北朝鮮の脅威の実態。
<北朝鮮は弾道ミサイル開発と実験を継続している。
その一つである短距離弾道ミサイルについて、ウクライナの情報によると、ウクライナに向けて発射された北朝鮮製弾道ミサイルの半数程度が途中で空中爆発しているという。
また、北朝鮮製砲弾が不発や砲口前爆発を起こして、トラブルが多数発生しているという。つまり、北朝鮮製のミサイルや砲弾には不良品が多いということである。
北朝鮮兵器が、見た目は良くても実戦で使いにくい不良品であるならば、部隊の実際の訓練練度はどうなのか気になるところである。
形としての訓練はできていても、戦争の現実に合う、敵と戦って勝利できる訓練を実施しているのだろうかと疑問が生じる。
そこで、今年3月に実施した砲兵部隊の訓練の発表内容と射撃訓練の写真を改めて分析した。
これまで、北朝鮮軍の空挺部隊と戦車部隊の訓練について、写真から実態について分析した記事をJBpressに投稿した。この記事と併せて読んでほしい。
①「北朝鮮が戦車部隊の実戦演習で見せた、涙ぐましい背伸びの実態」(4月12日)
②「自衛隊の空挺部隊元指揮官が明かす、北朝鮮軍のお粗末すぎる空挺作戦」(4月8日)
1.誰もが恐れる世界最強の砲兵に成長した?
朝鮮中央通信によれば、今年(2024)3月7日、北朝鮮軍は大連合部隊の砲撃訓練を行った。
その際、金正恩総書記が軍大連合部隊の砲撃訓練を指導した。
訓練は、砲兵の戦闘動員態勢と実戦能力を向上させる目的で、砲兵部隊の火力打撃能力を威力示威と競技という方法で点検、評価したという。
訓練は、敵の首都(ソウル)を打撃圏内に入れる国境線付近の長距離砲兵分隊の威力示威射撃で始まった。
抽選で定められた射撃順序に従って各大連合部隊から選抜された砲兵分隊が火力陣地を占め、目標を射撃した後、命中した砲弾数と火力任務遂行にかかった時間を総合して順位を決める方法で行われた。
その時、金正恩氏は、独創的な砲兵重視観、砲兵哲学を明示し、主体的砲兵武力を強化する指導によって誰もが恐れる世界最強の兵種に成長したと言った。
北朝鮮が発表したこれらの内容については、戦理を得ていると思われる。だが、北朝鮮が発表した写真は、主張していることと真逆であるように見える。
以下、細部について分析する。
2.滑稽ともいえる内容が多い砲兵射撃訓練
(1)海岸に並べ海に向かって射撃するのは、一般国民に見せるため
本来、自走砲と牽引砲からなる榴弾砲・加農砲・迫撃砲・多連装ロケット砲からなる砲兵部隊は、広域に展開して、一つの地点に集中して射撃する。
広域に展開するのは、敵に発見されにくく、もし発見されても一度に多くの火砲がやられないためだ。
それも、北朝鮮が今回実施した海岸のような発見されやすい位置ではなく、山間部の錯雑地で発見されにくい場所を選定する。
さらに、火砲や関連車両はすべて偽装網の中に入れ、砲身の一部だけを外に出すだけである。
北朝鮮の写真にあるように、海岸で発見されやすく、一列に並ぶ状態で射撃するのは、あくまで素人に見せるための展示演習だけである。
米軍や自衛隊の射撃訓練では、このようなことは絶対に行わない。
(2)砲が密集して射撃を行えば敵砲弾の餌食になる
火砲の射撃は、常に対砲レーダーやドローンから監視されている。
発見されれば、数分以内に反撃される。火砲が密集していれば、敵の数少ない砲弾だけで、多くの損害を受けることになる。
この北朝鮮の砲撃訓練の写真を見ると、火砲と火砲の間隔は1メートル以内である。
このようなバカげた射撃要領を見て喜ぶのは、金正恩氏だけだろう。
本来であれば、このような射撃を行ったことに対して厳しく叱責して、広域に展開させるように指導しなければならない。
北朝鮮は、2017年頃から火砲の射撃を多数公表しているが、このような密集した隊形の写真ばかりで、実際の戦闘にはそぐわない訓練だ。
(3)自走榴弾砲に弾薬は搭載されていないのか
戦車の形に似ている自走榴弾砲は、射撃すれば直ちに射撃陣地から撤収し移動できる。
そして、迅速に移動するために、弾薬がその内部に置かれている。
弾薬を補充する場合には、弾薬を積載した車両が同行して弾薬の補充を行う。そのため、牽引する砲とは異なり、弾薬を入れた弾薬箱を砲の傍に置くことはしない。
だが、この写真では、砲兵自走榴弾砲の後ろに弾薬と薬莢が置いてある。これは、現実的ではないやり方である。
かつて、筆者が牽引砲の射撃で砲弾や弾薬箱が火砲の近くに置いていないのは、発射する弾数が少ないからだと発信したことがあった。
北朝鮮は、それを受けて自走砲でも同じことを実施したのではないか。
(4)長い砲身は、射程は伸ばせるが、寿命が極端に短い
北朝鮮は、北朝鮮領土から韓国ソウルを射撃するためには、火砲の射程を延伸する必要がある。
通常の火砲であれば、20~30キロの射程であるが、北朝鮮は170ミリ火砲の射程を50キロ以上に伸ばすために、砲身を長くして大量の装薬(砲弾を飛ばすための火薬)を使用している。
これは、北朝鮮の独創的なものである。
米欧やロシアはこの方式を採用していない。
なぜなら、北朝鮮のように長い砲身で大量の装薬を使用して発射すれば、砲身の劣化が激しく壊れやすいためだ。
その結果、戦争中に多くの弾丸を発射できなくなる。
このため、米欧や日本は、射程を伸ばし精度を上げるために、長射程誘導砲弾を開発し使用している。
これらの砲弾がウクライナに供与され、ロシア軍の火砲部隊や兵站施設が破壊されている。
これは、北朝鮮ではまだ長射程誘導砲弾が開発されていないことを示す証拠写真だ。
(5)火砲が火に包まれているのはトラブル発生
写真2の白矢印の先の自走砲は、火に包まれている。砲自体が火炎に包まれることは、通常ないし、あってはならないことだ。
なぜなら、こんなことになれば自走砲内の砲弾や装薬(発射薬)が、熱で自爆する恐れがあるからだ。
この燃え方は、砲炎とは異なり、何かが勢いよく燃焼しているようで、合成写真でもないようだ。
なぜこのようなことが起きたのか。
不要になった装薬が砲の外に落下し、それが砲炎で引火して燃えた可能性がある。つまり、砲兵の射撃規律が守られていないことが考えられる。
3.合成写真で砲兵の脅威を高めている
(1)発射した砲弾が横一列に並ぶことは奇跡
砲弾が砲身から飛び出して、ほぼ横一列に並んでいる写真(下の写真5)がある。
火砲が射撃を行って、その結果一門だけ、砲弾が飛び出しているところを写すことはできるだろうが、ここでは全門の砲弾が写っている。
それも、ほぼ同じ横一線の位置にある。このように映ることは奇跡に近い。
次に、左端の砲炎を見ると、右側3門の砲炎とは異なり、黒い煙が占めている。
これは、左端の1門は、右側3門よりも早く発射されているということだ。それならば、砲弾は遠くに達しているはずである。
しかし、それがほぼ同じ位置にあるということは、この砲弾は合成ということになろう。
(2)どこから飛んできたか不明のロケット弾
多連装ロケット砲の射撃では、ロケット弾が発射器から発射され、当初は直線的に飛翔する。
ロケットの手前に線を引けば、その位置に発射器があるはずである。
だが、発射器がないものがある。ロケット弾のAとBである。これも、発射しているロケットを多く見せるための合成である。
4.いつもどこかが変な金正恩の写真
(1)射撃視察中にたばこを手にするリーダーは模範にならない
金正恩氏が砲兵訓練を視察している時に、たばこを手にしている。
砲兵射撃の時は、射場のどの地域でも火気(たばこ)厳禁である。さすがに、将軍たちにはたばこを手に持っている者はいない。
軍のトップである金正恩将軍閣下自らは、軍の模範となるべきである。トップが守らないようでは、兵もどこかで規則を守らないことに繋がってしまうだろう。
(2)裸眼で見えるのに、双眼鏡を手にする金正恩
金正恩氏の目は遠くの目標を見ているが、手は固定式の双眼鏡にある。 目で見えるのであれば、双眼鏡を覗く必要はない。
ほかの写真では、将軍たちは双眼鏡を覗いてはいない。火砲射撃の細部を見るのであれば、金正恩や将軍達が同じものを見なければいけない。
一人だけが双眼鏡を覗くのは、将軍たちと金正恩が別々のものを見るという形になっている。これは、あり得ないことだ。
つまり、双眼鏡を手にしているのは、あくまでポーズなのだ。
5.このような訓練映像を見せつける理由とは
軍事専門家から見れば、前述した訓練内容と写真は見せかけであることが分かる。
これらは初歩的な訓練であるし、その中に多くの不自然な映像や合成写真が含まれているのである。
なぜそうするのか。
1つは、北朝鮮の人民と周辺諸国に対して、北朝鮮の通常戦力の欠陥を隠して、軍事強国であることを示すこと。
2つ目は、人民に対しては、金正恩氏が偉大な国家の指導者であることを植え付けたいためだろう。
軍事強国であることを示すには、多くの砲弾やロケット弾を発射している状況、特に砲口から多くの砲弾やロケット、さらに砲口から出る火炎を見せれば、韓国のソウルに撃ち込まれるという恐怖感を与えられる。
一般国民にとっては、これらの映像は恐怖に見える。脅威を大きく見せれば見せるほど、恐怖を感じるということになる。
北朝鮮の軍事演習を日米韓の国民に、メディアを通して見せつけることで、北朝鮮が軍事的強国であることを認識させることができるのだ。
もう一つの理由として、国家指導者としての金正恩氏は、まだ若いという点が挙げられる。
金日成主席や金正日総書記よりも頼りないという印象を完全にぬぐい切れてはいない。
例えば、米国のドナルド・トランプ元大統領、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、中国の習近平主席と比べると、その若さゆえ、偉大性やカリスマ性というイメージに欠ける。
金正恩氏やその取り巻きは、急いで彼を偉大なる国家指導者として作り上げ、認知させる必要がある。
その政策の一つとして、ごまかしの映像を作り出して、宣伝しているのだろう。
北朝鮮の兵器には、古い、使えない、故障するといった多くの欠陥があるが、それらを何かで隠す必要がある。
それが、合成写真や作り物の写真なのだ。
写真では、軍事専門家以外の者を簡単に騙すことができる。だが、それらの欠陥兵器を戦場に持って行き使えば、欠陥が暴露されるのは当然のことだ。
それが、北朝鮮兵器の実態なのだ>(以上「JB press」より引用)
その一つである短距離弾道ミサイルについて、ウクライナの情報によると、ウクライナに向けて発射された北朝鮮製弾道ミサイルの半数程度が途中で空中爆発しているという。
また、北朝鮮製砲弾が不発や砲口前爆発を起こして、トラブルが多数発生しているという。つまり、北朝鮮製のミサイルや砲弾には不良品が多いということである。
北朝鮮兵器が、見た目は良くても実戦で使いにくい不良品であるならば、部隊の実際の訓練練度はどうなのか気になるところである。
形としての訓練はできていても、戦争の現実に合う、敵と戦って勝利できる訓練を実施しているのだろうかと疑問が生じる。
そこで、今年3月に実施した砲兵部隊の訓練の発表内容と射撃訓練の写真を改めて分析した。
これまで、北朝鮮軍の空挺部隊と戦車部隊の訓練について、写真から実態について分析した記事をJBpressに投稿した。この記事と併せて読んでほしい。
①「北朝鮮が戦車部隊の実戦演習で見せた、涙ぐましい背伸びの実態」(4月12日)
②「自衛隊の空挺部隊元指揮官が明かす、北朝鮮軍のお粗末すぎる空挺作戦」(4月8日)
1.誰もが恐れる世界最強の砲兵に成長した?
朝鮮中央通信によれば、今年(2024)3月7日、北朝鮮軍は大連合部隊の砲撃訓練を行った。
その際、金正恩総書記が軍大連合部隊の砲撃訓練を指導した。
訓練は、砲兵の戦闘動員態勢と実戦能力を向上させる目的で、砲兵部隊の火力打撃能力を威力示威と競技という方法で点検、評価したという。
訓練は、敵の首都(ソウル)を打撃圏内に入れる国境線付近の長距離砲兵分隊の威力示威射撃で始まった。
抽選で定められた射撃順序に従って各大連合部隊から選抜された砲兵分隊が火力陣地を占め、目標を射撃した後、命中した砲弾数と火力任務遂行にかかった時間を総合して順位を決める方法で行われた。
その時、金正恩氏は、独創的な砲兵重視観、砲兵哲学を明示し、主体的砲兵武力を強化する指導によって誰もが恐れる世界最強の兵種に成長したと言った。
北朝鮮が発表したこれらの内容については、戦理を得ていると思われる。だが、北朝鮮が発表した写真は、主張していることと真逆であるように見える。
以下、細部について分析する。
2.滑稽ともいえる内容が多い砲兵射撃訓練
(1)海岸に並べ海に向かって射撃するのは、一般国民に見せるため
本来、自走砲と牽引砲からなる榴弾砲・加農砲・迫撃砲・多連装ロケット砲からなる砲兵部隊は、広域に展開して、一つの地点に集中して射撃する。
広域に展開するのは、敵に発見されにくく、もし発見されても一度に多くの火砲がやられないためだ。
それも、北朝鮮が今回実施した海岸のような発見されやすい位置ではなく、山間部の錯雑地で発見されにくい場所を選定する。
さらに、火砲や関連車両はすべて偽装網の中に入れ、砲身の一部だけを外に出すだけである。
北朝鮮の写真にあるように、海岸で発見されやすく、一列に並ぶ状態で射撃するのは、あくまで素人に見せるための展示演習だけである。
米軍や自衛隊の射撃訓練では、このようなことは絶対に行わない。
(2)砲が密集して射撃を行えば敵砲弾の餌食になる
火砲の射撃は、常に対砲レーダーやドローンから監視されている。
発見されれば、数分以内に反撃される。火砲が密集していれば、敵の数少ない砲弾だけで、多くの損害を受けることになる。
この北朝鮮の砲撃訓練の写真を見ると、火砲と火砲の間隔は1メートル以内である。
このようなバカげた射撃要領を見て喜ぶのは、金正恩氏だけだろう。
本来であれば、このような射撃を行ったことに対して厳しく叱責して、広域に展開させるように指導しなければならない。
北朝鮮は、2017年頃から火砲の射撃を多数公表しているが、このような密集した隊形の写真ばかりで、実際の戦闘にはそぐわない訓練だ。
(3)自走榴弾砲に弾薬は搭載されていないのか
戦車の形に似ている自走榴弾砲は、射撃すれば直ちに射撃陣地から撤収し移動できる。
そして、迅速に移動するために、弾薬がその内部に置かれている。
弾薬を補充する場合には、弾薬を積載した車両が同行して弾薬の補充を行う。そのため、牽引する砲とは異なり、弾薬を入れた弾薬箱を砲の傍に置くことはしない。
だが、この写真では、砲兵自走榴弾砲の後ろに弾薬と薬莢が置いてある。これは、現実的ではないやり方である。
かつて、筆者が牽引砲の射撃で砲弾や弾薬箱が火砲の近くに置いていないのは、発射する弾数が少ないからだと発信したことがあった。
北朝鮮は、それを受けて自走砲でも同じことを実施したのではないか。
(4)長い砲身は、射程は伸ばせるが、寿命が極端に短い
北朝鮮は、北朝鮮領土から韓国ソウルを射撃するためには、火砲の射程を延伸する必要がある。
通常の火砲であれば、20~30キロの射程であるが、北朝鮮は170ミリ火砲の射程を50キロ以上に伸ばすために、砲身を長くして大量の装薬(砲弾を飛ばすための火薬)を使用している。
これは、北朝鮮の独創的なものである。
米欧やロシアはこの方式を採用していない。
なぜなら、北朝鮮のように長い砲身で大量の装薬を使用して発射すれば、砲身の劣化が激しく壊れやすいためだ。
その結果、戦争中に多くの弾丸を発射できなくなる。
このため、米欧や日本は、射程を伸ばし精度を上げるために、長射程誘導砲弾を開発し使用している。
これらの砲弾がウクライナに供与され、ロシア軍の火砲部隊や兵站施設が破壊されている。
これは、北朝鮮ではまだ長射程誘導砲弾が開発されていないことを示す証拠写真だ。
(5)火砲が火に包まれているのはトラブル発生
写真2の白矢印の先の自走砲は、火に包まれている。砲自体が火炎に包まれることは、通常ないし、あってはならないことだ。
なぜなら、こんなことになれば自走砲内の砲弾や装薬(発射薬)が、熱で自爆する恐れがあるからだ。
この燃え方は、砲炎とは異なり、何かが勢いよく燃焼しているようで、合成写真でもないようだ。
なぜこのようなことが起きたのか。
不要になった装薬が砲の外に落下し、それが砲炎で引火して燃えた可能性がある。つまり、砲兵の射撃規律が守られていないことが考えられる。
3.合成写真で砲兵の脅威を高めている
(1)発射した砲弾が横一列に並ぶことは奇跡
砲弾が砲身から飛び出して、ほぼ横一列に並んでいる写真(下の写真5)がある。
火砲が射撃を行って、その結果一門だけ、砲弾が飛び出しているところを写すことはできるだろうが、ここでは全門の砲弾が写っている。
それも、ほぼ同じ横一線の位置にある。このように映ることは奇跡に近い。
次に、左端の砲炎を見ると、右側3門の砲炎とは異なり、黒い煙が占めている。
これは、左端の1門は、右側3門よりも早く発射されているということだ。それならば、砲弾は遠くに達しているはずである。
しかし、それがほぼ同じ位置にあるということは、この砲弾は合成ということになろう。
(2)どこから飛んできたか不明のロケット弾
多連装ロケット砲の射撃では、ロケット弾が発射器から発射され、当初は直線的に飛翔する。
ロケットの手前に線を引けば、その位置に発射器があるはずである。
だが、発射器がないものがある。ロケット弾のAとBである。これも、発射しているロケットを多く見せるための合成である。
4.いつもどこかが変な金正恩の写真
(1)射撃視察中にたばこを手にするリーダーは模範にならない
金正恩氏が砲兵訓練を視察している時に、たばこを手にしている。
砲兵射撃の時は、射場のどの地域でも火気(たばこ)厳禁である。さすがに、将軍たちにはたばこを手に持っている者はいない。
軍のトップである金正恩将軍閣下自らは、軍の模範となるべきである。トップが守らないようでは、兵もどこかで規則を守らないことに繋がってしまうだろう。
(2)裸眼で見えるのに、双眼鏡を手にする金正恩
金正恩氏の目は遠くの目標を見ているが、手は固定式の双眼鏡にある。 目で見えるのであれば、双眼鏡を覗く必要はない。
ほかの写真では、将軍たちは双眼鏡を覗いてはいない。火砲射撃の細部を見るのであれば、金正恩や将軍達が同じものを見なければいけない。
一人だけが双眼鏡を覗くのは、将軍たちと金正恩が別々のものを見るという形になっている。これは、あり得ないことだ。
つまり、双眼鏡を手にしているのは、あくまでポーズなのだ。
5.このような訓練映像を見せつける理由とは
軍事専門家から見れば、前述した訓練内容と写真は見せかけであることが分かる。
これらは初歩的な訓練であるし、その中に多くの不自然な映像や合成写真が含まれているのである。
なぜそうするのか。
1つは、北朝鮮の人民と周辺諸国に対して、北朝鮮の通常戦力の欠陥を隠して、軍事強国であることを示すこと。
2つ目は、人民に対しては、金正恩氏が偉大な国家の指導者であることを植え付けたいためだろう。
軍事強国であることを示すには、多くの砲弾やロケット弾を発射している状況、特に砲口から多くの砲弾やロケット、さらに砲口から出る火炎を見せれば、韓国のソウルに撃ち込まれるという恐怖感を与えられる。
一般国民にとっては、これらの映像は恐怖に見える。脅威を大きく見せれば見せるほど、恐怖を感じるということになる。
北朝鮮の軍事演習を日米韓の国民に、メディアを通して見せつけることで、北朝鮮が軍事的強国であることを認識させることができるのだ。
もう一つの理由として、国家指導者としての金正恩氏は、まだ若いという点が挙げられる。
金日成主席や金正日総書記よりも頼りないという印象を完全にぬぐい切れてはいない。
例えば、米国のドナルド・トランプ元大統領、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領、中国の習近平主席と比べると、その若さゆえ、偉大性やカリスマ性というイメージに欠ける。
金正恩氏やその取り巻きは、急いで彼を偉大なる国家指導者として作り上げ、認知させる必要がある。
その政策の一つとして、ごまかしの映像を作り出して、宣伝しているのだろう。
北朝鮮の兵器には、古い、使えない、故障するといった多くの欠陥があるが、それらを何かで隠す必要がある。
それが、合成写真や作り物の写真なのだ。
写真では、軍事専門家以外の者を簡単に騙すことができる。だが、それらの欠陥兵器を戦場に持って行き使えば、欠陥が暴露されるのは当然のことだ。
それが、北朝鮮兵器の実態なのだ>(以上「JB press」より引用)
「ウクライナ戦争で北朝鮮の兵器が次々爆発、写真が物語る北朝鮮の嘘と捏造」と題して西村金一(軍事アナリスト)が北朝鮮の軍事力を分析している。そうすると実に滑稽な事実が次々と判明する。
その滑稽さの大本は軍事演習を国民に対する見世物にしている事で、その見世物を効果的に見せるための演出のためか、軍事演習とはかけ離れた実演がなされているという。
また火気厳禁の軍事演習区域で金正恩氏が堂々と煙草を吸っている。これでは最高指揮官が無知蒙昧の輩だと北朝鮮が世界に発信しているのと変わらない。
さらに合成写真の存在だ。軍事演習を華々しく見せるために炎や煙を「盛って」大軍事演習を効果的に見せている、という。砲弾を発射した際に煙が大量に出ては、次の発射の妨げになる。それはバルチック艦隊を迎え撃った日本海軍が煙の少ない火薬を使用していた当時から認識されていたことだ。
現在、ウクライナに侵攻したロシア軍に北朝鮮は大量の砲弾やミサイルを供与しているが、それらがポンコツだという。おそらく長年備蓄していた砲弾を引っ張り出したのだろうが、標的との距離から砲弾の爆発を設定するのだが、その精度が悪いという。だから効果的に標的を撃破できないし、不発弾も多いという。
ミサイルに関しても何処へ飛んでいくか分からない代物が多いという。ロシア軍が盛大に兵員を消耗して前線を押し出しているが、その割に戦火が乏しいのには北朝鮮の砲弾やミサイルがボンコツだからだという。
北朝鮮は大量の砲弾やミサイルをロシアに供与しているから、おそらく備蓄は払底したはずだ。だから砲弾やミサイルなどを大増産しているというが、鉄や火薬を何処から手に入れているのだろうか。砲弾やミサイルを増産するには部材が必要だ。
おそらく中国から外国へ売れなくなった鋼材を北朝鮮へ大量に輸出しているのだろう。ミサイルの固形燃料も、中国から北朝鮮へ送っているのだろう。しかし中国製鋼材の質の悪さは周知の事実だ。やはりポンコツ砲弾が大量に生産され、その大部分がロシアへ送られている。しかしプーチンも質の悪さを理由に北朝鮮の砲弾やミサイルの引き取りを拒否することは出来ない。背に腹は代えられないからだ。とにかくウクライナ軍の数倍もの砲弾を撃ち続けなければロシアは敗北する。プーチンも必死なのだろう。そのプーチンが支援要請に北京を訪れるという。独裁者仲間が集まって、侵略戦争の愚を語り合うが良い。
<私事ながら>
この度、私の歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにCAMPFIREでクラウドファンディングをはじめました。「蒼穹の涯」は伊藤俊輔(後の伊藤博文)の誕生から明治四年までを史料を元にして描いたものです。既に電子版では公開していますが、是非とも紙媒体として残しておきたいと思います。皆様方のご協力をお願いします。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」をお読みになりたい方はこちらをクリックして下さい。