中共政府の不可解な不動産バブル処理がもたらす中国の崩壊と日本の危機に備えよ。

住宅買い取り策は奏功するのか
 中国の不動産市況の悪化に歯止めがかからない。今年4月、主要70都市の新築住宅価格は前月比0.6%下落した(単純平均)。
 不動産市況の悪化が止まらないため、不動産デベロッパーのドル建て社債に加え、人民元建て債権のデフォルト懸念も高まっている。不動産バブル崩壊の後遺症は深刻だ。
 5月17日、中国政府は不動産市況の悪化を食い止めるため、国内で売れ残った住宅在庫の買い取り策を発表した。
 かなり思い切った政策とはいえるのだが、その効果について疑問視する向きも多い。この措置では、地方政府は銀行から借り入れを行い、不動産業者から住宅の在庫を買い取る。買い取った住宅は、低所得者向けの住宅に仕立て直し、低価格で販売する。
 重要なポイントは、住宅に対する需要が回復し価格の下落に歯止めが掛かるか否かだ。地方政府の財政状況が悪化し、銀行の不良債権が増加するリスクもある。
 今回の発表を好感し中国の本土株は上昇したが、今回の策が経済の好転につながると考えるのはやや早計だろう。

状況はかなり厳しい
 4月、中国70都市のうち64の都市で、前月から新築住宅の価格は下落した。3月の下落都市の数から7都市増加した。
 4月の水準は、中国本土株が急落した“チャイナショック”が起きる前の2015年2月以来の水準だ。住宅価格が上昇した都市は5つ減り6都市だった。3月の新築住宅価格の下落率(前月比0.3%)から下げ幅も拡大し、その深刻さがうかがえる。
 都市の規模別にみると北京、上海、広州など“1級都市”の下落率は同0.7%だった。省都など“2級都市”で同0.5%下げ、より小規模の“3級都市”は同0.6%、とてもいい状況とは言えない。
 所得水準の高い一部の大都市で、個人消費は緩やかに回復しつつあるとの見方もあるものの、住宅価格の推移をみると状況はかなり厳しいとみたほうがよさそうだ。
 無視できないポイントは、不動産バブル崩壊で、過剰な住宅供給の問題が解消していないことだ。
 今年1~4月期、碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)の不動産販売(床面積ベース)は前年同期比85%減少した。5月13日までの猶予期間内にドル建て社債の利払いをできなかった、雅居楽集団(アジャイル・グループ)の販売は同66%減少した。

住宅ローン金利の下限を「撤廃」
 未完成物件と住宅在庫の積み上がりにより、新築、中古ともに住宅価格はだだ下がりしている。
 地方政府が国有銀行などから資金を借り入れ、債務問題が深刻な不動産業者から住宅在庫を購入する措置だけで状況を大きく改善するとは考えにくい。
 また、購入にあたっては大幅な値引きが行われるとみられる。地方政府は購入した在庫を低所得者向けの住宅に転換して再販する。住宅在庫の圧縮とデベロッパーの資金繰り支援が主な目的だ。
 地方政府による買取り支援に、中国人民銀行(中央銀行)は3,000億元(約6.5兆円)の資金枠を設定した。また、中央銀行は住宅ローン金利の下限を実質的に撤廃した。
 住宅購入者の頭金比率も引き下げ、地方政府が買い取った住宅の需要を刺激しようとしている。発表後、不動産市況の改善期待で上海総合指数は反発した。
 今回の買い入れ措置は、銀行による不動産向け融資の積み増し強化策ともいえる。財政資金で住宅を買い取り、処分するわけではない。

ヒト・モノ・カネの再配分はどうなる
 売れ残った住宅の利用権は地方政府に移るだけで、転売が奏功しなければ不動産分野などで不良債権残高は増加するだろう。ローン金利低下で銀行の利ザヤがさらに縮小する恐れもある。
 今回、地方政府による住宅買い入れ措置は、問題の根幹にある未完成住宅の解消を解決できるとは考えにくい。未完成のまま放置されるマンションは増えている。
 それに伴い、消費者心理は悪化している。先行き不透明感から家計は貯蓄にシフトしているため、個人消費の回復ペースも鈍い。地方政府による在庫買取り策が、住宅価格の上昇につながるか否か、不確定要素は多い。
 今後、中国政府がさらなる不動産テコ入れ策を発表する可能性はある。重要なポイントは、財政支出の増加による不良債権処理の加速と、規制緩和などによる成長分野への経営資源(ヒト、モノ、カネ)の再配分が実現するか否かだ。今すぐそうした経済政策が進むことは考えづらい>(以上「現代ビジネ」より引用)




 真壁昭夫(多摩大学特別招聘教授)氏が「中国、不動産がまったく売れず終了の一途…「住宅買い取り」まで始めた政府が迎える絶望のシナリオ」と題する論評を寄稿している。
 約35億人分の戸数があるといわれている中国の新築家屋が「売れ残っている」として、何の不思議があるだろうか。中共政府の不動産行政は迷走した挙句、6兆円の予算で売れ残っている新築家屋を買い取る、と宣言した。

 いや、中国は社会主義国ではないのか。生産手段や不動産は原則として国家に帰属し、国民は労働者として働いた「労働価値」を資本家に搾取されることなく平等に配分する、という国ではなかったか。
 しかし実態は資本家がいて不動産会社を経営し、地方政府から土地の使用権(期限50~70年の地上権)を買い取って分譲マンションを建設するというビジネスモデルでやっている。そうした意味では、中国は資本主義国家だ。

 しかし恒大集団にしろ万科集団にしろ、彼らは「ポンジ・スキーム」でしかない。新築マンションを販売する、という名目で紙の契約書を交わして代金をせしめる。マンション価格の全額懐に入れて、マンション建設に取り掛かるが完成させることはない。彼らが建設するのは筐体と共用施設だけで、個々のマンションの間仕切りや内装は手付かずのままだ。
 そうした好い加減な売買契約と決済だから、新築マンションは建設途中で放置されることが多い。つまり投資詐欺の「ポンジ・スキーム」と大して変わりない。だから恒大集団をはじめ、中国の不動産企業が相次いで破綻するのは当然だ。

 不動産バブルの破綻処理をバブルが発生した原理通りの市場原理を利用して処理するのではなく、不動産取引を停止したり頭金の制限を緩和したり、果ては融資枠を拡大したり、と一定のバブル崩壊の処理手続きを踏むこともなく、無手勝流の理解不能な中共政府流というしかない動きを見せてきた。当然ながら、それらはバブル処理に殆ど効果はない。
 そして、遂には不良資産を政府が買い取ると宣言した。しかも用意した金額はたったの6兆円だという。まさに「焼け石に水」だ。それは市場原理を無視するだけでなく、バブル崩壊が金融崩壊に到る流れを止めることは出来ないし、むしろ「元」暴落のトリガーになりかねない。

 だが、依然として中国は外国投資を呼び込み外国企業の中国進出を誘致しているというから中共政府の羅針盤が何処を指しているのか全く分からない。不良資産化した不動産であれ、国家が買い取る、というのは社会主義へ舵を切る、というシグナルでしかない。しかし投資や外国企業に関しては自由市場に窓を開き続ける、という。が、国内の民間企業は叩き潰している。国営企業化への流れは依然として続いている。
 習近平氏は「改革開放」の否定と肯定の間で揺れているようだ。鄧小平氏は否定したいものの、毛沢東路線では経済が巨大化した中国を運営することは困難だ。そして何よりも毛沢東時代に中国民はおしなべて飢えていた、という事実を習近平氏は忘れているようだ。現代中国民は毛沢東時代の人民服と慢性的な飢餓状態には耐えられないだろう。しかも金融崩壊は現実のものとなって、通貨「元」の暴落をもたらすのも時間の問題だ。

 リーマンショック時の不良資産120兆円に対して、中国が抱える債務は総額で1京3000兆円に達していると云われる。超怒級の金融ショックが世界を襲うと恐怖している向きがあるが、もちろん「元」に投資している投資家や中国と取引している国には大きな影響があるだろうが、「元」はローカルカレンシーに過ぎない。国際的な金融不安に波及することは殆どないのではないか。
 日本にとってアルゼンチンの国家破綻がどれほど影響があっただろうか。もちろん中国からの輸入は混乱するだろうが、政府統制が利かなくなった中国民は勝手に貿易を持続するだろうから、それほど大きな問題はない。ただ中国の国家破綻は国営企業の破綻でもあり、国家利益を貪っていた連中が大挙して難民化し、日本に押し寄せる可能性が否定できない。現在でも、大量の中国民が日本へ逃げ込んでいる。日本政府が用心すべきは、大量の中国人が日本の社会保障や日本の国土そのものを奪い取りに来ることだ。厄介な隣人が暴走するのは軍事侵略ではなく、働かない大量の中国民が日本を占拠しにやって来ることだ。



<私事ながら>
この度、私が書いた歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにCAMPFIREでクラウドファンディングをはじめました。「蒼穹の涯」は伊藤俊輔(後の伊藤博文)の誕生から明治四年までを史料を元にして描いたものです。維新後の彼の活躍は広く知られていますが、彼が幼少期からいかに苦労して維新の功労者になり得たのかを史実に基づいて記述しています。現在、明治維新以前の彼に関する小説等の著書は殆どありません。
 既に電子版では公開していますが、是非とも紙媒体として残しておきたいと思います。クラウドファンディングは7月3日までです。残り少なくなりましたが、皆様方のご協力をお願いします。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」をお読みになりたい方はこちらをクリックして下さい。

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