主に国防省内部のシステム障壁を減らすための先駆的な役割を果たすとも指摘した。

米国の本格的来援・軍事介入には時間が必要
 軍事輸送の重要性を世に知らしめたのは、湾岸戦争である。
 55万余の将兵と700万トンの物資をアラブの砂漠に動かした史上最大の「ロジスティクス・システムの戦い」は、W.G.パゴニス著『山・動く』によって詳細に説明されており、ご記憶の方も多いのではないだろうか。
 そのように、中国の台湾侵攻に対する米軍の本格的来援・軍事介入には大規模な物資の輸送が不可欠で、そのため時間がかかる。
 輸送機で素早く運べるものもあるが、大量の戦車・大砲などの重装備や軍事資器材、兵站物資などを米本土から輸送して本格的来援・軍事介入を行うには海上輸送に大きく依存せざるを得ないことから、相当の時間を要するのである。
 下記図表は、米シンクタンク・ヘリテッジ財団が公表した「Steaming Times (Days) to Areas of Vital U.S. National Interest」(括弧は筆者)である。


 これによると、まず、アメリカ大陸を列車で横断するのには約1週間を要する。
 米西海岸から南シナ海までの海上輸送には、平均時速15ノット(27キロ)で航行した場合、ハワイ、グアム周辺海域経由で概ね20日かかることになる。
 それぞれの端末地における積載・卸下にも数日を要することも考慮しなければならない。
 さらに、目標地域に到着しても、すぐに作戦が開始できるわけはではない。
 米軍の戦力展開は、紛争当事国(Host Nation)による港湾や空港での受け入れ(Reception)、部隊の宿営・駐屯(Staging)、戦場(前方)への移動(Onward Movement)、そして戦力合一(Integration)という4段階が基本となっており、それで初めて作戦を開始する態勢が整う。
 この4段階には、少なくとも10日程度の日数が必要と見ておかなければならない。
 パパロ司令官が、概ね1か月間の時間稼ぎの必要性を説いたのもこのためである。
 その間、台湾軍の自衛能力と約5万の在日米軍を中心とする米軍の「地獄絵図」戦略によって中国軍の侵攻を「惨めな」状態に陥らせて阻止し、米軍主力の本格来援・軍事介入を待ってこれを撃破しようとする構想と見てよかろう。
 同司令官は、「私は数々の機密能力を使って台湾海峡を無人の地獄に変えたい」「(細部)内容は言えません。しかし、それは現実であり、実現可能です」(括弧は筆者)とワシントン・ポスト紙で述べ、自信をのぞかせた。

「地獄絵図」戦略は日本にも必要
 前掲図で示す通り、米西海岸のロングビーチから横須賀までの海上輸送には、12日、約2週間の航海が必要である。
 したがって、わが国の防衛を考える場合、米軍の本格来援・軍事介入は、台湾有事と同様、早くても侵攻開始から概ね1か月後と想定し、その間、十分に自衛できる防衛力を保持し、それに見合う防衛計画を作成しておかなければならない。
 その際、ウクライナ戦争における無人機の広範な有用性と戦場での影響力は際立っており、「無人機とAIを使った戦闘が、次の戦争の姿になる」と見て間違いなかろう。
 そのため、わが国も、米国防省の「レプリケーター」構想を参考に、民間企業と連携して革新的技術を迅速かつ積極的に導入し、「小型で、精密で、安価で、大量に、生産できる無人機・自律型兵器システム」を開発・装備する体制を整えることは喫緊の課題である。
 その上で、インド太平洋軍の「地獄絵図」戦略に倣い、陸・海・空のあらゆる空間に無人機・自律型兵器システムを配備して、中国の最大の強みである量的優位性を克服する非対称戦を追求することは、日本防衛にとっても避けては通れない戦略的優先事項である>(以上「JB press」より引用)




 これからの戦争はウクライナ戦争で実証されているように、非対称戦略だというのは周知の事実だ。「中国の台湾侵攻を「地獄絵図」化する米インド太平洋軍の非対称戦略」と題して樋口譲次(軍事評論家)氏が中国の台湾進攻に、いかに対処すべきかを解説している。もちろん「大量のドローン・無人機使い、中国軍の量的優位を打ち砕く」という結論に達するのに異論の余地はない。
 台湾に攻め込む中国は陸上部隊を送り込まなければ台湾の占領は出来ない。つまり旧来の「軍隊を送り込む」戦略を最優先するしかないが、迎え撃つ台湾とその同盟国は「軍隊で迎撃する」必要はない。無人兵器で攻め込む中国軍の兵員を殺傷すれば良い。どちらが有利か、火を見るよりも明らかだ。

 昨日(6/16)夕刻「テレビタックル」を視聴していたら、出演者のコメンテータや軍事評論家たちが口を揃えて「中国の台湾侵略戦争」が明日にも始まるかのように煽っていた。そして「台湾有事は日本有事だ」とシーレーンが完全に途絶するかのように発言していた。
 台湾有事は中国にとって全貿易の70%以上を占める海上航路が遮断されることを意味する。ことに世界随一の原油輸入国の海上輸送が途絶することを意味する。それこそ「台湾有事は中国重大事」だ。その重大事は日本の比ではない。なぜなら日本はマラッカ海峡や台湾海峡を通らず、遠回りすれば中国軍の航路妨害を避けられるからだ。

 出演者たちは神奈川県の海上自衛隊・横須賀基地に停泊している護衛艦「いずも」を上空からドローンで撮影したとみられる映像が3月26日に中国のSNSに投稿され、その後、Xでも拡散されたことを取り上げて危機感を煽っていた。しかし防衛省がそれほど大慌てしなかったのは、その程度の映像は中国当局は既に偵察衛星で周知だからだ。
 軍事評論家氏は「ドローンに爆弾を積んでいたら攻撃されたではないか」と危惧を表明したが、そんなことは自衛隊は検討済みのことだ。ドローンが爆弾を搭載している、と認識したなら撃墜しているだろう。そうしなかったのは撮影しているだけだ、と分かっていたからで、むしろ誰が何処から飛ばしているかを追跡確認したかったから、撃墜しなかったのだろう。基地に設置してあるレーダーの性能を余り軽く見ない方が良い。彼らは自らの命を守るために日々神経を削っている事実を忘れてはならない。

 さて習近平氏が「台湾侵略戦争」のXデーを定めて、その準備にかかるように軍に命令を発したとしよう。そうすると、直ちに習近平氏を主席の座から排除しようとする動きが出て彼はアッという間に中南海から姿を消すだろう。
 既に北京は高い鉄条網で完全防備態勢を敷いているという。それは中国民を恐れる当局者たちの恐怖心の現れだが、台湾侵略戦争を習近平氏が決断すれば、習近平氏は国民によってではなく、共産党幹部たちによって内部から排除されるだろう。なぜなら幹部連中は一人の漏れもなく米国に巨万の金融資産を移しているからだ。もちろん多くの人は妻や子供たちも西側諸国へ移住させている。国民から攻撃されれば西側諸国のいずれかに亡命して余生を過ごせば良いが、習近平氏が台湾侵略戦争を始めれば彼らが蓄財した目も眩むほどの金融資産が没収され寝ない。そうした事態は何があっても阻止しなければならないだろう。

 テレビ出演者たちは、なぜ台湾侵略戦争が起きるのを期待するかのように煽るのだろうか。まさか彼らは軍備エージェントたちの回し者ではないだろう。岸田氏が米国にポンコツ・トマホークを爆買いする約束して、防衛予算を倍増させることにしたから、軍備に関係しているエージェントたちが暗躍する絶好の機会が訪れた。この機を逃さず丸投げ・中抜きによる濡れ手に粟の大儲けを企むのは当たり前ではないか。それは官僚たちも同じだ。
 しかしこれからの戦争は非対称となる。中国軍は台湾を占領する必然性から従前の戦車と歩兵による地上部隊投入を主力にせざるを得ない。それに対して、守る側はドローンなどの無人兵器で迎え撃てばよい。どちらが人的損害が少ないか、ウクライナ戦争を見れば歴然としている。既にロシア兵はウクライナ軍の10倍以上の50万人が損耗しているという。中国軍の多くは一人っ子政策による一人っ子たちだ。ロシア兵のような大量損耗に中国民は耐えられるだろうか。しかも中国の石油備蓄は一月分しかないという。食糧の備蓄は実質的に皆無だと考えた方が良い。なぜなら全国各地の食糧庫は物資の横流しで空だからだ。とても戦争など出来る態勢に中国はない。


<私事ながら>
この度、私が書いた歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにCAMPFIREでクラウドファンディングをはじめました。「蒼穹の涯」は伊藤俊輔(後の伊藤博文)の誕生から明治四年までを史料を元にして描いたものです。維新後の彼の活躍は広く知られていますが、彼が幼少期からいかに苦労して維新の功労者になり得たのかを史実に基づいて記述しています。現在、明治維新以前の彼に関する小説等の著書は殆どありません。
 既に電子版では公開していますが、是非とも紙媒体として残しておきたいと思います。クラウドファンディングは7月3日までです。残り少なくなりましたが、皆様方のご協力をお願いします。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」をお読みになりたい方はこちらをクリックして下さい。

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