経済崩壊が社会崩壊に激変する時は。
<改革開放から逆戻り、中国国民に不満広がる-政治リスクとなり得るか
◎長期的な生活水準向上、習指導部の下で揺らぎつつある
◎中国の都市では2人につきほぼ1台の監視カメラ-統制、さらに強化
中国経済の奇跡が終わろうとし、中国共産党の習近平総書記(国家主席)は前任者の誰も経験しなかった課題に直面している。人口14億人の中国は過去40年間、所得と富の比類なき向上を享受してきたが、今は違う。
不動産の相場急落や米国との貿易戦争、当局による企業締め付け、長期にわたった新型コロナウイルス規制などが、中国に繁栄をもたらしてきた成長エンジンを失速させた。
中国の所得はまだ増えているものの、習指導部の下では1980年代後半以後で最も鈍い伸びとなっている。不動産危機が家計資産を目減りさせ、中国社会を慎重に開放させていくという取り組みは逆回転している。
中国国民は以前とは全く違う世界に住んでいるかのように感じている。民主主義国家であれば、今のような暗いムードは政治リーダーにとってはトラブルの元となるだろう。
1980年の米大統領選を制したロナルド・レーガン氏以来、「あなたの暮らしは4年前と比べ良くなりましたか」と米国の大統領候補は有権者に問いかけてきた。答えが「ノー」なら、政権交代が近いことを意味する。
◎長期的な生活水準向上、習指導部の下で揺らぎつつある
◎中国の都市では2人につきほぼ1台の監視カメラ-統制、さらに強化
中国経済の奇跡が終わろうとし、中国共産党の習近平総書記(国家主席)は前任者の誰も経験しなかった課題に直面している。人口14億人の中国は過去40年間、所得と富の比類なき向上を享受してきたが、今は違う。
不動産の相場急落や米国との貿易戦争、当局による企業締め付け、長期にわたった新型コロナウイルス規制などが、中国に繁栄をもたらしてきた成長エンジンを失速させた。
中国の所得はまだ増えているものの、習指導部の下では1980年代後半以後で最も鈍い伸びとなっている。不動産危機が家計資産を目減りさせ、中国社会を慎重に開放させていくという取り組みは逆回転している。
中国国民は以前とは全く違う世界に住んでいるかのように感じている。民主主義国家であれば、今のような暗いムードは政治リーダーにとってはトラブルの元となるだろう。
1980年の米大統領選を制したロナルド・レーガン氏以来、「あなたの暮らしは4年前と比べ良くなりましたか」と米国の大統領候補は有権者に問いかけてきた。答えが「ノー」なら、政権交代が近いことを意味する。
暗黙の了解
中国に選挙はないが、政治はある。中国の政治情勢が安定している理由の一つは、長期的に見て生活水準が向上していることだとされている。これはしばしば、明文化されていない駆け引きの一端と見なされている。共産党の統治下で豊かになり続ける限り、国民は政治に関してほとんど何も言えないことを容認している。
インフレが猛威を振るった1989年には、北京の天安門広場で民主化を求める学生らデモ参加者が流血の弾圧を受けた。しかし、大まかに言えば、1978年に鄧小平氏が第11期中央委員会第3回総会(3中総会)で「改革開放」政策を始めて以来40年以上にわたり、この取り決めは維持されてきた。
習体制でそれが崩れつつある。公式データによれば、平均所得は依然として上昇しており、世界的に見れば健全なペースだ。だが、習政権下での所得向上は改革開放時代のどの指導部よりも鈍く、勢いが衰えている。
人材紹介のプラットフォーム智聯招聘によると、会社員のほぼ3分の1が昨年、給与を減らした。不動産からテクノロジー、金融に至るまで、ホワイトカラーの中国国民は習氏肝いりの「共同富裕」(共に豊かになる)といった報酬などで行き過ぎた動きを抑える運動の影響を受けている>(以上「Bloomberg」より引用)
中国に選挙はないが、政治はある。中国の政治情勢が安定している理由の一つは、長期的に見て生活水準が向上していることだとされている。これはしばしば、明文化されていない駆け引きの一端と見なされている。共産党の統治下で豊かになり続ける限り、国民は政治に関してほとんど何も言えないことを容認している。
インフレが猛威を振るった1989年には、北京の天安門広場で民主化を求める学生らデモ参加者が流血の弾圧を受けた。しかし、大まかに言えば、1978年に鄧小平氏が第11期中央委員会第3回総会(3中総会)で「改革開放」政策を始めて以来40年以上にわたり、この取り決めは維持されてきた。
習体制でそれが崩れつつある。公式データによれば、平均所得は依然として上昇しており、世界的に見れば健全なペースだ。だが、習政権下での所得向上は改革開放時代のどの指導部よりも鈍く、勢いが衰えている。
人材紹介のプラットフォーム智聯招聘によると、会社員のほぼ3分の1が昨年、給与を減らした。不動産からテクノロジー、金融に至るまで、ホワイトカラーの中国国民は習氏肝いりの「共同富裕」(共に豊かになる)といった報酬などで行き過ぎた動きを抑える運動の影響を受けている>(以上「Bloomberg」より引用)
Bl00mbergの記事で使っている中国の経済成長率は中共政府発表の経済統計数字だ。だから全く当てにならないが、そうした傾向にあることくらいは見ても良いだろう。つまり習近平時代になって中国経済の成長率は鈍化している、ということだ。
じっさいには鈍化で済む段階ではない、中国経済は崩壊している。ただ正確な経済統計資料がないため、実態から推計するしかないため根拠が薄いと批判されかねない。しかし新卒の半数以上が失業し、勤務している労働者も35歳で肩叩きされる現状からは決して好調な経済状況とは思えない。
こうした事態は習近平氏の「鄧小平より俺の方が偉い」という驕りがもたらした。自分は中共(中国共産党)の開祖・毛沢東に比類すべき人物だ、という根拠なき増長が「改革開放」路線を否定したことによる。
彼は中国のGDPが世界第二位になり、米国の60%にまで達したことにより、中国は米国と肩を並べる超大国になったと勘違いした。そのため超大国として世界の覇権を握るために米国と同様に、世界各地に中国の軍事拠点を設ける必要がある、と考えた。そのための政策が「一帯一路」だった。
もちろんBloomberg紙が指摘するように中国経済が逆回転を始めたのは「改革開放」策を排したことによるが、具体的には「戦狼外交」によって先進自由主義諸国との関係が悪化し、対中デカップリングが進んだからだ。
中国経済は「改革開放」策により、外国投資と外国企業を受け容れたことから大躍進が始まった。それはただ廉価な大量の労働力と広大な土地があるだけの中国を短期間にGDPを急成長させるエンジンだった。「世界の工場」になることで中国経済は急成長し、各種工業製品のサプライチェーンのハブとなり国際的な地位を確保していった。
中国経済の急成長が中国民の暮らしを豊かにし、飢餓に苦しむ国民は国内から一掃された。しかし習近平氏は先進自由主義諸国との友好関係が投資を呼び込み企業進出を促したことを忘れてしまった。「世界の工場」は中共が建設したのだ、と勘違いした。老大国の米国など歯牙に掛けるまでもない、と思い上がってしまった。
腹を空かしている状況の人民服を着た12億人の国民がいるだけの中国に先進自由主義国へ仲間入りの道案内をしたのは米国と日本だ。ことに日本は社会資本が決定的に欠落していた中国に資金援助を惜しまなかった。当初、中共政府幹部は日本の援助を有難がったが、たちまち貰って当然の「貢物」だと勘違いし、そうした「貢物」を近隣の弱小国が献上するのは中共が偉大だからだ、と思い込んだ。
だから習近平氏は「戦狼外交」を展開すれば中国に投資や企業進出した先進自由主義諸国は忽ち平伏すと勘違いした。だが、巨大な軍事力を背景にした恫喝は先進自由主義諸国を平伏させるよりも、彼らを対中デカップリング策へと追いやった。
外国からの投資が中国から引き上げられ、外国企業が撤退すれば、中国経済は成長エンジンを失うことになる。その穴埋めとして「改革開放」当初に日本が支援して建設した鉄鋼生産設備と、やはり日本が技術指導した造船産業などの規模を拡大して、国際需要など構わずに闇雲に増産拡大をした。さらには半導体や自動車産業など、先進自由主義諸国の技術を盗んで自前での生産に乗り出した。
自由市場へWTOを通じて他国の需要などに関係なく過剰生産した物品をダンピングして輸出すれば貿易の国際秩序が破壊されるのは当然の帰結だ。だから益々対中デカップリングが進むことになる。
経済成長エンジンだった「世界の工場」が不調になると、中国は新たに国内投資に成長エンジンの役目を担わした。それが中国全土に乱立した高層ビル群であり、全土に張り巡らした高速鉄道だ。それが市場原理を無視した過度な投資だっため、採算性どころか需要すら見込まない「不良資産」を全土に建設してしまった。不良資産とは「経費の塊」でしかない。経済成長のエンジンと期待された投資は経済崩壊のトリガーとなった。
Bloomberg紙が分析しているよりも、中国経済は末期的様相を呈している。社会主義国家でありながら、失業者が巷に溢れている。社会主義国家でありながら貧富の格差が拡大している。社会主義国家でありながら都市住民と農村住民とでは「格差・差別」が存在している。そうした国家規模の矛盾に中国民が気付いたなら、中共政権は崩壊する。現在、中国はそうした瀬戸際にある。
「世界の工場」として繁栄した深圳や広州などは「世界の工場の廃墟」になっている。そうした廃墟が全土に広がって、中共政府の命脈は尽きようとしている。習近平氏の中国は他国と一戦を交えて敗北して瓦解するのではなく、自らの失政により経済崩壊して中国国内から社会秩序が崩れ去っていく。それは人口に匹敵するほど設置した監視カメラなど何の役にも立たない完全崩壊だ。もちろん公安警察なども崩壊の片棒を担ぐことになるだろう。
<私事ながら>
この度、私が書いた歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにCAMPFIREでクラウドファンディングをはじめました。「蒼穹の涯」は伊藤俊輔(後の伊藤博文)の誕生から明治四年までを史料を元にして描いたものです。維新後の彼の活躍は広く知られていますが、彼が幼少期からいかに苦労して維新の功労者になり得たのかを史実に基づいて記述しています。現在、明治維新以前の彼に関する小説等の著書は殆どありません。
既に電子版では公開していますが、是非とも紙媒体として残しておきたいと思います。クラウドファンディングは7月3日までです。残り少なくなりましたが、皆様方のご協力をお願いします。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」をお読みになりたい方はこちらをクリックして下さい。